ゲーム開発の現場では、AIが「アイデアをすぐに形にする」時代が現実になりつつあります。アリババクラウドのAIエンジニア、藤川裕一氏は、こうした変化を支える最新のAI群――Qwen3-MaxやWan2.5――について、GTMF 2025で詳しく紹介します。
セッションタイトルは「アイデアがゲームになる未来:アリババAIが解き放つ、次世代クリエイションの扉」。 中国のAI開発の最先端にある同社が、AIがどのように「アイデアから体験へ」の距離を縮めているのかを、実際の事例を交えて語ります。
研究から現場へ──Tongyi Lab発AIの進化
アリババグループは2017年、先端AI研究機関「DAMO Academy」を設立しました。その中で育まれた「通義(Tongyi)」プロジェクトは、後に独立した組織「Tongyi Lab」を設立しました。
テキスト生成モデルQwen(クエン)、画像・動画生成モデルWan(ワン)、音声認識モデルQwen Audioなど、幅広い領域をカバーするAI群が、研究段階を超えて、実際のクリエイティブ現場で活用されています。
アリババクラウドのAIソリューションは次の4層で構成されています。
インフラ(GPUクラウド環境)
AI開発プラットフォーム
モデルサービス(API提供)
AIアプリケーション
このように、AIの研究から開発・運用までをワンストップで提供できる構造が特徴です。
Qwen──開発者の創造性を支えるオープンAI
中心となるのが、アリババの大規模言語モデルQwen(クエン)シリーズです。 中でもQwen3-Maxは1兆パラメータ規模の巨大モデルで、オープンソース版(約235B規模)を大きく上回る精度を誇ります。 内部構造にはMoE(Mixture of Experts)を採用し、高性能と省リソースを両立しています。
Qwenは、クローズドモデル(API提供)とオープンソースモデル(GitHubで公開)の両輪で展開されており、企業や開発者は自社のデータを使ってチューニング(再学習)することができます。
藤川氏は次のように説明します。 「ゲームのキャラクターの一貫性を保つために、オープンソース版を自社仕様にカスタマイズして活用する企業が増えています。一方、アイデア出しや企画段階では、クローズドモデルのQwen3-Maxを利用し、幅広い表現を試すケースも多いです」。

Wan──テキストから動画を生み出すAIの力
映像生成AIのWan2.5は、AIクリエイションの新たな可能性を示しています。 従来のWan2.2では最大5秒の動画生成が上限でしたが、Wan2.5では10秒まで生成可能になり、さらに1080pの高解像度にも対応しています。
アニメ調から実写風まで幅広い映像表現をカバーし、複数動画をつなげて編集できるWeb UIも用意されています。

今回のセッションでは、次のような実際のAIワークフローが紹介されます。
Qwenで企画生成:「RPGの世界観を考えて」と入力すると、AIがキャラクター設定やシナリオを提案
Wanでビジュアル化:生成されたプロンプトをもとに、キャラクター画像や動画を自動生成
Web UIで編集:複数の生成動画をつなげてプロモーション映像を制作
このように、わずかなテキストから実際の映像を作り出せるため、企画段階での試作やプレゼン資料の作成スピードが大幅に向上します。
藤川氏は「開発初期のアイデア共有のスピードが、AIによって劇的に高まっています」と語ります。
ゲームからアニメ・広告まで、広がるAIの活用
QwenとWanの組み合わせは、ゲーム開発だけでなく、アニメや広告など多様な分野に広がっています。
キャラクター案出し、背景生成、バナー制作、PV動画などに加え、漫画制作では吹き出し翻訳や着色補助への応用も進んでいます。
また、AI開発基盤PAI-EASを活用することで、こうしたモデルを自社クラウド環境にワンクリックでデプロイすることも可能です。 これにより、企業は自社のアセットやデータを使って独自のAIツールを構築することができます。
東京会場ではQwen ChatとWan Videoを展示
GTMF東京会場では、来場者が実際にAIを体験できるデモ展示を実施します。展示ブースでは、対話型AIプラットフォーム「Qwen Chat」と動画生成ツール「Wan Video」を公開予定です。
これらのツールはブラウザからアクセスでき、Googleアカウントでログインするだけで体験可能です。複数のモデル(Qwen3-Max、235B、マルチモーダルモデルなど)を切り替えながら、画像や動画生成を試すことができます。
AIが“共創のパートナー”となる時代。 アリババクラウドの最新AI群は、ゲーム開発者やクリエイターの創造力を支える新たなインフラとして、確実に進化を続けています。 GTMF 2025では、その最前線をぜひ体感してみてください。
講演情報
講演タイトル
アイデアがゲームになる未来:アリババAIが解き放つ、次世代クリエイションの扉
登壇者
藤川 裕一 氏(アリババクラウド/AIエンジニア)
展示内容(東京会場のみ)
Qwen Chat(対話型AIプラットフォーム)
Wan Video(動画生成AIデモ)
ゲーム開発や運営の最新ソリューションの展示会&セミナー
Game Tools & Middleware Forum 2025
・大阪会場 11/20(木)、東京会場 11/25(火)
・入場無料、事前登録制
・終了後には懇親会(After Party)も開催
・登録や詳細なセッションスケジュールは公式サイトから






