
2026年9月17日から21日にかけて、千葉・幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ2026」。本稿では、17日に開催されたフォーラム「異業種からの挑戦~サンリオ、PARCO、東映が語るゲームパブリッシング事業の狙い」のレポートをお届けします。
本セッションでは、サンリオ デジタル事業本部 本部長の濵﨑皓介氏、東映 上席執行役員 事業推進本部長 新規事業開発部長の吉元央氏、パルコ ゲーム事業開発部 部長の西澤優一氏が登壇し、日経Gaming編集長の平野亜矢氏がモデレーターを務めました。
サンリオは2026年4月21日にSanrio Gamesを、東映は奇しくも同日に東映ゲームズの始動を発表。そしてパルコも、2社に先駆け2025年8月19日にPARCO GAMESの立ち上げを発表しました。それぞれ異なる強みをもつ3社がなぜ今相次いでゲーム事業への参入を発表したのかが、パネルディスカッション方式で語られました。
グローバル展開、ファンダム拡大、自社IP保有…ゲーム事業参入の経緯は
まずは、各社の簡単な自己紹介が行われました。
サンリオは、ライセンス事業、グッズ展開、LBE(Location-Based Entertainment/ある場所に赴くことで体験できるエンターテインメントの総称。ここではテーマパークの展開などを意味する)を土台に、デジタルゲーム、映像、スポーツなどを積み上げることでさらにファンダムを拡大する「サンリオ灯台構想」を掲げています。
同社が特に重視しているのは「サンリオキャラクターへの原体験」。小さいころにどのサンリオキャラクターとどのような形で触れ合ったか(好きになったか)のきっかけはユーザーが大人になってからも大きな影響力を持つとし、近年はデジタルデバイスやゲームの重要性もひしひしと感じていたといいます。


映像作品の制作事業で知られる東映は、IPをゼロから創出できるだけでなく、それを東映グループのみで放送・配信、マーチャンダイジング、イベント実施、海外展開など縦横無尽に展開できるのが強みです。同社は「映像以外のチャンネルからIPを創出してもよい時期にさしかかっている」「プラットフォームを通じて世界中にIPを届けられるゲームは、同社が近年強く意識しているグローバル展開にも適う」ことがゲーム事業参入の理由であるそうです。


パルコは商業施設のイメージが大きいですが、その施設を活用して演劇、音楽、ギャラリー、コラボカフェなどを展開し、さまざまなカルチャーに寄り添ったビジネスも展開しています。こちらも中期経営計画のキーワードとしてIPとグローバル戦略を掲げており、「近年勢いを増し続けているゲームカルチャーに対してもっとできることがあるのではないか」との思いから参入を決断しました。
また、パルコは2019年11月22日に、渋谷パルコ 6階で任天堂の直営オフィシャルストア「Nintendo TOKYO(ニンテンドートウキョウ)」をグランドオープンしました。同店は客足が増える週末には入場制限がかかることもあるほどの盛況ぶりで、国内の任天堂ファンのみならず、海外のファンも連日大勢訪れています。同店にゲームが持つ力を教えられたというのも、参入の一因であるようです。


既存のファンにとどまらないターゲットユーザーの選定
サンリオはかねてよりライセンスアウトを行っており、これまでに数多くのゲームがリリースされてきました。そんな同社が、自社パブリッシングに乗り出した理由はなんなのでしょうか。そう問われた濵﨑氏は「今のゲーム市場は、サンリオが直接動くことで獲得できる分野がある」「より多くのユーザーを獲得したい」という思いからであると言及。Apple Arcadeを皮切りにコンソール機でも展開した『Hello Kitty Island Adventure』が非常に好評を博したことも、ゲーム事業参入を後押したそうです。
また、ゲームはAAAとインディーの中間の規模にあたるミドルタイトルを展開していくそうです。AAAほど極まったゲーム体験を届けるわけでもなければ、インディーほどに作り手の作家性を出すわけでもないミドルタイトルは近年ペイしづらくなっている現状がありますが、そこにサンリオIPという付加価値を上乗せすれば勝機があるとにらんでいます。

