オートデスク株式会社は、ゲーム開発者向けイベント11月20日に大阪、25日に東京で開催される「Game Tools & Middleware Forum(GTMF)2025」において、「Autodesk AIで実現するクリエイティブ・ワークフローの変革」と題したセッションを実施します。
本セッションでは、同社が展開する最新のAI技術を中心に、制作ワークフローの効率化と新しい発想の可能性について紹介します。
登壇するのは、オートデスク 技術営業本部 ソリューションエンジニアの吉田将宏氏と加瀬秀雄氏です。両氏がそれぞれ、AIを活用した新ツール「Flow Studio」と、3DCGツール「Maya」に搭載された新機能を中心に解説します。
実写映像からキャラクターアニメーションを生成する「Flow Studio」
「Flow Studio」は、実写映像からCGキャラクターのアニメーションを自動生成するAIツールです。

人物の動きを撮影し、その映像をアップロードするだけで、AIが全身の動きや表情、指先の動きを解析します。最短4ステップでキャラクターの自然なアニメーションを生成することができます。
「スマートフォンで撮影した映像でも十分に活用できます。動画を読み込み、キャラクターとリグを設定して書き出すだけで、すぐにモーションが作成できます」と吉田氏は説明します。


書き出し形式はMaya、Blender、Unreal Engine、USD形式に対応しており、モーションデータ(FBX/USD)として利用することも可能です。オートデスク製品ですが、MayaだけでなくBlenderなど幅広い製品と連携させることが可能です。
このツールは、ドラマシリーズ『スーパーマン&ロイス』などで活用された「Wonder Studio」をベースに、オートデスクがリブランディングしたものです。2024年8月に「Flow Studio」として正式に発表され、同社のクラウドで様々なソリューションが連携していく「Flow」プラットフォーム戦略の一環として位置づけられています。

「Flow Studioは、既存のワークフローをすべて置き換えるものではありません。たとえばモブキャラクターや補助的なアニメーションの生成などに活用することで、アニメーターの作業を効率化し、より創造的な工程に時間を割くことができます」と吉田氏は語ります。
価格プランはフリー/ライト(月2,200円)/スタンダード(月6,600円)/プロ(月14,300円)の4種類で、プロ版は同社の「M&E Collection」にも含まれていますので、既存ユーザーであれば追加費用なしで利用することができます。
AIがモーション制作を支援する「Maya」の新機能
一方、加瀬氏が紹介するのは「Maya」に搭載されたAI機能「MotionMaker」と、開発中の「MCP Server」です。
「MotionMaker」は、オートデスクが社内で収集した数千パターンの人間と犬のモーションキャプチャーデータをAIに学習させ、その結果をもとにモーションを自動生成する機能です。
「キャラクターの進行ルートにキーフレームをいくつか置くだけで、歩く、走る、ジャンプするといったモーションを自動的に生成します。素体となる動きを短時間で作成できるため、クリエイターは細かな調整や表現に集中できます」と加瀬氏は話します。
動物は現在、人型と犬に対応しており、今後の拡張も検討されています。


また、開発中の「MCP Server」は、Mayaを自然言語で操作できるようにする試みです。
「たとえば“街を夜にして”や“椅子を追加して”と入力すると、AIが意図を理解してシーンを編集します。AIサーバーとの連携を可能にするMCP(Multi Control Protocol)をベースとした新しい技術で、より直感的な操作を目指しています」と加瀬氏は説明します。


こちらは実際の製品に反映される時期は未定だということですが、Mayaが持つ高い柔軟性にAIが組み合わさることで、制作作業の自由度が一段と広がることが期待されます。
セッションと展示の見どころ
GTMF2025では、これらのツールを紹介するセッションに加え、展示ブースでもFlow StudioやMayaのAI機能を体験することができます。
セッションでは、AIを軸にしたオートデスクの取り組み全体を紹介したうえで、Flow StudioとMayaの実際のデモンストレーションを交え、制作現場での活用イメージをわかりやすく説明する予定です。
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AIの導入が進む中で、オートデスクは「自動化」ではなく「創造支援」としてのAI活用を目指しています。
Flow Studioは映像とCG制作をより近づけ、MayaのAI機能は日常的な作業を自然な操作でサポートします。
こうした技術が、開発現場の柔軟性とスピードを高め、クリエイターが本来の発想力を発揮できる環境づくりに貢献していくと期待されます。ぜひGTMF2025の会場で触れてみてください(参加無料)。