衝撃の不謹慎ゲーム新作『香港2097』クーロン黒沢氏&シミン氏インタビュー!込められた「“社会の期待に何一つ応えない”ゲームを作る」という想い、そして前作『香港97』開発の裏側 | GameBusiness.jp

衝撃の不謹慎ゲーム新作『香港2097』クーロン黒沢氏&シミン氏インタビュー!込められた「“社会の期待に何一つ応えない”ゲームを作る」という想い、そして前作『香港97』開発の裏側

“社会の期待に何一つ応えない”…新作のコンセプトが見えるインタビューです。

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2025年10月22日。一本の衝撃的なニュースが世界のゲームメディアの見出しを飾った。「『香港97』の続編、『香港2097』が発売される」……。『香港97』と言えば、著述家としても知られるクーロン黒沢氏が1995年に手掛けたメーカー非公認のアングラゲームであり、その不謹慎すぎる内容から今や都市伝説にも似た扱いを受けている作品ではないか。

陽気なBGMが無限にループされる中を、巨大な鄧小平が襲いかかる。新作では舞台がアメリカとなり、主人公が再び殺戮に乗り出すのだという。何故、『香港97』を今になって復活させようと思ったのか。どうして、『香港97』は現代に帰ってこようとしているのか。そもそもの話、『香港2097』なんてゲームが本当にこのご時世にリリースできるのか!?

未だ数々の疑問が残る中、Game*Sparkではそんな『香港2097』開発のキーマンであるカニプロ代表シミン・クリストファー氏、原作者であるクーロン黒沢氏の両名に、運よくお話をお伺いする機会を得られた。今回は、謎多き新作『香港2097』、そしてより謎めいた前作『香港97』の真相に迫るインタビューの模様をお届けする。

本当に出せるのかが疑わしい公式スクリーンショット

――あの、まず単刀直入にお伺いしますが、『香港2097』、”本当”に出せますか?

シミン:……ちょっと複雑な答えになりますが。先週の木曜日ぐらいに一応、Steam側に最初のビルドを提出しました。大体審査には1週間かかるんですよ。今週の火曜日に返事が来たのですが、まだこの時点では「ダメです」と言われていて、今ちょうど修正作業中です。

――そ、それは、やっぱり何かがまずかったんでしょうか……!?

シミン:いや、おそらく想像されてるようなことじゃなく(笑)、「ゲームの全てを確認したいからデバッグ機能付きバージョンをください」と言われてるんです。特に、一部実在の人物がゲーム中に出てくるのですが、画像の再利用についての海外の法律がちょっと複雑で。

Creative Commonsから商用OKのものを使っているはずなのですが、それで許可が出るのかが分からなくて。来週にもまた結果が来るはずです。それでOKだったら12月中にリリース。「これを変えてください」と言われたら、またちょっと延期になりますね。

インタビューを行った後の審査でも、Steamからは表現内容に対する検閲などはないことが明かされている

(※編注)審査に時間がかかったため、2026年第1四半期に延期となった



――……なるほど、一旦はリリースできそうとのことで大変安心しました。では、順番が逆になってしまいましたが、改めて自己紹介をお願いできますでしょうか?

カニプロ代表、シミン・クリストファー氏

シミン:『香港2097』の開発を手掛けているカニプロのシミンと申します。アメリカ人です。2005年から日本に来て、そこからずっと住んでいます。今はフリーランスですので、”よろずや”ですね。何でもやりながら、自分の時間でゲーム作りに挑戦しています。


『香港97』開発者・クーロン黒沢氏

黒沢:クーロン黒沢です。『香港97』の開発者で、今はYouTubeで動画をあげながらシックスサマナというミニコミみたいなやつを作っていますね。

――黒沢先生の経歴については別途補足を入れさせていただくとして(笑)、もしかしてシミンさんって、過去にYouTubeで『香港97』の動画を投稿されていませんでしたか……?

