東京ゲームショウ2014と近未来エンタメビジネス・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第36回 | GameBusiness.jp

東京ゲームショウ2014と近未来エンタメビジネス・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第36回

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東京ゲームショウ2014は来場者が2013年開催時の27万人に次ぐ、歴代2位の25万人という結果で閉幕いたしました。出展社も過去最多の421企業・団体(うち海外202)という華々しい結果となりました。海外の出展社とインディーズ系出展による来場促進の効果は大きかったのではないでしょうか。

私はビジネスデーのみの見学でしたので、一般開放日の熱気を感じることはできませんでしたが、ゲーム市場が注目されるのはすばらしいことであり、ありがたいことだと思っています。

しかし、出展社の様変わりぶりが激しくもあり、昨年、その勢いで話題を呼んだスマートフォン系の勢いがやや沈静化したことや、家庭用ゲームソフトに関しては続編頼みの部分もあり、果たしてどの部分が来場者の耳目を惹いたのかは判断の分かれるところです。しかし、ゲームソフトやコンテンツビジネスは、ある意味で時代の流れにうまく乗り、それを泳ぎきることがビジネスであり、時代を分析する目や、スピードやフレキシビリテキィが重要な要素であることは変わりがありません。

さて、既にゲームショウ関連のレポート記事はたくさん露出していますので、ちょっと違う観点から考えてみたいと思いますが、注目を集めたのは、やはり「VR(バーチャルリアリティ)技術」です。「VR」が「仮想」なのか「擬似」なのかはどちらでもいい議論ですが、新しいエンタテインメント体験として徐々にそのポテンシャルを発揮しつつあることを明らかにさせることができたのが今回のゲームショウの意義であったと思います。

今回注目すべきVRデバイスとソフトですが、ご存知のように注目を集めたのはソニー・コンピュータエンタテインメントの「Project Morpheus」(以下モーフィアス)でした。過去に一部でお披露目した『イヴ・ヴァルキリー』や『ザ・ディープ』に加えて、「AKB0048 × 創聖のアクエリオン 多次元ライヴ」が人気を呼んでいました。この多次元ライヴはどこに注目して映像を観るかという、体験者の主体に拠って映像の体感が異なるためゲーム的なエンタメの要素と立体的なフル映像の可能性を感じさせるものでした。この部分は今回のコラムで訴求したいポイントなので後述します。ちなみに、ゲームショウ直前で話題をさらったバンダイナムコ・鉄拳チームが手がけた『サマーレッスン』のモーフィアス体験が期待されましたが、残念ながら今回のゲームショウでは出展がされませんでした。このあたりは残念です。


SCEのProject Morpheus


そしてもう一方の話題は同じくVRデバイス「Oculus Rift」(以下オキュラスリフト)です。すでにオキュラス社は日本オフィス開設に向けて準備を行っているという話があり、そのための準備も含めてのサプライズ出展と聞いております。こちらも体験希望者が長蛇の列をなし、その人気の高さにVRの可能性を感じさせるには十分な展開でした。


Oculusは日本のイベントに初出展


サムスンの「Gear VR」もデモ出展されていました。これはAndroidスマートフォン「GALAXY Note 4」をはめ込んでヘッドマウントディスプレイ化してしまうというキットです。「ハコスコ」と何が違うのかという点では微妙な温度感もありますが、簡易なVR体験という部分で、今後のVRワールドのビジネス発展に寄与してくれるデバイスの登場は温かく迎えたいと思います。

本題の「モーフィアス」や「オキュラスリフト」の可能性ですが、ゲームというエンタメに於いて大きな市場を開拓する可能性はとても高いと思います。インタラクティブ性やリアルタイムの描画(動画)作成という点でこれほどマッチしたものはないと思います。あとはソフト面でどのような遊びかたをさせるかという部分が市場を大きく牽引できる要素になるでしょう。

ここで私個人としては、ゲームはもちろんなのですが映像としての大きな可能性を感じています。前段で挙げた「AKB」の動画コンテンツにも言えることですが、仮にインタラクティブ性の無い動画のアトラクションであっても、その体験者がどこを観るか、どこで感じるかによって、様々な体験を演出できるのがこのVR系デバイスではないかと思うのです。

すでに意識の高いクリエイターによって、エイベックス所属のアーチスト倖田來未さんの新曲のミュージックビデオが「オキュラスリフト」用に製作されていると聞きました。もちろん、倖田さんをあらゆる角度から観るということが目的なのですが、どのようなときに、どんな角度から、どんな感じで体験するかという部分は観るものによって千差万別の体験を紡ぎだすという点でVRならでは体験といえることでしょう。何度でもおいしい体験が味わえるということです。

このようなVR映像ビジネスに関してはおそらく今後3D映画に変わる映像体験としてより一般化するのではないでしょうか。

従来の映画館ビジネスがフラットなスクリーン映画から、「アバター」に代表されるような3D映画になり、その先は4Dともいえるような「VR映画」の登場を迎えるのではないかと思います。体験する映画、一人ひとりによって観かたの異なる映画という新しいエンタメ体験を演出することになると思います。

今は、エンタテインメントのコンテンツ、デバイスとしてどれだけのポテンシャルを引き出せるかという点に注目が集まっているようですが、それが進むと人間の機能をさらに進化させる体験が実現するかもしれません。以前、作家の立花隆氏が臨死体験を探求する番組のなかで、人間の脳を研究する過程を体験するくだりがありましたが、人間の脳は高度だが、しかし簡単に錯覚させることができると言っていたことが記憶にあります。まさにVR(擬似)な世界は我々人間の脳組織の構造に訴えかけるものとして進化するのではないでしょうか。それはエンタメ分野だけでなく、脳をうまく騙してリハビリテーションの促進を行うなどの可能性を秘めていると思います。


■著者紹介

黒川文雄
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。

現在は、インディーズゲーム「モンケン」、東映アニメーションのスマートフォン向けゲーム「円環のパンデミカ」を手掛ける、また全日空公式映像ソフト「ANA747 FOREVER」を製作。
「円環のパンデミカ」公式サイト

ツイッターアカウント ku6kawa230
ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』
ニコニコチャンネル 黒川塾ブロマガ」も更新中。
《黒川文雄》

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