「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー 2ページ目 | GameBusiness.jp

「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー

いちゲーマーにとっても対岸の火事とは言えない今回の侵攻について、3時間のロングインタビュー。

文化 その他
「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー
  • 「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー
  • 「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー
  • 「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー
  • 「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー
  • 「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー
  • 「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー
  • 「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー
  • 「フェイクニュースに踊らされず、勝手な想像に留めない」ジャーナリストが見た生のウクライナ情勢―藤原亮司氏インタビュー

アゾフ大隊=ネオナチ=バンデーラ主義???

藤原:ウクライナについても、ロシアは例えばネオナチの存在についてフェイクニュースを流せば、一定の人間は信じると考えているわけです。

――歴史上の話として、ステパン・バンデーラ(※)個人がどうだったかと言うなら、いろいろ議論すべきことはあるでしょうけど、彼に肯定的な一面を見出すウクライナの民族主義者たちがことごとく過激で危険かというと、それは信じがたい。

※1909-1959。近年ウクライナで肯定的な再評価がなされている、ウクライナ民族解放運動の指導者。彼個人がときにユダヤ系住民に対する排斥的な発言をしており、また、彼を支持する運動の一派が第二次世界大戦でナチスドイツに協力したという一面もあって、ロシアがウクライナの民族主義者をネオナチ扱いする一つの根拠となっている。


藤原:例えば「アゾフ大隊」なんかをネオナチとかバンデーラ主義者だと言うのは、あくまでロシアの言い分なんですね。あの人たちは元々フーリガンだとか、やや過激な愛国主義者ではあるけれど、ナチ信奉者を多く含んだ集団というわけではなかった。

彼らがアゾフ大隊を作ったときには、そうしたはぐれ者たちも入っていたんですが、その後内務省傘下の部隊になってからは、思想的にイカレている奴だとかあまりにも暴力的な奴だとかは排除しろという命令が出て、部隊の規律は一般的な部隊に近づいていったとされています。

内務省傘下に入って一定の時期からのアゾフ大隊が、そんなに過激な部隊であったということは、もはや証明するほうが難しいんですね。

――ええと、内務省傘下と聞くと、むしろ警察的、治安維持部隊的な色彩があるのではないかと、気になってしまう部分もあるのですが。

藤原:いえ、そこは旧共産圏によくある国境警備隊や警察軍など、国防省系でない軍隊であるというだけですね。治安維持的な意味はまったくないです。

――なるほど、後ろ暗い組織などではなく、昔ちょっとヤンチャだった準軍事組織であって、ロシアによって誇張されている部分が大きいのだと。

藤原:ええ。そう見たほうが正しい、見方として間違いがないと思います。ロシアのシリア「内戦」以降の動きを追いかけている側からすると、ロシアの情報操作が巧みであることはよく知られています。杜撰な映像・画像もいっぱい流すんですけど、それもどうもあえて流しているらしい。「フェイクニュースと比べて、私たちの情報は正しいでしょ」と主張するようなやり方をしているんです。

ロシアの「スプートニク」や「RT」が流している情報の分かりづらいところは、5%くらいの嘘を入れるために95%の真実をきっちり書くところなんですね。

――露骨な嘘さえうまく使って信憑性を演出するわけですね。

藤原:今回のウクライナ侵攻で非常に気になるのは、今まで日本でリベラルと言われていた人、戦争に反対で平和主義な人たちこそが、むしろロシアのフェイクニュースを容易く受け入れていることです。

イラク戦争のとき、「大量破壊兵器がある」とアメリカは確かに嘘の情報を介入の理由とし、メディアはそれを流しました。だから西側のメディアなんて信用できないという思考になっていくと、そこに書かれていない情報を求めるわけですね。そのときにロシアなんかから流れてくるニュースを見ると、西側のニュースとほとんど同じ正しい部分はきっちり書かれている。そこにたまに、西側のニュースに載っていない、しかし「非常に重要なこと」に関わる一文が入っている。

