アジア各国におけるCG業界の取り組みー日本、中国、韓国そして中東それぞれのケース【シーグラフアジア2018】 | GameBusiness.jp

アジア各国におけるCG業界の取り組みー日本、中国、韓国そして中東それぞれのケース【シーグラフアジア2018】

成長を続けるCG業界…シーグラフアジア2018で行われたセッション「CG in Asia」では日本、韓国、中国、そして中東からキルギス共和国がどのような活動を行ってきたかを紹介するほか、今後の未来に向けた発展についてを語ります。

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12月4日から7日まで、アジア最大となるCG業界のカンファレンスと展示会を行う「シーグラフアジア2018」が東京国際フォーラムで開催されました。5日には、アジア各国でのCG業界の取り組みを紹介するセッション「CG in Asia」が行われ、日本と韓国のほか、飛躍しつつある中国、そして新興の業界として立ち上がりつつあるカザフスタンといったアジア各国の事例が紹介されました。

韓国CG業界の躍進と多様さ



はじめにHyeJin Choo氏が、「韓国でCGテクノロジーが新しい波を作りだせるか」についてを語ります。「いかにアジアを主導する役割になれるか?」をテーマに、セッションを進行。冒頭で、CGが利用される分野にはアニメーション、ビデオゲーム、映画の3つが主であり、特にビデオゲームは世界でも5番目に大きな業界であると語られました。

次に韓国CG業界の簡潔な歴史を紹介しました。90年代からCG、VFX制作をスタートしており、2000年代にはCG市場が大きく成長。その後2010年代に入り、現在ではハリウッドのレベルに近づいているとChoo氏は語ります。


現在、韓国には5つの代表的なCG/VFXを制作会社があるとのことですが、Choo氏はその技術力の例に、代表のひとつである4th Creative PartyのCGを取り上げます。映画「隻眼の虎」では、主人公が闘う虎のCGがいかに生き生きと作られているかを見せ、技術力の高さをアピールしました。

韓国CG業界の成長により、昨今は中国映画などにも仕事を展開。また韓国のCG市場では、子供向けのアニメーションも大きな仕事先として紹介されたほか、小さなバジェットで国際的に成功した例も取り上げていました。

代表的な例がヨン・サンホ監督のStudio Dadashow作品です。サンホ監督は実写映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」で一躍有名となりましたが、もともとはCGのアニメ監督でした。今回のセッションでは、「豚の王」や「我は神なり」といったCGアニメーションを少ないコストで制作し、結果を出したケースとして挙げられ、韓国CG業界の多様さを感じさせました。

日本のスクウェア・エニックスでのケースーR&Dで広げる、他業種との関わり



次に日本から、スクウェア・エニックス所属の長谷川勇氏が登壇。R&D(※)テクニカルプロデューサーを務めており、今回は『ファイナルファンタジーXV』の事例からCGテクノロジーの活動を紹介しました。

※Research and Developmentの略。企業の競争力を高めるために必要な技術調査や技術開発を目的とした活動や組織のこと。

まず長谷川氏は日本においてCGテクノロジーがどのように利用されているかを紹介。主にプリレンダムービーや、リアルタイムで描画されるビデオゲームに利用されることは本誌読者にとっても驚きは少なくないでしょう。その他、現在はVR/ARの分野でも活用されており、今回の「シーグラフアジア2018」でも同社が手掛けた「結婚指輪物語VR」が展示されたほか、プリレンダムービーとリアルタイム間でCG技術を連携し、アセットのシェアを行っていることを語りました。

なお、長谷川氏はR&Dとして、近年ではエンターテインメントでの活用だけではなく、アカデミズムなどに関わっていることを説明します。2017年に東京藝術大学とのコラボレーションで、「ゲーム学科(仮)展」を開催したほか、NHKと共同制作した番組「NHKスペシャル 人類誕生」ではCGアニメーションを提供。こちらの詳しい経緯は、弊誌が公開したこちらのシーグラフアジア2018レポートにまとまっています

