
クラウドファンディング大手のKickstarterは2026年5月20日、性的表現に関しての詳細なガイドラインを定めた新ルールを撤回し、既存のルールに戻すとともに声明文を公開しました。
決済処理業者が要求したルールを盛り込んだことで混乱を生む

Kickstarterはゲームやアニメ、あるいは工業製品など、ありとあらゆる分野のクリエイティブ製品を取り扱うクラウドファンディングサイトです。今回の問題のきっかけは、同サイトの「Kickstarterのルール」のページに性的表現に関する詳細なガイドラインが制定されたことに端を発しています(Internet Archiveより、撤回された新ガイドラインが確認可能)。
以前よりKickstarterのルールに「ポルノや違法なコンテンツは許可しない」という一文はあったのですが、具体的にどのようなものが許可されないのかは例示されていませんでした。
そんななか突然制定されて、それから撤回された新ガイドラインでは以下のような内容が言及されています。
以下のことは許可していませんとして、記載されていた事項
「写真、写実的な描写、印刷された模型、彫刻、およびイラスト」の分野
女性の乳首/乳輪、性器、肛門、臀裂(臀部)を含む裸体被写体がランジェリー、フェティッシュウェア、または透け感のある服や非常にタイトな服を着ており、人間の性器、肛門、または女性の乳房の乳首/乳輪が見えているような、暗示的なヌード
クリエイターは、トリミング、ぼかし、隠蔽、誤解を招くようなラベル付け、またはその他の方法で偽装したコンテンツによって、これらの規則を回避してはならない
このように、黒塗りやぼかしによる回避も制限されていました。
さらにこれらのガイドラインを基に実際にKickstarter側からクラウドファンディングを停止されたプロジェクト(リンク先裸体表現が含まれるため閲覧注意)も現れたため、主にコミックを制作するクリエイターや一部メディアの間からはKickstarterを非難する声も現れ始めました。
そして5月19日、Kickstarterはこのガイドラインを見直す声明を発表しました。声明文の中で、規約改定に至った大きな理由はKickstarterが利用している決済代行業者Stripeからの要求によるものであり、同業者はKickstarterとは異なる独自の規制基準を設けていたことに端を発します。ここ数か月の間、Kickstarterでは承認されてもStripeによって承認されないクラウドファンディングが相次いでいたといい、その場合はKickstarterはクリエイターに改善すべき部分を伝え、極力プロジェクトを成功に導けるようにStripeと交渉を続けていたといいます。
しかし今後同様のケースが相次ぐと予想されたため、Kickstarter側がStripeの規制基準に応じたガイドラインを制定することで今後トラブルを避けようとする意図があったということです。なお、Stripeの規制基準も世界中の金融機関の定めるシステムによって構築されたものと声明文中では記載されています。
しかしながら、今回Kickstarterの下した判断は「Kickstarterの中核をなす反体制的な精神、既成概念への反抗精神」を放棄するものであったとし、その結果コミュニティの反発を生んでしまったとのこと。この結果を受けて、性的表現に関わるガイドラインを以前の「ポルノや違法なコンテンツは許可しない」というシンプルな一文に戻し、その下にStripeの定める禁止行為へのリンクを張るという折衷案が提示されました。このガイドラインによって、「児童性的搾取や虐待に関するコンテンツなど、特定のコンテンツは引き続き禁止される」ことに変わりはないとしています。
Stripeは依然Kickstarterのプロジェクトを停止させるだけの権限を持っているものの、Kickstarter側は「私たちが信じる理念を貫き、私たちのルールとStripeのルールの間の隙間を利用して、クリエイターのために闘い続ける」としており、今回の声明文は「もっとうまくできたはずです。皆様の信頼を取り戻すために努力を続け、大胆で既成概念を打ち破る創造的な作品にふさわしい環境を作り続けてまいります」と締められています。
世界中で決済代行業者による性的描写の規制が進む中、クラウドファンディングにおいてもその影響が表れ始めたことを示す今回の出来事。この流れがいったいどう進むのか、今後も注目されます。









