株式会社サイバーエージェントのAbemaTVが四半期単体で黒字化を達成しました。
このサービスを内包するメディア&IP事業は通期黒字化を果たしていましたが、AbemaTVの四半期単体の黒字化は2016年4月のABEMAの開局以来初めて。2023年9月期からはクライアント数の増加に拍車がかかっており、2025年9月期は996社。前期から156社純増しています。幅広いコンテンツを提供し、広範な視聴者層を獲得した成果が出ました。クライアントを惹きつける営業力の強さにも、サイバーエージェントらしさを見出すことができます。
一方、主力の広告事業は減収減益。収益構造が変化しつつあります。
北米圏で「ウマ娘」がヒット、今年2月からは映画も公開
サイバーエージェントの2026年9月期第1四半期(2025年10月1日~2025年12月31日)の売上高は前年同期間比14.0%増の2,323億円、営業利益は2.8倍の233億円でした。今期は通期売上高を前期比0.7%増の8,800億円、営業利益を上限で同16.3%減の600億円と予想しています。やや弱気の予想の予想に対して、出足は2桁の増収、3倍近い営業増益と絶好調。

※決算短信より筆者作成
第1四半期の業績をけん引したのはゲーム事業でした。売上高は前期の1.7倍となる647億円、営業利益は5.3倍の176億円。大幅増収に寄与したのが海外売上。「ウマ娘 プリティーダービー」や「呪術廻戦 ファントムパレード」などの海外版がヒット。第1四半期における海外売上は前年同期間の3.6倍となる141億円で、ゲーム事業全体の8割を占めています。
サイバーエージェントは映画「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」の北米版を2026年2月に劇場公開しており、IPの影響力拡大に邁進中。美少女系の育成ゲームは北米圏では流行らないという常識を覆しました。コンテンツ市場に風穴を開けた形です。
会社全体の第1四半期の通期売上予想に対する進捗率は26.4%、営業利益は上限予想に対してでも39.0%に達しています。それでも通期見通しは据え置きました。ゲームは変動要因が大きく、上下の振れ幅が大きいためでしょう。
好循環を形成しはじめたメディア&IP事業
メディア&IP事業の売上高は前年同期間比12.5%増の626億円、営業利益は3.5倍の49億円でした。営業利益率は2.5%から7.8%に上昇。AbemaTV単体の売上高は前年同期間の1.2倍となる159億円、5,000万円の営業利益(前年同期間は15億円の営業損失)を出しました。AbemaTVの黒字化が利益率の向上に寄与しています。
この事業はドル箱である公営競技のインターネット投票サービスWINTICKETを抱えています。運営する株式会社WinTicketの2025年9月期の純利益は55億円で、前期の5倍に急増していました。コロナ禍を境に公営競技のインターネット利用が浸透。デジタル化が進んだことで、競輪などの公営競技そのものの市場が拡大するという好循環を形成しました。
これまではWINTICKETがメディア&IP事業の業績をけん引していましたが、いよいよ事業の主役であるAbemaTVが頭角を現してきました。
潮目が大きく変ったのが前期(2025年9月期)で、2024年に300作品以上を無料放送するという「アベマアニメ無料祭」を実施。1週間当たりのABEMAの利用者が2,000万を突破しました。アニメを軸とした視聴者層の獲得に成功したのです。
自社によるコンテンツの質向上にも力を入れており、「アポカリプスホテル」や「光が死んだ夏」、「ウマ娘 シンデレラグレイ」などのアニメファンを唸らせる良作を生み出しました。今期からはアニメスタジオCygamesPictures(サイピクに社名変更)をメディア&IP事業へと異動させ、横の連携を強化する体制へと改めています。
CygamesPicturesはもともと、「ウマ娘」や「プリンセスコネクト!」などの自社ゲームIPの影響力をアニメを使って拡大することに注力していた会社。2026年夏に放送予定の、講談社のモーニングに連載されていた「ワールドイズダンシング」のアニメ化を担当するなど、メディア&IP事業に移ったことで、企画の幅が広がっています。
サイバーエージェントがゲームを主軸とするIPの創出、影響力の拡大という枠組みを抜け出し、メディアからヒットIPを生み出そうとする体制へと軸足を移したことを物語っています。
ABEMAはアニメだけでなく、スポーツやドラマ、バラエティでもヒット番組を生み出しています。コンテンツに磨き込みをかけたうえ、営業力が強いこともあって1,000近いクライアントを獲得できたのでしょう。組織全体が上手くかみ合い、成長に向けて動き出した印象があります。
広告事業はAIによる付加価値の高いサービスを開発しているが…
メディア事業が好調な裏で、広告事業は振るいませんでした。第1四半期の売上高は前年同期間比2.7%減の1,146億円、営業利益は同27.2%減の43億円。広告事業の四半期単体の売上高は1,100億円付近で停滞しています。
広告事業はAIを活用した生産性とサービス力の向上に注力中。2025年10月にはAI動画による低価格動画、翌月にはAIを使った成果報酬型広告代理店「サイバーグリップ」、2026年1月には生成AIを活用してユーザーの検索意図を解析し、最適化を図る「CA-GAS」の提供を開始しました。サイバーエージェントはインターネット広告の広告文やクリエイティブなどをAIに任せて業務効率化を図る取り組みはすでに進めています。そこから一歩進んで、提供するサービスにも付加価値を乗せました。
難しいのはAIを使ったサービスをサイバーエージェントに依頼する理由が薄いこと。クライアントからすれば、内製化できてしまうからです。
インターネット広告におけるAIの精度は高まっており、特にGoogleのP-MAXで顕著。広告費を入れて初期設定を行えば、AIによる学習で日々の配信精度を自動で高めてくれます。多くの企業で、広告代理店に支払う10~20%程度の手数料がコストカットの対象になっているのです。
サイバーエージェントは業界でもいち早く初任給の引き上げに取り組み、営業人材の獲得に力を入れました。今後は広告事業よりもメディア&IP事業のサービス売り込みに力を入れるのではないでしょうか。