シミン:はい、その通りです。(笑)以前は”Ultra Healthy Video Game Nerd”という名前でYouTubeにゲーム動画をアップしていて、5年前に黒沢さんに単独インタビューを行いました。おそらく、そのときのインタビュー動画をご覧になっていただいたんですよね? 新作『香港2097』も、実はあのときの縁がキッカケで開発に至ったんですよ。

――熱心な『香港97』ファンがいるなと思っていたのですが、まさか続編開発にまで繋がるとは。早速ですが、新作『香港2097』の開発がスタートした経緯を教えてください。

シミン:まさにそのインタビュー動画で語られていたことなのですが、5年前の時点で黒沢さんの手元には幻のゲーム『香港97』のオリジナルディスクが2枚だけ残っていたんです。動画の後、それを私が黒沢さんに代理で売却することになりまして、去年末にようやく全ての在庫の整理が完了しました。その時点で前作『香港97』については一区切りがついたので、私から、一応提案してみたんです。「せっかくだから、続編を作りましょう」と。

――提案を受けた黒沢先生はどのように思われたのでしょうか?

黒沢:「まあ、いいよ」って感じでしたね。拒否する理由も特にないし。正直、続編自体は全く頭になかったんですが、彼にインタビューで呼んでもらったときもすごい熱量があったので、「この人だったら本当に“作る”って言ったら現実になるかも」と思ったんです。普通、『香港97』の続編なんて作れるとは思えないじゃないですか。でも、ゲームの骨組みを作った経験もあるし、熱量もある。彼だったら一緒にやっていけるだろうと思ったんです。乗り気だったというよりかは、まあ、任せられるなと思ったので。

……あの、“著作権”というか。『香港97』に“著作権”……!? いや、そういう言い方が合ってるのかは分からないですけど!正確に数えたわけじゃないですが、『香港97』っぽいというか、似たようなゲーム、フォロワー作品、タイトルが同じような動画作品って世間には沢山あるんですが、僕に直接コンタクトを取ってきたのって彼だけなんですよ。そこまでちゃんと筋を通されたら、まあ、断る理由もなかったというか……。

よく分からない内容の公式スクリーンショット

――シミンさんとしては、どういった想いで続編開発を提案したのでしょうか?

シミン:いろんなきっかけがあります。まず前段として、私が途中まで作りかけていたゲームがあったんですが、そのゲームが縦シューティングだったんです。これがもう半分くらいは出来上がっていたので、『香港97』の新作にソースコードをそのまま転用できるんじゃないかという算段がありました。それがきっかけの50%ですね。

もう50%が、「私じゃないと絶対に誰もやらない」と思ったからです。私はゲームを作るとき、必ず新要素を入れたいタイプなんです。ヒットせずに失敗したとしても、必ず今までになかったものをゲームに取り入れたい。でも、結局のところ人気になるゲームはジャンルが似通っていて、正直、自分の中では遊びがマンネリ化しているとも感じていました。なので、そんな市場に向けて、ちょっと精神をぶっ飛ばすものを作りたかったんです。

となればやはり、『香港97』でしょうと。

――開発体制について教えてください。基本的にお二人で作られているんですか?

シミン:グラフィックについてはイラストレーターさんに何個かお願いした部分もありますが、基本的には二人ですね。アイディアを少しずつ出しあいながら、大体3月、4月くらいから作ってきました。

黒沢:アイディアについても半々ぐらいですね。彼が以前に作ってたゲームは、僕、事前に知っていたんです。ベースになるシューティング部分は、彼の方がマニアックだし熱量もあるから。僕はそれ以外の部分でアイディアを出していけたら、みたいな。

――前作『香港97』は、メーカー非公認で作られたアングラ・ゲームとして今では伝説的な扱いを受けるタイトルとなっていますよね。

黒沢:30年以上前の話になりますから、自分でもいつ作ったかもあまり記憶にないくらいの作品なんですけど。……たぶん、誰も知らないよりはいいんじゃないですかね?(笑) 

2015年あたりに海外のYouTuberに取り上げられてから海外で作品の注目度が上がったというのはあると思うんですが、それにしたってもう10年くらい経った話なんで、今出してどのくらい反響があるかは正直自分でもよく分かってませんね。

――黒沢さんにとって『香港97』は当時どういった作品だったのでしょうか?

