
ゲームフリークの新作アクション、『Beast of Reincarnation』では、主人公の感情と記憶を失ったエマと、犬の相棒クゥによる物語が描かれます。
そんな本作の発売に先駆け、Game*Sparkではディレクターであるゲームフリークの古島康太氏への単独インタビューを実施できたので、その様子をお届けします。
なお、Game*Sparkでは本作の序盤の内容や詳しいゲームシステムなどを解説した、試遊のプレイレポートも掲載中です。試遊の内容を踏まえた質問もありますので、ぜひあわせてご確認ください。
「一人と一匹」のコンセプトや、それぞれのデザインに迫る!ディレクターの古島康太氏へインタビュー

――まずはあらためて、本作のコンセプトについて詳しく教えていただければと思います。
古島康太氏(以下、古島氏):『Beast of Reincarnation』のコンセプトは、「相棒と旅をすること」です。旅を通じて相棒の頼もしさやぬくもり、そして同時に寂しさも体験できるようなものになっています。
――本作の「相棒とともに旅をする」というコンセプトですが、何かインスピレーションの源になったものはあるのでしょうか。
古島氏:実は、すべてが「相棒との旅」から始まったわけではないのです。もともと何か新しいゲームを作りたいと思っていましたが、どんな感覚や雰囲気、感情を得られる作品が良いのか、自分自身が何を作りたいのかを常に考えていました。
その過程で、「自分はもしかしたら“寂しさ”を表現したいのでは」という答えに辿り着きました。単なる一人の孤独ではなく、自分ともう一つの何かがあって、そのぬくもりや頼もしさも感じられるうえで“寂しさ”が体験できるような、そんな作品を作りたいと考えました。

――開発の経緯について教えてください。本作はどういったところから開発がスタートしましたか。
古島氏:ゲームフリーク内には「ギアプロジェクト」という、複数人で試作をして企画を提案するシステムがありますが、その年はちょうど、田尻智(ゲームフリーク代表取締役)が主催する企画コンテストが開催されていました。
そこに企画を応募して、入賞したことから本格的に制作が決まりました。
――これまでゲームプレイ映像をはじめ、さまざまな情報が発信されてきましたが、ユーザーからはどういった反応がみられましたか。
古島氏:リアルタイムアクションをゲームフリークが作るというところで、どんな風になるのかという声をよく目にしました。コマンドバトルの要素が組み込まれることに対する不安も見られましたが、一方で新しさを感じてくださる方もいます。
全体的には新しいゲームとして、皆さんに驚きと期待をもって迎えていただいているな、という印象です。

――先ほどもお話いただいたように、ゲームフリークは「ギアプロジェクト」発のタイトルや、オリジナルタイトルを手掛けてきましたが、ゲームフリークとして『Beast of Reincarnation』を作るにあたって意識した点はありますか。
古島氏:どちらかというと、ゲームフリークとして作るというよりは、多くの部分を私個人に任せていただきました。とはいえ、ゲームフリークで働くなかで培った、作品の作り方やゲームフリークとしての感覚、遊びなど学んできたことは本作にも活かされていると思います。
――作品の内容についてもお聞かせください。まず、主人公の「エマ」や相棒の「クゥ」のデザインについて、特にどういった部分をこだわりましたか。
古島氏:「一人と一匹」というコンセプトでキャラクターを考えたとき、全く同じ見た目では不自然になると考えました。そこから人と動物という流れになって相棒は犬に決まり、「エマは黒、クゥは白」と、デザインの対称性や並んだ時のシルエットを意識しました。
そのほかのこだわりとして、「エマとクゥは目線の高さが必ず揃う」ようにデザインされています。ここは最初から決めていた部分で、“相棒”としての存在感を得られるようになっています。

――衣装のデザインについて、エマは羽織や陣笠など古風な侍の装いですが、一方で本作のフィールドは文明崩壊後の世界が舞台となっています。キャラクターのデザインと世界のデザインを融合させるにあたって、どのように考えられたのでしょうか。
古島氏:キャラクターデザインと世界観の融合を実現するにあたって、やはり出発点となったのは「一人と一匹」のコンセプトです。お互いが絆を育むためには、できるだけ過酷な世界のほうが好ましいと考え、2000年くらい先の遠い未来の世界を設定しました。
この世界で文明は滅んで人工物は衰退しており、植物は支配的に生い茂っていますが、ここから本作の「植物」のテーマが生まれています。
文明が滅んだことで工業製品も作りにくくなるなかで、文明が一旦滅んだからこそ、日本昔ながらの「一枚の布から服を作る」という和装文化が再び始まりました。そこから技術や文明が進歩し、今のエマの装備に繋がっているのです。一見すると和風ですが、素材感などは現代風のものを使用しています。

