東京浅草橋のヒューリック浅草橋ビルにて開催された、シティコネクション創業20周年を祝う「シティコネクション20周年記念感謝祭」(2025年12月13日開催)。このイベントに合わせて、シティコネクションの社長である吉川延宏氏へインタビューを行いました。
シティコネクションは、かつて存在した「ジャレコ」のIPを保有しているほか、ジャレコ作品にとどまらないさまざまなゲームの移植や新作、サントラのリリースなどを行うゲーム会社。
今回のインタビューは11月にリリースされた『R-Type Delta: HD Boosted』や『ファイナルフォーメーション』、そして今後の目標などについて訊いてみました。これから登場するタイトルの方向性や変化が感じ取れる内容となっていますので、ぜひ「シティコネクション」20周年記念イベントレポート記事と合わせてお読み下さい。

――2025年を振り返ってみてどうでしたか?
吉川延宏氏(以下、吉川氏): 今年は一言でいうと好調な年でした。『スチーム・ハーツ&アドヴァンスト ヴァリアブル・ジオ サターントリビュート』から始まり、各種『ジャレコレ』や『R-Type Delta: HD Boosted』など、どれも目標本数をクリア出来たことで、昨年よりもゲームの方は調子が良いものでした。
一般的な業界のセオリーと違う所は、ダウンロード版でなくパッケージ版が好調だったのが嬉しいですね。また、このイベントを開催してみて段々と知名度が上がってきているのを感じます。
今までを振り返ってみても、今年はシティコネクションが認知されてきたことをゲームの売り上げから感じる事ができた1年です。
もちろんシューティングゲーム大感謝祭の「シュー大祭」や、今回のイベント、TGS、PAX WESTなど、出展するイベントは厳選しました。このイベントもそうですが、自社から人を出しているので、人的な問題でたくさんは出られないのです。
――体力的な問題もありますからね。身体は1つしかないですし。
吉川氏: それこそ、日本中や世界中どこにでも行きたいんですよね。自分1人であれば、台湾や韓国、アメリカなど色々年がら年中飛び回っているのですが、イベントには出られませんから。そこは開発状況を見ながら行っています。
――2025年において上手く行ったこと、いかなかったことは当然のことながらあると思いますが、何か話せるもので課題はありますか?
吉川氏:上手く行かなかったことはあるのですが、話しにくいじゃないですか(笑)。ただ、スケジュールに関してはこれだけラインが増えてくると、うちはプロジェクトマネージャーが少なく兼任もしているのでスケジュールが混乱してしまいます。
これだけ順調に多くのタイトルをリリースしているのが凄いと褒められるのですが、それは(今後リリースするタイトルの)ストックを持っているからできる事です。決して予定を年単位で決めて、ピッタリ出しているというわけではありません。先行投資として資金があれば開発に使っています。
ただ、その状態を脱することができて、スケジュールを決めて適切な予算を投じることを繰り返していけば、会社としてもキャッシュフローが改善することはわかっています。「上手くいかないな」と思いながらも、たぶん改善したら「これだけ変わるのだろうな」と思っています。
――先月発売された『R-Type Delta: HD Boosted』の評判はいかがでしたか?自分はレビューの通り、処理落ちしなくなったことがとても良い評価点だと思ったのですが……
吉川氏: (良い評判だけでない)真逆の反応もありました。処理落ちがなくなって、今遊べる現行機の『R-TYPE DELTA』としてのスピード感はとても好評でした。ただ、不具合の部分を切り分けて話さなければならず、そういった仕様によって不具合が出ている部分があったのです。

不具合と認識されているものは、ちゃんとフィードバックを受け取っているので不具合の部分は修正し今後パッチがリリースされます。SEで別の音が鳴っているところを直したり、サウンドのタイミングズレなどを直します。
ゲームのコンセプトの部分は検討中です。処理落ちをまた復活させるのを含めて検討しているので、切り分けてやりたいと思っています。
――また、エフェクトがオリジナルと違っていたり、敵の出現が一部異なるという意見もありましたがそちらはどうでしょうか?
吉川氏: そこも処理落ちにまつわるものであるかの検証をしたうえで、直せる部分は直したいと思っており、すでに検証は始まっています。今後配信されるアップデートのリリースノートを見ていただければと思います。
――加えて、10月末発売の『ファイナルフォーメーション』の反応はどうでしたか?
吉川氏: 『ファイナルフォーメーション』は期待してくれた人達に対して、我々が狙った体験を届けられたという手応えがありました。一方で、世界観やオマージュの部分で「こう来たか!」と思わない、反応に乏しかったユーザーの存在もちゃんと認識しています。
原作を知っていて、そこそこ年齢層が高いユーザーにターゲットを絞ったタイトルであるために、そういった前提がある人なら楽しめるものとなっています。そこは、クリアできたのかなと思っています。

