【GDC2011】任天堂・岩田聡社長が見せた覚悟と開発者へのメッセージ | GameBusiness.jp

【GDC2011】任天堂・岩田聡社長が見せた覚悟と開発者へのメッセージ

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任天堂の岩田聡社長は現地時間2日の午前9時よりGame Developers Conference 2011の基調講演を行いました。
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任天堂の岩田聡社長は現地時間2日の午前9時よりGame Developers Conference 2011の基調講演を行いました。

その日本語の全文は任天堂公式サイトに掲載されていますので、ここでは紹介しません。また、保存されたライブ映像も閲覧できます。ここでは、せっかく会場に居ましたので、所感を述べさせていただければと思います。

「世界最大のゲーム開発者向けカンファレンス」という枕詞を自分自身も幾度となく使ってしまうのですが、Game Developers Conferenceはまさに開発者のための場です。今年で25周年を迎え、2万人近い来場者が世界中から訪れる規模にまで成長しましたが、どことなく、始まりはそうであっただろう、ちょっとした開発者の集まりの雰囲気も残します。会場に居る誰もが一緒に戦う戦友、そのような空気があります。

例えば2日夕刻に行われた「Game Developers Choice Award授与式」。開発者が選ぶゲームのアワードです。いわば、去年一番頑張った同僚を褒める場です。その会場は温かいのです。まるでアカデミー賞のような派手な演出が立派な発表会なのですが、笑いに満ちて、どこか身内な雰囲気。ゲーム開発が夢と希望に溢れたベンチャーな仕事であることを思い返させるようです。



遡ること9時間。同じホールに岩田氏は立っていました。3度目のGDCでの基調講演。岩田氏はゲーム業界をリードする任天堂の社長ではなく、ゲーム開発コミュニティの一員としての顔になります。そしてゲームが直面している課題について正直に語りました。その表情は私には苦悩に見えました。会場の空気もどことなく重く張りつめた感じを受けました。

奇しくも岩田氏が基調講演を終えたその頃、隣の会場ではアップルのスティーブ・ジョブスがiPad 2をお披露目していました。その見方への評価はどうあれ、「安価で遊べるスマートフォンのゲームやソーシャルゲームの攻勢で任天堂は苦境に立たされている」という論調が少なからずあります。岩田氏が語った課題の最後は正にその問題で、「価値の低いゲームが自分達の質の高いゲームに価格下落圧力として働く」「どうすれば高い価値を保てるか」というものです。

「職人魂」が失われたこと、「タレント」を育てられなくなっていること、それは誰もが同意する問題です。しかし最後の一つを語るには重い覚悟があったはずです。それを語れば、「任天堂はイノベーションのジレンマに陥っている」もしくは「アップルとの戦いに苦戦を強いられている」そういう表面的な評価を受ける可能性があります(そして現にそういう論調のニュースは多数あり)。しかし当然岩田氏は覚悟の上だったはずです。発売したばかりの3DSにネガティブな印象があるかもしれない、あるいは、株価にも影響があるかもしれない。それも承知の上です。

E3のような華々しい発表会ではありませんでした。会場の空気は重く、岩田氏の一言一言を噛み締めていました。柔らかな物腰の中には迫力がありました。常に控えめな態度をとる任天堂ですが、代償を払ってでも伝えなくてはならないという思いが感じられました。ゲーム開発者がすべきことは―――「自分の情熱を信じてください。自分の夢を信じてください。」ということです。

「Content is King」岩田氏は講演中、何度かこの言葉を口にしました。ビジネスは大事です。開発費用が回収できなければ次はありません。ビジネスとしてのゲームはここ数年厳しさを増しています。しかしそうした時だからこそ、ゲームの原点である「イノベーション」と「誰もが体験したことのない驚きを提供すること」に立ち返らなくてはなりません。ソーシャル、モバイル云々ではありません。競争とは関係がありません。「ゲームは不要不急なものだ」と任天堂 中興の祖である山内溥相談役は言いました。だから生き残りの鍵は常に、魅力的なものを提示できるか否かなのです。情熱を信じ、夢を信じることこそ危機を突破する最良の道だと岩田氏は言ったわけです。それは世界中の悩めるゲーム開発者を前にしたスピーチとしてこの上ないものだったはずです。

(Photo by GDC Official)
《土本学》

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