だからこれが、今まで書かれてこなかった「隠された真実」じゃないかという考え方をする人が非常に多いんです。

――ああー、ここでも「Webで真実を見付けてしまう人々」が生じるわけですね。

藤原:そういうことですね。自分で情報に当たっていて、平和意識が高い人ほど、騙されてしまうケースがあるわけです。「アメリカの嘘」は疑ってみるものの、「ロシアの嘘」をなぜ疑おうとはしないのだろう。

――ロシアがそういうところを狙って突っ込んでいるかもしれないわけですね。

藤原:そして「スプートニク」や「RT」以外のメディアがこれらを二次情報として使っていくと、出どころが分からなくなります。あそこにもここにも書かれているという既成事実が積み上げられていくわけです。

――情報のローンダリングが完了しちゃうわけですね。

藤原:そして、例えば現在ロシア軍が支配下に置いている地域のロシア系住民に「特別軍事作戦前の状況はどうだったか?」などと聞いたところで、ロシアに批判的なことはしゃべれないわけですから、そこで得た証言なんかをニュースに放り込んでいくと、ますます既成事実が積み重なっていくということになります。

――ウクライナの民間人を捕えているのも、都合の良いことをしゃべらせるためではないかという観測がありますね。今後実際にそういう証言が出てくるかどうかは分からないですけれども。

藤原:例えばロシア軍の支配下になった地域でインタビューしているのが、ロシアでなくて西側のメディアであったとしても、そこにいる人々が真実をしゃべれるわけがないと、ニュースを見る側が理解できていないのが、非常に怖いところです。

例えば、取材しているのはスペインのメディアなのだから、スペイン人の前で嘘をつくわけがないだろうなどと言うわけですけど、ロシア側支配地域で「プーチンなんて死んでしまえ」などと言ったら、スペイン人がいなくなった後、何をされるか分からない。

――ちなみに今回の取材で、それに近い場面に出遭っていますか?

藤原:キーウ周辺はさほどロシア系住民の色が濃くないですからね。そうした話はドンバス地域のほうに行けば聞けるんだと思います。

「コサック」の伝統と内発的な抵抗

リヴィウから国外に向けて避難する人の大行列。ほとんどが女性、子供、老人で、なかにはペットの犬を連れている人も

――ではあらためて、今回の取材で見たものについて、まとめて伺いたいと思います。リヴィウは西側からの援助の窓口であると同時に、ウクライナから避難する人々のターミナルにもなっていましたよね。3月5日から2週間の滞在となると、かなりの人数がポーランド等に向けて避難していったタイミングだと思いますが。

藤原:本当にそのピークの時期だったと思います。ポーランドからウクライナに取材に入ったタイミングでの、ウクライナからポーランドに向かう難民の行列がすごくてですね、道路はもう乗り捨てられた車だらけです。

車だと何時間かかるか分からないので、歩いてポーランドに向かう女性と子供だけの難民の集団というのを、道中常に見かけました。

――18歳から60歳までの男性は国内に留まるようウクライナ政府から命令があったとのことですが、避難していくのは実際に女性や子供が多かったということですね。

藤原:女性、子供、あるいは老人がほとんどですね。18歳から60歳までの男性を難民の中に見かけることは、まずありませんでした。

よく、開戦当初から日本では、テレビのコメンテーターや一部の専門家、またはリベラルな人たちからも「ゼレンスキー大統領がロシアに降伏して国民の生命を守ったほうがよい」という言論を耳にしましたが、これは第二次世界大戦時の日本が「お国のために」「一億火の玉」だとか「国防婦人会」といった形で体験したような同調圧力が、ウクライナの中にもあるのではないかということを連想しているのだと思います。ですが、私が現地を見る限り、同調圧力といえるものはいっさい見かけませんでした。

軍に志願したり、地域防衛隊に参加したりしてロシアに抵抗するという人もいれば、自分はそういうことはできないので、援助物資の仕分けとか、食料品の配布とかいったボランティアをする人もいる。火炎瓶を作る人もいれば、軍用車両をカバーする迷彩ネットみたいなものを作る人もいて、いろいろです。

