気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Nick Nieuwoudt氏とDominik Latos氏開発、PC向けに8月6日にリリースされた砲撃シミュレーション『IRON NEST: Heavy Turret Simulator』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、ディーゼル・パンクな世界観で巨砲を1人で稼働させる砲撃シミュレーション。プレイヤーは巨大砲台「IRON NEST」の砲撃手として、最高司令部や前線から送られる報告などをもとに砲撃地点を測定。徹甲弾や発煙弾といった30種類に及ぶ弾丸から最適な種類を選択して、砲撃を行っていきます。日本語にも対応済み。
『IRON NEST: Heavy Turret Simulator』は、1,980円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Nickこんにちは!Nick Talmers Nieuwoudtです。ゲーム開発歴は約20年、ゲーマー歴は30年ほどになります。
私の人生において最も好きなゲームを一つ選ぶとしたら、初代『Crysis』になると思います。この作品は、私がゲーム開発の道を志すきっかけとなったゲームの一つであり、技術面でもクリエイティブ面でも非常に大きな衝撃を受けました。
ただ、純粋なプレイ時間の長さで言えば、『Arma』シリーズと『Total War』シリーズが間違いなくトップですね。長年にわたり、それぞれ5,000時間から10,000時間くらいはプレイしてきたのではないかと思います。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Nick『IRON NEST』を特徴的な存在にしているのは、単に砲撃をシミュレートするにとどまらない点だと思います。本作は、プレイヤーを「砲撃の責任を負う人物」という立場に置き、プレイヤーは大きなプレッシャーの中で決断を下し、マシンの中から戦場を管理するのです。
砲撃を行うのは最終段階に過ぎません。真のゲームプレイは「何に攻撃するのか」「いつ攻撃するのか」、そして「手元にある情報で正しい決断を下せているのか」を判断することにあるのです。
それこそ、私が探求したかったゲーム体験でした。外部から操作するのではなく、マシン内部にいる人間としてのプレッシャー、集中力、そして責任感を描くということです。このような視点を扱ったゲームはこれまであまり多くなかったと感じており、それこそが『IRON NEST』の根幹となりました。
本作のアイデアは、現実世界に存在する数々の資料と、実験の繰り返しとプレイテストの組み合わせから生まれました。私の最初の目標は非常にシンプルで、「戦艦の砲塔内部から操作している感覚を再現したい」というものだったのです。そこから様々なゲームシステムのプロトタイプを作成し、アイデアを掘り下げていきました。遊んでいて心地よく、ゲーム体験をより深めてくれる要素を残し、逆に不要と思えるものや体験の邪魔になるものは削ぎ落としていったのです。
『IRON NEST』の大部分は、そうした絶え間ない試行錯誤のプロセスを経て作られました。プロトタイプを作り、テストし、手触りを確かめ、洗練させるか、さもなければ捨て去る…その繰り返しだったのです。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Nickあります。最も大きな影響を受けたものの一つが、大友克洋監督の「大砲の街」です。幼い頃に観たのですが、非常に強い衝撃を受けました。あの雰囲気やメカニック、そして何より「ごく普通の人々が、あの巨大な兵器を操作している」というアイデアが、長年にわたって私の心に強く残り続けていたのです。
ゲームデザイン面においては、『HighFleet』や『PVKK: 惑星防衛砲指揮官』といったタイトルから影響を受けました。単なる背景描写としてメカを扱うのではなく、「複雑なマシンを操作する行為そのもの」を面白く描いているゲームは、本当に強くリスペクトしています。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Nick開発の最初期、友人に見せた『IRON NEST』の最初のプロトタイプでの出来事が、特に忘れられない思い出の一つですね。彼が最初の標的に砲撃を命中させた後、私はゲームの感想を聞こうと色々質問したのですが、彼はとにかくプレイを続けたくて私の問いかけを完全に無視したのです。当時のプロトタイプでは遊べる部分なんてほとんど残っていなかったんですけどね(笑)。
しかし、自分が個人的に夢中になっていた非常にニッチなゲームシステムに、他の人がこれほど没頭している姿を目にしたのは実に感慨深い瞬間でした。それに、この友人は普段私のアイデアがイマイチだと容赦なくダメ出ししてくるタイプだったので、そんな彼のリアクションはなおさら大きな励みになったのです!
