2026年3月18日、KOJIMA PRODUCTIONS本社にて、メディア向けオフィスツアーと、PC版『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の開発を担当したクリエイターへのインタビューが行われました。
ルーデンス君が鎮座する鏡張りの「エントランス」――こだわり抜かれたKOJIMA PRODUCTIONSメディア向けオフィスツアー
インタビューに先駆けて、まずはコジプロのオフィスを見学させていただけることに。
最初に訪れたのは「エントランス」と呼ばれるお部屋。何もなくただ暗いだけの丸い空間に、一筋のライトが真っすぐ地を這っています。オフィスというよりホラーゲームの1ステージのような印象でしたが、スタッフがボタンを押すと、ライトの先が開き、なんとそこには……!

ルーデンス君ッ!
上下から煌々と真白い光が差し、目を覆うほどの眩しさのなかで、コジプロのマスコットであるルーデンスが鎮座していました。
左右は合わせ鏡になっており、ルーデンスと我々が無限に連なって見えます。

あまりの神々しさに溜息が出そうになります。ここが本当に会社の一室なのか……?
左の鏡が過去、ルーデンスのいるところが現在、右の鏡が未来を表しているとのこと。まるで映画『2001年宇宙の旅』のセットに迷い込んだかのような気分になれました。
続いて、アーカイブルームで開発資料などを拝見させていただいたあと、レコーディングルームや撮影スタジオなども見せてもらいました。どこも写真撮影NGとのことで、皆さんにお伝えできないのが残念です!
しかし、休憩室にあったレゴ・ルーデンス君は撮影OKだったので、こちらをパシャリ。

こちらは「DEATH STRANDING 2 JAPAN POPUP TOUR FINAL SPECIAL EXHIBITION」でも展示されていた、レゴブロックで作り上げられたルーデンス君。四角くてコミカルながら、圧倒的な存在感が伝わってきます。
制作されたのは、日本人初のレゴ認定プロビルダー、三井淳平さんです。
ここからは、開発者へのインタビューをお届けします。
インタビューに答えてくれたのは、KOJIMA PRODUCTIONSの𠮷池博明さん(リードレベルデザイナー)、内田貴之さん(テクニカルアートディレクター、リードエンバイロメントアーティスト)、酒本海旗男さん(チーフテクノロジーオフィサー、テクニカルディレクター)です。
こだわり抜かれたPC向けグラフィック表現と、新難易度「to the wilder」の概要を語るインタビュー
――『DEATH STRANDING』は高く評価された一方で、さまざまな要望も寄せられていたと思います。ユーザーフィードバックの中で特に印象的だったもの、またPC版で反映された要素があれば教えてください。
𠮷池特に印象的だったのは、想定以上にフォトモードの評価が高かった点です。ユーザーの皆さまが非常に楽しんで使ってくださっている印象があります。
そのため、今回のPC版ではフォトモードをさらに拡張しています。キャラクターやフレームのバリエーションを増やすなど、より遊びの幅を広げる形で強化しています。

――PC版の開発について、期間や人数などを教えてください。
酒本詳細な期間や人数についてはお答えできませんが、今回のPC版は当初から重視して開発を進めていました。
PCはスペックの幅が広いため、まずPS5で高品質な映像を実現することを目標としつつ、低スペック環境への対応を想定していました。そのため、その部分については外部パートナーであるNixxes Software社に先行して対応していただいています。
その後、PC版の仕上げ段階に入るタイミングで、社内のメンバーやアーティスト、デザイナーが加わり、アセットの最適化や検証を進めました。
特にPC版では、32:9といったウルトラワイド解像度への対応があります。これにより、従来想定していなかった表示範囲が見えるようになり、アーティストによる細かな確認と修正が必要になりました。

――新規アセットの制作というよりは、低スペック向けの最適化が中心という理解でよいでしょうか。
酒本はい、低スペック環境でもより良く見えるよう調整しています。
一方で、高スペック向けの要素としてはレイトレーシングを実装しています。ただし、これにより想定外の問題も発生しました。
たとえばカットシーンにおいて、カット切り替えのたびに、見えない前提でオブジェクトをわずかに動かしたり置いたりしているわけですが、レイトレーシングによって、それらが反射で見えてしまうケースがありました。本来閉じているはずの扉が、反射によって開いているように見えてしまう、といった感じです。こうした問題への対応は、かなりの調整が必要でした。
なお、テクスチャ自体を新たに高解像度化したわけではなく、既存のアセットをより適切に読み込ませる形で対応しています。

