マーケターも“個”の時代がくる―マーケティングスタジオONNEが見据えるマーケターの新しい働き方 | GameBusiness.jp

マーケターも“個”の時代がくる―マーケティングスタジオONNEが見据えるマーケターの新しい働き方

アプリゲームのマーケターが集まる「ONNE(ワン)」。それぞれに異なるバックボーンがありながら、共同でプロジェクトにあたるマーケティング集団が2018年に誕生しました。設立の狙い、新しい働き方、そして今後のアプリマーケティング動向は……

市場 マーケティング
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スマートフォン向けゲームやアプリなどのマーケターが集う「ONNE(ワン)」をご存知でしょうか。「Always Stand by ~経験豊かなマーケターをあなたのチームに~」を掲げ、クライアントの要望に応じた最適なチームを編成して支援するマーケティングスタジオです。ONNEを設立した経緯と、目指すべき将来のビジョンとは?五十嵐規裕氏、佐藤基氏、武内一矢氏、竹林拓氏(以下、敬称略)にお話をうかがいました。




――まずはみなさんの自己紹介と簡単な経歴を教えてください。

五十嵐ONNEの共同代表を務めている五十嵐です。株式会社TUUUBEの代表取締役もしています。PR会社の出身で、大手クライアントから中小企業までさまざまな領域のプロモーションやコミュニケーションのお手伝いをしていました。その後、デジタル領域に興味を持ってKLabにジョインし、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』や『BLEACH Brave Souls』のマーケティングに携わってきました。

2015年からは株式会社バンク・オブ・イノベーションでマーケティングの責任者を務め『幻獣契約クリプトラクト』や『ミトラスフィア』の立ち上げに関わりました。ちょうどこの頃にYouTuberなどを起用したインフルエンサーマーケティングにも注力しており、それがきっかけでTUUUBEを設立しました。今はYouTubeチャンネルのプロデュースやマーケティング支援をメインに行っています。

ONNE共同代表・五十嵐規裕氏


佐藤同じく共同代表の佐藤です。株式会社ディー・エヌ・エーに7年間在籍し、マーケティングに携わってきました。フィーチャーフォンからスマートフォンへ切り替わっていくいい時代をいいポジションで経験できたと思っています。ディー・エヌ・エーでは数えきれないほどのタイトルに関わりましたが、ひとつ代表的なものを挙げるなら『逆転オセロニア』でしょうか。累計2000万ダウンロードを超えるタイトルに成長しており、マーケティングで一定の成果を出せたと思います。

よりフリーな立場で業界に対してマーケティングの貢献ができればとと思い、今年から独立して株式会社MOTTOを設立しました。今はマーケティング支援業務のほか、マーケター向けのセミナーや勉強会を開催しています。

ONNE共同代表・佐藤基氏


武内ONNEのパートナーの武内です。自分はモバイルゲーム業界にずっといたわけではなく、ソーシャルメディアを中心としたプロモーションやコミュニティ作りなどが主戦場です。元々はオウケイウェイヴでマーケティングやSNS周りを担当していました。その後、基さんに面談してもらったりしてディー・エヌ・エーに移り、ゲーム事業におけるソーシャルメディアチームの立ち上げや『逆転オセロニア』のペルソナ設計に携わりました。

五十嵐さんや基さんと同じく2018年からは独立して株式会社NAVICUSを設立し、モバイルゲーム系にかぎらず、家電メーカーなどとも組んでマーケティングやコミュニケーション戦略策定などをさせてもらっています。

ONNE パートナー・武内一矢氏


竹林武内さんと同じく、ONNEのパートナーの竹林です。iモードの全盛期にドコモと電通のジョイントベンチャーであるD2Cにジョインし、様々なモバイル向け新規事業の立ち上げに携わりました。同社でスマートフォン向け新規事業の立ち上げにも携わり、その後はD2Cの子会社である株式会社D2CRで2年間役員を務めました。今はその経験を活かし、スマホビジネスに携わる会社を10社近くアドバイザーをしています。具体的には、リード獲得などの営業戦略的な部分からブランディング構築、それを実現する組織作りなどに関してですね。

