絶対に、絶対に、絶対にあきらめるな!・・・「ゲームウォーズ 海外VS日本」第30回 | GameBusiness.jp

絶対に、絶対に、絶対にあきらめるな!・・・「ゲームウォーズ 海外VS日本」第30回

カッサンドラーの神話をご存知でしょうか。 ご興味のある方は、ホメーロスを読むことで、詳しい内容を理解していただけると思います。

その他 その他
カッサンドラーの神話をご存知でしょうか。
ご興味のある方は、ホメーロスを読むことで、詳しい内容を理解していただけると思います。
  • カッサンドラーの神話をご存知でしょうか。
ご興味のある方は、ホメーロスを読むことで、詳しい内容を理解していただけると思います。
カッサンドラーの神話をご存知でしょうか。
ご興味のある方は、ホメーロスを読むことで、詳しい内容を理解していただけると思います。

カッサンドラーを簡単に説明しますと、トロイ王の娘カッサンドラーは、ゼウスの息子アポローンからの求愛を、最初は上手く交わしていたが予言能力を授かれることを条件に、アポローンに身体を捧げる事を同意した。(今の時代に例えると、ベンツを買ってもらう代わりに、愛人になるようなお話ですね。)

しかし、カッサンドラーの悲劇はこの瞬間から始まります。予言能力を授かった直後、アポローンの愛が冷めて自分を捨て去ってゆく未来が見えてしまったため、アポローンの愛をその場で否定してしまいました。怒り狂ったアポローンは、カッサンドラーの口中につばを吐き、「予言能力を持つが、カッサンドラーの予言は誰からも信じてもらえない。」という呪いをかけました。この呪いのせいで、トロイの破滅を予言しても誰からも信じてもらえず、また不吉な予言しかしないという理由で王様に監禁、暴行されたりするなど、カッサンドラーは苦しい人生を歩むこととなります。

つい最近、真実が見え仲間に訴えても、完全に無視され続けたカッサンドラーの皮肉な運命を思い出すことがありました。

前回の記事で、「ゲームつくりにおいては、課金の効率より面白さを追求するべきである。」とウンチクを語りましたが、1人の読者からメールを頂きました。

この読者は、2年前にゲーム開発会社からソーシャルゲーム会社にゲームプラナーとして入社し、この2年間会社に対して提案した15個の企画書は、全て却下されたそうです。

彼の言い分として、「企画書が承認されても、いざ開発となると先輩プロデューサーが勝手に変えてしまい、全く違うゲームになってしまう。どんな企画にしても通らない気がしてきました。自分は20代なので、何を提案しても部長や先輩プロデューサーにダメ出ししかされず、自分が考える面白い企画をつくるのではなく、今は取りあえず通る企画を毎日考えている。」と、企画力がないだけと言えば今回の話は終わってしまうのですが、最後にかなり痛烈な言葉がありました。

「ゲームの売行きは予言できるものではないので、良い作品を生み出したいが、日本のゲーム会社は自社スタッフの才能を信じないのです。」

そして、「面白いゲームを作れないのではなく、作らすことすらさせてもらえないのです。」と、愚痴気味に書いてありました。

ホメーロスが大好きな私は、すぐに勝手な妄想をしてしまったわけです。
予言しても信じてもらえない・・・まさに、カッサンドラーではないかと。

彼が会社に対して提案した企画を目にしていないので何とも言えませんが、恐らく決裁者やプロデューサーは、若手だからと言って企画を否定しているのではないと思います。どの業種でも同様だと思いますが、ほとんどの中間管理職は夢を語っている余裕はなく、会社に利益をもたらしたいと考えます。ゲーム開発費用は多くの場合、銀行から融資を受けます。返済しなければならない、利益を生まなければならない、と考えることは、あたり前のことであり反論の余地はありません。

ゲームプランナーの卵をいじめたいのではありませんが、まずは結果を出さないといけないと、なるべく固い企画書が作られるプロセスです。私が突っ込みたいのは、まさにここです。「固い企画書」と言うものは、存在し得ないのです。『パズル&ドラゴン』に似てるからという理由で、「固い企画」になることは絶対にない。『パズル&ドラゴン』は、一つしか存在せず、コピーしたって、成功は保証されない。寧ろ、ただのコピーになってしまう。

若手の意見を尊重するという意味では、外国企業の方が進んでいると個人的に思います。もちろん、新人の若造のアイデアに社運をかける馬鹿な企業はないでしょうが、若造が考えた馬鹿なアイデアを先輩達の力で磨き、投資する会社は多いように思います。特に、ソーシャルゲームの世界ではそうです。

一方、日本の企業の中では、若者がカッサンドラー化してしまうことは少なくないと思います。記事で文句を言わせてもらっているだけではなく、私自身は日本企業、海外企業と多数の会社の海外展開にご協力させて頂いている中、スケジュール一つにしても海外企業は現場の意見を尊重してくれる。

どのような球が来るのか分からないからと不安を抱え、打席にたたないバッターのように、どのような反応があるのか分からないからといって、ありがちなゲームしか出したがらないというのが一般的なゲームパブリッシャーの姿です。

でも、考えてみれば世界を驚かせた全てのゲームは、リリースの一ヶ月まで誰も成功すると確信していたわけではなかったはずです。未知への恐怖心を振り切って、若いカッサンドラー達の意見に耳を傾けて欲しい。

最後に、私にメールを送ってくれた読者に今回の記事で返答させて下さい。
カッサンドラーは神話である。貴方には未来を予言できない。もちろん私にもできない。誰も予言などすることはできない。しかし、自分が提案するゲーム企画には、人の心を動かす可能性があると信じ、疑うことなく自信があるのなら、実現させるために戦うべきです。年齢、経歴や職歴に関係なく、自信を持って意見を言いましょう。もちろん上司からのフィードバックには、素直に慎重に耳を傾ける必要があります。ただ、「あ、このオッサンはスマホの事や今の若いもんの好みを分っちゃいないね。」と思ったら、思い切り反論しましょう。極端な事を言いますが、上司に相手にされない場合は、直接社長室にいけば良い。熱意と情熱を注ぎ込むことのできた企画があれば、実現させるための手段を考え、やるべきことをやるだけです。

ウィンストン・チャーチルがハロー校の学生に対して言ったように、「大事であれ些事であれ、また偉大な事であれ卑小な事であれ、何事においても決して、決して、決して屈服するな!名誉と良識に基づく信念による他は決して屈服するな!絶対に、絶対に、絶対にあきらめるな!」

カッサンドラーよ、Never give in, Never give in. Never, never, never!

■著者

イバイ・アメストイ(Ibai Vinas Ameztoy)
ゲームのローカライズやダウンロードストア「PLAYISM」などを手掛ける株式会社アクティブゲーミングメディア代表。20代から日本のゲーム会社に勤務した後、独立。先日京都で開催され大盛況を収めたBitSummitにも尽力。

写真提供: Getty Images
《イバイ・アメストイ》

この記事の感想は?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集

人気ニュースランキングや特集をお届け…メルマガ会員はこちら