
Valveの送る新型コントローラー「Steam Controller」の発売から、約一ヶ月が経過しました。まだまだ再販タイミングも多くはなく、購入を希望していてもなかなか手に入りづらい状況ではあります。筆者は初回のタイミングで運よく購入できたため、このような製品レポを書かせていただきました。
そんなSteam Controllerに関して、今回Game*SparkではValveの開発チームにメールインタビューを実施しました。コントローラーとしての機能マシマシな本機はいかにして出来上がっていったのかを聞かせていただいたので、是非ご覧ください。

PCゲーマーが極めて高いパフォーマンスを求めていることを、私たちは知っている
――初代Steam Controllerが2019年に生産終了となってから数年が経ちました。なぜこのタイミングで新モデルのリリースを決めたのか、理由を教えていただけますか?
Valve:「Steam Deck」をリリースした際、初代コントローラーから学んだ多くのことを入力系の設計に活かしました。独立した十字キーや2本のアナログスティックの重要性などがその一例です。そしてSteam Deckのリリース後、私たちはゲーマーの入力体験についてさらに多くのことを学びました。そこには、ユーザーがDeckをテレビに接続した際、(その操作方法として)標準的なゲームパッドを使うことで、Deck本体が提供していた多くの入力機能が失われてしまうという問題があったのです。

私たちは、優れたPCゲーム用コントローラーの選択肢を提供すると同時に、この体験の「穴」を埋めたいと考えていました。そこに新しい「Steam Machine」の登場が重なったことで、PCゲームコミュニティに向けて新しいSteam Controllerを制作する絶好のタイミングとなったのです。

ーー 開発の初期段階で、チームが「これだけは絶対に譲れない」と合意した共通のビジョンはありましたか?
Valve:はい、絶対に譲れない点がいくつかありました。
Steam Deckとの入力の共通性: Steam Deckを持っている人が、Steam ControllerとSteam Deckを行き来する際に、まったく違和感なく馴染めるようにしたいと考えました。
エルゴノミクス(人間工学)を犠牲にしない: Steam Deckにおける挑戦の一つは、すべての入力要素(初代Steam Controllerの要素 + 追加のアナログスティック、十字キーなど)を、大多数の人にとって快適で使いやすい位置に収めることでした。今回のコントローラーでも全く同じゴールを掲げました。配置がSteam Deckと非常に似ていることに気づかれると思いますが、コントローラーの形状において、手の小さな人でも大きな人でも快適に機能するよう、膨大な時間をかけて微調整を行いました。
ーー 初代Steam Controllerは、十字キーを廃止して2つのトラックパッドをメインに据えるという、かなり「尖った」デザインでした。今回は2本のアナログスティックや十字キーといった標準的なコントロールが含まれています。この変更の背景にはどのような理由があったのでしょうか?
2015年の初代Steam Controllerは、「最初からそのために設計されていれば、コントローラーでもマウス&キーボード向けのゲームが快適にプレイできる」ということを証明目標に掲げていました。それはうまく達成できたと感じていますが、ゲーマーから寄せられたのは、従来のゲームパッドの入力(十字キーと2本目のアナログスティック)が、特にコントローラー向けに設計されたゲームにおいて非常に恋しい、という声でした。
Steam Deckを設計する際、私たちは2015年のSteam Controllerからの学びを活かし、先進的な入力(トラックパッド、ジャイロ、背面グリップボタン)だけでなく、従来のゲームパッドの入力(特に2本目のスティックと独立した十字キー)もすべて搭載することにしました。Steam Deckではそれが成功したと感じていますし、ユーザーの皆様からも成功だったという声をいただいています。そこで、その学びを今回の新しいSteam Controllerにも応用したのです。