ONNEのパートナーを務める竹林拓氏


――モバイルゲームにかぎらず、さまざまな分野のスペシャリストが集まっているわけですね。ONNEはどのような経緯で設立されたのでしょうか。

五十嵐僕らはみんな独立しているのですが、一人~数人でできる仕事にはどうしても限界があります。でもクライアントが抱いている課題は企業ごとに異なるわけで、それがいつもこちらの得意分野とはかぎりません。それならば、ONNEという様々な分野のスペシャリストが集まる箱を作ってチームでクライアントと向き合えば、それぞれの得意分野が活かせより大きな成果が出せる……と僕と基さんで話していたのがきっかけです。

竹林僕は3年ほど前に独立して、今のONNEのようなことを一人でやっていましたが、プロジェクトの立ち上げから支援する場合は、結局フリーで力のあるメンバーを集めることから始まることが多かったので、チームで事に当たる重要性は切実に感じていました。

武内僕らはいわば"専門領域を売る"ようなものですから、プロジェクト全般を一から十まで誰にも負けないように一人で面倒見られるかというと、さすがにそれは難しい。

佐藤でも、この案件は自分向きではないという時でも、ONNEの中で他の適任者をすぐ挙げられるのは大きいですね。

――ONNEは法人化しておらず、LLP(Limited Liability Partnership。有限責任事業組合)の形態を取っています。これにはどのような理由があるのでしょうか。

佐藤会社にしようかという議論はもちろんありました。たとえば独立した一流クリエイターたちが集まって起業するというケースはめずらしくないですよね。ですがその一方で、竹林さんは今自分の会社で事業を作ろうとされているし、僕も将来的にそうできたらいいなと考えています。個々人で取り組むこと、チームで一緒に取り組むこと。この2つを両立させることができる最適な形はないかという議論の末に出した答えがLLPという選択肢でした。

法人化すると入りづらいし、抜けづらくなる……法人化にはメリットもあるのですが、僕らのように個々人でもやりたいことがあるときは足かせになる可能性もあります。会社ではないけど、ある意味会社のように……という新しい形を指向してこうなりました。僕らのようにフリーランスに近い形で動く人間のニーズが高くなっているというのは、マーケティング界隈からもひしひしと感じますし。

竹林さまざまな経験を積んだ人がフリーになっていくと、企業としても外から経験者を連れてきた方が確実だ、となりますからね。マーケターも個人の時代がきたのかなと思っています。

――竹林氏以外のお三方は今年から独立したとのことですが、それでどのような変化がありましたか?

武内いっしょに働く人を選べる環境になったと感じますね。企業に属していても事業レベルでならある程度は選べますが、人単位で選ぶことはそうそうできませんから。やりたい人とやりたい仕事ができる……このスタイルは今後価値が出てくるのではないかと思っています。

五十嵐ゲーム業界以外のクライアントと仕事をすると、ゲーム業界では当たり前のことがまだ浸透していなかったりして、いろいろな知識を得られるようになりましたね。

佐藤僕は長くディー・エヌ・エーにいてそこでの"アタリマエ"を身に着けましたが、独立したことでそれとは異なるやり方をインプットできていると感じています。。マーケティングの答えはひとつではありませんから。

――ONNEの力を借りることで、社内だけでは得難いそうした知識が生かされるということですね。

佐藤加えて、マーケティングの体制、リソースに課題を持っている会社がとても多いと感じています。マーケティングの重要性が高まった結果、マーケターの業務範はとても広くなっています。リリース前はもちろん、リリース後も常に忙しい。
さらに、次の新作タイトルが控えており、その人員が全然足りない。結果、外部の経験豊富な人の力も借りたいニーズが高くなっていると感じています。ただ、社内にノウハウも蓄積したいし、社内人材も育成しなければならない。ゆくゆくは内部の人員だけでできるように、人材育成も手伝ってもらえれば……というニーズもありますね。

――ONNEが行う支援には、マーケターの育成も含まれると。

武内「あわよくばウチの社員も育ててください」とか「何人をあなたの下につけますよ」というような、育成を期待するケースもめずらしくありません。

五十嵐ONNEでお手伝いした仕事の中でチームの責任者になって、その会社のメンバーを教育しながらマーケティング業務がまわるように進めていくという案件もありましたね。

佐藤そのようなニーズに応えつつ、僕ら一人ひとりの価値観や目標も追いかけられる環境作りを目指しています。副業ならぬ"複業"というところでしょうか? まだ設立したばかりで、これからの話ではありますけどね。