――ウルトラワイドディスプレイならではの魅力や、特に体験してほしいシーンがあれば教えてください。
内田やはり風景表現です。特に冒頭のシーンは、最も力を入れている部分のひとつですので、ウルトラワイド環境では非常に高い没入感を得られると思います。
𠮷池32:9のスーパーウルトラワイド環境では、「その場にいる感覚」がより強くなります。PCならではのリッチな体験として、ぜひ味わっていただきたいですね。
酒本もともとは21:9までは想定していましたが、32:9については当初予定していませんでした。ただ、私の職場環境で表示してみたところ、アーティストから「これは対応したい」という声が上がり、可能な範囲で実装することになりました。
𠮷池ウルトラワイド環境では、ゲームプレイにも変化があります。たとえば敵地への潜入時など、画面の端に敵の存在が見えるようになり、体験の感覚が大きく変わります。これまでにはなかった「視界の広さによる臨場感」を味わえる点も、PC版ならではの魅力です。

――画角や表示に関しては、基本的にコンソール版の仕様をベースに横方向へ拡張した形でしょうか。
酒本はい、基本的にはそうなります。
やはり小島作品としては、物語を正しい形で伝えることを重視しています。ユーザー側にすべてを委ねてしまうと、本来見せたいものが損なわれるような状態にもなりえますので、画角についてはディレクションを入れました。
――グラフィックスについてお聞きします。前作からLOD制御が非常に優秀で、ポッピングがほとんど分からないレベルでしたが、これはアートチームの力によるものなのでしょうか。また『DEATH STRANDING 2』ではどうなっているのでしょうか。
酒本はい、基本的な仕組み自体は従来と同様です。
ただ、とにかくポッピングを目立たせないことについては、小島自身も非常に気にしているため、かなりコストをかけて調整しています。内部的にはLODの切り替え自体は当然行われていますが、それがプレイヤーの体験として認識されないよう、最後まで細かく調整しています。
内田LODには大きく3段階の変化があり、それぞれの遷移をいかに自然に見せるかが重要になります。単純な切り替えではなく、中間的な状態を挟みながら、違和感を抑える工夫をしています。
酒本特に冒頭のシーンは無茶なポリゴン数で……(笑)。初期段階で4000万から5000万のポリゴンを扱っていました。
まずはリアルに見えるものを作ることを優先し、その後で最適化を進めるというアプローチを取ったんです。最終的には約2500万ポリゴン程度まで削減しましたが。
ただし、これはすべてが常時描画されているわけではなく、カリングによって実際の描画負荷は抑えています。描画コマンドとしては約2500万ポリゴン規模ですが、それ以上のデータが内部には存在しています。

――ウルトラワイドディスプレイや3Dオーディオ以外で、PC版の注目ポイントがあれば教えてください。
𠮷池フレームレートの違いがあります。マシンスペックには依存しますが、高フレームレートによって体験そのものが変わる可能性があります。
以下の要素はPS5版のアップデートにも来ますが、新要素として「to the wilder」を追加しています。
このモードは、より厳しい環境でゲームを体験できる高難易度設定です。ユーザーからの要望を受けて実装したもので、『デス・ストランディング2』の世界観をよりリアルに再現することを目指しています。
従来の高難易度では、リソース管理や装備選択をそこまで厳密に考えなくても進行できる場面がありましたが、本モードではそうはいきません。
VR訓練についても、ニールと再戦できるようになり、スコアが表示されるようになりました。より高い成績を目指すためには、プレイヤー自身の工夫や最適化が求められます。
新たな報酬として、ファッション要素も追加しています。
たとえばバンダナなどのアクセサリーが登場し、見た目のカスタマイズを楽しめるようになっています。また、追加のカットシーンも用意しています。
他にも、マゼランにタールマンのネコがうろつくようになったので、可愛がってあげてください(笑)。

――「to the wilder」について、もう少し詳しく教えてください。
𠮷池特に重要になるのがリソース管理です。なかでもバッテリーと靴の管理は非常にシビアになります。通常難易度では、靴をほとんど交換せずに進めることも可能ですが、「to the wilder」では消耗が激しく、途中で壊れることが頻繁にあります。そのため、これまで使っていなかった装備(予備の靴や靴底など)の重要性が増します。
また、荷物のケースも劣化しやすくなるため、判断ミスが大きなリスクにつながります。この「ヒヤヒヤ感」は、初代『DEATH STRANDING』に近い感覚とも言えます。
本作では、小島の意向もあり、基本的にはスムーズにクリアできる導線を重視しています。一方で、「より過酷な体験を求めるユーザーの声」も把握しており、それに応える形で「to the wilder」を用意しました。序盤ではそれほど違いを感じないかもしれませんが、後半になるにつれて難易度が大きく変化します。
特にインフラ整備(国道建設など)を進めようとすると、リソース確保や運搬の負担が増し、より戦略的なプレイが求められます。インフラ整備に必要なリソース量自体は増えていませんが、「調達して運ぶ難しさ」が増しています。そのため、他プレイヤーとの繋がり(ストランド契約)の重要性も高まっています。

