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広告会社が考えるNFTの可能性とは?…博報堂DYメディアパートナーズ 髙橋信行氏に訊く

XRやブロックチェーンなどの新技術を応用した事業開発を手がける株式会社博報堂DYメディアパートナーズ イノベーションセンターの髙橋信行氏に、NFT市場の動向やNFT活用の可能性についてお伺いした。

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広告会社が考えるNFTの可能性とは?…博報堂DYメディアパートナーズ 髙橋信行氏[インタビュー]
  • 広告会社が考えるNFTの可能性とは?…博報堂DYメディアパートナーズ 髙橋信行氏[インタビュー]

今年に入りブロックチェーン技術を使ったNFT(Non-Fungible Token:非代替トークン)への注目が急激に高まっている。NFTとはブロックチェーンを活用し唯一性が保証されたトークンのことであり、これまで自由に複製することのできたデジタルデータに、唯一の価値や所有の証明を可能にするものだ。今年3月には、デジタルアート作家「beeple」のNFT作品が約75億円で落札され大きな話題となったが、アートをはじめスポーツ、ゲーム、音楽といった分野でのNFT活用が注目されている。

XRやブロックチェーンなどの新技術を応用した事業開発を手がける株式会社博報堂DYメディアパートナーズ イノベーションセンターの髙橋信行氏に、NFT市場の動向やNFT活用の可能性についてお伺いした。

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NFTアートが流行ったきっかけは「わかりやすさ」

---:ブロックチェーンやその技術を活用したブロックチェーンゲームなどは以前からありましたが、なぜ今このタイミングでNFTに注目が集まっているのでしょうか?

髙橋:ブロックチェーンゲームは一般的なゲームと違い、まずゲームを遊ぶために仮想通過が必要ですし、仮想通貨をゲームに送ってキャラクターのアイテムを買わなければなりません。さらに一般的なゲームと大きく異なる点としては、買ったアイテムなどの価値が変動することです。それを常にチェックしていないといけないので、ゲームの知識以上に金融リテラシーが必要なんです。また、ブロックチェーンゲーム以外にも市場には法定通貨で遊べるおもしろいゲームが数多く供給されています。ゲームへの参入ハードルが高く、代替となる競合の多いブロックチェーンゲームはNFTの本質的な価値に気づいてもらうためにはユーザーに長い道のりを超えて貰う必要がありました。

一方で、アートやスポーツはデジタル上における代替品がありませんでした。アートの場合、「デジタル上での唯一性が証明されたデジタルアート」は今までに無かった概念なので、すごく分かりやすかったのだと思います。スポーツの場合も、「NBA Top Shot」のようなデジタルトレカにより、お気に入りのプレイシーンを常に持っておきたいという需要をわかりやすく満たしています。ゲームと比べてものすごく分かりやすいので、アートやスポーツといった分野から浸透していっているのだと思います。

ユーザー起点で広がるNFT  

---:スポーツやエンターテインメント分野におけるNFT活用についてどうお考えですか?

髙橋:NFTの本質は「所有の証明」にあるので、それをユーザーのインサイトにどう落としこむかがかなり重要だと思っています。

例えば、某球団の試合に数十年間ほぼ毎回通っているようなファンの方がいると思うのですが、その人がロイヤルなファンであることを証明するものって特に何も残らないんですよ。ここが0スタートになります。ファンの方からは好きでやっていることだから見返りがなくてもいいという意見もあるのですが、数十年間足繁く通った結果、球団からプレゼントがあったらめちゃくちゃ嬉しいし、球団をもっと好きになりますよね。この0から1を作っていくプロセスにNFTの価値を見いだせると思っています。

何十年も応援してくれているロイヤルなファンは球団にとってもすごく大切な存在です。ファンのロイヤリティを証明して、応援に1000回来てくれたから始球式で玉を投げられるだとか、一番好きな選手のサインを貰えるみたいな、ファンの貢献度に応じてデジタルな特典を渡せる仕組みをNFTで作れたらいいなと思っています。特典内容については広告/PR会社などが企画して仕組み化することでファンエンゲージメントの活性化にもつながると思っています。

