元プロゲーマーの『Vainglory』開発者に訊いた「ヒーローの作り方」と「e-Sports選手のセカンドキャリア」 | GameBusiness.jp

元プロゲーマーの『Vainglory』開発者に訊いた「ヒーローの作り方」と「e-Sports選手のセカンドキャリア」

Game*Sparkは、『Vainglory』の開発元・Super Evil Megacorpのスタッフにインタビューを実施。元プロゲーマーのリードゲームデザイナーGeorge "Zekent "Liu氏に質問を投げかけ、『LoL』プロ選手として活動していた頃の体験、ヒーローの開発についてお話を伺いました。

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写真右・George "Zekent" " Liu氏

Super Evil Megacorpが開発し、iOS/Android向けに配信中のMOBAタイトル『Vainglory』。2015年のローンチ時には3vs3のMOBAとして提供されていましたが、2018年2月からは5vs5での本格的なゲームモードをプレイできるようになり、2019年2月14日にはPC版(Win/Mac)の早期アクセスもSteamでスタートしました。

Game*Sparkは、そんな『Vainglory』を生み出したSuper Evil Megacorpのスタッフにインタビューを実施。元プロゲーマーのリードゲームデザイナーGeorge "Zekent " Liu氏に質問を投げかけ、『リーグ・オブ・レジェンド』プロ選手として活動していた頃の体験、ヒーロー(プレイアブルキャラクター)の開発についてお話を伺いました。



――これまでの経歴と、Super Evil Megacorpでのポジションについて教えてください。

George "Zekent " Liu氏(以下George氏)『リーグ・オブ・レジェンド』のプロプレイヤー兼ストリーマーとして、Team Curseで活動していました。エレクトロニック・アーツの『Dawngate』というMOBAタイトルの開発に携わっていたこともありましたが、こちらは途中で開発中止になってしまったのです。その後、紹介を受けてSuper Evil Megacorpのビデオコミュニティマネージャーとして、Twitchの配信やコミュニティマネジメントに関わっていました。現在はリードゲームデザイナーとして、ゲームバランスが過剰な方向にいかないようにしたり、楽しくて新鮮なものをアップデート毎に遊んでもらえるような調整を行っています。

――プロ選手から開発側に転換したきっかけについて教えてください。

George氏『LoL』プロ選手の頃はTeam CurseのSupportプレイヤーとして活動していましたが、他のチームメイトに比べてハンドスキルの面で追いつけなかったのです。チームメイトもそれを分かってくれていましたし、それでもゲームへの理解は深いという風に認めてくれていたので、後にコーチへと転身しました。開発においては、MOBAに関する知識をゲームデザインという仕事に活かせるのではないかと思いました。

――プロ選手からコーチ職、そしてゲーム開発者という道筋は、プロゲーマーのキャリアルートとしてはかなり困難なものなのではないでしょうか。

George氏選手によると思いますね。プロゲーマーにもいろいろなタイプの選手がいます。ハンドスキルが優れているプレイヤーもいますし、マクロの戦術理解も必要になってきます。私は後者を得意としているので、こういったポジションが向いていると思いました。私の場合はゲームデザイナーでしたが、他のタイプの選手でも、コーチやサポートスタッフ、実況・解説やストリーマーなどの道を選べるでしょう。

――Super Evil Megacorpに所属したあと、どういった経緯でビデオコミュニティマネージャーからゲームデザイナーへ転身したのでしょうか。

George氏元々ゲームデザインに関心があったので、ビデオコミュニティマネージャー時代から、他のスタッフと話してゲームデザインやヒーローデザインへ意識的に関わっていくようにしていました。

――e-Sports選手のセカンドキャリアの現状について、どのように考えていますか。

George氏私の場合はチーム自体もサポートをしてくれたので、非常に頼りになりました。元プロ選手がチームのマネージャーやコーチ、あるいはサポートスタッフになったり、自分のプレイしているゲームのメーカーに就職することは、アメリカではあまり珍しくありません。もちろん簡単な道ではないですが、プロ選手としての経験を活かせることは多いと思います。

