世界的な大ヒットになった『エスケープ フロム ダッコフ』はどのようにして生まれたのか?アヒルが主人公になった理由、今後の展望までたっぷり訊いた【インタビュー】 | GameBusiness.jp

世界的な大ヒットになった『エスケープ フロム ダッコフ』はどのようにして生まれたのか?アヒルが主人公になった理由、今後の展望までたっぷり訊いた【インタビュー】

アヒルのせいで色々難しいこともあったのだそう。

ゲーム開発 インディー
世界的な大ヒットになった『エスケープ フロム ダッコフ』はどのようにして生まれたのか?アヒルが主人公になった理由、今後の展望までたっぷり訊いた【インタビュー】
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先日、中国・上海で開催された「WePlay Expo 2025」において、Team Sodaが開発し、bilibiliがパブリッシングするトップダウン型PvE脱出シューターエスケープ フロム ダッコフ』が「IndiePlay Award」を受賞しました

残念ながら直接その場に居合わせることができなかったものの、なんと現地のインディーゲームクリエイターたちがSNSを通じて、筆者とTeam Sodaのプロデューサーを務めているJeff氏(以下、敬称略)を繋いでくれたのです。そんな彼に書面を通してインタビューを依頼したところ、快諾してくれたということで、本稿では世界的なヒット作となった『エスケープ フロム ダッコフ』のインタビューをお届けしていきます。

データ分析ではなく「プレイヤーの声」で磨き上げる美学。“死んでローストチキン”はプレイヤーたちのアイデアだった!

――先日の「WePlay EXPO 2025」での「IndiePlay Award」受賞おめでとうございます!いまの率直なお気持ちをお聞かせいただけますか?

Jeffこれまでに4回「IndiePlay」にノミネートされましたが、一度も受賞には至らず、いつも悔しい思いをしながら帰っていました。そうした経緯もあってか、今回はどこか防衛本能のようなものが働いて、あまり大きな期待を抱かないようにしていたんです……。

だからこそ、実際にこの賞をいただけたのは本当にうれしくて、チームの中には思わず涙ぐんだメンバーもいました。本当に感慨深い出来事でした

――本作では「サバイバル感」と「初心者にも親しみやすい遊びやすさ」のバランスを、どのように両立させたのでしょうか?このバランス調整は、どの段階でどのような方法で行っていったのか教えてください。

Jeffゲームシステムや各種メカニクスを設計する際には、できるだけプレイヤーの直感や日常感覚に沿うようなデザインを心がけました。多くのサバイバル要素は、人間の共通認識に合致していると思います。

たとえば、喉が渇けば水を飲む、お腹が空けば何かを食べる、出血したら止血する――といった行動です。こうした要素はすべてゲーム内にも取り入れており、それがもっとも基本的な「サバイバル感」を形づくっています。

戦闘面についても、しっかりとした歯ごたえになるよう心がけました。敵の攻撃はかなり強力に設定しており、プレイヤーには装備の優劣をよく考えさせるだけでなく、武器・弾薬・回復アイテムなどのリソース管理も重要な要素となっています。

とはいえ、プレイヤーのゲームスキルには大きな個人差があります。そこで誰もが楽しめるよう、本作では5段階の難易度を用意しました。あわせて、ゲーム内のチャレンジにも複数の解法を設計しています。たとえば各ボスに対しては、それぞれ「楽に倒すための」武器や装備が必ず見つかるようにしてあります。正面からの撃ち合いで勝てない場合でも、何らかのトリッキーな手段で勝つこともできますし、それでも難しければ素材を集めてキャラクターのステータスを強化すれば、最終的には必ず倒せるはずです

こうしたアプローチを通じて、プレイヤーの一人ひとりが自分に合ったプレイスタイルとテンポを見つけられるようにしたいと考えています。

――開発初期には存在していたものの、最終的に削除したアイデアやゲームメカニクスはありますか? そうした判断に至った理由も教えてください。

Jeff当初は「農業(畑作)」のような要素も入れようとしていました。しかし、現在のゲーム全体の構造の中では、この農業パートがかなり薄く、ほかのモジュールからも浮いてしまっていて、“おもしろい相乗効果”が生まれていませんでした。

