マーケティングとプロモーションの違い・・・イバイ・アメストイ「ゲームウォーズ 海外VS日本」第10回 | GameBusiness.jp

マーケティングとプロモーションの違い・・・イバイ・アメストイ「ゲームウォーズ 海外VS日本」第10回

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2010年もいよいよ終わりを迎えようとしています。今年も日本のゲームメーカーは新規市場開拓を目指し、海外へ向けてゲームを販売、配信、ライセンシング等を行なってきたことでしょう。そして多くの作品は新しいユーザーを獲得したに違いありませんが、その反面、新しいユーザーを獲得できなかった作品も少なからずあるはずです。日本市場だけでなく、海外市場も非常に厳しいことに変わりはありません。

ゲームのローカライズを行ったにもかかわらず売り上げが芳しくなかった。あるいは、国際化の費用と見合わない利益しか得られなかった。このような話を最近よく耳にします。ゲームが売れない理由は、残念ながらわたくしには分かりかねます。しかしこの理由を考える際、わたくしの脳裏に浮かぶのは、ピーター・モリニュー氏(『ポピュラス』などのデザイナー)のマーケティングについての言葉です。彼によると、日本のゲームパブリッシャーのマーケティング部門では、マーケティングの専門家ではない元ゲーマーがそのまま働いているにすぎない。対照的に、欧州の企業ではゲームのバックグラウンドを持っていないマーケティングの専門家が多い、と語っていました。

わたくしはこの意見に完全に賛同するわけではありません。しかしながら彼が話す通り、日本のパブリッシャーおよび開発会社のマーケティング方法は海外のそれとは大きく異なります。わたくしが考えるに、ゲーム開発完了後のマーケティングのみならず、企画段階から決定的な違いがあるのです。

海外ではゲームの企画段階から、ビジネスとして成立するゲームを考え、どの市場を狙うかを最初から定めています。つまり、「ユーザーがプレイしたいものは○○です。ですからこのようなゲームを作りましょう! 」というのが基本モデルとなっています。一方、日本では市場よりもクリエーターの意志と魂とを尊重し、「ユーザーに伝えたいものはこれだ! 」という発想ありきで企画が立ち上げられます。しかもゲームが完成するまでマーケティングの話はほとんどされません。

しかし、これではマーケティングと呼ぶことはできません。これではただのプロモーションにすぎないのです。マーケティングの原点は、「マーケットを知ること」に他なりません。つまり、良いマーケティングを行なうためには、海外のやり方を知ること、そしてユーザーを知ることが欠かせません。

他の業界の例をあげてみましょう。例えば家電メーカーが海外展開をする際には、必ず現地で市場調査を行ない、その上で現地に見合った製品開発を行ないます。こういった業界のマーケティング担当者たちは、家電が好きで家電メーカーに入社したのではないでしょう。そうではなく、マーケティングのプロとして雇用されているはずです。マーケティングに関する深い知識を備えているのです。しかしながらゲーム業界のマーケティング担当者たちはそうとは言えません。ピーター・モリニュー氏の言う通り、憧れでゲーム業界に入った方々が主なように思われます。

どんなクリエーターであっても自分の作品が素晴らしいものであると確信しています。そしてその自信はあながち的外れなものでもなく、海外のものよりも圧倒的に優れていることが多々あります。しかし、面白いから、優れているからといって、必ずしも売れる、というわけではありません。ただコストだけがかさむプロモーションで終わらないようにするためには、少なくとも以下の3つのマーケティングステップが必要でしょう。

1)事前に市場調査を行ない、ユーザーが公開するタイプのゲームをプレイしたがっているかを調べること。あるいは、そのゲームにあった新しい市場を開拓できるかどうかを調べること。
2)発売前にユーザーの期待感を増すような戦略を考えること。
3)現地の他のタイトルにないような長所・メリットを際立たせること。

実際弊社のクライアント様でも、リリース前にフォーカスグループを行ったことでローカライズに成功したという前例がございます。また、フォーカスグループを行うことでローカライズをされなかったクライアント様もございます。この場合、フォーカスグループの結果に鑑みてローカライズを中止したことで、損失を避けることができたわけです。2011年に海外市場への進出する企業様にはぜひとも、自分のタイトルに一番あった市場はどこなのかを綿密に調べた上で、ローカライズを開始されることをおすすめします。確かに海外市場への進出にはリスクを伴います。しかしながらすでに国内市場は飽和状態と言えましょう。売り上げを拡大するには海外市場を視野に入れることが一番の近道ではないでしょうか。
《イバイ・アメストイ》

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