大変なデバッグをAIに担当させる挑戦――ゲームAI専門会社モリカトロンの試み【CEDEC 2019】 | GameBusiness.jp

大変なデバッグをAIに担当させる挑戦――ゲームAI専門会社モリカトロンの試み【CEDEC 2019】

ビデオゲームの品質を管理するのに、今では人間の手だけではなくAIの手も借りるようになっています。もはや人間の手だけではQAが追いつかなくなってきており、そんな時代におけるAIによるデバッグはどのようなものがあるのでしょうか。

ゲーム開発 人工知能(AI)
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ビデオゲームの品質を管理する作業(QA)をするのに、今では人間の手だけではなくAIの手も借りるようになっています。大規模なゲームに至っては、もはや人間の手だけではQAが追いつかなくなっているといいます。

2019年9月4日、パシフィコ横浜にて開催された「CEDEC 2019」にて「AIにゲームをデバッグさせることは出来るのか? ~ゲームAI専門会社モリカトロンの挑戦~」が開催。株式会社モリカトロンの代表取締役社長を務める本城嘉太郎をスピーカーに、デバッグの未来について語られました。

モリカトロンはなぜAIをデバッグに使うようになったか



モリカトロンはゲームAIに特化した会社であり、『がんばれ森川君2号』や『アストロノーカ』を開発してきた森川幸人氏が立ち上げた会社です。もともとAIはフィールド生成に利用したり、ゲームバランスを取ったりなど、ゲーム開発RPGなどのバランス調整に使っていたそうです。

その中で、今回のテーマとなるデバッグのAIも開発していたそうです。「なぜAIの会社がQAをやるのか?」ということについて、本城氏は「最もゲーム業界に貢献できるAIは、AI技術を中心としたQAサービス。いちばん使えるのはデバッグではないか?」と考えたと言います。「ゲームの規模が巨大化し、莫大な作業量が必要になる」と明言しました。

モリカトロンAIのQA事業では「誰でも簡単に発注でき、AIだけに頼らず人の力をサポートする」ことをモットーに、AIツールは内部利用に限定し、人的アプローチでも最高レベルを目指すといいます。ツールを内部利用に限定する理由は「使いこなすのは外部には難しいため」だと説明しました。


モリカトロンが目指す未来は「AIが自律的にテストすること」です。しかし現段階では、まだバグ報告を行うことも難しく、人間のほうがバグを発見できる状態だといいます。

様々なシーンで利用されるデバッグツール



モリカトロンのQA事業は業界でもっとも遅くに始まったテスト会社です。そこで「あえて最後発ならではの強み」を出していくことを強調。本城氏は「人とAI、自動化もできるようにしていきました」と方向性を説明します。一般的なQA業務では同じスタッフがチェックしていきますが、モリカトロンはその作業を自動化していくことで差別化していくようです。


続いてモリカトロンがQAに利用する、数多くのツール群が紹介されました。これほどのツールが揃っているのも、もともと本城氏がコンソールのプログラマーだったことが関係しています。「バグツールで、自動化したりテスターの質を上げていけるようなものがあったらいい」という考えから、QAにおけるさまざまなシーンに対応したツールを開発し、揃えているとのことです。

今回のセッションでは、モリカトロンのなかで代表的なツールを紹介。まずMorikaTesterでは、Android/iOS端末上で動いているゲームの、画像認識によるUI の自動テストを行います。報告からスクリーンショット撮影、再チェックまで自動化されており、特に繰り返し行われるテストで威力を発揮するといいます。

MorikaTesterはNetEaseが無償公開している自動テストツール「AirtestIDE」を自由にカスタマイズできるように再構築したものだと説明。なぜわざわざ自作したかというと、本城氏は「既存ツールが高額であり、自作したほうが早かった」と理由を述べていました。



まず普通のテスト項目から自動化できるもの、テストする項目は15,000ものリストあり、本城氏は「完全自動化と人のハイブリッド」によって進行すると説明します。

自動化テストは、導入するのに「はじめに半月ほどテストにかかる手間があるが、2回目以降から、だんだんと人間による仕事と差が広がっていく」そうです。一定の効果はあった一方、まだまだ改善の余地があるとも語りました。

テスト工数を削減でき、他機種での検証も利用可能なため「たとえば『PUBG』のように大人数マルチプレイヤーゲームでは凄く効果を発揮するのではないか」とも述べました。

今後の課題として、スクリプト生成に時間がかかることから、そこを自動生成することにも挑戦しているそうです。また3Dゲームの空間認識にも取り組んでおり、「リアルタイム性に課題がある」と本城氏は述べています。課題解決にむけて、ソフトウェア開発キットを導入して、ゲーム中のデータを取得して複雑なオートプレイの実現を予定しているそうです。


続いてMorikaEyeについて紹介。こちらは「表示チェックをサポートするツール」だと説明されます。

MorikaEyeはExcelによるチェックシートと連携した表示チェックのサポートを実現しており、テスト項目のポイントが画面上に表示され、高速でチェックしてくれることを特徴としています。MorikaEyeを導入した結果、ヒューマンエラーの発生率が低下し、手間も減ったそうです。


音声チェックをサポートするツールにMorikaEarも用意。こちらはフルボイスのビジュアルノベルで、音声の内容が合っているかをチェックするツールです。事前にデータベースの作成が必要ですが、音声データの一部分にマッチすれば、音声が流れている最中でも再生している音声データが特定できます。再生され始めて2秒ほどで特定できるほどの精度であるとのことです。

非技術の人的アプローチも充実



こうしたツールだけではなく、モリカトロンでは人の手によるチェックも高い品質を保っています。

人の手によるアプローチとして、まず「品質分析」を挙げました。「テストを通してゲームの出来を測りながら、問題点を分析する。そのことによってソフト全体の品質を管理できるんです」と本城氏は説明しました。


デバッグに関しても「人によるエキスパートのチームもいます。」と紹介。彼らはエリートデバッグチームと称され、略してEDTと呼ばれているようです。少数精鋭で構成された、まさにバグを見つけるために研ぎ澄まされたスタッフが揃っているそうです。

「EDTに加入するには非常に厳しいテストをクリアしなければならない」と本城氏は説明。デバッグのアイディアや、検証能力を見た選抜テストを受けさせ、「一般の会社の4倍のバグを見つけ出せるようにする」と目標を話します。「他社のデバッグ終了タイトルでも、バグを発見していく」と精鋭ならではの仕事も語られました。

EDTはフリーデバッグでもきっちりとバグを発見していくそうです。本城氏は「しっかりそれを報告できる体制でやっています。仕事がない時でもバグの鑑定をしているんです」と語りました。

本城氏は「まだまだAIだけでバグを見つけるのは困難であり、実戦投入できるところからツールを作り、デバッグAIで発展に貢献していきます」とまとめました。
《葛西 祝》

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