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AWSを活用して魅力的なメタバースの構築を―「Amazon Game Tech Conference 2022」レポート

AWS(アマゾンウェブサービス)はゲーム開発とどのように関わっていて、メタバースは今後ゲームとどのように交わるのか?さまざまな視点からの見地や展望が語られました。

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パネルディスカッション - メタバースとゲームの交差点とは

パネルディスカッション「メタバースとゲームの交差点とは」は、AWS Japan益田直幸氏と西坂信哉氏が提示するメタバースに関する疑問に、株式会社ambr西村拓也氏、クラスター株式会社の成田暁彦氏、株式会社VARK杉本豊氏が回答する形で実施されました。

テーマ:「東京ゲームショウ 2022」におけるメタバースの盛り上がりをどう感じたか

西村ambrは企業と組んで新たなVR体験を企画・開発する事業に取り組んでおり、それを最優先事項としたため、「東京ゲームショウ 2022TGS2022)」へ企業としての出展は行いませんでした。

TGS」は2021年から展開されているバーチャル会場「TOKYO GAME SHOW VR」に関わらせてもらっていますが、2回目の開催となる2022年も盛り上がってありがたいかぎりだと思っています。

2021年の初開催時は誰もが手探りの状態でしたが、それでも述べ21万人にご来場いただいたので、2回目の開催では多くの企業が積極的な姿勢を見せてくれるようになり、そのおかげでよりよいものを提供できたと思います。

例えば、キャラクターがカードから召喚されるような演出や、ゲームのシーンを再現した空間にそのまま入っていけるような演出をVR上で実現できたことで、ユーザーの平均滞在時間が大幅に上昇しました。

また、日本全国のみならず海外からアクセスしてくれる方も大勢おり、VRならではの強みが活かせているとも感じました。

左から順にambrの西村拓也氏、クラスターの成田暁彦氏、VARKの杉本豊氏

成田クラスターは「TGS2022」でブース出展を行いました。弊社が展開するメタバースプラットフォーム「cluster」を楽しんでいるユーザーの方たちが会場まで足を運んでくださり、よい接点を持てたと感じています。

また、現地会場で展開するブースとまったく同じものを「cluster」でも同時展開する試みを行いました。「TGS2022」の現地来場者数は13万8192人と発表されていますが、その約10%となる1万7000人がVRブースを訪れてくれました。クラスターはゲーム業界においてはまだ無名だと思いますので、興味を持っていただけてありがたいです。

現地ブースではスマートフォンやVR機器で「cluster」をご体験いただきましたが、VRでの体験を希望する方が圧倒的に多く「VR機器の購入まではしていないが、VRを体験することやコンテンツには興味がある」層が増えていることを実感しました。

現地ブースでは女性コンパニオンがTwitterキャンペーンの案内をしていたのですが、それを見たユーザーの方が自発的にコンパニオンの制服とキャンペーン案内のパネルをアバターで再現して「cluster」のバーチャル会場で同じことをする…という遊びに興じてくださる例も見られ、弊社ならではのUGC(User Generated Contents)の盛り上がりを感じました。

杉本VARKはバーチャル会場でブース出展を行いました。私もユーザーとして訪れましたが、たくさんのコンテンツが目の前で展開されるVRならではの楽しさをあらためて実感しました。

来場者数を見るとかなりの方がブースを訪れてくださり、その後もVARKを起動してコインやチケットを購入してくれている方もいることが分かりました。「TGS」ブランドの強さのみならず、VRイベントそのものが確実に浸透し、身近なものになってきていると感じます。

テーマ:自社メタバースのユースケースやユーザー体験の現状

西村ambrは自社製メタバースサービスを持たず、さまざまな企業とVR体験を生み出していく事業を主軸としていますが、弊社が特に重視しているのはVRデバイスです。

今は「正解」と言える体験を横に広げていくのではなく、日々進化し続けるVRデバイスやメタバースにあわせて挑戦的なものを生み出し、それをユーザーにぶつけていくのが大切なフェーズだと思っています。

成田:昨今の世を賑わせているWeb3NFTは、明確な事業構造を持たないがゆえにさまざまなメソッドで展開できるという文脈で語られることが多いと思いますが、それに対してメタバースの事業構造は非常に明確です。

メタバース事業は「デバイス」、「プラットフォーム」、「コンテンツ」に綺麗に分かれているのが特徴で、クラスターはそのうち「プラットフォーム」と「コンテンツ」を提供しています。

プラットフォーム」はBtoCで、「コンテンツ」はバーチャルイベントなどの実施でBtoC、BtoBでの展開になります。BtoBのイベントは年間で150~160社ほどの企業と取引しています。

