1人1人を見てビジネスを…BIツール「Domo」でカプコンが描くe-Sportsとパッケージビジネスの未来 | GameBusiness.jp

1人1人を見てビジネスを…BIツール「Domo」でカプコンが描くe-Sportsとパッケージビジネスの未来

さまざまなファイル形式からなるデータを一元管理して視覚化するBIツール「Domo」。カプコンでは、それがe-Sports事業において活用されています。BIツールがもたらすe-Sports事業の未来について、同社のキーマンお二人に話をうかがいました。

市場 マーケティング
1人1人を見てビジネスを…BIツール「Domo」でカプコンが描くe-Sportsとパッケージビジネスの未来
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さまざまなファイル形式からなるデータを一か所に集約して視覚化することで、データに基づいた判断やアクションの即時実行を強力にサポートするBI(ビジネスインテリジェンス)ソリューション「Domo」。世界中の大企業での採用実績を持つ同ツールはゲーム業界にも波及し、カプコンでは、成長戦略の推進とグローバルでのデジタル変革に向けて全社での導入が進められています。一見データの利活用とは少し縁遠くも感じるeSports統括本部が旗振り役となっているということで、「Domo」導入の経緯と、それによって得られるソリューションとはどのようなものなのかインタビューを敢行しました。カプコン執行役員でeSports統括本部 統括副本部長の赤沼純氏と、同部の池田ひかる氏が描くe-Sports×データの未来図とは……。
[聞き手:宮崎 紘輔]

――お二人が所属される"eSports統括本部"は、どのような業務が中心となっているのでしょうか。

赤沼eSports統括本部は、e-Sportsをビジネス化して当社の中・長期的な柱のひとつに据えることを目的とした部署です。具体的には、2014年から行っている「CAPCOM Pro Tour」の運営や、当社の『ストリートファイターV アーケードエディション』を用いた「ストリートファイターリーグ powered by RAGE」の戦略企画や運営などを手がけています。

統括本部は東京にありますが、大阪にある開発チームとの連携も必要になります。また、グローバルに大会やイベントを開催するときは現地法人とも連携を取っています。私の主な職務は、e-Sportsが絡んだ企画に携わりつつ、そうしたイベントをどのようにプロモーションするか、そしてe-Sportsをビジネス化してゲームそのものの売上をどう伸ばしていくか……というものになります。

池田私はデジタルマーケティング部に所属しており「Domo」の全社的な導入を進めています。ゲームソフトのパッケージ/デジタル販売データの統合、海外の販売会社のデータ統合をしつつ、当社による動画やSNSの公式チャンネル、Webサイトのトラッキングなどのデータも一括管理できるようにしているところです。

赤沼こうしたさまざまなデータをまとめ、管理できるようにした方がいいという動きはこれまでも部署単位ではあったのですが、全社横断で本格的に導入が進められるのは今回が初めてです。


――数あるBIツールの中から「Domo」を選んだ理由はどのようなものだったのでしょう。

赤沼私はこれまでにさまざまな業界に所属してきましたが、どの業界でも「Domo」はよく使われています。その理由のひとつとしては、「Domo」が提供しているAPIの豊富さにあると思います。

当社は売り上げの海外比率も大きく、米国だけでなく欧州にも販売子会社を構えておりますが、各地域の販社ではデータのソースやファイル形式が統一されていないのが現状です。その点、Domoは幅広いファイル形式に対応していますので、データの一元管理を実現するには「Domo」が最適だろうという結論になりました。

――一見、e-Sportsとデータを掛け合わせるというのは少し距離がありそうに感じるのですが、カプコンでは「Domo」を具体的にどのように利用しているのでしょうか。

赤沼まずは手始めに、大会やイベント会場への来場者数、Web配信での視聴者数などを管理しています。こういった数字をExcelで管理・集計するのは非効率的ですので、もっと管理しやすくなるセットを作って効果検証に努め、開発チームとも数字を共有しています。

ゆくゆくはSNSやWebサイトへのアクセス解析、当社がTwitchなどで配信する動画の視聴データなども一元化し、それらと販売データをきちんと紐づけたうえで、どういうアクションを取るとソフトがどのように売れるのか、検証しやすくしていくつもりです。

私が経験してきた他のエンタメ業界では、このようにデータを横断して見る検証は当たり前のように行われています。たとえば音楽業界であれば、どの会場でライブを開催するとどのようなユーザーが来場してくれるのか、あるアーティストの全国ツアーを企画するにあたって、有効なホールはどこなのか、といったことまでデータから導き出すことは決して珍しいことではありませんでした。

