バンク・オブ・イノベーションは『メメントモリ』の減衰を押しとどめることができるか【ゲーム企業の決算を読む】 | GameBusiness.jp

バンク・オブ・イノベーションは『メメントモリ』の減衰を押しとどめることができるか【ゲーム企業の決算を読む】

『メメントモリ』が大ヒット中のバンク・オブ・イノベーションが、2023年9月期通期の業績予想を発表しました。

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ゲームアプリ『メメントモリ』が大ヒット中のバンク・オブ・イノベーションが、2023年9月期(2022年10月1日~2023年9月30日)通期の業績予想を発表しました。

売上高は前期の9倍となる213億円、営業利益は50億円(前年同期は10億円の営業損失)を見込んでいます。8億円の純損失から一転し、35億円もの純利益を出す予想です。

しかし、市場の反応は冷静そのもの。同社の株価は9月25日に一時前取引日より16.7%高い5,880円をつけたものの、翌日には5,000円台前半で取引されています。『メメントモリ』のヒットが鮮明になった2022年11月1日には、16,300円の高値をつけていました。

バンク・オブ・イノベーションは実力を試される局面に入りました。

テレビCMで再成長させる目論見が外れる

バンク・オブ・イノベーションのPERは6.2倍です。PERは株価を1株当たりの純利益で除したもの。純利益の何倍まで買われているのかを見る指標で、値が高いほど割高であると判断されます。MIXIのPERが22.9倍、サイバーエージェントが68.0倍。グロース市場のモブキャストが7.9倍、アエリアが11.6倍などとなっており、バンク・オブ・イノベーションの市場の評価は高くありません。

その要因の一つとして、『メメントモリ』が想定よりも早く減衰していることがあると考えられます。

2023年9月期1Q(2022年10月1日~12月31日)の売上高は83億円、2Q(2023年1月1日~3月31日)が55億円、3Q(2023年4月1日~6月30日)が40億円でした。

決算説明資料より

会社の業績予想通りに着地したとすると、4Q(2023年7月1日~9月30日)の売上高は34億円となります。

バンク・オブ・イノベーションは、『メメントモリ』が想定外のヒットをした2022年11月14日に事業計画及び成長可能性に関する資料を公開しています。それによると、ゲームのリリースから数カ月間は課金高が減少するものの、広告費の先行投資を行うことで2023年春以降の拡大を目指すとしていました。

2022年9月期決算説明資料(事業計画及び成長可能性に関する事項)より

売上高の3割もの金額を広告費に充当し、売上高の拡大を行う計画でした。

同社は、2022年12月26日からテレビCMの放映を開始。大々的なプロモーションを行いました。結果として、広告宣伝費は1Qが売上高の25.3%、2Qが27.3%、3Qが27.5%でした。当初想定していた通り、売上高の3割程度で推移しています。

しかし、売上高は4Qまで下がり続けました。広告宣伝によって再成長させる青写真を描きましたが、その目論見は外れてしまったのです。

テレビCMの印象を一転させた『メメントモリ』

バンク・オブ・イノベーションは、ゲーム会社として極めて興味深い取り組みを開始しました。2023年6月30日にマーケティング支援を行う株式会社刀と、『メメントモリ』のプロモーション支援の契約を結んだのです。

刀と言えば、日本のマーケティング業界をけん引する重鎮の一人、森岡毅氏が設立した会社。森岡氏はP&Gでマーケティングの経験を積んだ後、USJの立て直しに着手。年間730万人程度だった入園数をおよそ3年で1,000万人超に引き上げ、4年後に1,200万人という記録を打ち立てた人物として知られています。


《不破聡》

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