――カットシーンのフレームレートは固定なのでしょうか。
酒本はい、60fpsで固定しています。これは、カットシーンがフレーム単位で厳密に制御されているためです。たとえば一瞬だけ表示される要素や、特定のタイミングで消える演出などは、60fpsを前提に調整されています。フレームレートをそれ以上に引き上げた場合、どのフレームで処理が行われるかが変わってしまい、意図した演出の品質を保てなくなる可能性があります。そのため、アーティストの意図を守る観点から、60fpsに固定しています。
――高性能PC向けに、グラフィック面での追加要素はありますか。
酒本PC版ではレイトレーシングが利用可能です。これはPS5版では対応していない要素になります。設定としては、リフレクションおよびアンビエントオクルージョンに対して、通常の「高」設定よりさらに上の段階として適用されます。追加で有効化することで、よりリアルな表現が可能になります。

――Decimaエンジンについて、今後の展望や改善したい点があれば教えてください。
酒本弊社は映画的な表現をそのままゲームに取り入れられる方向を目指しています。それが結果的にアーティストの表現力を最大限引き出すことにつながると考えています。
現状では、すべての表現をそのまま実現するのは難しく、カット単位での調整や、場合によっては妥協も必要になります。しかし、将来的にはより自然に、制約なく表現できる環境を整えていきたいと考えています。
どちらが良いという話ではなく、弊社がGuerrilla Gamesと異なる点としては、彼らは誇張された自然表現を描くことに重きを置いていますが、弊社はより実写に近い表現を志向しています。俳優の演技を活かすためにも、その方向性は今後も重視していく予定です。
内田技術面については、Guerrilla Gamesと直接やり取りする機会もあります。開発者同士で意見交換を行うなど、継続的な技術交流が行われています。「そう使うのか~」と言ってくれるんですよ(笑)。こうした関係は設立当初から続いており、すでに10年近い積み重ねがあります。一方的なものではなく、お互いにメリットのある“Win-Win”の関係です。

――本作が初体験となるユーザーへメッセージをお願いします。
𠮷池PS5版のリリース時から「PC版を待っている」という声は非常に多くいただいていました。今回こうしてPC版をお届けできることを嬉しく思います。
さまざまなPCスペックに対応できるよう最適化を行い、快適にプレイできるよう調整しています。また、クロスプレイに対応しており、PS5版ユーザーと同じ世界で繋がることもできます。
前作をプレイした方も、初めての方も、どちらでも楽しめるよう設計していますので、ぜひ体験していただければと思います。
――今後、レイトレーシングからさらに進んで、パストレーシングのような技術を導入する可能性はありますか。
酒本技術的には可能性はありますが、「新しい技術を入れること」自体が目的にはなりません。最も重視しているのは、アーティストの意図を崩さずに表現できるかどうかです。
たとえばレイトレーシングやアンビエントオクルージョンを導入する場合でも、すべてのカットについてアーティストのチェックを通す必要があります。アンチエイリアシングの変更ひとつでも、数か月単位で検証と調整を行うことがありまして……ここがボケすぎるとか、大画面で確認して修正しているのです。
ある日、出来上がったものをアーティストに投げると、彼らは再生して観るわけではなくて、1フレームずつ手でキーを押してチェックしていました(笑)。
別の会社から弊社に入ったスタッフが弊社のトレーラー作りを見て「狂気的だ」とまで言っていましたね。
開発チーム全体として、非常に強いこだわりを持って制作を行っていますので、ただ単に新機能をそのまま実装するということはしません。最終的に重要なのは、技術そのものではなく、それによって実現される体験です。そのため、チーム全体で品質を徹底的に追求し、「納得できる状態」に到達するまで調整を続けます。

――今回の開発で苦労した点について教えてください。
酒本苦労したのは、幅広いPCスペックに対応するための最適化です。低スペック環境でも遊べるように調整を行うのですが、「クオリティを上げる」こと以上に「下げる」作業の難しさを強く感じました。単純に品質を落としていくと、画が崩れてしまう箇所が次々と出てきます。そのため、チーム全体で実際にプレイしながら、不具合や違和感のある表現をひとつひとつ修正していきました。

――そのクオリティで継続的に作品をリリースできているのは驚きです。
内田自分たちでも不思議に感じる部分はありますが、やはり作り続けているからこそだと思います。常に開発を続けているため、立ち止まって整理する時間をなかなか確保できないのが実情です。だから今回もCEDECに出れませんでした(笑)。
ウルトラワイド対応や高難易度「to the wilder」の実装により、『DEATH STRANDING 2』の体験はさらに進化しました。
徹底した最適化と、単なる移植や新機能の実装の先にある“表現”への執念は、開発陣の狂気的とも言えるこだわりの賜物だと感じます。
その一端を垣間見た今回の取材は、本作への期待をさらに高めるものとなりました。
PC版『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』は、Steam/Epic Gamesストアにていよいよ本日3月19日発売です。