――そういった設定があるのですね……!エマのキャラクター性についてはどうでしょうか。感情のない寡黙なキャラクターですが、石川由依さんをキャスティングした理由などはありますか。
古島氏: エマは感情と記憶を持たないキャラクターですが、一方でストーリーを通じて成長していく必要もあります。こうした幅広く難しい役割を表現できる声優として、石川由依さんしか思い浮かびませんでした。
実は、シナリオのライティング段階から石川由依さんをイメージして描いている部分もあったので、ぜひお願いしたいという気持ちがありましたね。

――他のキャラクターについてはどうでしょうか。「ブラッド」役の大塚明夫さんなども印象的です。
古島氏:キャラクターを制作する際には、「対称性」を意識しており、それぞれ対応するキャラクターを配置しています。ブラッドの場合は、歳を重ねて外の世界の知見もある、エマを導く存在として“説得力のある声”を考えたとき、浮かんできたのが大塚明夫さんでした。

――本作のグラフィックについて、自然の壮大さや神秘的な表現がなされる一方で、どこか退廃的な雰囲気もあります。この世界をフォトリアルな質感で表現するにあたって、どのような部分を意識しましたか。
古島氏:フォトリアルな表現を用いることで、作品のリアリティラインを高めることができます。植物に支配された世界を表現するために、実際の日本の植生がどのようになっているのか、ビルの隙間にはどうやって植物が生えるのか、そのカオスさなど、あらゆる説得力を持たせることが重要だと考えました。
自然の神秘性については、日本に根付いた神道的な考え方として、自然にも魂が宿っているように感じさせるモンスター(腐食体)を配置していて、敵でありながらも神々しさがあるようなデザインになっています。

――フィールドの探索ではエマが髪を伸ばしたり、跳躍したりと能力が大きく役立ちました。レベルデザインやフィールドの設計において、どういった点を意識しましたか。
古島氏:文明が崩壊した世界を描くということで、決してフラットではない世界を表現しました。現代の建築は放置しておくと崩落してしまうので高低差が生まれますし、その高低差を攻略していくためのカギとしてエマの植物の能力が役立つ、という設計です。
また、探索でもクゥが頼りになるところを表現するため、普通の視線では見えない遠くや高いところにあるアイテムをクゥが見つけてくれます。「あ、あんなところにあったんだ!」と思うと同時に、クゥに対しての頼もしさが感じられるようになっていますし、どうやって取りに行くかの試行錯誤もあります。
――たしかに、実際にプレイするなかでもクゥが敵やアイテムの存在を教えてくれる場面が多くありましたね。アクション面については、全体的に手触りがよく爽快感もあり、非常に楽しめました。バトルシステムを構築するにあたって、重要視したポイントはありますか。
古島氏:「クゥの相棒としての頼もしさ」を表現するためにはどうすれば良いのかを、特に考えていました。ターン制のコマンドバトルなどの選択肢もありましたが、無限に考える時間が存在してしまうと、一方で戦闘の緊張感は損なわれてしまいます。
エマがピンチになったり敵に囲まれたりと戦闘のリアルタイム感を生み出す一方で、クゥも同様にリアルタイムのアクションにしてしまうと、操作が忙しくなるだけで、頼もしさには繋がりません。そこで時間をスローにすることで、色々な選択肢を考える時間が生まれる、アクションとコマンドバトルの融合というデザインに落ち着きました。

――戦闘の肝ともいえる「受け流し」や「見切り」といった回避アクションですが、判定がシビアすぎず、かなり受付フレームが長いように設定されていると感じました。こちらもやはり、意識したデザインなのでしょうか。
古島氏:そうですね。受け流しをした後にゲージが蓄積し、クゥが攻撃できるようになりますが、戦闘のなかでクゥの存在が頭をよぎるようなデザインを意識しています。受け流しの判定がシビアすぎると自身が回避するのに精一杯で、プレイヤーの思考が止まってしまいます。
プレイヤーが相棒にコマンドで指示を出すことで、状況を打開する起点を作れるという、次のアクションに繋げやすくするために判定は緩く設定しています。
――エマがアクションをするなかで、クゥにはコマンドで指示を出すという一連の流れがありますが、操作量のバランスは調整に苦労しましたか。
古島氏:アクションのなかでスローにコマンドを選ぶ、という基本的な設定が固まってからは、特に大きな調整は必要なかったですね。

