12月4日より7日まで、東京国際フォーラムにてコンピュータグラフィックスの国際会議「シーグラフアジア2018」が開催されています。本記事ではスクウェア・エニックスグループの開発スタジオ・Luminous ProductionsとNHKによる講演「Making of“Out of the Cradle”」、「NHKスペシャル 人類誕生」のメイキング講演をレポートします。

「NHKスペシャル 人類誕生」は地上波で2018年4月から8月にかけて全3回が放送。9月には“未来編”と称したバージョンをBSで放送。12月9日よりNHK BS4K8Kにおいて4K画質での放送が開始されます。なお本作はアップスケールではなく、レンダリングも4Kで行っており、12月21日にはDVD版もリリースされる予定です。公式ホームページには柴田氏による製作レポートが掲載されていますが、本講演はスクエニ/Luminous Productionsサイドから見た製作秘話、という形になっています。

小材氏は当時の上司にこういう企画があるのでやってみる?と言われ、NHKと一緒の仕事ができると面白いことができそう、と個人的に思ったのでOKを出したそうです。一方、柴田氏がスクウェア・エニックスと組むことを希望したきっかけは『ファイナルファンタジーXV』の映像作品『キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV』を見たことがきっかけです。
本作はAAAゲームのアセットを使用したリアル志向の3DCG作品であり、特に主人公のニックスが「CGで描いたものとは思えないくらいのクオリティ」と感じたそうです。「このCG技術を使って人類の誕生を描いたらどうなるのか」というのがこのコラボレーションの始まりです。そういう経緯もあり製作には『キングスグレイブ FFXV』の制作チームが投入されています。

スクエニの映像制作チームといえば、ファンタジーの世界観を本物のように感じさせる映像美がウリとなっています。しかし、今回の「人類誕生」で求められたのは“リアルの追求”。キャラクターデザインだけでなく、その動きなども説得力のあるものに仕上げなければいけませんでした。例えば、原人がサーベルタイガーに襲われるシーンですが、初期のレンダリングでは原人を噛んだまま首を大きく振り地面に叩きつける動作がありました。ゲームの世界では割とよくありそうな表現ではありますが、リサーチャーから「こんな大きな動作をしたらサーベルタイガーの牙が折れる」という指摘があり、現在のモーションに差し替えられました。このリサーチチームとのやり取りはドキュメンタリーとして、リアルな映像にするためには必須でした。


さらに、ゲーム業界とテレビ、それもドキュメンタリー番組の制作陣とはかみ合わない点も多くありました。例えば絵コンテの切り方です。
ゲームの場合はリッチな映像、特にスピーディでかっこいいカットを入れることが多いのですが、ドキュメンタリー、特にNHKスペシャルでは視聴者層が子供からお年寄りまで幅が広い、ということもあり、わかりやすい映像にするということが望まれました。また、ドキュメンタリーの制作陣にはプレビス・ビデオコンテという概念がわかりにくかったこと、リサーチャーにモデルなどをチェックしてもらうとき、着色前ではOKが出ていたのに、着色をしたらNGが出た、というケースもありました。

















「人類誕生」ではCGパートをNHK1.5chというショートムービーのコーナーを開設しており、YouTubeにアップされた映像を配信しています。その結果、NHKのYouTubeチャンネルの登録者が100万人を突破し、4本の動画の合計再生回数は1億7000万回に達したというから驚きです。ゲームの予告映像でも1000万回再生が行われることはまれである、と小材氏。AAAタイトルのムービーは映画に匹敵するといっても過言ではない時代になりました。今後は今回のNHKとスクウェア・エニックスとのコラボのような番組が増えることで、視聴者には驚きや感動を与え、ゲーム会社にとっては映像制作が新たな挑戦の一つとなることでしょう。
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