――なるほど。なかなか険しい道のりに思えますね。

George氏そうですね。でも、私はプロ選手として過ごしたことを後悔していませんし、やって良かったと思っています。難しい道ではありますが、とてもやりがいがありました。プロ選手になるために何年も準備していましたし、本当に良い経験になりました。

――ヒーローのデザインやバランス調整を行う際には、どのような点に注目しているのでしょうか。

George氏ヒーローに明らかな「強さ」と「弱さ」が両方生まれるように気をつけています。とても強く見えるヒーローを相手にしても、必ずカウンター的な戦略ができるようにしています。

――元プロゲーマーの開発者として『Vainglory』に関わっている中で、「自分は他のスタッフと明らかに違う視点を持っている」と感じることはありますか。

George氏もちろん、考え方の違いを感じることはあります。多くの場合はとことん話し合って納得するまで決めますし、それでも決まらない場合はとりあえず試してみて、社内でプレイテストをしてもらって決めています。


――プレイテストはどれくらいの頻度で行っているのでしょうか。

George氏プレイテストはなるべく多く重ねるようにしています。新しいヒーローや追加機能はたくさんプレイテストをして、フィードバックを受けて評価が低かった点は全く変えてしまうこともありますよ。強過ぎるヒーローを作ってしまったときのプレイテストでは、相手側が全然楽しめなかったりします。そのヒーローを使ってる自分は楽しいんですけどね!(笑)

――自身が手がけたヒーローの誕生秘話について教えてください。

George氏最近だと「イナラ」というジャングルのヒーローを手がけました。元々のコンセプトは「森の中の妖精」で、ジャングルに多くの時間を割くヒーローにするよう設計していたのです。そういった目標をどうやって実現するか、というところは特に悩みました。特に「イナラ」のアルティメット(Ult)は、仲間にスピードブーストを与えて自身もダッシュするというスキルなのですが、このスキル自体は別で一年半ぐらい試行錯誤していたものでした。「ランス」や「グレース」「剣聖」でもこのスキルを使えないか試していたんですが、しっくり来ていなくて。「イナラ」でついに実装できたんですよね。

――他に手がけたヒーローはありますか。

George氏最近のヒーローは私が手がけたものが多いです。シルバーネイル、剣聖、キネティック、バティスト、イェーツ、サンポウあたりですね。

――先ほど「イナラ」のコンセプトについて伺いましたが、ヒーローを設計する際には、どういったことをきっかけに着想を得ているのでしょうか。

George氏いくつかパターンがあるのですが、アート担当チームから絵をもらって「こういうヒーローがあったら楽しそうだよね」と言われて、そこから考案することもあります。あるいは、ゲームプレイ担当チームから「こういったスキルを持つヒーローが欲しい」と頼まれて、考えてみてからアート担当チームに提案することも。

――とてつもない無茶ぶりが来ることもありそうですね。

George氏すごく面白いアイデアが生まれることもあります。実現可能かどうかはともかく、『ダンスダンスレボリューション』みたいに、ビートに合わせてタップするヒーローというアイデアもありました。

――実際に実装されたヒーローについて、ユーザーから様々なフィードバックを受けてきたと思いますが、どう感じていますか。

George氏ユーザーの評価はもちろん見ていますし、建設的な意見は取り入れるようにしています。多くのユーザーが「このバランスだと○○過ぎる」という感想を持つので、その意見をベースに調整したり、特徴を活かすようにしています。

――実際に実装できるかどうかはさておき、もし『Vainglory』に大きく変更を加えるとしたらどんなことをやってみたいと思いますか。

George氏『Warcraft』シリーズをたくさんプレイしてきたので、Modのようなユーザーが生み出すコンテンツにも対応できるといいなと思っています。例えばオリジナルのマップやルールでプレイできたら楽しそうです。

――『Vainglory』のPC版について、その特徴やモバイル版と異なる点について教えてください。

George氏操作方法自体は他のPC向けMOBAと大きく変わらないので、PCゲーマーの方は違和感なく始められると思います。驚くかもしれませんが、PC版とモバイル版はかなり似ていて、フェアにプレイできます。PC/モバイルの垣根なく、フレンドと遊んで楽しんでもらえると思います。

