バンダイナムコにおけるAR/MRゲームの狙いはコミュニケーション【シーグラフアジア2018】 | GameBusiness.jp

バンダイナムコにおけるAR/MRゲームの狙いはコミュニケーション【シーグラフアジア2018】

様々なAR/MRゲームを手掛けるバンダイナムコスタジオ。シーグラフアジア2018にて、その開発の裏側や、同社の取り組みを語ったセッションが開催されました。MRコンテンツの開発に必要なこととは―

ゲーム開発 3DCG

バンダイナムコスタジオは、東京国際フォーラムで開催されたCGとインタラクティブ技術の国際会議「シーグラフアジア2018」にて、「From Video Game to Digital Playground」と題したセッションを行いました。MR分野におけるバンダイナムコスタジオ独自の取り組みが語られたセッションのレポートをお届けします。





はじめに、同社のクリエイティブディレクターである本山博文氏が登壇し、家庭用コンソール機の歴史とプレイヤーとの関係性を振り返ります。1977年に登場したAtari 2600を筆頭に、現在のPS4/Xbox One/ニンテンドースイッチに至るまで30年以上の歴史をもっている家庭用コンソール機とプレイヤーとの関係性は、スクリーン(アバター)⇔インターフェイス(コントローラー)⇔人間(プレイヤー)という境界で区切られており、この状態が長年続いていると本山氏は指摘します。2007年にはiPhoneが登場し、タッチパネルによる操作が怒涛の勢いで普及しますが、その関係性は変わりませんでした。



その後、2009年にマイクロソフトからXbox 360向けに、体全体をコントローラーとして扱うKinectが登場します。コントローラー⇔プレイヤーという境界が一つ消えたことで、プレイヤーとスクリーンの距離は著しく近くなったと本山氏は考察しています。




本山氏は続けて、スクリーン(アバター)⇔プレイヤーの関係性の変化の例として、バンダイナムコが開発した屋内にいながら海遊びが体験できるVRコンテンツ「Kid’s Beach(屋内砂浜 海の子)」を紹介しました。「屋内砂浜 海の子」はプロジェクションマッピングの技術を活用することでスクリーン(アバター)の領域を拡張し、プレイヤー自身がアバターとしてコンテンツを楽しめる入れ子構造を実現しています。




「屋内砂浜 海の子」プロモーションビデオ


「屋内砂浜 海の子」解説―プロジェクションマッピングを軸にバーチャルとリアルが融合



開発に約6ヶ月かけたという「屋内砂浜 海の子」は、4.5m×6.5mの砂場に6.5トンの砂と10台のプロジェクター、4台のKinect V2、8つのスピーカーで構成されています。



「屋内砂浜 海の子」では、浅瀬や潮溜まりでの水遊びはもちろん、80もの魚を紙製の器で同時に認識できるほど大勢の多人数プレイに対応しており、実際に捕まえることができたり、クジラのジャンプを見たりすることもできます。サウンドスピーカーから流れる実際の海の音が、よりリアリティをもった空間を作り出しています。全体がプロジェクションマッピングで再現されているため、ヘッドマウントディスプレイを被ることなく、大勢の人が同時に体験出来るのも魅力のコンテンツです。デジタルとアナログが共存したエンターテインメントの形である「屋内砂浜 海の子」は、マニュアルもチュートリアルもなく、子供たちが簡単にバーチャルな海遊びを体感できるのです。



「屋内砂浜 海の子」は日本だけではなくイギリスや中国、香港、タイなどでも展開しています。遊びとして面白いのであれば、言語を問わず人々は積極的に遊び、受け入れてくると本山氏は語ります。





MRゲーム『PAC IN TOWN』で、只の空間を遊び場へと変貌させることができるのか?