そのため、この部分はいったんゲームから隠す形で見送っています。ただ、将来的には何らかの形で再登場させる可能性もあると考えています。

――開発チームでは、プレイヤー行動ログやデータ分析をどの程度活用しているのでしょうか?実際にバランス調整などにつながった具体例があれば教えてください。

Jeff実のところ、プレイヤーデータの分析は行っていません。ゲーム調整は主に、プレイヤーの皆さんからいただくテキストベースのフィードバックをもとに行っているんです。データからゲームの問題点を推測するよりも、プレイヤーに直接教えてもらったほうが正確だと考えているからです

もちろん、フィードバックはきちんと選別・分析し、私たち自身の経験や認識と照らし合わせて「本当にゲーム内に存在する問題かどうか」を判断しています。

たとえば、ゲーム内の「戦争の霧(フォグ・オブ・ウォー)」システムは、プレイヤーからの提案を受けて導入したものですし、「遺失物(落とし物)」の仕組みや、敵が倒れたあとにローストチキンになるといった要素も、いずれもプレイヤーのアイデアがきっかけです。

――開発プロセス全体を振り返って、もっとも困難で、かつ印象に残っている経験は何でしょうか。

Jeffもっとも大変だったのは、「農場町」のマップ設計です。このマップは完成までに、およそ1年にわたる反復作業を要しました。何度も設計を白紙に戻して作り直すことになり、最初のうちは、そもそもこれほど大きなマップをどう設計すればいいのか、まったく見当がつかなかったんです。

そこでマップデザイナーが現実世界のさまざまな事例を集めて参考にしながら、少しずつ要素を埋めていきました。その過程で局所的な修正を何度も繰り返し、ようやく現在の「農場町」の姿に磨き上げることができました。

最終的な仕上がりにはとても満足していますが、もちろん完璧ではありません。もしもう一度イチから作る機会があれば、きっとさらに良いものにできると感じています。

――ゲーム要素として「アヒル」を選んだ決め手はなんだったのでしょうか?企画初期には、ほかの動物案も検討していたのでしょうか。

Jeff最初の段階では、デザイナーがさまざまなキャラクター案を描いてくれていて、そのどれもが人型のデザインでした。ただ、どれもしっくりこなかったんです。

そんなある日、彼がペット用のキャラクターとしてオウムを描いてきて、そのイラストを見たときに「むしろこれは主人公に向いているのでは」と感じました。そこから、ほかの鳥類や家禽類の案もいくつかブラッシュアップしていき、その中で私たちがもっとも気に入ったのがアヒルでした。シルエットがシンプルで、識別しやすい。そうした理由から、最終的に主人公としてアヒルを採用することにしました。

――「アヒル」の挙動や見せ方を設計するうえで、“リアルさとゲーム的な親しみやすさ”、あるいは“可愛らしさ”のどちらを重視されたのでしょうか?全体的なデザイン方針について教えてください。

Jeffキャラクターデザインに関する自分の美意識は、『Super Meat Boy』や『Castle Crashers(狂扁小朋友)』から大きな影響を受けています。そのため、本作のキャラクターにも、この2作品の影響が多少なりとも反映されていると思います。

また、この種の「精度をそこまで要求しない」シューターにおいては、キャラクターをカプセル型のシルエットにすると、ヒット感・手応えが出やすいことにも気付きました。そうした理由から、本作のキャラクターはカプセルのような形をしたデザインになっています。

――「アヒル」をゲームに組み込む過程で、技術面から見て、もっとも難しく、特に力を入れて解決する必要があった点はどこでしょうか。

Jeff一般的なFPSと比べると、トップダウン視点のシューターでは、銃の「反動(リコイル)」「弾の拡散」「ヘッドショット」といった要素を設計するのが非常に難しいと感じています。扱えるパラメータの次元が少ない分、銃ごとの体験的な差異を出しづらいからです。

そこで本作では、体験をよりFPSに近づけるために、あえてヘッドショットのメカニクスを導入しました。プレイヤーはマウスカーソルを敵の頭部に合わせ、その状態で射撃することでヘッドショットダメージを与えられます。こうすることで、「照準が頭部からズレる」というリコイルにも意味が生まれました。

この仕組みによって、リコイルとヘッドショットダメージを軸にした数値設計が可能になり、その結果として、まったく異なる手触りを持つ数十種類の武器を、比較的スムーズに作り分けられるようになりました。

――今後も「アヒル」を中核テーマとした作品や新企画を手がける可能性はありますか。

Jeff今後のアイデアがたまたま、また「アヒル」というテーマと噛み合うようであれば、そういう展開もあるかもしれません。ただ、現時点ではとくに具体的な構想はありませんね(笑)

――プレイヤーコミュニティから寄せられたフィードバックの中で、開発チーム内で特に議論が盛り上がったのはどのような意見でしたか?