『ファイナルエクセリオン』と『ファイナルフォーメーション』は動的なゲームですが、次のタイトルはジャンル的に違うゲームなのでどう作ろうか考えています。
――今後挑戦してみたい新作や移植タイトルはありますか?
吉川氏: 移植に関しては、急にごっそりと無くなりはしないですが、今後少なくなるかもしれません。どちらかといえば、リメイクや新作が目立つかと思います。移植にしても全く今までシティコネクションが対応していなかったハードに対して挑戦してみたいですね。今後ターゲットとなる年代もスライドしていくと考えています。
――サントラの話になりますが、新たに音源化してみたいタイトルはありますか?
吉川氏: あります!それこそ以前に過去の『R-TYPE』シリーズ楽曲全部入り「R-TYPE SOUND BOX」をリリースしましたが、アイレムさんのタイトル全部を音源化してみたいですね。
――今回のリアルイベントは今後も開催されるのでしょうか?
吉川氏: 今後の開催は当分ありません!(笑)今後ポップアップストアなどはやっていきたいのですが、自社が主催となるイベントはとにかく大変なのです。正直、開発も1ヶ月近く止まってしまいます。会場費などはお金がかかるだけですが、(開発の)人間が止まってしまっている打撃に比べれば何倍も小さいものです。
例えばシティコネクションのPRマーケット部が大きくなり、こういうことを自分や開発部が動かなくても企画してくれる部署や人が増えれば出来ると思います。ただ、その場合、今回のような手作り感あるイベントにはならないかもしれません。自分が「やるぞ!」と、大分前から企画して、みんなが自発的に動いてくれたイベントだったので開催できました。それでも「シュー大祭」など、フォーマット化されているイベントは開催していきたいと思っております。
――今回は20周年記念のイベントでしたが、次の20年に向けて何か考えているものはありますか?
吉川氏: なかなか答えにくい質問ですね(笑)。具体的なことはまだ簡単には言えませんが、日々かなりの時間を、自分自身との対話に使っています。考えが行き着く先にあるゴールを見据え、そのために何が必要なのかを、常に掘り下げている感覚です。
これから数年で、コンテンツの在り方は大きく変わっていくと思っています。それはゲームという枠に限らず、作り方や、触れられ方、立ち位置そのものが変化していくという意味です。そうした流れの中で、IPを扱うシティコネクションが、どうすればより強くなれるのか、何をやるべきなのかを毎日考えています。
IPに関わることであれば、必ずしもゲームに直結しないことにも取り組むべきかもしれない。開発チームだけでなく、管理や仕事への向き合い方そのものも、変えていきたいと思っています。ただ一つ言えるのは、IPはコンテンツにおける基礎であり、軸であり続ける存在だということです。そこだけは決してブレさせたくない。
正直なところ、大きく変えていかなければ、今後やっていけないとも感じています。ただ、十数年前に今の地点を、ぼんやりとでも思い描けていたことを考えると……次のステップにも、きっと進めるのではないかと思っています。
――なるほど…!ありがとうございます。ちなみに、これに近い質問になりますが来年の目標はありますか?
吉川氏: 来年の目標は『じゃじゃ丸の百鬼夜行伝』など、シティコネクションらしいIPを新作として蘇らせたいと思っています!最初は数字が出なくても、諦めずに長い目でやり続けたいですね。
新作ゲームはそういったものだと思っていますし、シティコネクションは予約本数や発売週の数字に何年間も振り回されてきました。新作タイトルはPRにお金をかけられなかったら、世に出てくることがないじゃないですか。なので、1年や2年ほどちゃんとPRを打っていくことを根付かせたいと思っています。そういった新作に対するリスクを負って立ち上げていく年にしたいですね。

――最後にシティコネクションに注目しているユーザーの皆さまに向けてメッセージをお願いします!
吉川氏: シティコネクションはIPを扱う仕事以外をしていないので、面白い事やアイデアを常に考えています。今までお買い上げ頂いているユーザーは引き続き期待していただきつつ、新作タイトルを待って頂ければと思っています。
また、まだ弊社タイトルに触れたことのない方にも、いちゲーム会社というか、IPをプロデュースする会社として注目してもらいたいです。普通のゲーム会社がやらないことを実はいっぱいしているため、他社と比較してもらうとビックリするぐらい色々な事をやっています。そういった期待を裏切らないように、ずっと活動していきたいと思っています!
――ありがとうございました!