長谷川氏は「なぜ外部とパートナーシップをとるか?」の理由をいくつか挙げました。ひとつは新しい技術にアクセスすること。ふたつめは専門知識を広げること。最後は人材をリクルートするパイプラインを作ることだと説明します。最終的な目的は、アカデミックな研究をベースに斬新な技術やIPを生み出せるようにビデオゲーム業界で生かすことであると語り、講演を締めくくりました。

中国でのCGアニメーション制作の取り組み



中国からはJackson Xianhua Zhang氏が登壇します。CGアニメーション制作においてどのように技術を適用し、課題に取り組んでいるかに焦点を当てた講演を行いました。

Zhang氏はZhuohua Entertainment(以下、Zhuohua)のCEOを務めています。2012年に設立した、テクノロジー主導型の制作会社で、現在110名以上の社員を雇用しています。主に映画やテレビに利用されるCGアニメーションを制作しています。


近年の制作したタイトルに「THE IMMORTAL LEGEND」を紹介。Zhang氏は本作を例に、CGキャラクターの表情の作り方について解説します。

Zhuohuaでは主にUnreal Engine 4(以下、UE4)を使用し、300を超える表情の表現をいかに正常に行うかを説明。内蔵されているBluprintなどの機能を使い、いかにキャラクターを表現するかが語られました。

また、アニメーション制作ソフトであるMayaも組み合わせて制作しているそうです。例えばキャラクターの髪に関してのみ、Mayaによるアニメ―ションを使用することで、自然に見せるようにしているとのこと。著名な制作ツールを使いながら、いかにアニメ―ション制作でクオリティを保っていくかについてまとめていました。

急成長する、キルギス共和国のIT業界



最後にBektur Ryskeldiev氏が登壇しました。彼は冒頭に「皆さん、キルギス共和国はどこにあるかわかりますか?」と質問を投げかけます。


キルギス共和国(キルギスタン)は、カザフスタンをはじめとする中東に位置した国家です。Ryskeldiev氏はキルギス共和国出身で、日本で奨学金を得て、コンピューターサイエンスを専攻。現在、筑波大学に研究員として所属しています。

今回Ryskeldiev氏は、いかにキルギス共和国でIT業界が拡大しているのかを解説します。拡大の例として、まずICTサービスの輸出を挙げます。2017年から今年にかけて、およそ数倍以上も増えていることを説明しました。

その背景として「キルギス共和国にはコンピューターコミュニティができているんです」とRyskeldiev氏は説明。ミートアップや教育に力を入れ、技術者が交流できる場を作り上げたことが、今日の拡大に関係していると話します。

現在、1000名を超えるデベロッパーのコミュニティがオンライン上に存在しており、カンファレンスやコーディングのスキルを鍛えるブートキャンプを開催しています。地域でのイベントも含め、コミュニティでの活動は年々増加していると語りました。またRyskeldiev氏は、今後の中東全体でCG業界が成長するには、スポンサーや講演者を見つけていくことや、インターンシップが必要だとしています。

中東各国の取り組みとして、キルギス共和国ではVRやARのスタートアップを行っていることや、インディーゲームデベロッパーがいくつか存在していることを取り上げ、カザフスタンではVRとARを研究する会社がいくつか存在するほか、大きなインディーゲームデベロッパーのコミュニティがあることを挙げました。


実際にキルギス共和国の制作会社が関わった事例を紹介。Grimwood Teamによるインディーゲーム『World of One』が挙げられたほか、VRやARの分野に進出している例もいくつか披露されました。

「いま、中東ではVRが最も大きなエンターテインメントです。」ともRyskeldiev氏は語ります。キルギス共和国でもっともポピュラーなVRのプラットフォームは、モバイルのものだそう。カザフスタンでもキルギス共和国と同じ状況であり、VRとARの業界はインタラクティブ技術とエンターテインメントの両方に位置しているとしました。

Ryskeldiev氏は今後の展望として、2020年までに多くの地域でイベントやハッカソンを開催することや、CG業界のイベントに招待することを挙げています。さらに国際的な教育の充実や、今回の「シーグラフアジア2018」のようなイベントに育成した生徒を送り込むことで、更なる中東地域でのCG業界の発展を目指したいと力強く語りました。現在、アジアの広い地域でCG業界が発展していることを感じさせ、セッションを締めくくりました。
《葛西 祝》

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