ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】 | GameBusiness.jp

ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】

ゲーム開発現場で起こり得るさまざまなトラブル。現場の士気が確実に下がるこうした状況に陥らないようにするためにも、揉め事を避けるためのポイントを現役弁護士が解説します。

ゲーム開発 その他
ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】
  • ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】
  • ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】
  • ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】
  • ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】
  • ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】
  • ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】
  • ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】
  • ゲーム開発でトラブルを未然に防ぐための契約の作り方。開発中の仕様変更問題や、外注先の生成AI利用など揉め事を起さないための方法を解説【CEDEC2026】

ゲーム開発に携わる方の中で、現場での仕様が曖昧なまま開発が進み、気づけばトラブルが発生してしまうような経験をしたことがある人は少なくないのではないでしょうか?

こうしたトラブルを未然に防ぐための契約実務を、弁護士の視点から整理する講演「ゲーム開発の契約実務:仕様・仕様変更・検収から、セキュリティ/生成AIリスクまで」がCEDEC 2026にて行われました。

登壇したのは、PHI法律事務所の安藤広人氏、戸上雄基氏の両弁護士。本講演では、過去の裁判例の分析を踏まえた業務委託契約の設計から、知的財産権の帰属、そして現代ならではのトラブルとして生成AI利用やセキュリティ管理といった近論点までが解説されました。

ゲーム開発を含むIT開発は、訴訟において特に難しい類型

そもそも安藤氏によれば「ゲーム開発を含むIT開発は、訴訟において特に難しい類型とされている」と指摘します。

その理由の一つは、成果物が目に見えにくいことだといいます。筆者としてはどうしてもゲームに普段、馴染みがあるゆえに、ソフト内のグラフィックやプログラミングのデータなど明確な成果物があるように思えるのですが、法的な紛争では見え方が違うとのことです。

たとえば建築物であれば床の傾きなど誰の目にも分かる欠陥がありますが、ITの成果物は当初の合意内容との相違が客観的に判断しにくいという特徴があります。

もう一つの理由は、発注者(ユーザー)と受注者(ベンダー)の間の情報格差です。発注者はIT専門知識に乏しく、受注者は発注者の業務内容に疎いため、両者の合意内容がすれ違いやすいといいます。

ゲーム開発ではこれに加え、世界観やキャラクターの動きといった、実際に作って動かしてみないと評価できない言語化しにくい要素が絡むため、当初合意した内容と実際の成果物との相違をめぐって、さらに紛争化しやすい特徴があるとされました。

次に、過去15年ほどのゲーム開発関連の裁判例を分析した結果、多くの訴訟で「当事者が何に合意したのか」が争点となるケースが多いことが示されました。具体的には、仕様・仕様変更・検収・PM義務(協力義務)という4つの論点が典型的な争点になるといいます。

契約書に記載される「請負」か「準委任」かという法的性質の違いは、当事者の合意内容が不明確な場合に、その内容を推測する手がかりになるといいます。

この区分は民法上の規定に基づくもので、請負は仕事の完成(成果物の完成)に対して報酬を支払う契約、準委任は成果物の完成を問わず、専門家として相応の注意を払って業務を行ったかどうかが重要になる契約です。

そのため請負であれば成果物が完成していなければ報酬を払わなくてよいという結論になりやすい一方、準委任であれば完成に至らなくても、きちんと稼働していたことを立証できれば報酬を請求できる形になります。

傾向として、請負は納品物があり報酬額も明確なケースに結びつきやすく、準委任はコンサルティング的な業務や、稼働時間・人月ベースの報酬に結びつきやすいとされました。

実際の訴訟では、契約書上の記載にかかわらず実態から請負・準委任のいずれかが判断されることもありますが、契約書に法的性質を明記しておくこと自体に、紛争予防上の意味があるといいます。

旧・下請法から名称変更された中小受託取引適正化法(取適法)、およびフリーランス法は、発注者と受注者の会社規模の差(資本金基準・従業員数基準)と、取引内容(プログラム制作、キャラクターデザインやモデル作成を含むデザイン、アニメーション制作などの「情報成果物の製作の委託」)という2つの要件を満たす場合に適用されます。

これらの法律がかかる取引では、いくつかの義務・禁止事項が課されます。まず、給付内容を受託者が客観的に理解できる程度に、代金なども含めて書面で明示する「発注内容の明示」義務です。次に、成果物の受領日から起算して60日以内に代金を支払う義務があり、これは検収に合格した日ではなく、成果物を受領した日が起算点になる点に注意が必要だと説明されました。

