!注意!本記事では、成人向けゲームの話題を取り扱っています。
ウィンターセールが終わり、Steamアワードも発表され、そろそろ2026年に向き合うか、という今日この頃。しかし2025年といえば、Steamで成人向け表現をめぐる削除、発売停止が相次いだ一でもありました。今年も無関係ではないはずで、ここで振り返っておきましょう。
『No Mercy』の後出し地域規制

きっかけは、3月にリリースされた『No Mercy』です。プリレンダの3Dを用いた成人向けビジュアルノベルであり、合意のない性行為や近親相姦を含む作品でした。イギリスでは当時の科学・イノベーション・技術相であるピーター・カイルや大手メディアLBCなどが批難し、オーストラリアでは非営利団体Collective ShoutがSteamを運営するValve社に3,463件のメール送付および7万の署名を集め削除するよう嘆願書を提出するなどキャンペーンを張り、イギリス・オーストラリア・カナダの3ヶ国で配信停止されました。
その後、開発者Zerat Gamesは批難の内容を不服としながらも、争うつもりはなくSteamとValveに迷惑をかけたくないと声明を発表し、自主的にSteamでの販売を取り下げました。
過去には2019年、『Rape Day』というゲームがSteamで販売中止されました。リリース前のストアページを開いた段階で、合意のない性行為を題材とした内容に対し8千の署名を集めた嘆願書が提出され、Valve側が将来的なリスクが見えないという理由で取り下げたものです。また、日本にはCEROがあるように、世界各国で様々な規制が存在し、その結果として販売されないということは日常茶飯事です。
本件は一度問題なくリリースされたものが政治的な動きにより地域規制に導かれ、自主的とはいえ販売停止に至った点が大きなものでした。
Collective Shoutの公開書簡による決済停止
7月、Collective ShoutがVisaやMastercardはじめ決済代行会社7社に対し、男性による女性への性的虐待や拷問を推奨するゲームへの支払い処理停止を要請する公開書簡を掲出します。
追って、Steamの開発者向けツールSteamworks内のガイドライン、Steamで公開すべきでないものの項目が更新されます。追記された第15条の内容は「Steamの決済サービス業者、関連カードネットワークや銀行、インターネットネットワークプロバイダーなどによって定められた規則や基準に違反する可能性のあるコンテンツ。 特に、特定の種類の成人指定(アダルトオンリー)コンテンツ」というものでした。これにより、Steamでの公開基準に法令や倫理のみならず、金融業の都合が介入したことになります。その後、Steamでは連日、成人指定ゲームの削除が相次ぐことになります。
そして、itch.ioでは2万件もの成人向け作品が検索から削除され、見えなくなりました。決済代行業者との取引停止に対する緊急措置とのことで、合わせて成人向け作品のコンテンツポリシーに、各決済サービスの利用規約の遵守が追記されます。itch.ioはSteamのように厳正な審査を行わないプラットフォームだったため、一旦大規模に処理し、後日個別に審査を行うという形を取りました。その結果、クィア表現、性や身体といったテーマ、加害ではなく被害の視点から性的問題を描いた作品までもが検閲を受けました。
日本では数年前より、成人向け作品を扱うプラットフォームにおいて主要決済サービスが唐突に停止されることが相次いでいました。今回は世界規模で、しかも明確な経緯で行われた結果となります。
『VILE: Exhumed』販売差し止め

7月末、実写ホラーアドベンチャー『VILE: Exhumed』が発売を前にしてSteamによるストアページ削除措置がとられます。本作はPCを探索し、アダルト映画業界で働く女性俳優の失踪を追うもので、その内容として被害者の視点での暴行、虐待を取り扱うものでした。それがSteamで公開すべきでないもののうち、第2条の「実在する人物のヌードや露骨な性的画像」に抵触したとのことです。
過去にも、実写デートシミュレーター『Super Seducer 3』が同じ事由で削除されたように、Steamは実写での性的表現に対し厳しい基準を設けています。一方、本作は開発者Cara Cadaverによれば実写での性的コンテンツは含まれておらず、あくまで被害者視点で暴行や虐待を描いたものでした。
結果として、『VILE: Exhumed』は公式サイトで無料配布が実施されます。開発者およびパブリッシャーDreadXPは別プラットフォームでの販売も検討したものの、検閲への抗議として直接配布の形を取り、有料での支援で得た収益はDV被害を受けた女性や子供、住宅を失った家庭や難民をサポートするトロントの慈善団体Red Door Family Shelterに寄付されることになりました。
『Horses』販売差し止め

11月末、人間を馬として扱うホラーアドベンチャー『Horses』が数日後の販売を前にSteamで販売不可となり、ストアページが削除されます。パブリッシャーSanta Ragioneは公式サイトで声明を発表し、2023年6月にSteamに申請したビルドが拒否されてから2年以上にわたり問題箇所について説明を求めてきたものの、Steamで公開すべきでないもののガイドラインを指し示す以上の対応がなかったことを明らかにしました。
声明によれば、本件は決済代行業者の意思は関係なくSteam審査チームの決定であるとともに、本作には実写での性的表現は含まれておらず指摘も受けていないと明らかにされています。『Horses』には性的な場面があるものの短く、裸はモザイクで隠されており、非現実的で興奮を煽るものではないと説明しています。
その後、Epic Gamesストアでも発売直前で販売差し止めとなり、GOG.comおよびItch.ioでのリリースとなりました。3月に発表予定の著名インディーゲームアワード「2026 IGF Awards」では現在、新規性のある作品を表彰するNuovo Award部門と、年間ベストを表彰するSeumas McNally Grand Prize部門でファイナリストにノミネートされるなど、高い評価を得ています。
2026年に向けて
さて、こうして振り返っても、2025年はSteamを中心に成人向け表現をめぐる検閲が進んだ年でした。政治的な動向、決済代行業者の基準導入、プラットフォーマーの曖昧な対応など、様々な要因が絡み合っています。
一定の規制は必要でしょうが、こうした運用は徐々に保守的に倒れていくものです。敢えて名前は出しませんが、本記事で取り上げたゲームの規制要因は、大手を振って販売されている名作にとっても決して無関係ではありません。今、規制を逃れている表現も、やがて規制対象と見なされ、禁止の憂き目に合うものです。
願わくば、規制対象の透明性が上がり、計画的な規制対応が行われてほしいものです。











