「スマホ」記事の奥にあるもの・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第32回 | GameBusiness.jp

「スマホ」記事の奥にあるもの・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第32回

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ビジネスデー2日間が終了した今年の東京ゲームショウ。「ゲームの未来を語る」最新号では初日に平林氏が感じたものを語ってもらいました。
  • ビジネスデー2日間が終了した今年の東京ゲームショウ。「ゲームの未来を語る」最新号では初日に平林氏が感じたものを語ってもらいました。
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ビジネスデー2日間が終了した今年の東京ゲームショウ。「ゲームの未来を語る」最新号では初日に平林氏が感じたものを語ってもらいました。

■単から複へ

東京ゲームショウ2012、ビジネスデイ初日を取材してきた。
午前10時から午後5時まで、4日間開催される東京ゲームショウ2012だが、報道関係者はこのイベントを3文字で語るであろうと予測していた。
3文字とは「スマホ」である。



上写真はメディア関係者専用入り口を通って、正面にあるホール全体を見渡せる場所だ。開幕のテープカットが行われた直後に、カメラマンが並んだ。

スマートフォンゲームコーナー、ソーシャルゲームコーナーの表示看板とGREEの企業ロゴが同時に撮影できる絶好のポジションと考えたのだろう。

東京ゲームショウ開幕初日の深夜に、本稿を書いている。
各社の報道がすでにネットニュースになっている。見出しを一部抜粋すると、

・ゲームショウ開幕、スマホ向け出展3倍に(読売新聞)
・東京ゲームショウ:スマホ向けに力点 幕張メッセで開幕(毎日新聞)
・「東京ゲームショウ」開幕 携帯電話向け、4割占める(朝日新聞)
・スマホ向けが主役 東京ゲームショウ開幕(スポーツニッポン)
・東京ゲームショウが開幕、スマホ向けが主役に(サンケイスポーツ)
・主役は“スマホ向け” 東京ゲームショウ開幕(テレビ朝日)
・東京ゲームショウ、鍵は「スマホ」(TBS News)

「スマホ」の文字が並ぶ。
また、ソーシャルゲームに勢いがあると報じたメディアも多い。

・東京ゲームショウ:開幕、ソーシャルゲームの展示目立つ(毎日新聞)
・東京ゲームショウ開幕、「ソーシャル」出展7割に(日本経済新聞)
・東京ゲームショウ開幕=「ソーシャル」一段と存在感(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)

これらニュースは間違っていない。
今年の東京ゲームショウにはマイクロソフトが出展しなかった。
例年通りに任天堂も出展していない。
伝統的な家庭用ゲーム機の展示タイトルは少なく、スマートフォンを使った、ソーシャルゲームが目立ったのは事実である。

だが、判で押したように各社が同じような記事を書く。
しかも、開場されるとほぼ同時に写真撮影をして、予定調和的につくられた記事に重要な情報は込められていない。

ゲームビジネスとは直接関係ない読者が、「ああ、そういう傾向だったのか」と知るには十分かもしれないが、ゲーム業界に身を置く者は、その先の洞察が必要だろう。

確かにスマホは勢いがある。
今後、普及台数が増えていくことは誰でも予測できることだ。
では、そのスマホ。
多くの報道が言明し、あるいは示唆をしているように、家庭用ゲームにとってかわる存在になるのか。簡単に言えば、敵なのか。その検証が必要だ。

私は、スマホは既存のゲームの敵ではなく、つながるべくしてつながった、もうひとつデバイスと考えている。

テレビゲームを創作するのに、「単体のデバイスでなくてはいけない」という決めごとはない。自由だ。

自由なコンピュータの使い道を考えることができるのが、ゲーム開発者の特権だ。機種は問わない。専用機と汎用機が混ざり合うこともある。複数のデバイス、複数の画面で遊ぶスタイルが、将来像としてより鮮明になった、東京ゲームショウ2012だった。

今年のE3で、マイクロソフトはスマホやタブレットPCでXbox360の画面を操作できる「Xboxスマートグラス」を発表した。その直前には任天堂も、「任天堂ネットワーク」を立ち上げ、ゲーム専用機とPC、またはスマホがインターネット上でつながる構想を発表している。

コンソールマシンだけではない。コナミの人気ソーシャルゲーム『ドラゴンコレクション』は、アーケードゲームと。セガの『ファンタシースターオンライン2』はPC版とPS Vita版とがデータ連動して遊べるなど、ゲームの複合化は時代の流れでもある。

将来のゲームコンテンツは、つくる側にとっては複数の収益ルートを持ち、プレイヤーにとっては、生活シーンによって使うデバイスを選ぶことができる。このような現実的かつ前向きで、導きのある報道は見られない。なので、私はあえて「複合化時代の到来」と、踏み込んだ表現を提示したい。

家庭用ゲームソフトは開発費がかかる。
スマホアプリは数が多くて埋もれてしまう。
双方の欠点、言い換えれば愚痴をこぼすのが習性となったゲーム業界人がいる。
また、過去の経験から「陣営」の価値観があり、プラットフォームとプラットフォームの間に壁を立ててしまう思考習慣もある。