黒沢:どういった、とは?

――はい、「こういった開発意図があった」ですとか、「こういったメッセージを込めていた」とかあれば、是非教えていただきたいなと。

黒沢:あー……。いや、当時は僕もまだ子供だったんで、頭がおかしくて。あれで儲かると思ってただけなんです。あれがバカ売れすると思ってたんですよ!もちろん今みたいに評価されるとかも全く頭になくて。単なる、”夏のおこづかい稼ぎ”のつもりだったんです。

当時の僕はパソケットで不謹慎なゲームをよく売ってたんですが、そういうテイストのゲームしか作れなかったんで、最初から「何を作ろう」みたいな考え自体が頭になかったんで。『香港97』には一緒にゲームを作ってくれたプログラマーがいましたけど、僕が作ったデータを最初に見せたときも、彼は本当に嫌そうな顔をしてましたから(笑)。

オリジナル版『香港97』のスクリーンショット

それまでゲームは基本的に自分ひとりで作ってたんですけど、クレジットを見れば分かる通り、『香港97』の開発には何人かの力を借りました。イラストレーターとして名前が入ってる人は、僕が作ったキャラがあまりにもひどかったんで、アニメーションとか直してくれた人がいて、その人の名前が入ってます。残り2人が翻訳。「このゲームについては流石に自分じゃプログラムが作れないぞ」と思っていたときに、ちょうど「手伝うよ」って声をかけてくれた人がいて、プログラマーとしてクレジットされているのがその人ですね。

『香港97』は、僕のひどいアイディアを彼に一晩で形にしてもらえたんで、「じゃあ、もうこれで完成でいいや!」となって、それがそのまま世に出たゲームなんです。

前作『香港97』のオリジナルディスク

――実際のところ、バカ売れしたんでしょうか?

黒沢:いや、儲かんなかったです、当然。ラベルの印刷代も回収できてないです。当時は私書箱でしか売っていませんでしたし、売れたのは20~30本とかじゃないですかね?世に出回っているのはあとは全部コピー品です。僕が作ってきたゲームの中でも、かなり“売れなかったほう”ですよ。これについては同人イベント等で販売した記憶もないですしね。

シミン:ちなみに、昨年末オークションにかけたときの落札価格は4,000ドルでした。それですら僕は「10,000ドル以下はまだ安いでしょう!」と思ってますが。でも、競り落とした人は『香港97』が本当に好きな人だったので、結果的に良かったとも思ってますね。

――この手ゲームのインタビューですと、大抵「当時の社会に対するメッセージだったのでしょうか?」「当時はどういった点を世に売り出そうと思ったのでしょうか?」みたいな話をお伺いすることが多いのですが、もしかしてその口ぶりですと、おそらく……?

黒沢:僕はこれまで、今だと“不謹慎ゲーム”って言われてるようなゲームをいくつも作ってきました。ただ、当時から可愛い女の子とか描けばもっとゲームが売れるのは分かってたんです。……でも、できないから!自分一人でできる範囲だとあれしかできなかったから、結果的にそういうゲームを作ってただけなんです。

今から思えば、世間に憎しみを持ってましたね。でも、だからこそ「やれるだけのことはやってやろう」っていうつもりでもいました。『香港97』の売りは、”不謹慎さ”、それだけです。本当にこじれてました、当時は。もう、犯罪者一歩手前みたいな……。

オリジナル版『香港97』

ゲームシステムも「こんな風にしたい」みたいな考えがあったわけじゃなく、別のゲームをベースにして「これでどうにかゲームになるように」と思って作ってましたし。全部が全部憎しみで作っていたんで、ストーリーも悪い方に悪い方に考えてああなった。ボスとして出した巨大鄧小平なんかも、BGMに採用した曲との絡みもあったので中国をテーマにしたいと考えていたとき、「使えそうな絵がないかな」と思って眺めていた雑誌にちょうど写真が載っていたので、「これでいったろう」と思っただけなんで。

巨大兵器と化した鄧小平は新作でも健在

――では、ご自身の意図から外れて語られるようになった『香港97』の伝説を、黒沢さん本人はどのように捉えられていたのでしょうか?

