1990年代に32bitCPUを搭載する先進的なマルチメディア端末の共通規格として誕生した『3DO』を、2020年代に復活させるという壮大なプロジェクトが、先週、LinkedInで発表されました。
そして今週、そのプロジェクトはあっけなく終了しました。

3DOを復活させるとアナウンスしたのは、2009年に倒産していたはずのEmpire Interactiveというビデオゲーム開発会社です。Empire社はオリジナルの3DOを企画したThe 3DO Companyの知的財産を取得したと主張し、ゲームコンソール市場への参入を目標に掲げているようでした。
1990年代に消滅したマルチメディア・ゲーム機を、2000年代に倒産した会社が2026年に復活させると発表したこのゾンビのようなプロジェクトには、最初からきな臭さが漂っていました。
3DO復活をアナウンスしたLinkedInのプロフィールには「1987年設立」と、オリジナルのEmpire Interactiveのように記されていますが、実質的にはオリジナルの3DOを企画したThe 3DO Companyの知的財産を取得したと主張する新会社だったと言えます。
また、現在設置されているEmpire社のウェブサイトには情報はほとんどなく、一部に事実と異なる情報も記されています。
現在のEmpire Interactiveは本来の共同創業者であるイアン・ヒギンズ氏とサイモン・ジェフリー氏とは無関係で、 Işık Şekercigilなる、ほとんどネット上には情報がない謎の人物が創業者として、6月はじめに新規に設立されました。
3DO復活プロジェクトの発表後、レトロゲーム情報メディアであるTime Extensionのインタビューを受けたŞekercigil氏は、3DO復活を掲げた理由を「丁寧に作り込まれたリマスター版を通じて伝説的なタイトルのいくつかをプレイヤーに届けるため」だと述べました。そして、その時点で同氏が取得しているのは3DOの知財(IP)ポートフォリオではなくブランド資産であることも明らかにしました。
またEmpire社については、「3DOの旧作ゲームの新バージョンに加えて、最新の社内AAプロジェクト」を開発しているとしつつ、なぜかElectronic Artsのライフシミュレーションゲーム『Sims』によく似た『Simoria』なる、3DOとの関連がよくわからない作品を紹介しました。
さらに、Şekercigil氏は長期的なビジョンとしてレトロゲーム専用機と、次世代の3DOとなる新設計マシンの独自ゲーム機2種類を開発するという目標まで示したとのことです。
ただそれでも、Empire社が3DO関連のIPをどれほど取得しているのかなど、不明な点はいくつも残ります。その点に関しては、関係各所やコミュニティとの間で交渉を活発化させているとしていました。
しかし結局のところ、同社が3DO復活プロジェクトを早々に諦めることにしたのも、このIPにまつわる部分が主な原因であるようです。
伝えられた限りでは、計画そのものもかなりざっくりとした感じでしたが、そもそもの問題として、3DOの名前を使ったゲーム機を作る権利すら取得できていなかったとTime Extensionは報じています。Empire社が持っていたのはThe 3DO Comopanyのブランド権利で、3DOハードウェアのブランド権利ではありませんでした。さらに3DOのハードウェア製造に関する権利にはパナソニックや香港ゴールドスターのほか、複数企業が絡み合っており「権利のこのような細分化は想定していなかった」と同社は述べました。
そして、LinkedInへの投稿でEmpire社は「この市場のニッチな性質と、長期にわたる法的紛争の可能性を考慮し、当社は長期にわたる訴訟手続きには関与しないことを選択した。そのかわりとして、当社は次世代ゲームの開発に注力していく」と述べています。