だが、今さらわかりきったアラ探しをしても、意味はない。
スマホは「陣営」ではなく、今すでに、これからもっと多くの人が持つはずの必需品。そのうえで何ができるかを競う、おもしろい時代がやってきたのだ。

フューチャーフォンから発生した、日本のソーシャルゲームにおいても同じことがいえる。単にスマホに移行するだけではなく、PC、タブレットPCと複合すれば、また新しい遊びが生まれるだろう。

人間のアイデアは、引き出しに入った材料があればあるほど生まれやすい。
ひとつのデバイス、ひとつの画面で表現してきたテレビゲームの概念が変わりつつある。複数の材料が組み合わさって、新しい価値が生まれることを期待する。

■PlayStation Mobileの意味

「複合化時代の到来」のとき、である。
東京ゲームショウの前日にSCEJプレスカンファレンスが品川インターシティホールで開催されたが、その内容は期待はずれであった。

これもまた翌日の報道を見れば、単品の「お知らせ」が並ぶばかりで、驚くようなニュースがない。以下のような見出しが続く。

SCEが新型PS3を2012年10月4日に発売、PSPは3000円値下げ。
PS3の小型・軽量化モデル、価格据え置きで250GB 版と 500GB 版を10月4日発売。
PlayStation Mobile、10月3日からコンテンツ配信。価格は50円〜850円を予定。シャープ・富士通もパートナーに。
PS Vitaに新色「コズミック・レッド」「サファイア・ブルー」が登場。

私は特に今年の8月に発表ずみのPlayStation Mobileについて、続報を知りたかった。価格が50円〜850円などという、「お知らせ」よりも、今、プレイステーションがスマホと親和性を持つ意味や、ストーリーを聞きたかったのだ。

拍子抜けした気分で東京ゲームショウに行ったが、救われた。
ソニー・コンピュータエンタテインメントのブースで、パブリッシャー&ディベロッパーリレーション部門を統括する桐田富和SVP(シニアバイスプレジデント)にインタビューができた。

私が「PlayStation Mobileの昨日の発表は……」と言うやいなや、桐田氏は「(休日に趣味でプログラムをする)サンデープログラマーも参加できるプレイステーション」と話しを切り出した。そして「初代プレイステーションが、スーパーファミコンと比べて安価な初期投資でソフトが開発できたのと同じように、PlayStation Mobileを入り口にして、世界のアマチュア、もちろんプロフェッショナルのゲームのつくり手に門戸を開きたい」と語った。

実際にPlayStation Mobileのブースに行ってみると、下写真のようなメッセージが書かれていた。



PlayStation Mobileで開発されたゲーム、アプリケーションはPS Vitaでも作動する。PS VitaとPS3はクロスプレイによってつながるので、それがPS3で遊べることを意味する。

PlayStation Mobileは、ソニーがスマホに参入するだけではなく、スマホからプレイステーションに参入できる窓口でもある。「世界をアッと驚かせる」ことも狙いとした、意味とストーリーを確認できたのである。

スマホが登場する以前に、Rovio Entertainmentというフィンランドの企業を何人の人が知っていただろう。

日本の新聞が報じるように、スマホが主役だとすれば、それは世界のどこかにいる名もなき個人や集団が主役になれるチャンスがめぐってきたのと同義なのである。

■イベント以外に必要なこと

意味といえば、東京ゲームショウの意味もまた、変化の時期を迎えているだろう。
本稿執筆段階で主催者発表は行われていないが、ビジネスデイ初日の入場者は少なかった、との印象を持った。

いつもはどこに自分のクルマをどこに停めたのか、わからなくなるほど混雑する幕張メッセの駐車場は、例年よりも空いていた。現行は2日間あるビジネスデイだが、1日間でもよいのではないか、と思いながら幕張から東京に向かった。

最後に古い記事を紹介したい。
1995年1月26日、私は日刊工業新聞で現在のCESAのような団体が必要だ、との趣旨のことを書いた。



同記事は的外れではなく、「じつはこの内容とほぼ同様のことを構想している」とのお申し出を受け、情報交換の場をもうけていただいたのが、上月景正・CESA初代会長だった。

拙稿が動きそうもない山を動かすこともある。
この精神に立ち返って、今のCESAには欠けている機能があることを再度、具申したい。

リアルなイベント、東京ゲームショウは大切な場だが、21世紀になって10年以上過ぎた今は、地上戦だけでは情報発信力が足りない。

スマホ、コンテンツのダウンロード販売、ストリーミングゲームが勢いを増す時代に対応して、Japan Game Portal。日本のゲームの情報が時間・空間にしばられずに、常に世界に発信していくポータルサイトの必要性を感じるのだ。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式サイト公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuH、Facebookアカウントはhttp://www.facebook.com/hisakazu.hirabayashiです。
《平林久和》

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