次に本山氏は2018年1月から3月までナンジャタウンで稼働したMRゲーム『PAC IN TOWN』を紹介しました。冒頭で話題にあがったiPhoneの存在を挙げ、本作が受けた影響を説明します。iPhoneはディスプレイ(タッチパネル)を通して人と人がつながるインターネットコミュニティを作り上げました。それによって様々な情報を手に入れられるようになったものの、片時もディスプレイから目を離せません。



一方でMR(Mixed Reality、複合現実)デバイスなら、アイコンタクトや他の人々を間に入れたコミュニケーションが出来るため、ソーシャルコミュニケーターとしても存在しうると語ります。



「パックマン」になれる!?『PAC IN TOWN(パック イン タウン)』PV


『PAC IN TOWN』は、ヘッドマウント型のMR機器を装着してプレイするMRゲームで、8平方メートルの空間に3人のプレイヤーと3つのホロレンズ、そして1つのKinect V2で構成されています。本作は、

  1. 現実の空間
  2. プレイヤー間のインタラクション
  3. 各プレイヤーが個別の役割を担う多様性


という3本柱で支えられています。





MRの利点として「自然にコミュニケーションが取れる」「プレイヤー同士の情報共有によってチームワークが生まれる」「身体的動作に制限がないためスポーツ的な要素が含まれる」という3つを挙げ、『PAC IN TOWN』ではこれらの利点を活かすためにオリジナルのパックマンのようなシングルプレイでなく、プレイヤー同士がサポートする必要があるゲームにしたのだということです。




このような協力プレイによって、MRは人々の交流を促進するポテンシャルをもつと本山氏は指摘します。



『一網打尽!蚊取りパッチン!大作戦』での取り組みとは?



続いてバンダイナムコスタジオのリサーチエンジニアである岩田永司氏が登壇し、『一網打尽!蚊取りパッチン!大作戦』について説明しました。岩田氏は、2011年にバンダイナムコゲームスへ入社し、2013年にはスマートグラスMoverio上でAR/MRゲームを開発。また2015年には、技術デモ版『サマーレッスン』の開発にも参加しています。そして現在ではホロレンズ上でのMRゲームを開発中です。



『一網打尽!蚊取りパッチン!大作戦』PV


『一網打尽!蚊取りパッチン!大作戦』はフリーローミングとライドを組み合わせたアトラクションです。リアルタイムトラッキングとプリレコーテッドトラッキングを活用しています。



開発においては、コーディネートエンジニアがラッパーAPIのコーディネーションを行い、他のエンジニアやシーンデザイナー、そしてアーティストに分配するという方式を採用。開発スタイルやテストプレイによるフィードバック、理解の祖語などに対応できるような組織を構築したとのことです。




現地でのロケーションを再構築するときにはUnityとホロレンズを使い、ライドでの道順やオブジェクトをスキャン。またエディター上で修正できるOn-site Modeと、Internal Development Modeの2種類のコーディネートシステムモードを解説しました。




『PAC IN TOWN』におけるオーディエンスビューでは、Kinect V2でピクセル単位の奥行や色彩を空間的に配置し、整合性をもたせました。これによって人々を楽しませると共に、予想外のメリットとしてプレイヤーの周りの人々まで巻き込んだプレイ体験を実現できたと言います。まず観客の注目をプレイヤーへ集め、オペレーターと観客が一緒になってプレイヤーをサポートすることが出来たため、現実世界をより力づけることができたとまとめます。




岩田氏は「MRは偽りの現実”Fake Reality”ではなく、強化された現実”Augmented Reality”と密接に関連する概念である」ことを強調しました。MR開発においては「現実世界の魅力をいかに際立たせるかが重要」だとしています。



最後に再び本山氏に代わり、現実世界が魅力的に輝いたマジカルモーメントの例として、ドキュメンタリー映画「バットキッドビギンズ」の予告をスクリーンに投影。我々が生きるこの世界は遊び心に満ち溢れており、「プレイヤーはスター」であることを示してセッションを終えました。

※本講演のスライドは下記にて全文公開中です。
https://www.slideshare.net/hirofumimotoyama





なお、同社では、講演が行われたMR以外に、VR/ARにおいてもブースを展開。「The player is the star - Futuristic vision for Mixed Reality World」が「VR/AR Award Winners BEST VR/AR CONTENT VOTED BY COMMITTEE」の2nd Placeを受賞しています。
《G.Suzuki》

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