
アカマイ・テクノロジーズは、間近に迫るAI時代に向けた自社の取り組みを語る事業戦略発表会を開催。同社職務執行者社長の日隈寛和氏とマーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー&エバンジェリストの中西一博氏が登壇しました。

急成長を続けるクラウド・コンピューティングが事業の3つ目の柱に
アカマイの2025年の売り上げは42.1億ドルで、年間成長率は約5%。内訳を見てみるとコンテンツ・デリバリーネットワーク(CDN)が30%、サイバーセキュリティが53%、クラウド・コンピューティングが17%となっています。


1998年にCDN事業に乗り出した同社がクラウド・コンピューティング領域への参入を発表したのは2023年2月のことですが、3年強で大きな比重を占めるようになりました。クラウド・コンピューティング領域だけを見ると、クラウドインフラサービスが前年比36%増という目覚ましい成長を遂げています。
また、数値だけを見るとCDNへの注力は年々抑え気味になっているようにも見えますが、これからも引き続きCDNへの投資も行っていく旨があらためて語られました。
分散型プラットフォームを生かし、ユーザーのすぐ近くで推論を実行
アカマイは「世界最大級のAI実行プラットフォーム」を目指すとしました。オルタナティブ資産の運用会社ブルックフィールド・アセット・マネジメントによると、2030年にはAIファクトリー(AIモデルを開発したり、トレーニング(学習)させたりする)ではなく、AIコンピューティング(AI推論)の需要が75%に達すると予測されています。


AI推論とはトレーニング済みのAIにデータを入力して予測や推論を出させたりすることで、卑近な例ではChatGPTのようなエージェント型AIに何かを質問し、返答させることもAI推論のひとつです。エージェント型AIに「イタリアへの海外旅行の計画を立ててほしい」というような入力をすると、AIはさまざまな情報を集めて取捨選択し、数十から数百回にも及ぶ推論を行います。


そしてこのとき、推論のために取り込むデータとAIに物理的な距離の開きがあると、処理の累積で大きな遅延を生んでしまうことがあり、UX(ユーザー経験)の低下を招きかねません。アカマイは、同社が誇る分散型プラットフォームでその解決を図ります。130超の国々、700以上の都市、4400以上の拠点によって構成される分散型プラットフォームはAIをユーザーのすぐ近くで働かせることを可能とします。


さらに、NVIDIAと手を携えたAI Inferencing Cloudが大きなアドバンテージを発揮します。アカマイは、AI推論処理向けに設計されたNVIDIAの高性能GPU「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition」を世界中の拠点に導入し始めており、日本では東京と大阪拠点に導入済み。AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、Google Cloudという3大ハイパースケーラーと比較して、最大で2.5倍の低レイテンシー、86%の推論コスト削減を実現しています。


日隈氏はここで「(Akamai Inference Cloudは)3大ハイパースケーラーを置き換えようとするものではない」とコメント。超分散型クラウド市場という、新たな市場を開拓していくのだと強調しました。
AI推論のユースケースはさまざまなものが挙げられますが、一例としては、映像メディアでの活用が挙げられるとのこと。8Kの超高解像度映像にリアルタイムで複数言語の字幕処理などを重ねる8Kビデオワークフローや、マルチカメラが捉えた映像からリアルタイムでベストショットを抽出するライブ映像インテリジェンスなどが紹介されました。

また、Akamai Inference Cloudは、日本ではモバイルゲームにも導入された例があります。生成AIのStable Difusionを用いてゲーム内で画像を生成するモバイルゲームに導入したところ、ベンチマーク比でGoogle Cloudと比較して2.5倍の高速化、3倍のスループット、86%のコスト削減を達成したそうです。

AIで強化された事前対応がサイバー攻撃の脅威から企業を守る
AIは、常に正しいことだけに使われるわけではありません。昨今はAIを用いて企業を対象としたサイバー攻撃も増加の一途で、対策が不十分であった場合は事業の一時停止などに追い込まれることも珍しくありません。今は「経営を止めないセキュリティ戦略」の導入が求められています。
サイバー攻撃への対策は、事前対応と事後対応に大別されます。しかし、事後対応は「監視カメラに不審者が映るのを待つ」ようなもので、映ったことを確認できたならまだしも、侵入自体は許してしまっているので何らかの手段で“カメラ”を回避・迂回されてしまうと被害がうなぎのぼりになります。

そこで重要になるのが、セキュリティ上の区画を細かく分けておくマイクロセグメンテーションなどの事前対応です。船舶において、区画の閉鎖により浸水を一部で食い止めて沈没という最悪の結果を避ける仕組みをダメージコントロールと言いますが、マイクロセグメンテーションのような事前対応はこのダメージコントロールの考え方によく似ている、と日隈氏は語ります。もちろん、事前対応だけを行えばよいというわけではなく、事前対応と事後対応の両方をバランスよく導入することが求められます。


そして、AIによる高度な攻撃に包括的に対応し、防ぐのもまたAIの仕事です。アカマイではSecure AI Applications、Secure AI Workloads、Srecure User Accessなど多数のセキュリティソリューションに加え、上述のマイクロセグメンテーションをAIでさらに強固なものにするAkamai Guardicore Segmentation(AGS)を提供。SBI新生銀行、パナソニックインフォメーションシステムズなどで導入されています。



最新GPUを備えたAkamai Inference CloudによるAI推論と、企業が導入したAIやAPIを高度化し続ける脅威から守るセキュリティソリューション。これらをCDNで培った分散型ネットワークに乗せ、低遅延・低コストで世界中に届けるのがアカマイの目指す姿です。日隈氏は最後に「私たちが持つ超分散型プラットフォームの強みを生かして新たなAI時代を築き、日本におけるAIの変革を支えていきたい」と語りました。