ーー 試作段階において、初期バージョンから現在の最終バージョンに至るまで、およそ何台のプロトタイプが作られたのでしょうか?
Valve:あらゆる種類の機能を試すために、数百台のプロトタイプを作成しました。その多くは動作しない外観のみのモデルでしたが、可動モデルや、一部の入力機能だけが動作するモデルも作りました。そして、スタッフが自宅に持ち帰ってプレイテストを行える完全動作するプロトタイプだけでも、数十回ものイテレーション(反復開発:企画・設計・実装・テストといった工程を小さな単位に分割し、それを短いサイクルで繰り返す手法)を行いました。
ーー 開発プロセスを振り返って、スケジュールや技術的な挑戦の面で「これが間違いなく最大のハードルだった」と感じた瞬間はどこですか?
Valve:コントローラーのエルゴノミクスを完成させることは、途方もない挑戦でした。Steam Deckで多くのことを学んでいたとはいえ、コントローラーという形状は、取り組むべき課題がまったく異なります。快適な答えにたどり着くために、丸一年を費やし、何百もの動作・エルゴノミクス用プロトタイプを制作しました。
ーー ハプティクス(触覚フィードバック)の面において、初代の振動モーターやSteam Deckの「HDハプティクス」と比較して、技術はどのように進化しているのでしょうか?
Valve:
トラックパッドについて: トラックパッド上のハプティクス反応のフィデリティ(忠実度)と強度は継続的に向上させており、結果として、より応答性の高いマウス操作を体感できるようになっています。根幹にあるハプティクスモーターの技術はSteam Deckと同じですが、ソフトウェア側の改善を常に重ねています。
全体的なハプティクスについて: 今回のSteam ControllerにはHD振動モーター(LRA/VCA)を搭載しています。これにより、この機能を活用しているゲームにおいて、より精密で強力なワイドバンド(広帯域)ハプティクスを作り出すことが可能になりました。
ーー 「ゲーム機メーカーが公式にリリースしたコントローラー」として見た場合、TMRスティックのような高品質な部品が使用されていることもあり、任天堂のPROコントローラーやXboxのコントローラーよりも高価格・高性能な位置づけと言えると思います。このレベルの性能を目指した特別な理由はありますか?
Valve:PCゲーマーが極めて高いパフォーマンスを求めていることを、私たちは知っているからです。
TMRアナログスティックの採用は、多くのコンソール用やPC用コントローラーが抱えている「長期的な信頼性と性能の維持」という現実的な問題に対する解決策となります。また、ジャイロ、トラックパッド、背面グリップボタン、そして新たに搭載された「Grip Sense」など、他の高性能で先進的な入力機能も備えており、ユーザーが自分の望むスタイルでプレイできるよう、膨大なカスタマイズ性を提供しています。
総じて、このコントローラーでは「高いパフォーマンス」と「多種多様な入力系」に焦点を当てています。従来のいわゆる「プロコン」カテゴリーよりも手頃な価格に抑えるため、物理的なパーツの交換機能や、メッキ加工されたプラスチック部品といった要素の採用は避けました。

ーー プレイテストには主としてどのようなタイトルを使用されたのでしょうか?
Valve:このコントローラーが提供する選択肢が非常に膨大であるため、あらゆるジャンルで優れた体験を提供できるよう、本当に多種多様なジャンルをテストしました。FPS、デッキビルド系(カードゲーム)、プラットフォーマー(2D/3Dアクション)、4Xゲーム/ストラテジー、RTS、その他数多くのタイトルです。
ーー 将来的に、外観をカスタマイズするための追加のカラーバリエーションや、交換可能なフェイスプレート等を提供する予定はありますか?
Valve:カラーバリエーションに関して現時点でお話しできることは何もありませんが、私たちは常にフィードバックや要望に耳を傾けています。もし取り組む意義があると判断すれば、検討する予定です。
ーー コントローラーを落とすと悲鳴をあげるというイースターエッグ(隠し要素)が話題になっています。このコントローラーには、他にも隠されたイースターエッグがあるのでしょうか?
Valve:ここでイースターエッグのネタバレをしてしまったら、楽しみがなくなってしまいます(笑)。
ーー 今後、ユーザーからどのようなフィードバックが届くのを最も楽しみにしていますか?
Valve:ソフトウェア、ハードウェア、あるいはゲームとの相性に至るまで、体験のあらゆる側面に関するユーザーからのフィードバックをいつも楽しみにしています。ユーザーの皆様からのフィードバックは、私たちが次に何に注力すべきかを決定するための、最も重要なデータの一つなのです。
『Steam Controller』は日本ではKOMODO Stationから購入可能です。価格は17,800円です。
再販のタイミング等はKOMODO 日本公式Xにて告知がなされるようです。購入希望の方はフォローしておくことをオススメします。