――なるほど、若い男性でも直接戦いに参加するばかりではない、と。

藤原:だからといって、国外や安全な地方に避難する人々に対する批判めいた言葉は、そうした人々からいっさい出ていない。で、何もしないというのも選択肢の一つであって、自分は逃げもしないし、何か積極的に協力するわけでもないという人もいます。だからといって、そういう人に対する文句も聞こえてこない。

実際にキーウで話を聞いた50代の男性が、開戦以来何もしないという人でした。その人の思いとしては「俺は何もしない、何もせずにキーウにいる。それが俺の抵抗のやり方だ」と言うわけです。今までどおりの生活を維持して、キーウから逃げないという。

――それは逆に、こんな戦争なんかで騒いでやるか、という反骨姿勢なのかもしれませんね。

藤原:そうだと思います。政府は男性に国内に留まるよう命令しましたが、やるべきことをあれこれ強制したりはしていない。そもそも「自分の住む街に留まれ」とは言っていないんです。若い男性でも、安全な地方に避難するのは自由なわけで。

一方で、小さな子どもを連れての避難が難しい人もいれば、老齢のために危険であっても町を離れることができない人たちも少なくありません。

――例えば民兵の徴募や動員についてもそうなのでしょうか?

地域防衛隊への入隊を控え、元軍人の指導の下訓練を受けるボーイスカウトの青年たち。このキルハウスはもともとサバイバルゲーム用のフィールドであるため、目的に合っているといえば合っているが……。

藤原:ウクライナの場合「地域防衛隊」ということになりますが、これはそれぞれの都市を守る準軍事組織ですね。その中にも、銃を持って街の防衛に当たる部隊もいれば、物流や医療支援をやっている人や、広報をやっている人もいる。地域防衛隊に入るからといって、必ずしも戦うわけでもないんです。

――細かい問題になりますが「地域防衛隊」はいわゆる民兵なのでしょうか? 予備役を動員した正規軍のサブシステムとして説明される場合もあるようですが。

藤原:ああ、そうですね。いわゆる民兵、ミリシアという概念とはちょっと違って、公的な仕組みではあります。

日本人が抵抗というものを考えるとき、やっぱり第二次世界大戦下の「お国のために」という意識の強制をイメージしてしまいがちですが、それは日本人が日本的感覚を勝手にイメージしているだけで、ウクライナの人々にとっては心外な話だと思います。実際、ロシア軍侵攻後にウクライナ軍では徴兵制が再導入されましたが、しかし志願者が多いために徴兵は行なわれていません。

――なるほど……。戦争とか暴力とかいったものの理解が抽象的な水準に留まっていて、イメージや意見がずれたものになりがちなところはありそうですね。

藤原:ウクライナは基本的に「コサック」(※1)の人たちなのであって、その文化を自分たちのルーツとして非常に大事にしているんですね。自分たちが侵攻されたら抵抗するのは当然であると、彼らは思っています。

自分たちがオレンジ革命やマイダン革命(※2)で得た自由の大切さを、彼らは非常によく分かっていて、今の自由に物が言える生活を、ロシアによって昔のような状態に引き戻されたくない。だから守らなければならないという意識はとても強いわけです。

※1 ウクライナのGSC Game Worldの代表作の一つにRTS『Cossacks』(2001~)があり、傭兵として近世ヨーロッパで広く活動したコサック騎兵をモチーフに取り上げていたことも、ゲーム愛好家視点では重要な話かもしれない。

※2 2014年キーウ中央部のユーロマイダン(欧州広場)で発生したデモから始まり、親ロシア派の現職大統領ヤヌコーヴィチの失脚、ロシアへの亡命に到る。2004年憲法の復活、臨時大統領選挙の実施などウクライナの政治情勢がEU寄りに動く大きな契機となるいっぽう、ロシア側が危機感を強め、クリミア併合やドンバス侵攻に繋がったともされる。