――パッケージが未だに売上の多くを占めるゲーム会社では、そうした動きがまだ浸透しきっていないようにも感じられます。

赤沼流通と小売という、パッケージを売るためのビジネススキームがしっかり根付いていることはもちろんですが、デジタル配信がこの数年で一気に普及した音楽・書籍と比較すると、やはりゲームは扱うデータの容量が大きいことが、他のエンタメと比較してデジタル配信の普及スピードを緩やかにさせたと考えています。デジタルであれば集約して管理できるデータが散在することで、収集したデータを分析し、意思決定や企画の立案に役立てる、データドリブンな施策にスピードが出なかったのではないかなと。

2005年頃の私はデジタル音楽ビジネスを手掛けていましたが、当時「あと15年くらいしたらビデオゲーム業界もデジタルに移行しているかもね」と話したりしていました。もっとも、自分がその現場にいるとまではまったく想像していませんでしたが……(笑)。

――御社で「Domo」を全社導入するにあたり、e-Sportsの部署にその白羽の矢が立ったのはどのような理由によるものですか。

赤沼売上規模の大きいコンシューマゲーム部門にいきなり新しいやり方を乗せる前に、まず新規ビジネスをデータドリブンで構築して仕組みと体制を整えた方がよいだろうと判断しました。そうして、他の部門にも広げやすくするのが狙いです。

池田ただ、『ストリートファイター』チームや、マーケティング部門とはすでに連携しています。Twitchのカプコンチャンネルであれば、どのようなユーザー層にどのくらい見てもらえているか、視聴をやめるのはどんな内容のときか、何をしたらまた視聴してくれるのか。YouTubeでの動画や配信であれば、説明欄の購入リンクを付けたとき、視聴者のうちどれくらいがクリックして購入してくれるのかなどを視覚化しています。

――ユーザーたちのプレイ傾向やプレイ内容などもまとめておられるのでしょうか。

赤沼そうですね。ゲーム内データも取りまとめています。『ストリートファイター』シリーズですと、長くとも数分間の対戦が世界各地で行われていてデータもとても膨大なものになっています。そこから使用されているキャラクターや、必殺技のコマンド入力の精度などに関して、データを元に話ができるようになっています。

実際にカプコンで利用されているDomoのスクリーンショット。キャラの使用率が一目で分かります

当社全体が、分析したデータに基づき判断・アクションを起こしていく、データドリブンになる未来はもう見えています。ただ、ビデオゲームは優秀なクリエイターの方々が各々の感性を形にしたゲームを制作し、それが受け入れられることで利益につながっていることは見落としてはいけないなと。そこにデータドリブンの概念を持ち込み過ぎると、最も尊重されるクリエイティビティにも悪影響が出てしまいますし、データをしっかり活用する部分と、クリエイティブな感覚を重視する部分をしっかり切り分けたいと思います。

――ゲームの方向性やコンセプトに関わることをデータ主導で決めるようなことはしないということですね。

赤沼もちろん、参考になることはあると思いますけどね。「Domo」を活用することで、TwitterなどSNSのユーザーのツイートもリアルタイムでしっかり集めることができるんです。例えば「ここってバグじゃないの?」というようなツイートが増えれば、アラートを飛ばして即座に反応できるような体制作りにも活かせるとお客様の満足度もさらに高くなるのではないかと思います。

――それでは最後に、現在のe-Sportsシーンをどのように見ているか、そしてカプコンとして、どのようにe-Sportsと向き合っていくかを教えて下さい。

赤沼今はまさに“ブーム”のまっただ中にあると認識しています。ですが、ブームというものは得てして一過性のものですので、それは見方を変えれば今後は騒がれなくなるかもしれないということでもありますよね。当社はe-Sportsにビジネスとして携わっていきますので、フィジカルなスポーツのプロリーグと同じように、周囲に踊らされることなくユーザーのみなさんとしっかり向き合い、中・長期的な目で市場を形成していかねばならないと考えています。

また、これはe-Sports事業にかぎった話ではありませんが、ビジネスモデルをパッケージからデジタルに移行するなかで一番大きいのは、ユーザーのみなさんがどのような方たちであるかが分かりやすくなったことです。小売りを介するパッケージよりも、感覚としてはBtoCに近くなっています。

開発でも販売でもマーケティングでも、ユーザーのみなさんの顔を見ながらビジネスするというのは本来あるべき姿であり、それを実現するために必須となるのが、「Domo」というBIツールであると考えています。

――ありがとうございました。
《蚩尤》

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