また、ユーザーがコンテンツの運営に入り込める余地が出てくるとも思っています。どういうことかと言うと、今までグッズなどは、コンテンツホルダーが作ってユーザーに売るという一方向的な消費を促すものでしたが、NFTなどのあらゆるものをトークン化していくと、ユーザーにトークンが資産として貯まり、お互いに送りあうことができます。例えば、僕があるゲームのロイヤルなファンで、たくさんトークンを持っていて、面白いゲームだからもっと広まって欲しいと思ったときに、SNS上で僕の持ってるトークンを景品にして、リツイートしてくれたユーザーの中から抽選でプレゼントするようなキャンペーンを、コンテンツホルダーの許可を得ずに自発的にやることができるんです。そして、貰ったユーザーは、どんなゲームか分からないけど使ってみる、結果としてそのゲームの面白さに気づくという可能性もあります。最終的には僕が配ったトークンによってどれだけのユーザーが流入したかもブロックチェーン上で追うことができるので、コンテンツホルダーからすると僕はすごくゲームを遊んでいるし、100ユーザー以上流入させているから超ロイヤルユーザーという評価をされて、僕もコンテンツホルダーからインセンティブを貰うことができるみたいなことが考えられます。

「ゲームを遊ぶ=消費」だった概念が「ゲームを遊ぶ=投資」になっていく可能性があるということです。

---:御社のメイン事業である広告での活用も考えていますか?

髙橋:ソーシャルトークン(人々がどのようなNFTを所有しているかを示すもので、人々の間にどのような人間的な繋がりが生まれるのかを示すもの)を見ればユーザーがどんなコンテンツに興味があるか分かるので、ソーシャルトークンベースでエンゲージメントやCTRが高そうなユーザーに広告を配信することになっていくのではないかと考えています。現在のCookieやIDベースの配信だと不確かな情報が混じっている可能性もあるので、確実にそのユーザーが持っていて証明されているものをベースにして広告配信できる仕組みがあれば、信頼性の高い広告を高い単価で提供することができると思っています。

---:NFTにも課題はあるのでしょうか?

髙橋:NFTは発行数を制限する技術でもあります。NFTの場合、ユーザー同士のNFT交換や譲渡などの2次流通でも手数料を取れることが特徴なのですが、発行数が少ないと流通する数も少ないので、1次流通ではある程度の売上があったのに、2次流通では流通数が少なく手数料だけでは元が取れない、というように売上にギャップが生まれてしまうのが難しいところです。

一方で、「NBA Top Shot」の場合、シーズンごとに新しいプレー動画があって、切り取ってトレカにできるシーンが無限にあるので、新しいNFTを発行しやすいモデルになっているという点で本当に上手い設計だと思います。

ブロックチェーンで勝ち筋を見つける

---:ブロックチェーン分野における貴社の展望を教えてください

髙橋:これまで広告会社はマスメディアを中心とした広告ビジネスの出稿費から手数料をいただく形で会社が成り立っていましたが、NFTが浸透し当たり前の存在になっていくとともにアフィリエイトのような貢献した分だけ報酬をもらうようなビジネスモデルに変わってくると考えています。

NFTは基本的にP2P取引なので、代理店のような仲介業者が入りにくい取引構造になっています。今後、メディア枠などもNFT化されていくことを考えると代理店の存在はさらに薄まっていくことが想定されます。

ですが、当社にはメディアやコンテンツに関する理解とユーザーのインサイトを汲み取った企画を建てるクリエイティブの力があります。今後はNFT化されたコンテンツを当社の企画力で価値を高めて販売する仕事が増えてくると考えており、高く売ることに貢献した分、手数料をもらう形になってくると思います。

企画を考える過程で、ファンへの寄り添い方やマネタイズの仕方を考え、ファンの貢献度を証明したり、なにを特典として用意すればファンが喜んでくれるかを検討し、パートナーの勝ち筋をつくっていくことに貢献できるのではないかと思います。

広告会社が掲げるKPIが「発注額」から「販売額」に変わるので、私たちの思考も「いくら発注してもらうか」から「どうやったら売れるか」を考えるように変わり、広告主と同じ目的を持って働くことができるので、当社のパートナー主義が体現される、そんな働き方になっていくと思います。

ファンとのコミュニケーションやマネタイズ、パートナーとの関わり方について新しいヒントをくれるブロックチェーンに可能性を感じています。

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《mirai.Response編集部@mirai.Response》

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