一方の東映ゲームズは、『HINO』『DEBUG NEPHEMEE』『KILLA』などのオリジナルタイトルのパブリッシングを手がける形でゲームをリリース予定です。東映は「仮面ライダー」「プリキュア」シリーズなどの強力なIPで知られますが、同社が既存IPに頼らない決断をしたのは、既存IPのファンダムにゲームを届けるのではなく、より幅広いユーザーに東映というブランドを知ってもらうこと、好きになってもらうことから始めるためであると吉元氏は語ります。IPの転用を否定しているわけではないので、当初の目的が達せられたと判断された暁には既存IPの投入もありえるとの見方を示しました。
パルコはサンリオ、東映とは異なる視座を持ち、ターゲットの選定にあたり「Not Play Only」というキーワードを重視しているそうです。ゲームをプレイするだけでなく、アパレルやアートワークなどの形で、ゲームをカルチャーのひとつとして楽しむ人、配信者やストリーマーを介してゲームに親しみ、グッズなどにも反応を示す人に、ゲーム以外の方法でもアプローチしていく構えです。
ゲームを起点とする今後のチャレンジや目標は
3社に対して今後のチャレンジや目標が投げかけられると、パルコの西澤氏は「パルコのオリジナルIPをゲームとして展開すること」と回答。まずは確固たるIPをゲームで展開し、これまでゲームカルチャーに寄り添ってきた同社の強みを生かしてアニメ、映画などさまざまなメディアでグローバル展開できればと考えているようです。

東映も「まずゲームIPを創出し、しかる後にグッズやイベントなどでリアルでの接点を増やしていく」のが目標であるとのこと。同社はこれまでに数多の大ヒット映像作品を生み出し、それらがゲーム化されてきましたが、「映像作品起点→ゲームにも展開」ではなく「ゲーム起点→映像作品にも展開」できるIPの創出を狙います。
サンリオは「グッズを購入すると、そのグッズと同じアイテムがゲーム内でも獲得できる」というような、グッズとゲームを連動させる選択肢を考えていると言及。また、「ゲーム用に制作された高品質な3Dモデルやアセットをイベントでも活用すれば、イベントの体験価値も同時に上げられる」としました。
自社の強みを生かした体制づくり
これまで、ライセンスアウトする以外にはゲーム事業との縁は薄かった3社は、ゲームIPを創出できる体制づくりをどのように行ったのでしょうか。パルコは「キャリア採用」と「社内でゲーム好きな社員を募る」の二段構えで少しずつ体制づくりを進めているとのこと。また、ゲームのパブリッシングはリーシングと似ている面があるというパルコならではの視座が明らかにされました。
リーシングとは、商業施設などがテナントを募集する客付け業務のことです。リーシングで大切なのは“施設が入ってほしいと思っているブランドが何を好み、何を望んでいるかをしっかり見極めたうえで交渉する”ことで、リーシングで培われた審美眼はお目当てのゲーム開発者や開発チームにパブリッシングをもちかける際にも生かされているそうです。
東映はゲームのパブリッシングを始めたことを少しでも多くのゲーム開発者/開発チームに知ってもらうべく、国内・海外を問わず、さまざまなゲーム関連イベントに足を運ぶことからスタート。当初は「あの(映像制作でおなじみの)東映がゲームを?」という反応も多かったものの、最近では「今回のイベントでも東映が来ている/出展している」と認知が広がっているとのこと。また、数多くのゲームに直接触れるなかでどの作品が映像化の原作として適しているかを検討する際は、映像制作の第一人者である同社の強みを生かせているとも感じているようです。

サンリオは、Sanrio Gamesを立ち上げる前にゲーム事業をどのように始めればよいかを念入りにヒアリングしたところ、「ゲームは1本だけ作ってそれが当たるという事業ではない。利益を出すためには6本程度の制作・リリースは見込んでおくべき」との知見を得たそうです。その知見を元に向こう3年で10タイトル程度をリリースできる計画を策定し、無理なく実現できるようチームを拡大しています。現在は中途採用を含め、30名ほどの規模になっているそうです。また、サンリオは社員が「熱心なサンリオファン」でもあることから、開発中のゲームを試遊する際は(チーム外の)社員の力も借りているそうです。
新規事業で大切なのは「自社の強みを橋頭堡にする」こと
セッションでは最後に、3社の今後の展望や取り組みが語られました。濵﨑氏は、ミドルタイトルにトライしていく旨をあらためて強調。プロデューサーのビジョン、開発会社が作るゲーム体験、サンリオキャラクターの世界観がうまくマッチすればよいゲームになるので、Sanrio Gamesが贈るゲームがどのような化学反応を起こしているかを楽しんでほしいとしました。
吉元氏は、「愛される『ものがたり』を全世界に」という東映のミッションにゲームを含めていくとし、まずは東映がゲーム事業にも注力していくことを知ってもらいたいとコメント。西澤氏は、デジタルとオフラインの両軸でゲームというカルチャーが持っている魅力をより一層広げていくと言及。PARCO GAMESはカルチャーを支える立場であるという構図を忘れることなく、そのなかで自分たちらしさを見失わないようにしたいと語りました。
モデレーターの平野氏は「ゲーム事業への参入の経緯や目標は各社それぞれだが、ゲーム事業と自社の強みの共通点を見つけて橋頭堡にしているところは3社の共通点。この感覚が、新しい事業を始めるにあたって大切なことなのだと思う」と語り、セッションをまとめました。