黒沢:正確な年は忘れたんですけど、僕の記憶ではイギリスかどこかの「クソゲーベスト10」みたいな企画で『香港97』が1位になったのが始まりだった気がします。だから僕からしてみると、『香港97』は伝説になってからの歴史の方が結構長いんですよね。2015年にAngry Video Game Nerdがレビュー動画を出してバズった直後は、世界中から問い合わせがバーッてきて一時期すごかったですけど。

そんなに……もうなんか、慣れたって言うとおかしいですけど、あんまり無感動というか。別に僕にお金が入るわけでもないし。ソースコードも完全になくしてしまって、もう再販もできない作品でしたから。

――”クソゲー”呼ばわりされていることについてはいかがでしょう?

黒沢:いや、別に。評価は評価する人の主観なんで、勝手にしてくださいとしか。

――「当時の中国の総人口である12億人を倒せばエンディングが見れると説明されているけど、実際にはスコアを弄ってみても何もない」みたいな批判については……。

黒沢:あ、エンディングがあるかどうかですか? 正直に言って、分からないです。僕も別に確認したわけじゃないんで。通しで遊んだことが一度も無いので、自分でもエンディングがあるかないかも分からないです。12億人倒せたら、倒してみてください。

主人公である殺しのプロ・陳

――……お話を聞けば聞くほど、この作品を現代に復活させようと思ったお二人の挑戦は、ゲームの歴史においても異例の出来事のように感じます。新作『香港2097』は、前作『香港97』にとってどういった位置づけの作品になるのでしょうか?

シミン:完全に続編ですね。主人公も前作と同じ陳です。彼は前回の戦いで、巨大鄧小平を倒す寸前で結局やられて死んでしまいました。しかしガンジス川によって汚染された彼の遺体は、生まれ変わるというか……進化することで復活を果たしました。そのとき、復活した陳の頭に天からの声が響いたんです。「アメリカに行って、殺せ!」と。

タイトルこそ2097ですが、時代設定は現代を想定しています。敵はある程度アメリカを連想するものを取り入れようとしたんですが、結局前作と似た感じで「とりあえず嫌味を入れる」方向性になり、最終的には何でもかんでも敵になりました。例えばアメリカの国鳥はワシですが、トイレの中に入っているワシが襲い掛かってくるとか。自分達の大切なものをいじって嫌味に変えている、っていうものが多いと思います。

――本作は固定画面での縦シューティングからツインスティックシューターに変更されているとのことですが、ゲームシステムについてもう少し詳しくお聞かせ願えますか?

シミン:そうですね。まずは世界観を二人で話し合ってから、ジャンルをツインスティックシューターに変えました。ただ、開発する上で一つ大切にしていたことがあったんです。前作が『香港97』である以上、「頑張りすぎたらいけない」んです。今回こそちゃんと遊べるゲームにはしたかったけど、あまりにも力が入っていたら前作の良さが逆になくなってしまいますから。

なので、新作もやっぱり固定画面のシューティングのままが良いなと思ったんです。そうであるなら、『スマッシュT.V.』みたいな方向性のツインスティックシューターが良いだろうと思って。横からいっぱい敵が出てきて、それを倒すような遊びです。

基本的にはアーケードゲームみたいな感じです。1プレイ前提のシューティングゲームで、うまい人なら35分程度でクリアできると思います。5つのステージがそれぞれ4つのレベルに分かれて、最後にボスが出ます。ただ、いくつかゲーム中に集めるものがあって、解除できるモードもあるので、頑張りたい人はしっかり10時間以上は遊べるゲームになっていると思います。6~7ヶ月はプログラムを打ち込んだので、その分はしっかり遊べるでしょう。

武器変更やショットレベルなどの要素も追加されている

――今作のストーリーは各ステージごとに用意されている感じなのでしょうか?

