21世紀の人間キャラクターは、いかに不気味の谷を超えるのか…CGやロボット、ビデオゲームでの事例【シーグラフアジア2018】 | GameBusiness.jp

21世紀の人間キャラクターは、いかに不気味の谷を超えるのか…CGやロボット、ビデオゲームでの事例【シーグラフアジア2018】

CGやロボットをリアルな人間に近づけようとすると、ある段階で不自然さが生まれる“不気味の谷”。この問題を各業界はどのように取り組み、人間らしく感じられるように開発していったのか?「シーグラフアジア2018」のセッションでその取り組みが明かされました。

ゲーム開発 3DCG
CGやロボットをリアルな人間に近づけようとすると、ある段階で不自然さが生まれます。これは“不気味の谷”と呼ばれるもので、この問題を各業界はどのように取り組み、人間らしく感じられるように開発していったのか。「シーグラフアジア2018」のセッションでその取り組みが明らかになりました。


12月4日より東京国際フォーラムにて開催された「シーグラフアジア2018」。5日には、これまでCG業界が人間を描くときに目標としていた取り組みについてのセッションが行われました。

人間のCGやロボットを制作するとき、ある段階まで似せていくと急に不自然に見えてしまう“不気味の谷”という問題があります。「“不気味の谷”を超える:21世紀における、リアルなバーチャル人間の作り方(Beyond the Uncanny Valley: Creating Realistic Virtual Humans in the 21st Century)」では、アニメーションやビデオゲーム、ロボティクスの各業界から、いかに問題を解決し、人間のキャラクターを自然に見せるかについてを解説されました。

“不気味の谷”を超える事例たち



冒頭ではピクサー・アニメーションスタジオからChristophe Hery氏が登壇。さまざまなメディアで制作された人間のキャラクターが、いかにリアルに作られているかの事例を紹介しました。



現在のCGで描かれたキャラクターの肌や目のライティングや光彩の表現、髪の質感といった表現を紹介し、映画において俳優の表情をどのようにCGキャラクターなどに反映しているのかの事例も披露。



「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」では、制作途中の気持ち悪く感じるCGの例を見せたほか、「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」での亜人キャラクターを合成していくシーンなどを公開。最近の例で「ブレードランナー2049」にて、前作の女優を登場させるCG技術についてを紹介しました。




現実のライブで起用される例も挙げられました。2009年に亡くなったマイケル・ジャクソンを、ホログラムを利用したライブパフォーマンスで蘇らせるという試みのほか、MOBAの人気タイトルである『リーグ・オブ・レジェンド』のキャラクターがK-POPアイドル風のスキン「K/DA」を適用したキャラクターが、実際のアイドルとともにライブする映像が上映。日本からは「初音ミク」のライブも紹介されました。



ビデオゲームからは『Hellblade』のほか、Lionhead Studiosの『Milo project』が紹介されました。『Milo project』は開発中止された作品ですが、Kinectを使ってゲーム中のキャラクターと自然なコミュニケーションを取るという、野心的なコンセプトを提示した作品です。



最後にロボティクスの例を紹介。ロボット研究開発で有名な、Boston Dynamicsによる人型ロボットのシミュレーションが公開され、段差を軽快にジャンプして駆け上がり、走り去る姿を披露します。日本からは石黒浩教授が開発している、自律型ロボット「ERICA」が会話をする映像が放映されました。

現実の俳優の演技に自然な対応をするCG



次に各業界からの詳しい事例が解説されます。Weta DigitalからはMatt Aitken氏が登壇。Matt氏は現在のCGキャラクターの演技や、合成技術がいかに“不気味の谷”を超え、自然に見えるようにしているかを解説しました。


「アヴェンジャーズ/インフィニティウォー」 のサノスを例に、いかに俳優の演技や表情を違和感なくCGキャラクターに反映していくかを説明。ここでは優れたツールがそうしたパフォーマンスを支えていると語ります。


また「ワイルド・スピード SKY MISSION」にてCG合成を行った例も紹介。高層ビルの内部を疾走する車が、窓を破って隣の高層ビルに飛び移るというダイナミックなシークエンスでは、車を操縦する俳優は実は別の人間が演じており、俳優の顔だけが合成されているのだとか。

カートゥーンをリアルな存在として感じさせる方法



ピクサー・アニメーションスタジオ(以下、ピクサー)からはErik Smitt氏が登壇しました。ピクサーは主にカートゥーンのキャラクターデザインが特徴的でなじみ深いという方も多いと思いますが、元々リアルではないキャラクターをいかに現実的だと感じさせるかついて紹介しました。

本講演では「インクレディブル・ファミリー」を例に解説。シンプルなキャラクターデザインですが、Matt氏は複数のエレメントを組み合わせ、観客にリアルと感じさせるデザインを作り上げたと語ります。


まず「インクレディブル・ファミリー」のイメージイラストを元に、粘土を使って立体でキャラクターを造形します。次に光や影、肌や髪の質感を描写したリアリスティックなイラストレーションを制作。最後に各キャラクターの性格を加味していきます。


それらのエレメントを組み合わせ、CGモデリングとアニメーターがキャラクターを構築していきます。またライティングや、肌の質感もどれだけアニメーションを自然に見せることに関係しているかを説明。こうした様々な要素を意識することで、カートゥーンでありながらリアルに感じさせる説得力をキャラクターに与えられると語りました。