――ONNEを設立して、反響や問い合わせはどの程度ありましたか。

五十嵐ONNEのオフィシャルサイトでフリーチャットというサービスを提供しており、Facebookチャットで気軽に相談できるようになっているのですが、すでに100以上のアクションがありました。モバイルゲーム業界はもちろん、それ以外の業界からもお問い合わせをいただいています。僕たちのスタイルに新しい働き方を見出してくれているのかなととらえています。

佐藤ここまでの反応をいただけるのは、想定以上でした。フリーチャットは一部にbotを使用していますが、最終的には僕らがしっかりした回答をしていますのでご安心ください。



――さまざまな分野のスペシャリストが集うONNEから見て、今のモバイルゲームのマーケティング事情をどう思われますか。

五十嵐ひとつ挙げるなら、新規ユーザーの獲得を延々と続けるのは費用対効果がよくないということですね。今はそれよりも、既存ユーザーにどれだけ長く楽しんでもらうか、遊んでいたけど離れてしまった人に戻ってきてもらうにはどうすればよいかに注目しているマーケターが多いです。となると、一定数のユーザーを確保できたあとは、新規ユーザーの獲得よりも、コミュニティ作りの手腕が重要なソリューションとなりえます。

佐藤CPI(Cost Per Install。アプリケーションをダウンロードし、インストール~起動するまでの単価の指標)はもちろん大切ですが、それだけではヒットに導けない時代になっています。これからは感情面や生活に寄り添ったエンゲージメント(企業やその商品、ブランドと消費者の深い関係性のこと)が重要になります。ですが、これはとても難度が高い話でもあります。CPIと比べると、数値化するのが難しいものですし、いままでの効果測定だけでは可視化できないものでもあります。

武内「(このゲームの)ファンを作りたい」というご相談はよくいただきますが、これからはファンよりも"当事者"をいかに作るかが大切です。「流行っているアプリだからとりあえず遊ぶ」と「このゲーム・運営を応援したい、いっしょにやっていきたい」ではユーザーの質は大きく異なります。そのためには運営の方からユーザーに対し「これからあなたたちといっしょにやっていきたいんです」と発信し、巻き込んでいくことです。これはマーケティングだけではなく、そのゲームのUXがシンプルにおもしろいものであることも重要ですが。

佐藤ゲームのプロモーション手法は一般化しましたので、どこも同じ手法をやっています。だからこそ、今はもうそれだけでは伝わらないし、人気が出ない。これからはいかにゲームの面白さを深掘りしてその魅力を伝えていくかが大事だと思います。

――とはいえ、事業会社のマーケティングにおいては、依然としてどれだけ安くユーザを獲得できたか最大の評価基準になってしまいがちだと思います。そうした風潮は変わっていくと思われますか?

佐藤そう思います。CPIがいくら安くても、継続率が低ければヒットにはなりませんから。CPIだけを追い求める時代はもう終わり、これからはユーザーとの関係性をいかに築いていくかですね。

武内自分が得意とするコミュニティに関する領域は、とりわけ数値化しづらい分野ではありますが、見えにくいのと効果がないのとは別の話です。SNSでキャンペーンを打ったら、そのSNSを利用しているユーザーの課金率は上がったか? ネットでバズったら、どれだけ新規ユーザーを獲得できたか?やる価値があるかないかを判断できるところまでは、数値化できるようになる必要があると考えています。

佐藤よくマーケター仲間で話しているのが、今は情報が次から次へすぐ流れていってしまう時代だということです。だからこそ、ゲーム、Twitter、YouTube、abemaTV……と、なんでもできるスマホの存在感がより増しています。これからは、複数の手段を組み合わせて"刺さる"情報を発信していくマルチチャンネルの時代がますます加速していくと思います。

ゲームが楽しい、公式Twitterが楽しい、アニメが楽しい……そうした"面白い"をいかに作り出すかがマーケティングです。もちろん作り手のリソースには限りがありますから、どこを深めていくかしっかり狙いを定めるのが大切です。さまざまなクライアントを見て知見を深めてきたきた僕らなら、そのお手伝いができます。また、外部の人間だからこそ、社内のしがらみに縛られずプロジェクトに客観的な評価を下せることもあるかと思います。

――深い知見を持ち忌憚のない物の見方ができる即戦力のチームを提供する。それにより企業はプロジェクトの結果を出しつつ、社内の後進育成もできる……それがONNEの持つビジョンであり、ひいてはクライアントにもたらされるメリットとなるということですね。本日はありがとうございました。
(聞き手・宮崎紘輔)
《蚩尤》

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