――PC/モバイルのクロスプレイが可能になりますが、使用できるデバイスや環境は大きく異なりますよね。本当に、全プレイヤーが同じ感覚でプレイできるのでしょうか。

George氏『Vainglory』の開発において社内でこだわっているのは、「思い通りにキャラクターを正確に操作できる」というポイントです。タップでもクリックでも思った通りに操作できれば、プレイヤーに満足していただけると思っています。

――なるほど。クロスプレイでも大きな問題はないということですね。

George氏全く問題ないと思います。私自身、PCでもモバイルでも『Vainglory』を遊ぶのですが、プレイするデバイスは「そのとき自分がどこにいるか」で選択しています。なので、家ではPCでプレイしますし、出先ではスマホでプレイしていますよ。

――PC版とモバイル版でアカウントは共通になるのでしょうか。

George氏アカウントは共通です。ゲーム中にPCがクラッシュしてしまったら、スマホで再ログインしてプレイを継続するということもできます。

――公式大会でも、クロスプレイで参加できるのでしょうか。PC部門、モバイル部門といったように、デバイス別に大会を分けることはないのでしょうか。

George氏まずは分けずに、同じ大会でプレイしてもらいたいです。選手から意見があればそれを受けて調整していきますが、私自身どのプラットフォームでも公平にプレイできると感じているので、選手によってどのデバイスを使いたいかを選んでもらえると思います。


――PC版『Vainglory』が今後辿る進化や、アップデート方針について教えてください。

George氏まずは、楽しみにしてください!と言いたいです。まだ初期バージョンなので、意見を聞いてもっと改善していきたいと思っています。特に使いやすさ、QoL(Quality of Life)やユーザビリティの面でも向上したいと思っています。

――『Vainglory』に初挑戦するプレイヤーには、PC/モバイルのどちらのデバイスでのプレイをおすすめしたいですか。

George氏難しいですが、「どちらも」ですね。PCでゲームをよくプレイしているのであればPC版で良いですし、普段からスマホでゲームを遊んでいるのであれば、モバイル版を楽しくプレイできます。私が友達にアドバイスするとしても、好きな方をダウンロードしてね!と言います。

――未プレイの方や初心者の方に向けて、『Vainglory』に挑戦してみる際の心構えを教えてください。

George氏とにかく、自分の好きなヒーローを選んで練習してほしいです。どのヒーローがいいか迷っても、まずは見た目からピックアップしていいと思います。そうしていくつか選んでプレイしていると、相手側に他の知らないヒーローが来て、更にいろいろと覚えられることもあるでしょう。練習モードを使って他のヒーローの特徴などを掴んでもらったりもしつつで、いろいろと試してほしいです。

――『Vainglory』に慣れていないプレイヤーは、どのロールをプレイすれば良いでしょうか。

George氏個人的にはキャリーがおすすめだとは思いますが、『Vainglory』以外のゲームでどういったプレイが楽しいと感じているかを考えてみてください。「チームメイトを援護したい」のか、「敵ヒーローを倒したい」のか、という感覚で。人によってロール(役割)の好みは分かれるでしょうしね。

――PC版とモバイル版ではネットワーク環境においても違いがあると思いますが、有線LANとWi-Fiでゲームに影響するほどの差は生じますか。

George氏最近はWi-Fiでも4Gでも高速なので、特にプレイに問題はないと思います。

――特殊なルールや、奇抜なゲームモードの搭載は予定されているのでしょうか。

George氏いろいろと新しいモードを作って試していますが、現段階で発表できるものはありません。

――最後に、Game*Sparkの読者へメッセージをお願いします。

George氏『Vainglory』をプレイしてくださっているファンの方に感謝の気持ちを伝えたいです。私自身、PC版のローンチをすごく楽しみにしていますので、皆様も楽しみにしていただければなと思っています。

――本日はありがとうございました。
《kuma@Game*Spark》

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