ビデオゲームで仲間のキャラクターを実在しているように感じさせること




ビデオゲームにおける“不気味の谷”を超える例として、Luminous ProductionsからPrasert “Sun” Prasertvithyakarn氏(以下、Sun氏)が登壇。『ファイナルファンタジーXV』を例に、ゲームプレイ中で仲間のキャラクターがいかに自然な存在だと感じさせるかについて解説しました。


Sun氏はビデオゲームで描かれるCGキャラクターにはプリレンダムービーとリアルタイムムービーのほか、ゲームプレイでの視点があると説明しました。キャラクターの“不気味の谷”はそれぞれ違うのですが、本講演ではゲームプレイにおけるキャラクターの“不気味の谷”について言及しています。

『ファイナルファンタジーXV』ではプレイヤーが操作する主人公のほかに、AIで動く3人の仲間と一緒に旅をするゲームプレイが主です。Sun氏はゲームで本物の人間とコミュニケーションを取る体験を目指し、ゲームデザインしたと説明しました。


Sun氏はビデオゲームのインタラクティブと、ユーザーが期待しているキャラクターの期待についてを分析。ユーザーは概ねリアリスティックな映画みたいなキャラクターを求めますが、ビデオゲームはインタラクティブのメディアです。インタラクティブを追求した場合には、現実のロボットみたいなものになってしまい、リアルなキャラクターとは遠ざかってしまいます。


そこでSun氏はゲームプレイ中でのキャラクターとは、その中間を目指すものだと説明します。ビデオゲームでの3Dキャラクターには、いくつかの“不気味の谷”が存在すると話しました。見た目を示す“ビジュアルの谷”、キャラクターが動いたときにわかる“ムーブメントの谷”、そして論理的であり、感情があると自然に感じられるかどうかの“行動の谷”があると説明します。

Sun氏はプレイヤーがゲームで感じる“不気味の谷”は、“ムーブメントの谷”と“行動の谷”の間で発生すると主張します。AIキャラクターは、基本的に人間のグラフィックを持っている以外に選択肢はなく、制作する側は本当にキャラクターが実在しているように作ることが必要だと語りました。

たとえばプレイヤーにとっては、仲間に触れても無反応だと不自然に感じられますが、あらゆる行動に反応してレスポンスがあり、言葉を返してくれることで仲間が実在する人物のように、自然に感じることができると言います。


しかしリミットがあるともSun氏は語ります。ゲームというフォーマットの特性上、AIキャラクターの反応として搭載できるボイスパターンやアニメーションには限度があり、そこから外れた行動に関しては反応しきれません。さらに当のAI技術の処理能力にも限界はあるため、ゲームプレイで自然に感じられる仲間を作ることには一定程度リミットができてしまいます。

しかしながら、そうしたリミットが必ずしも悪いものではありません。「プレイヤーがインタラクションするのはコントローラーの操作に限られていることです。」とSun氏は指摘します。AIキャラクターとのインタラクションが、実際に顔を合わせて会話をするといった複雑なものではなく、コントローラー操作である限りは、一定制限の中でも自然なキャラクター構築を可能にすると解説しました。

Sun氏はゲームプレイにおけるキャラクターの“不気味の谷”の超え方に、プレイヤーの操作に合わせ、いかに自然な反応と感じさせるかが重要と話し、セッションをまとめました。

SFで描かれていたものが現実となった、ロボティクス技術



最後に登壇したのが、Hanson RoboticsのDavid Hanson氏です。ロボティクス技術における“不気味の谷”を、いかにして超えようとしているかについて講演が行われました。


Hanson氏は人間に近いロボットはSFの中にしか存在しないものだった、と歴史を振り返ります。スライドでは1927年の映画「メトロポリス」にまで遡り、人型ロボットの発想が非常に古くから存在していたことに触れていました。


そこから1世紀近くの時間が経ち、今は人間らしいロボットが登場する時代だとHanson氏は主張します。スマートなAIを持ち、人々を助けるだけではなく、自分たちを理解し、友人となってくれるロボットが出てくる時代になったとも話しました。


さて、現在までにさまざまなロボットが制作されていますが、いずれも人間そのものに見えるとは言いがたい見た目でした。そこでHanson Roboticsではより人間にのように見えるロボットの開発を行っています。


Hanson Roboticsの主なプロジェクトとして「ソフィア(Sophia )」を紹介しました。非常に表現豊かで、すべてを人間らしくするとともに、アイコンタクトして会話をすることもできます。さらに簡単な旅行もセットしてくれたり、人々を理解してくれるスペックを持っていると説明しました。

次に、人間らしいロボットを開発する技術として、いくつかの原理についても公開。キャラクターのコンセプトを立てること、キャラクターが原理と一貫していることを挙げたほか、アートとエンジニアリング、そして神経科学それぞれの学術的な原理を組み合わさっていることが必要だと提示しています。


また、2017年から2019年にかけての、Hanson Roboticsの関わる市場と特徴についても解説がありました。18年は、AIが本格的にメディアやサービスに進出したほか、エンターテインメントや通常のオフィスワークにも使われた年となりました。その流れを受け、19年には「ソフィア」をサービスとして提供していくと言います。かつてSFが見た未来が、現実のものになりつつあるとHanson氏はセッションを締めくくりました。
《葛西 祝》

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