――自分たちと自分たちの国土を守る内発的な意識は、もともと強いわけですね。

藤原:ええ、非常に強いと思います。

――ちなみに、比較的最近になって海外メディアが指摘するようになったことですが、ウクライナから国外に避難するに当たって、白人はわりとすんなり通れるのに対して、ほかの国から来たりしてウクライナに滞在していた有色人種は、いろいろ書類を求められたりして煩雑だったなどという話もあるようです。そうした例は見ましたか? テロ警戒等も含めて、やむを得ない扱いだったかどうかが微妙な例ではありますが。

藤原:その報道自体は知っていますが、そうした現場を見てはいないですし、それに関する話を聞いたこともないので、分からないですね。

ただ、戦争が起きている以上どこの国でもスパイ活動に対する警戒は必須ですから、外国人に対して手続きが煩雑になるとか、一時的に別室に連れて行って取り調べがなされるといった状況は、もちろん起こり得ることだと思います。

――想像の域は出ないが、現時点で一般的な取り扱いの範疇を逸脱していると考える根拠もない、ということですかね。

藤原:はい、これ自体は治安対策として当然踏むべき段取りを踏んでいるだけかもしれません。

――国外避難の話に限らないのですが、ウクライナでは電子政府化のプロジェクトが進んでいて、役所での手続きに当たるものはスマホアプリ「Diia」でだいたい片付くので、これが非常時にも役立つなどという報道もありました。実際に避難していく人たちの間で、このスマホアプリが使われているのを見ましたか?

藤原:いや、そのアプリの存在自体は知っていたんですが、例えばチェックポイント(検問所)で自分の身分証を見せるときとか、役所で避難民登録するときとかも、みんな紙でやっていたんですよ。実際使われている場面に遭遇したことがないんですね(笑)。

見かけた人について、高齢者や中高年が多かったからかなあという気もしますけど、かといって若い、二十代半ばの通訳さんとかも、とくに使っていなくて、チェックポイントで紙の証明書を出してましたしね。

――うーん、だとするとちょっと過大に伝えられているのかもしれないですね。ウクライナの電子政府化プロジェクトは、もともと話題の種だっただけに。

藤原:今回の取材では、ロシアへの抵抗に関する政府側の人の見解などは聞いていなくて、主に街場の人々の言葉を男女問わず聞いていました。

女性が大挙して避難して街にいないかというと、そんなこともなくて、女性でもボランティアをやっていたり、地域防衛隊に入っていたり、あるいはとくに何もせずに残っている人たちもたくさんいます。その人たちの声として「自分の祖国は自分で守る、侵略を許したくない」ということは多く耳にしました。ウクライナ政府のスローガン的なものを耳にすることのほうが少なかったですね。

――ウクライナ政府側も、それほど声高に主張していないということですかね?

藤原:たまに街に志願兵募集のポスターが貼られていたりしますが、その程度のものでしたね。それはいたって普通に貼ってあるだけですし。

――だとすると、一般市民から見たときのゼレンスキー大統領の印象も「まあよくやってるよね」くらいの話になるんでしょうか?

藤原:温かい目で見守っているというか、とくに「これこれだからゼレンスキーは素晴らしい」といった賞賛の声もなく、というか。自分たちウクライナ人として、侵略された以上は一市民であろうが大統領であろうが抵抗するのは当たり前なので、よくやっているし、当たり前のことをやっているという感覚だろうと。

――つまり一から十まで自分たちの問題で、そこに大統領も入っているだけ、と。政府に言われたからとか、そういう意識で動いているわけではないし、政府が何かちょっと手違いをしたところで、それをどうにかするのも最初から自分たちだよ、みたいな。

藤原:ウクライナ人であることに対して、それぞれが独自に誇りを持っているという。日本の愛国者というのは、政府を愛することを愛国だと思っているわけですよ。だから政権与党の味方をするのが愛国だし、政権を批判する人たちに対し「反日」と言う。でも愛国というのは本来、自分たちの国土とか歴史とか文化とか暮らしとかを愛するものじゃないですか。

