『モンスト』の熱狂を海外、そしてスポーツへ。MIXI CEOが語る「3度のパラダイムシフト」と「ソーシャルの力」【GAME FUTURE SUMMIT 2026】 | GameBusiness.jp

『モンスト』の熱狂を海外、そしてスポーツへ。MIXI CEOが語る「3度のパラダイムシフト」と「ソーシャルの力」【GAME FUTURE SUMMIT 2026】

F2Pからスポーツベッティングへ

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2026年6月3日、渋谷ベルサールガーデンにて、ゲームビジネスイベント「GAME FUTURE SUMMIT 2026」が開催されました。

本イベントにて「ゲームビジネスの未来展望 ~モンスト海外展開史とスポーツ配信の可能性~」と題し、MIXI 代表取締役社長 上級執行役員CEOの木村弘毅氏と、Re entertainment CEOの中村淳雄氏の対談が行われましたので、その模様をお届けします。

2013年のリリース以来、国内モバイルゲーム市場を牽引してきた『モンスターストライク』(以下『モンスト』)。その初代プロデューサーであり、現在はMIXIを牽引する代表取締役社長 の木村弘毅氏が、激動の27年間を振り返りました。

『パズドラ』全盛期に見出した「4人協力プレイ」への確信、米国での海外戦略の裏側、現在挑んでいるインド市場への勝算とはどのようなものなのでしょうか。さらには、ゲームで培った「熱狂のマネジメント」を武器に、通期売上650億円規模へと急成長を遂げたスポーツ事業へのピボットまで、ゲーム業界人が今もっとも注目すべき「ヒットの構造と未来への展望」を語ります。

3度のパラダイムシフトを生き抜く

木村氏のキャリアは、MIXIの競合から始まります。未経験で入社したインデックス社でモバイルコミュニケーションの波を捉え、その後2008年にMIXIへ入社。しかし、SNSの企画職としての在籍はわずか3ヶ月でした。

木村氏:

「入社してすぐにゲーム部署への異動を命じられ、当時は本流から外された、左遷されたという思いもありました。しかし結果的に、私はSNS、ゲーム、スポーツという3回の社内パラダイムシフトを最前線で体験することになります」

当時、いくつものタイトルのデータを見ながらプラットフォームのコンサルティングを行っていた木村氏は、この経験を通じて「プラットフォーマーとしての思考」と「ゲームデザインの構造」を徹底的に叩き込まれることになりました。

伝説のクリエイター・岡本吉起氏との邂逅:『ストII』への愛が結んだ縁

やがて『モンスト』の開発において、カプコン出身のレジェンドクリエイター・岡本吉起氏とタッグを組むことになります。当時、コンシューマーからモバイルへの転換期で苦戦していた岡本氏をパートナーに選んだ理由は、木村氏自身が猛烈な「ストリートファイターII(ストⅡ)』ファンで岡本吉起マニアだったから……だけではありません。

木村氏:

「岡本さんはトレンドの転換期を設計すること、そして市場の変化に対してもの凄く敏感な方です。アーケードゲームでの時間課金から、都度課金への転換、コンシューマーでのパッケージ販売、そしてモバイルでのF2P(基本プレイ無料)。ビジネスモデルの大きな転換期を何度も生き抜いてきた彼とは、非常に馬が合いました」

『パズドラ』の衝撃の中で確信した「4人協力プレイ」の口コミ構造

『モンスト』開発前夜の2012年、市場には『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』が誕生し、一大ブームを巻き起こしていました。しかし、木村氏らが目指していたゲームデザインは、パズドラのそれとは全く異なるものでした。彼らがベンチマークにしていたのは、PSPで爆発的ヒットを記録していた『モンスターハンター(モンハン)』の構造です。

木村氏:

「データによれば、『モンハン』には、1人が2人を呼び、2人が4人を呼ぶというカードゲームのようなバイラル(口コミ)な増殖構造があることが分かりました。これはMIXIが友達紹介で拡大していった構造とまったく同じです。モバイル領域で、まだ誰も成し遂げていなかった4人協力プレイにトライすれば、絶対に独自の強みを持ったソーシャルゲームが作れると確信していました」

グローバル展開の苦い教訓と、アニメIPで挑むインド市場

『モンスト』の爆発的ヒット後、木村氏は国内の運営を信頼できる部下に委ね、自身は海外展開へと振り切りました。テンセントと組んだ中国展開や米国展開では「バイラルを重視し広告を打ちたくないMIXI」と「大量送客を狙う現地プラットフォーマー」との戦略の乖離、さらにはユーザー獲得コストの高騰という高い壁に直面し、一度は撤退の苦汁を味わうことになります。

しかし現在、MIXIは再び『STRIKE WORLD』(『モンスターストライク』のグローバル向け正式名称)を引っ提げ、世界1位の人口を誇るインド市場で、現地ユーザーに向けた体験の再構築に挑んでいます。その背景には、2つの明確な勝算があります。

・中国製ゲームの流入制限:地政学的リスクにより、強力なライバルである中国勢が参入しにくいブルーオーシャンである点。

・動画配信サービスによる日本アニメの浸透:国内で累計120以上の作品とコラボしてきたモンスト最大の武器(アニメIP)が、そのまま海外でも強力なフックになる点。

木村氏:

「私たちは今一番人気がある作品を真っ先に獲得する方針を徹底しています。「鬼滅の刃」も、日本で社会現象になる数ヶ月前から現場が目利きして交渉を動かしていました。日本のアニメが世界中で消費されている今こそ、このモデルをグローバル展開していくベストなタイミングです」

ゲームの「熱狂」をスポーツへ:F2Pの限界を超えたピボット

現在、MIXIの売上を大きく支える柱となったのがスポーツ事業です。ゲームで数千億を稼ぎ出す企業が、なぜ一見地味に見えるスポーツ領域、それも公営競技(ベッティング)へと舵を切ったのでしょうか。そこにはF2Pの限界を見据えた木村氏の戦略的判断がありました。

木村氏:

「F2Pのゲームは、ユーザーの可処分時間を圧倒的に奪い合うモデルです。いくつかのメガタイトルが時間を占有してしまう市場では、会社としてゲームの本数を増やしても頭打ちになります。そこで、MIXIのDNAであるソーシャルなつながりを活かせる周辺エンタメ領域を探した結果、スポーツベッティングにたどり着きました」

MIXIが提供する競輪・オートレース投票アプリ「TIPSTAR」は、1人で黙々と賭ける従来の公営競技のイメージを覆し、「友達と一緒に集まってワイワイ盛り上がりながらベッティングを楽しむ」という、まさにゲームのガチャ(お祭り型消費)と同じ構造を再現しています。ガチャイベントで友達と一緒に盛り上がるあの「お祭り感」を、スポーツベッティングの体験にも持ち込もうという発想です。

経営者自らが泥臭く動き、早稲田大学でスポーツベッティングの論文まで書き、市場の土壌そのものを耕してきました。その結果、2025年にはオーストラリアのPointsBet社の買収合意に至るなど、MIXI史上最大規模のグローバルM&Aへと結実しています。

ゲームのヒットの方程式を横展開し、ソーシャルの力でスポーツをも熱狂の渦に巻き込むMIXI。初代プロデューサーが見据える視線の先には、グローバルを味方につけた、新たなエンターテインメントの経済圏が広がっています。

《各務都心》

各務都心

マーダーミステリー『探偵シド・アップダイク』シリーズを制作しているシナリオライター。思い出の一本は『風のクロノア door to phantomile』。

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