Jeff先ほど挙げた「戦争の霧」や「遺失物」の仕組み、倒されたあとにローストチキンになる演出などは、どれも「これはおもしろい」「たしかに体験が良くなる」とチーム内で盛り上がった提案でした。

こうした変更を加えることで、プレイヤーの皆さんがもっと楽しく遊べるようになるのなら、私たちとしてはやらない理由はないと思っています。

――運営方針の面で、プレイヤー文化(ミーム、ロールプレイ、独自のプレイスタイルなど)をどの程度尊重して、支えていきたいと考えていますか。

Jeff本作の中にも、数えきれないほど多くの「ネタ」を仕込んでいますよ。

プレイヤーがゲームに関連したミームを生み出したり、変わったおもしろいプレイスタイルを共有してくれたりするのを見るのは、私たちにとっても非常にうれしいことなんです。

――日本を含むアジア地域のプレイヤー層について、本作はどのような点が支持されているとお考えですか。

Jeffおそらく、多くの人が「積み重ね」「育成」がもたらす達成感を好むからだと思います。

それに加えて、本作には「鉄甲小宝(※)」のオマージュとなるイースターエッグも仕込んでいますし、日本のアニメ作品でよく悪役がかけている「キラッと光るメガネ」なんかも登場しています。もしかしたら、こうした「どこかで見たことがあるかも?」と思える小ネタの数々も、ユーザーの親しみやすさに貢献しているかもしれません。
※東映が制作した特撮テレビドラマ「ビーロボ カブタック」のことだと思われる。

――『エスケープ フロム ダッコフ』というプロジェクト全体について、今後はどのような方向性で発展させていきたいと考えていますか?もし、長期的なビジョンや構想があれば教えてください。

Jeff明確に長期的な計画があるわけではありません。どちらかというと、わりと柔軟な状態で開発を進めていきたいタイプです。ひらめきが生まれたタイミングで「何を作るか」を決め、なるべく早く形にしてプレイヤーに届けたいと考えていますね。そのほうが、私たち自身にとってもより強くポジティブなフィードバックが得られるからです。

もちろん、今後も新しいマップや武器・装備、新しい敵などは追加していきます。プレイヤーの皆さんが何度も『エスケープ フロム ダッコフ』の世界に戻り、この世界を探索できるようなアップデートを続けていくつもりです。

――今後のアップデートで世界観の拡張やゲームシステムの拡張として、挑戦してみたいテーマや方向性はありますか。

Jeffまずは、プレイヤーがどんなものに興味を持っているのか、そして私たちにそれを実現できるのか。そこを見てから考えたいですね(笑)。この辺りについても、現時点でははっきりとしたアイデアがまだない状況です。

――『エスケープ フロム ダッコフ』を通じて最終的にプレイヤーには「どのような感情」や「価値」を持ち帰ってもらいたいと考えていますか?理想とする“収穫”についてお聞かせください。

Jeffプレイヤーの皆さんには、蓄積を重ね、学びながら困難を乗り越えたときに得られる達成感を味わってほしいと思っています。また、探索を通じて得られる驚きや喜びも、本作でぜひ体験してもらいたい大切な要素です。

――最後に、『エスケープ フロム ダッコフ』をまだ遊んだことのないプレイヤーと、すでにプレイされているプレイヤーのみなさんに向けて、それぞれメッセージをお願いします。

Jeff『エスケープ フロム ダッコフ』は、一口に言っても自由度の高いゲームだと思っています。プレイヤーのみなさんは、自分の好きな方法で「アヒル」を強くし、敵を倒して、生き延びることができます。ぜひ一度、私たちのゲームを試してみてください!

そして、すでに遊んでくださっている“アヒルプレイヤー”の皆さん、本当にありがとうございます!これからも、よりおもしろいコンテンツを追加していきますので、ぜひ今後のアップデートにご期待ください!

――ありがとうございました!


《そりす@Game*Spark》

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