――そのほか、開発をするなかで特に苦労した部分や要素はどういったところでしょうか。
古島氏:相棒のクゥがどれくらい自律して動くかのバランスが大きな課題でした。回復や戦闘など、すべての行動が自動で行われると感謝の気持ちは生まれますが、一方で一緒に何かを成し遂げている感覚が失われてしまいます。
プレイヤーがコマンドで指示を出して一緒に戦いながら、ピンチのときにはクゥに助けてもらうバランスを見つけるのに、かなりの試行錯誤が必要でした。

――本作ではグラフィックやバトルだけでなく、コーラスが採用されているBGMなど、サウンド面もかなり魅力的です。サウンドについてのこだわりも教えてください。
古島氏:本作におけるサウンドは複数の役割を持っています。風景のリアリティラインや解像度を引き上げるために、草や風の音などはこだわっていますし、戦闘でも受け流しの成功や失敗が音で判別可能です。
BGMについては、プレイヤーの感情を揺らす役割があります。本作ではエマとクゥも無口なため、「ふたりの視点ではどのようにこの世界が見えているのか」「どのように絆を感じているのか」といった部分はBGMによって表現しているところもあります。
――無口なエマとクゥという話がありましたが、その設定はストーリーや作品全体の描かれ方にも影響しているのでしょうか。
古島氏:そうですね。相棒の頼もしさなど“相棒感”はすべて言葉で表現するのではなく、ゲームシステムや一緒に戦う体験を通じて、プレイヤーに感じてもらえるようなデザインにしています。

――今回の試遊ではチャプター1をプレイできましたが、全体のボリュームや想定されるプレイ時間はどれくらいでしょうか。
古島氏:30~40時間を想定したボリュームになっています。もっと深くまで遊ぼうと思えばより長く楽しめますし、「ニューゲーム+」のように周回することも可能です。
――周回要素は、どういったものがあるのでしょうか。
古島氏:周回はどちらかというと、自慢できるやりこみ要素的な意味合いが強く、実績などに関わってくる部分もあります。
――本作では3段階の難易度が用意されていますが、この意図などはあるのでしょうか。
古島氏:難易度を設定する時、「ノーマル」を一番きちんと作らないといけないと考えていました。アクセシビリティや遊びやすさというよりは、「クゥにちゃんと頼れるかどうか」を強く意識しています。簡単になりすぎてしまうと、エマの力だけで進んでクゥの助けが不要になってしまいますし、逆にエマが一発で倒されると、クゥが回復するシチュエーションが生まれなくなってしまいます。
ストーリーモードはクゥに頼りつつスムーズな爽快感を重視する一方、ハードな難易度では敵が強くなるのにくわえて、クゥが倒されてしまう確率も高くなります。頼もしさと同時に、寂しさも強調されるような体験です。
「相棒の頼もしさを感じられる」コンセプトに基づき、単純に難易度が変わるというよりは、それぞれの難易度で得られるゲーム体験や感覚が異なるよう意識したデザインになっています。

――古島さん的に、お気に入りのスキルツリーや戦い方はありますか。
古島氏:それぞれのスキルツリーのバランスは等しくなるように設定していますが、本作の「植物」のテーマを活かせる戦い方はエマの穢れ髪に関するスキルツリーだと思います。なかには「兜割」というアクションが存在し、習得すると立体的で幅の広い戦い方ができるようになるので、本作のアクションを手早く楽しめるはずです。

――また、作品のなかで古島さんが特に注目してもらいたいポイントや要素はどこですか。
古島氏:本作ではシナリオを手掛けましたが、実は言葉には出していない世界の謎や要素も散りばめられています。「2000年という月日の間に何が起きたか」、「実はこういった意味があるんじゃないか」など、フィールドの絵やオブジェクトから読み取れる背景にも注目してもらいたいです。
――最後に、読者へ向けたメッセージをお願いします。
古島氏:発表から時間が経った今でも、情報が出る度にプレイヤーの皆さんから温かい反応を頂いています。それが開発にとっても大きなモチベーションとなり、ようやくここまで辿り着いて、作品を皆さんにお届けできることを嬉しく思っています。
エマとクゥ、「一人と一匹の旅」をぜひ、最後まで見届けていただければと思います。

――本日はありがとうございました!
『Beast of Reincarnation』は、PC(Steam)/PS5/XBOX Series X|S向けに8月4日発売予定です。
¥8,980
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)