ウクライナ人というのはそのへんをよく分かっていて、自分たちの生活や文化や歴史を守ることが愛国だという感覚をちゃんと持っている。もともと共産圏の一部だった彼らが、なぜそういうものを持てるようになったかというと、2000年代の二度の革命で、自分たちで自由な環境を勝ち取ったからだという風に思いますね。

――有効性感覚の問題というか、自分たちの運命を現に自分たちで決めてきたという経緯が、今後ともそうすべきだという意識に繋がっているわけですね。
革命が重要な契機だとすると、親ロシアと反ロシアで揺れてきたウクライナにとって、NATO加盟は賛否や実現可能性の評価が分かれるテーマだと思いますが、実際のところウクライナの人々がどう考えていたのか、何か聞けたお話はありますか?

藤原:今回ロシアによる侵攻後のウクライナしか見ていないので、そこはちょっと分からないですね。ただ、現に侵攻が行われた今となっては「ロシアに対して無防備であることは恐ろしい」とは考えていますよね。
そのためにNATOに正式に加盟するのか、あるいは間接的な影響下にいたほうがいいのかという問題はあると思いますが、NATOの庇護をまるで受けずに中立でいるという選択肢はもうない、というところだと思います。

――それはそうならざるを得ないでしょうね。ところで先ほど地域防衛隊のところで物資の仕分けや医療支援といった話題が出ましたが、実際に個々人がどういう形でロシアに対する抵抗に参加しているか、見てきた範囲で教えてください。

リヴィウのビール工場で作られている火炎瓶。プーチンを皮肉る、オリジナルのラベルが貼られている

藤原:先ほども少し触れましたが、戦争が起きてからウクライナには禁酒令が出ています。そこで売れるもののなくなったビール工場の人たちが「自分たちには瓶とアルコールがあるので」と言って、火炎瓶を作っているわけです。従業員に強制してやらせているわけではなく、有志を募ってやりたい人だけでやっている。3月の前半から半ば、リヴィウのその工場で聞いた話では、1日2000本くらい作っていると。

火炎瓶を作っている人はいろんなところにいるのですが、火炎瓶なんかでこの戦争で主に用いられているような戦車や装甲車と戦えるわけがないんですね。それでもやるのは「自分たちは火炎瓶を作ることで抵抗を続けるんだ」という証としてやっているんだと思うんですね。最悪火炎瓶しかなくなっても、自分たちは抵抗するんだという意志の表れだと感じました。

――その話は確かにリアルですね。瓶とアルコールでも、医療用に提供するとかではないと。

藤原:あとは鉄工所というか、キッチン用品なんかを作っている町工場ですけど、そこでは軍用車両を足止めするための障害物を作ったり、タイヤをパンクさせるための撒き菱みたいなの、手榴弾に付けるアタッチメントや、止血帯を作ったりして、それを軍に送っているという例もありました。軍から頼まれて始めたわけではなく、最初は自分たちで始めて、最終的に軍に納入するようになったそうです。それぞれの立場で、やれることをやっている感じですね。

――(写真を見せてもらいつつ)ああ、鉄道のレールを溶接して作る対戦車障害物のいわばタイニー版なんですね、これは。スチール家具用の薄手のL字鋼で作ってあるんだ……。装輪装甲車なら、これでも効くのかな?

藤原:自宅の地下室を避難所として貸している人もいましたし、もう少し広い劇場や学校といった施設も、避難してきた人のために開放されていました。

――地下シェルターについては日本国内での報道でもけっこう触れられていますが、やはりウクライナではポピュラーな存在なのでしょうか? 駅や公共施設にあるという話はしばしば聞きますが。

藤原:集合住宅や大きめのビルにはよくあって、大小さまざまですね。日本で言う団地みたいな建物にも地下室があったりします。

ああ、それと自分のやり方でロシアに抵抗しているという文脈で言うと、ハッカーの人たちにも取材しました。

武力攻撃以外でも繰り広げられていた“戦争”
《Guevarista@Game*Spark》

この記事の感想は?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集

人気ニュースランキングや特集をお届け…メルマガ会員はこちら