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Nick最も心に響いたのは、退役軍人の方々からいただいたフィードバックです。彼らからは「自分たちの体験を思い出させてくれる」「本物の射撃指揮官や砲手という仕事の重要な側面を見事に捕らえている」という連絡をもらいました。
言うまでもなく、『IRON NEST』は文字通りの意味でリアルなゲームではありません(何しろプレイヤーが操作するのは巨大な歩行砲兵マシンですから)。しかし、「体験としてのリアリティ」は、私にとって常に極めて重要な要素だったのです。
開発期間中、実際にそうした仕事を経験された方々と話をし、彼らがどのような状況に対処しなければならなかったのか、日常的にどんな問題を解決しようとしていたのか、そしてそこに伴うプレッシャーや責任感とはどういうものなのかを理解しようと努めました。私の目標は、決して「砲台がどのように動作するか」を完璧に再現したシミュレーターを作る事ではありませんでした。むしろ、「操作の責任を負う人物がどのような感覚を抱くのか」という精神面でのシミュレーターに近いものを作りたかったのです。
リリース以来、想像もしていなかったような個人的な体験談やメッセージを退役軍人の方々から受け取っています。ある方からは、このゲームをプレイしたことが、PTSDと関連する辛い記憶と向き合うきっかけになったとまで言っていただけました。
そうしたメッセージには、本当に目頭が熱くなりました。自分が作ったものが、これほどまでに誰かの心に深く影響を与えるなんて、夢にも思っていませんでしたので。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Nick私たちの最優先事項は、現在開発およびテストを進めている「Save & Quit / Continue」機能の追加です。これと並行して、引き続きバグ修正や快適性の向上、そして「スカーミッシュミッション」の追加にも取り組んでいます。
その後は、新たなミッションタイプや新規ゲームシステム、新弾薬タイプなど、コアな体験をさらに拡張する要素を盛り込んだ「フルキャンペーン拡張」へと移行する予定です。ロードマップのさらに先では、協力プレイやマルチプレイの導入も目指しています。プレイヤー一人ひとりが自身の「IRON NEST」を操作し、同じ戦場でフレンドと肩を並べて戦えるようにしたいと考えています。
このように、ゲーム自体はすでにリリースされていますが、この作品の上に積み上げていきたいコンテンツは、まだまだ山ほど残されているのです。
――本作の日本語対応状況について教えてください。大変だった点はありますか?
Nick『IRON NEST』は現在、コミュニティの皆さんのご協力により日本語ローカライズに対応しています。ローカライズは継続的なプロセスですので、翻訳の問題や不自然な表現、その他日本語版の品質向上につながるご指摘やご報告はいつでも大歓迎です。
技術的に最も大きかったハードルの一つが、ミッションのタイプライターシステム、特に部隊名の取り扱いでした。『IRON NEST』のミッションテキストは自動生成のため、それらの名前は通常の翻訳のようにあらかじめ用意された固定の文章の一部ではないのです。ミッション生成システムによって、文章の中に動的に組み込まれているのです。
そのため、部隊名やその他の自動生成要素も正しくローカライズできるよう、システムそのものの根幹を拡張する必要がありました。単に個々のテキストを翻訳するだけでなく、ローカライズがいかにシステム設計そのものに深く関わってくるかを示す、非常に良い例になったと思います。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Nickもちろんです。プレイヤーの皆さんは、YouTubeやTwitchなどのプラットフォームで『IRON NEST』の配信や動画投稿、ならびに収益化を行っていただいてまったく問題ありません。皆さんがこのゲームでの体験を共有してくれるのを見られるのは、私たちも嬉しいのです。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Nick本当にありがとうございます…正直なところ、『IRON NEST』がいただいた多くの支援に対して、どれほど感謝しているかを言葉で表現するのはとても難しいと感じています。
本作の開発を始めた当初、このゲームは非常に個人的で、これ以上ないほどニッチなアイデアに過ぎませんでした。それが世界中のプレイヤーの皆さん、そして日本のこれほど多くのプレイヤーの方々に届くなんて、夢にも思っていなかったのです。
本作をプレイし、議論し、コンテンツを作り、フィードバックを送り、改善に協力してくれる人々の姿を目にするのは、本当に素晴らしい体験でした。『IRON NEST』をプレイしてくださった方、本作を誰かに勧めてくださった方、本作に関するコンテンツを作ってくださった方、そして単にこの「小規模のちょっと変わったゲーム」にチャンスを与えてくださった日本のすべての方々に、心から感謝申し上げます。
皆さんが私たちと共にこの旅路を歩んでくださっていることに、深くお礼申し上げます。
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に1,000を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。