実在の町をバーチャル化する「デジタルツイン」事業のほか、ゲームやマンガなど二次元の世界に入っていけるようなVRコンテンツも制作しています。

今まではイベントや動画などでユーザーへ一方的にイベントを提供する形がほとんどでしたが、昨今はUGCが盛り上がっており、ユーザーが作ったゲームを遊んだり、ユーザーが用意したギミックなどを設置することで遊べるようにしたりという体験が少しずつ広がっています。

杉本VARKはバーチャルライブの開催がメインとなっていますが、会場を訪れたユーザーたちはライブ終了後もVARKが用意したバーチャルカラオケなどでライブの感想を言い合ったりセットリストを復習したりという現地開催さながらのアクションを取って楽しんでくれています。

また、アバター用のライブTシャツなどを販売すると、それを着てより深くライブを楽しんでくれる人も見られます。これまでは現地会場を訪れた人たちしかできなかった楽しみ方を、現地まで足を運べない人たちもできるようになったのを実感しています。

また、ゲームとは少し離れますが、特定のIPとコラボして作品世界をバーチャルで再現したり、3Dモデルで作成されたキャラクターたちとコミュニケーションを取れるコンテンツも展開しています。これまでにコラボさせていただいたIPは『リラックマ』や『すみっコぐらし』、同名人気コミックを原作とするアニメ『ご注文はうさぎですか?』などが挙げられます。

そうしたコラボを体験し「楽しかったよね」とユーザー同士でコミュニケーションを取るところまで楽しんでくれているユーザーが多いと認識しています。

テーマ:ゲーム会社と今後やってみたいこと

杉本:いろんなIPとバーチャルライブを開催していく取り組みを今度も続けていきます。開催するだけではなく、そのまま3D空間でファンコミュニティも作り上げられるのがVARKの強みです。スマートフォンゲームなどにおける「ギルドルーム」のように、ユーザー同士でコミュニケーションを楽しめます。

また、これはVARKならではの特徴かもしれませんが、ひとつのコンテンツを作るときは完全に独立した島(空間)を作るので、IP同士で阻害することがありません。逆に、複数の島を回るような作りにもできます。

ビジネスモデルは、予算を含めてフレキシブルに組み方を変えています。こちらで制作費用を負担して受ける場合があれば、受託で開発してほしいという形にも対応できます。

IPとコラボする際は必ずディレクターを立てるので、監修などのやり取りもスムーズに行えます。窓口がバラバラで、クオリティーのコントロールが効かなくなるという事態は絶対に発生しないようにしています。

成田クラスターはBtoBの取り組みに関しては完全内製という形を取らせてもらっています。デザイナーにはゲーム会社出身の者もおり、監修が厳しめのIPやコンテンツでもフルスクラッチで対応できる体制を整えています。

また、コンテンツをスマートフォンで見せるにあたって一番高いハードルとなるのが容量の問題で、高精細のCGなどをご提供いただいたとしてもそのまま使うことはできない…というのが今のメタバースの限界でもあります。クオリティーを損なわぬまま、それをいかに軽量化するかというノウハウもしっかり蓄積しています。

今後やってみたい取り組みは、相互運用性の促進ですね。あるIPが有するキャラクターや世界観は、企業とユーザーがともに「価値のある、守るべきもの」であると感じていると思いますが、これからの時代は、そのIPやキャラクターをユーザーに渡したときに、どのような化学反応が起きるかが重要になると考えています。

IPやコンテンツにより深く愛着を持ってもらうにはどのような渡し方をすればよいか。表現してもらう場はどのように用意すればよいか。クラスターUGCの持つ可能性を高く評価しています。これからも、ゲーム会社のみなさんと考えていきたいと考えています。

西村:もし2023年も「TOKYO GAME SHOW VR」が開催されるなら、ぜひご一緒させてもらいたいと考えています。「TGS」はビデオゲームにおける世界3大ショーのひとつだと思っていますので、そのVR化に貢献し、世界に伝えていく役割を担えたらいいですね。

また、みんなが夢見ている体験を実現できるのがVRの魅力だと考えていますので、ゲームを1本丸々作るだけでなく、ゲームの一部分のみをVRで再現したり、それをイベント形式でファンに楽しんでもらうような道も模索したいと思います。

テーマ:企業として今後やりたいこと

杉本:繰り返しになってしまいますが、バーチャルライブなどでより多くの方とコラボレーションすることです。VRの普及には、コンテンツ自身が持つ供給力も大切だと思っています。より多くの方にVRの魅力を知ってもらうには、たくさんのコンテンツに参入してきてもらう必要があります。

私たちはIPそのものを生み出す企業ではありません。VRとはどのようなものなのかと思っている企業様にお声がけいただいて、IPやコンテンツの起爆剤といえるような存在になれるよう邁進します。

成田:「cluster」を「世界一ハードルの低いメタバース」にしたいですね。そのうえで、クリエイターエコノミーがしっかり回っているプラットフォームを構築できればと。

VRデバイスを用いての体験はもちろん魅力的ですが、クラスターはそうした体験の入り口となるべく、スマートフォンでも魅力的な体験をできるというところにしっかり取り組んでいきます。