さらに、代金減額の禁止(振込手数料を発注者・受注者どちらが負担するか未合意のまま差し引いて振り込むことも該当し得る)、買い叩きの禁止(特に知的財産権の移転について何も対価を払わない場合に問題化しやすい)、不当な給付内容の変更の禁止、そして2025年の法改正(2026年1月施行)で新設された、協議に適切に応じないまま代金を減額することの禁止、といった禁止行為が定められています。

一方、仕様書は詳細に書くほどトラブルは減りやすいのですが、少しのズレが「仕様変更」と扱われ追加報酬の対象になりやすくなるという、書き込みすぎのトレードオフがあります。

そのため、仕様書に加えて企画書などの参考資料を提供すること、また契約書に落とし込みきれない部分についてはチャットやメールでのやり取りも、訴訟時に当事者の合意内容を推認する材料として参照され得ることも紹介されました。

仕様が完全には固まらない場合の対処としては、未定事項とその確定時期を明示したうえで契約を締結し後日合意する方法と、未確定部分が大きい場合には基本契約と個別契約に分割し、仕様確定自体を準委任型の業務として先行させる方法の2つが提案されています。

仕様変更については、あらかじめ変更の申し出先や手続きを契約で定めておく方法と、そもそも成果物を特定せず稼働に応じて報酬を支払う準委任型で設計する方法が挙げられました。

検収は法律上定義された概念ではなく、契約書で明確に定義する必要があるといい、完成・受領といった類似語との使い分けにも注意が必要だとされています。検収が実施されないケースに備え、みなし合格条項を置くことも有効だといいます。

PM義務(協力義務)については、役割分担表を作成し、資料作成や確認作業の分担を明確にしておくことが推奨されました。大規模開発では、最初から一本の契約で全体を規定するのではなく、基本契約のもとで個別契約を細かく区切って発注していくアジャイル的な進め方が、トラブルを減らすとされています。

受託先の労働者に対して発注者側が直接指揮命令を行うと、労働者派遣法違反となる「偽装請負」に該当するリスクがあるといいます。

ゲーム開発では発注者と受注者の作業担当者が密接に連携しながら開発を進めることが多く、「ここを直してください」「毎日この時間に来てください」といった細かい直接指示がこのリスクを高めやすいと指摘されました。対応策として、双方の窓口となる責任者を契約書で定め、やり取りをその責任者経由にすることが挙げられました。

フリーランスへの発注についても、稼働時間や場所を細かく指定するなど直接的な管理を行うと、契約の形式は業務委託であっても実質的に労働契約とみなされ、未払い残業代の支払いや行政罰の対象になり得ると説明されています。業務の遂行方法はあくまでフリーランス側の裁量に委ねる必要があるとされました。

著作権、そして生成AIについて

また、講演では著作権についても言及。著作権は原則として実際に開発した受注者側に発生するため、発注者へ移転する条項を契約に明記しないと、権利が受注者側に留まり続けることになるといいます。

一方でベンダー側が複数案件で再利用する汎用的なアルゴリズムなどについては、著作権譲渡の対象から除外しつつ、発注者側には利用許諾を与えるという形で規約を調整する方法も紹介されました。

これは全ての権利を発注者側に譲渡してしまうと、他案件でも使うつもりだった汎用部分の権利まで手放すことになりかねない一方、譲渡対象から外すだけではユーザー側が使えなくなってしまうため、その調整として利用許諾を組み合わせるという整理です。

開発が中途終了する場合に備え、その時点までの成果物の引き渡しや知的財産権の扱い、報酬の計算方法をあらかじめ契約に定めておく「出口設計」の重要性も強調されています。もめ始めてから合意するのは難しいため、あらかじめ計算方法や引き渡しの条件を決めておくことが推奨される、という考え方です。

生成AIについては、販売プラットフォームによっては利用の有無の開示を求めるケースもあるため、委託先の利用状況を把握・管理する必要があるといいます。契約に盛り込むべき項目として、利用の可否そのもの、AI処理を限定する範囲、用途の限定(コーディングのみか、キャラクターデザインまで含むか)、個人情報の入力可否などが挙げられました。

セキュリティに関しては、開発環境自体の安全性(ランサムウェア感染や情報漏洩の防止)と、開発対象であるゲーム自体の安全性(ゲーム内チート対策など)という2つの場面で契約上の管理が必要だと整理されました。具体的な手段としては、委託先への質問状の送付、第三者認証の取得、監査の実施などを契約に組み込む方法が紹介されています。

このほか、委託先が使用するフォントのライセンス管理も、近年ゲーム業界で重要性を増している論点として挙げられました。再委託が発生する場合には、再委託先が起こした問題についても元の委託先に同様の責任を負わせる条項を設けておくことの重要性も語られ、講演は締めくくられました。

《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

+ 続きを読む

この記事の感想は?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい

関連ニュース

特集

人気ニュースランキングや特集をお届け…メルマガ会員はこちら