ネクソンは、2025年6月24日から26日にかけて「Nexon Developers Conference 2025(NDC)」を韓国にて開催しました。NDCは『メイプルストーリー』『ブルーアーカイブ』『デイヴ・ザ・ダイバー』などを手掛けるネクソングループをはじめとして、第一線の開発者らが集まり知識の共有を図るカンファレンスです。
本稿ではAIを活用したゲームを中心に扱っているReLU Gamesのハン・ギュソン氏による講演、「次のゲームチェンジャーとしてのAI」を紹介していきます。
AI社会は、人間が本を読み「良質な質問」を模索する時代になる

ハン・ギュソン氏はReLU Gamesが「ディープラーニングを作った面白いゲームを作る」ことに挑戦しているデベロッパーだと紹介しました。「ゲームの中核的な面白さにディープラーニングがある」、そして「ディープラーニングでなければならない」という二つを達成しなければならないため、日々努力をしていると話します。

プレゼンでは試行錯誤の一環で、“AIで模索する新たな入力方法”としてひとつのジェスチャーに複数の意味を付与する操作方法のゲームが考えられたとします。魔法陣のような図形を描くにあたって各要素に意味を持たせ、組み合わせていくという内容です。
しかしこれは「何度も呪文を描かなければならない疲れ」などといった面から失敗したとのこと。次に取り組んだのは「音声を入力装置とする」ことで、こちらはある程度の成功を得て、ゲームのデモ版が制作できているといいます。

音声のみでゲームを行うという試みを活かして新たに作られたタイトルは『魔法少女☆可愛いラブリー★ずきゅんどきゅんばきゅんぶきゅん☆ルルピン』。プレイヤーが魔法少女となり、光の呪文を唱えながら戦うゲームです。



これは反響を呼んだタイトルで、同氏は依然として音声入力による慣れない疲れがありつつも、ドーパミンがそれを越えたと語ります。

さらにはAIとの会話をゲーム内の重要な要素として組み込んだゲーム『Uncover the Smoking Gun』も制作し始めました。同作には選択肢がなく、AIと会話して謎を解いていく推理ADVです。

ここで、推理ゲームにおいて「事件と関連のある会話」「事件と関連のない会話」のふたつがあるとします。ゲームにおいて「事件と関連のある質問」がされた場合“ゲーム内の要素”として対応できるものの、「事件と関係のない話」をされた場合は、ゲームと関連のない質問ゆえに予想のつかない返事に発展していくことが、問題でありメリットだとされました。

これによってAIはハルシネーション(AIが事実とは違う返事をする状態)をひき起こしやすくなります。この状態では「AIが、自分が知っていることを組み合わせて偽りの返答」をするため、「AIならではの雑談・虚偽申告」になります。つまりこの状況は「探偵が騙されずに自ら答えを探す」面白さになり得るのです。そのため、『Uncover the Smoking Gun』はハルシネーションを前提としたゲームだとされました。
ReLU Gamesはこれ以外にも『MIMESIS』というゲームを開発中。これは4人1チームで暗い地下を行動する協力型のゲームですが、4人中で1人だけ「プレイヤーに混じったAIがいる」という内容です。疑心暗鬼の中で、プレイヤーの行動や音声を真似るAIを探していくタイトルで、2025年第3四半期にリリース予定とのことです。
また、『Scavenger T.O.M: 終末の探検者』では地下に住むプレイヤーとして、地上の探査ロボット「トム」を操作して地上を探索していきます。「トム」にどこを探すかやりとりをしていくことで物資を集め、地下で生活していくのですが、この時「トム」から送られてくる地上の風景はイラスト生成によって描かれているといいます。

またハン・ギュソン氏は、AIは万能、あるいは万能でなければならないと誤解されている、とも続けました。しかしAIは完璧ではなく、どこか物足りなさがあるとします。これを補完するのはゲームクリエイターの仕事であり、同氏は続けて「人間はchatGPTより上でなければならない」と述べます。
人間の時代が終わると思う人がいるとしながら、これからの時代に重要となるのは「人間の質問の質」であると続けます。AIに的確な動作をさせるために、人間が本を読み「良質な質問」を模索する時代がくるという言葉で、セッションは締めくくられました。