そうして裾野を広げていき、ゆくゆくは「3DCG版のYouTube」といえるような展開も構想しています。誰でも好きにアバターやパーツを投稿できて、他のユーザーはそれらを自由に見て楽しみ、購入もできるようなものです。

UGCですが、個人のみならずゲーム会社が参画してくれてもいいと思っています。その目標に向けて、熱量高くやっていきます。

西村:VRには夢があります。ユーザーが「これだよ!」とワクワクするものを作っていけるよう、未知の体験、新しい体験へのチャレンジを続けます。

TOKYO GAME SHOW VR」がそうであるように、VRで場所を用意すれば世界中からアクセスできますので日本だけにこだわる理由はないし、日本のコンテンツの力は海を越えていけると確信していますので、グローバルな視点を持ち続けたいですね。

テーマ:メタバースを実現する技術で重要なこと

杉本:通信の同期をどれだけしっかり取れるかだと思います。コミュニケーションで重要な部分ですので、どこの会社も苦労しているところでしょう。

あとは、どこをメッシュにしてどこをテクスチャーにするかなどをしっかり追及・使い分けることで、VRデバイスやスマホなど、デバイスごとの制約にとらわれないリッチな表現を実現するかが大切だと思っています。

ここで、AWS西坂氏からグラフィックの作り込み・追及に関する補足がなされました。近年はクラウド側のGPUでレンダリングを行い、クライアントがそのデータをストリーミングして使用する「クラウドレンダリング」についても実用化されているユースケースがあるとのことです。

また、杉本氏はメタバースを初めて構築する際にユーザー同士のソーシャル要素(誰と誰がフレンドであるかなど)の情報管理に苦心したものの「Amazon Neptune」を導入したところ、それが大きな助けになったと語りました。

Amazon Neptune」は、クラウド向けに構築されたフルマネージドデータベースサービスです。西坂氏は、メタバースを手がける際はこのようなソーシャル要素をスムーズに構築するのが大切になるので、このようなデータベースサービスがより重要性を増していくという見解を述べました。

成田クラスターは多人数同時アクセス型コンシューマーサービスを展開していますので、一番頭を悩ませているのがインフラコストをいかに削減するかですね。

AWS Graviton」はそれに大きく寄与してくれており、置き換えが完了したところは最大で4割ほどのコスト削減を実現できています。AWSさんが展開するサービス、ソリューションの今後にも期待しています。

演算負荷が高くなるメタバースのサーバーにおいて、Gravitonはコスト最適化の良い選択肢となるようです。西坂氏はこれに対し「仮想サーバーサービス「Amazon EC2」のプロセッサはGravitonのみならずIntelAMDも選択できるので、コスト削減のみならずさまざまな課題解決に役立ててほしい」と補足しました。

西村ambrもインフラのリソース管理が重要な課題になってきています。バーチャルイベントはユーザー数を読みづらい一方、想定以上の方が来場してくれた場合は対応が大変になります。

TOKYO GAME SHOW VR 2022」からクラウド用リレーショナルデータベース管理システムである「Amazon Aurora」用の「Aurora Serverless v2」を導入したところ、データベースのインフラリソースを活用できるようになり、サーバーチームの大きな助けとなりました。

西坂氏はこれに対し「「Amazon Aurora」はデータベースを瞬時に垂直スケールできる強みを持っています。イベントの開催やメタバースの構築など、ワークロードが読みづらいときの負荷試験の選択肢としても優れています」と補足しました。

テーマ:「メタバースが普及するうえで重要なこと」をひと言で

西村:「VRならではの未知の体験」だと思っています。

成田:「VRを1人で体験しない(させない)こと」です。友人と一緒に体験するだけで継続率は変わりますので、人を誘う仕組みやきっかけを今後も作っていきます。

杉本:「コンテンツ側がどれだけ一緒にやってくれるか」だと思います。コンテンツやIP側が大きく歩み寄ることがコミュニティができる大きなきっかけになり、「メタバースってこんなこともできるんだね」という体験につながります。コンテンツ側がどれだけコミットしてくれるかが大事になると思います。

最後に、メタバースの普及にあたって技術面で重要なことが述べられました。西坂氏は、SNSのようなソーシャル要素をいかに構築できるかが普及のきっかけになるのはもちろん、サーバーサイドでいかに空間的な部分とインタラクションしていくかも大切になると指摘。

サーバーサイドで動くAIエージェントや、オープンワールドゲームのように広大な世界をユーザーたちで作り上げられる自由さが実現すればユーザーが思い描くメタバースのイメージに近づいていくのでは、と続けました。

そして、そうした要素の実現にはMMORPGなどで活用されている技術が重要になるので、MMORPG『New World』を展開しているAWSはそうした面でも引き続き貢献できる…とセッションをまとめました。

《蚩尤》

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