シミン:いや、そんなにきっちりとは。だって前作にはいろんな”都市伝説”がありますから。『香港97』に対して「何か深いメッセージがあったのかもしれない」とか「中国政府への抗議だったんじゃないのか?」みたいに考察する人はいっぱいいますが、本当はただ単に「できるだけ人を嫌な気持ちにしよう!」と思って作られただけのゲームなんです。だから『2097』も同じような気持ちで作っている。そこは案外、前作と似ていると思います。

採用したネタは、芸能や自虐など様々なところからとってきてますけど、必ずしも一つのテーマを徹底してるわけでもありません。とりあえず、“不謹慎さ”を保つ。そこに深い意味はありません。ただ、人を嫌な気持ちにさせたい。今でも、残酷なゲームや人を殺すゲームならいくらでもあるんですけど。なんだろう。だってないから、そういうゲームは。

――そんな『香港97』を現代に復活させる意味を、お二人はどのように考えていますか?

シミン:『香港97』の頃と比べて、今ってゲームを作る敷居が低くなったじゃないですか。昔と比べて簡単にゲームを作れて、毎年何万本ものインディーゲームが発売される。だけど、インターネットとかソーシャルメディアの仕組みのせいで、作品同士が似通ってしまう傾向があるとも思っているんです。やっぱり、人は“人の欲しがるもの”を意識して作ってしまうものですから。なので、もう完全に“社会の期待に何一つ応えない”。逆に、社会のタブーとかを100%無視して作る作品があってもいいんじゃないかって気持ちでした、僕の場合は。

……まあ、でもそんなゲームが本当にSteamで売れるかどうかが問題なんですけど。

黒沢:僕は……そうですね。今54歳で、もう多分これが最後に携わるゲームになると思います。そういう意味では、このゲーム自体が「まだ生きてますよ」っていう生存報告になるんだろうなと。自分の中では、ゲーム製作の“区切り”みたいな感じです。今なんかもう、大量にゲームがあるから。その中で注目してもらうには、いくつかの方法があると思うんですけど……。我々はね、そういうアピールとかを、うまくできないんです。

――では最後に、ファンに向けてお二人からなにかメッセージをいただけますか。

シミン:

とりあえず有名人がいっぱい出てるんで、遊ぶと得した気分にはなると思いますが。(笑) まぁゲームの売りとしては、“ロックンロール”ですね。ロックのライブって、日々溜まってる嫌なことをはっちゃける場所じゃないですか。あの感覚をゲームにしたかった。パンクロックです。右翼がどうとか左翼がどうとかじゃなくて、なにもかもイヤになった時に遊べるゲーム。うまく言葉にできないけど、『香港2097』は社会に不満がある人たちに遊んでもらいたいと思って作っています。……黒沢さんは?

黒沢:……難しいなあ。そんな真面目なこと言えないよ。(笑)

――では代わりに一つ質問させてください。かつての想像とは違う形で評価されるようになった『香港97』というゲームを、今、黒沢さんはどのように評価されていますか? やっぱり……”面白い”ですか?

黒沢:え? いや、面白いと思ってないですよ。

――え!?

黒沢:面白いなんて思ってないですよ!……ただ、BGMが生音のゲームは当時あんまりなかったんで、リッチでしたよね。当時もインディーズのゲームはいくつかありましたけど、……正直言うと、その中では“いい線いってた”んじゃないかなとは、今も思ってますね。

――なるほど。ありがとうございました。

クーロン黒沢氏直筆のサイン

『香港2097』は、PC(Steam)向けに2026年第1四半期に発売予定です。


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サムネイル制作:TATALAWORKS

《赤野工作@Game*Spark》

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