
2026年10月21日、SpiralAIはエンターテインメント領域に特化したオーケストレーションモデル「SpiralLLM」の提供開始を発表しました。「SpiralLLM」は、2026年8月25日に提供を開始したコーエーテクモゲームスからライセンスを受けたAIチャットRPG『RyzaChat:AIライザと創るあなただけのひと夏の夢物語』などの開発を通じて生まれた技術基盤です。
AIキャラクターの会話生成にとどまらず、世界観参照(RAG)、長期記憶、関係性把握、パラメーター(ステータス)管理、物語進行、整合性検証といった複数の処理を統合する「AIゲームマスター」として機能します。
AIライザ開発から生まれた「AIゲームマスター」の仕組み
AIキャラクターとの会話をゲームとして楽しむには、自然な受け答えだけでは足りません。プレイヤーの行動によって物語が変わり、キャラクターが以前の出来事を覚えている。それでいて、原作の世界観やゲーム内のルールも守られている必要があります。

そこでSpiralAIが取り入れたのが、TRPG(テーブルトークRPG)の進行役になぞらえた「AIゲームマスター」という仕組みです。ひとつのAIにすべてを任せるのではなく、会話や記憶、ゲームの状態管理、物語の進行など、それぞれの役割を担う専門AIや処理を組み合わせ、ゲーム全体を制御します。
開発者が「SpiralLLM」を呼び出すと、内部の「AIゲームマスター」が場面や目的に応じたモデルやエージェントを選び、必要な情報や指示を与えて結果をまとめます。必要に応じて別のAIを呼び出したり、前の処理に戻って内容を確かめたりしながら、回答を組み立てる仕組みです。同社は、これらの機能群について特許を申請しています。
世界観を守り、物語を動かす6つの機能

「SpiralLLM」は、AIライザとの冒険を楽しめる『RyzaChat』にも活用されています。主な機能として、次の6つが挙げられています。
世界観を壊す入力の検出:プレイヤーの発言から意図を読み取り、世界観を壊す入力やプロンプトインジェクションによるチート行為を検出します。こうした入力をキャラクターへの指示から除外することで、設定の崩壊を防ぎます。
専門AIによる長期記憶の管理:長期記憶を担当するAIが会話の記録を管理し、その場の応答に必要な情報だけを取り出してキャラクターAIに渡します。会話が長くなっても、数十ターン前の出来事を踏まえたやり取りができる仕組みです。
キャラクターへの指示を毎回組み立て直す:集めた情報をもとに、キャラクターAIへの指示を毎回ゼロから構築します。過去のやり取りに引きずられず、自由に変化する物語にも柔軟に対応できるようにします。
専任AIによる判定と物語進行:バトルの勝敗やアイテムの獲得は、プレイヤーの発言だけで決めず、専任AIが会話の流れを踏まえて判定します。何でも思い通りになるわけではないゲームとしての手応えを保ちながら、物語進行を担当するAIが展開を深めていきます。
原作設定との整合性確認:原作の設定を網羅的に反映し、プレイヤーの行動によって変化する世界の状態も管理します。応答を返す前には、原作設定やこれまでの会話、ゲームの状態と矛盾がないかを確認し、必要に応じて修正します。
会話に合わせたモーション指示:決まった動きを単純に出し分けるのではなく、会話の文脈に応じてAIがキャラクターのモーションを設計します。その組み合わせは数十万パターンに及ぶとされています。
また、各機能を専門AIが分担する構成のため、新しいモデルや専門AIを取り入れながら、作品ごとに求められる品質や処理速度、コストを調整できる設計となっています。
なお、SpiralAIは『RyzaChat』の開発にあたり、使用した原作素材やクリエイティブに応じて、IPホルダーとクリエイターにロイヤリティを還元する仕組みを導入しています。
今後はRPGに加え、恋愛、育成、日常伴走型コンテンツなどへの展開も目指すとしています。






