そこに「バイブル」は存在しない…EAヘルシンキ『SimCity BuildIt』開発者が語る「ゲームデザイン」の姿【NDC19】 | GameBusiness.jp

そこに「バイブル」は存在しない…EAヘルシンキ『SimCity BuildIt』開発者が語る「ゲームデザイン」の姿【NDC19】

「ゲームデザイン」て何だ?Rovio、ユービーアイソフトなどを経て、エレクトロニック・アーツ Tracktwentyスタジオでクリエイティブディレクターを務めるイ・ミヌ氏が見いだした答えとは―。

ゲーム開発 プロデュース
そこに「バイブル」は存在しない…EAヘルシンキ『SimCity BuildIt』開発者が語る「ゲームデザイン」の姿【NDC19】
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ネクソンは、韓国最大規模のゲーム開発者向けカンファレンス「Nexon Developers Conference 19(NDC19)」を、韓国の京畿道城南市盆唐区にあるネクソンコリアにて開催しました。4月24日から26日に実施されたこのイベントでは、ゲーム開発者が登壇する公演やトークセッションが多数開かれています。

本稿では、ヘルシンキのエレクトロニック・アーツ Tracktwentyスタジオでクリエイティブディレクターを務めるイ・ミヌ氏(以下、ミヌ氏)のセッション内容をレポート。東洋と西洋のゲームスタジオで、約18年間にわたってゲームデザインに関わった同氏が語った「ゲームデザインとはなにか」についてご紹介します。

ミヌ氏は、イギリスのRealtime WorldにフィンランドのRovio、フランスに拠点を構えるユービーアイソフトと名だたるスタジオでゲーム開発に参加していました。Realtime Worldは『Crackdown』で知られており、ユービーアイソフトは『アサシンクリード』などのタイトルでも有名でしょう。Rovioについては、モバイル向けモンスタータイトル『アングリーバード』でその名を聞いたことがある方も多いはず。ミヌ氏はPC、家庭用ゲーム機、モバイルと三種類のプラットフォームを相手に「ゲームデザイン」に従事していました。

そんなミヌ氏ですが、フィンランドで生まれたお子さんから「その仕事はなんなの?」「ゲームデザインって何?」とよく聞かれるのだそう。実際のところ、モバイル版『ゴーストリコン』『アサシンクリード』や『SimCity BuildIt』を手がけてきた彼は、それぞれまったく異なるアプローチでゲームデザインに挑んでいました。


特に『SimCity BuildIt』はヘルシンキのスタジオで開発されたもので、シリーズ原点となる『SimCity』のようにアメリカで開発された作品ではありません。アメリカで開発される作品は家庭用ゲーム機のようなアプローチを選んでいて、「Aim high(高みを狙う)」「Big(巨大)」「Huge(莫大なもの/広大なもの)」といったキーワードも持っていました。一方でヘルシンキ産の『SimCity BuildIt』は、いわゆるトップダウン型ではなく「開発者が大切だと感じたところを重視するスタイル」で作られていたため、同じスタジオのIPであるにもかかわらず、ゲーム体験としては異なるものが見られることでしょう。

『SimCity BuildIt』の開発規模は小さく、ローンチ時のスタッフ数は約22人。現在はライブサービス4年目ですが、いまだに35人以下で運営されています。少数精鋭とも言える彼らは、他のフィンランドのゲーム企業のように上下関係を作らず、すべてのチームが「デザイナー/プランナーであるという使命感」を持ってコンセプト段階から参加して『SimCity BuildIt』を生み出したのだそうです。

しかしその開発プロセスは簡単なものではなく、全員が承認しなければプロジェクトを進めることが難しくなるようなスタジオカルチャーでした。韓国では2日で終わるような仕事がフィンランドでは4ヶ月もかかる……といったこともあったそうですが、気になるその手強い仕事は「プロジェクトのコードネームを決めること」というもの。意外にもあっけないように見えますが、こういった部分はフィンランドのゲーム開発文化を示す良い例なのかもしれません。

ミヌ氏は、約10年前の自らの開発プロセスを振り返ります。ゲームデザイナーとして提案したいことを考えて、リードデザイナーに報告。その後、リードデザイナーが承認・拒否を判断。さらに総括リードデザイナーに提案がわたり、再び承認・拒否の判断。そして最後にエグゼクティブプロデューサーが承認・拒否を選ぶ……というスタイルだったのだそう。その後、ユービーアイソフトに移籍した彼は「デザイナーとデザイナーの間にいる誰かがアイデアを許諾するのでなく、デザイナー同士がお互いをレビューする」という手法をとっていました。そのレビュー内容を踏まえた上で、プロデューサーと協議を行っていくというスタイルです。

現在のミヌ氏は、「アライメント」を極めて重要なポイントと見ています。彼のチームでは、デザイナーはアーティストでありエンジニアでもあるので、全員がマインドセットを持って決断します。そこに誰かが「決定」「承認」といった形で参加するのではなく、あくまで「確認」であり、互いにサポートし合うように開発を進めていくのだそう。そうすれば、アイデアを共有した際のフィードバックと進歩を期待でき、さらに発展したアイデアを生み出せるということです。


ミヌ氏はこれまでの経験を振り返り、彼の定義する「ゲームデザイン」を明かします。ミヌ氏は「ゲームデザイン」という言葉自体を「Shape the game(ゲームを形作る)」と呼んでいて、ゲームデザインは「ドキュメンテーション(書類などから情報を整理していく)」のではなく、「スケッチ」と「クリエイティブ」が重要と考えています。先述したように、EAヘルシンキのスタジオではすべてのスタッフが「ゲームデザイナー的なマインド」で開発に携わり、集められたアイデアをピックアップ&ブラッシュアップして決断まで進みます。そして、決定されたアイデアはチームに属するメンバーがアラインしていきます。

この「Shape the game」はプレイヤーがゲームを遊ぶ過程をスケッチするもので、「ユーザーはどうしてこの要素を5年間も楽しみ続けることになるのか」といった疑問に答えられるよう努力を重ねていきます。そこで重要となるのは「文化」。スタジオやゲーム、ターゲットにどのような文化があるかによってゲームデザイン方法論は変わり、プロジェクトの進め方も大きく違ってきます。


彼にとっての「ゲームデザイン」とは、ユーザーが1ヶ月~半年、あるいは1年、さらに長ければ5年という期間にわたってどう遊んでいくかを見渡す長い旅の計画でもあり、単に「自分がやりたいアイデア」を型に嵌めて定義づけるものではありません。スタッフひとりひとりがアイデアを出して、それを全員で共有し、アライメントして具現化していくことが彼にとっての「ゲームデザイン」を進めるプロセス。もちろんこのプロセスがすべての作品や開発チーム、スタッフひとりひとりに合致するとは限りませんが、そういったケースにおいて都度異なるアプローチを選んでいくことさえも、「Shape the game」というフローの中にあるひとつの要素と言えるでしょう。
《Game*Spark》

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