北米版ファミコン30周年を記念した特別展示が開催中のストロング・ミュージアムで何が見える?・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第38回 | GameBusiness.jp

北米版ファミコン30周年を記念した特別展示が開催中のストロング・ミュージアムで何が見える?・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第38回

北米版ファミコン30週年を記念した展示会がいまアメリカはニューヨーク州のストロング・ミュージアムにて行われています。今回はその多彩な展示内容を大胆に誌上公開。

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北米版ファミコン30周年を記念した特別展示が開催中のストロング・ミュージアムで何が見える?・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第38回
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先日、第19回メディア芸術祭で立命館大学映像学部教授で任天堂のアドバイザーも務める上村雅之氏が功労賞を受賞しましたがその理由が「『ファミリーコンピュータ』(以下、『ファミコン』)を開発し、一過性のブームとして過ぎ去る可能性もあったこのジャンルを産業として、そして文化として確立した」ということから。まさにこの功労賞の意味を実証しているかのような展示会がいまアメリカのニューヨーク州で行われています。今回はその展示内容を大胆に公開。

ニューヨーク州で開催中の欧米版ファミコンとNintendo of Americaに関する展示を公開!







今年は北米で欧米版ファミコン、The Nitendo Entertainment System(以下、NES)がリリースされて30周年。これを記念してニューヨーク州、ロチェスター市のストロングミュージアムで『Playing With Power,Celebrating 30 years ofthe Nintendo Entertainment System 』が開催されています。ストロング・ミュージアムとは、世界最大規模の「遊び」に関する博物館。ゲームに限らずあらゆる玩具が展示されています。また同ミュージアムが毎年発表する『National Toy Hall of Fame(ナショナル遊びの殿堂)』で毎年選ばれる玩具については米国内外のメディアで話題にのぼるほどです。



 そのような「遊び」に関する総合博物館がNESのイベントを開いている理由は「Nintendoがよりパワフルなハード、優れたゲームそしてマリオのようなアイコニックなキャラクターとともにスランプにあったマーケットを逆転させたから(Nintendo turned around the sumping market by introducing the Nintendo Entertainment System(NES) a console that gave consumers more powerful hadware, better games and iconic characters like Mario.)」とあります。
さすがに遊びの博物館。ハードだけを取り扱っていないところがポイントですね。更に「NESは現在の私たちのイマジネーションを広げる忘れがたい世界を開いてくれたのです(The NES opened Unforgettable worldsthat still populate our imaginations today)」とあります。つまり、ハード以上にそこから生まれたゲームやキャラクターをお祝いしようということです。というわけで今回は、この展示会を見せられるところまでお見せしちゃいましょう!

日本人でも普段目にすることがないレア・アイテムが続々。




日本でもめったに見ることがない任天堂製品の数々が。

会場全体は、1階ホールの一角を占める形になっています。中央に鎮座しているメインハードの展示を背に、右側からぐるりと一回りすれば任天堂の歴史からファミコンの開発、NES開発の経緯から北米展開のためのハードの再設計、そして NESの北米市場展開、さらには現在のNintendo of Americaまで一通り理解できるつくりになっています。ここはさすが「ミュージアム」といったところでしょうか。
ということでまず最初に展示されていたのは当然(?)『花札』、『ウルトラマシン』、任天堂製ブロックの遊び方を説明する『N&Bプレイブック』といったゲーム機前の玩具の数々。伝説の迷作(?)ともいえる『ラブテスター』が中央に鎮座しているのも見逃せません!


お次にお目見えするのは、NES版巨大カセット。NESが「ビデオデッキのように」というコンセプトでハードの外観がデザインされたのに合わせ、カセットも大型化しているので日本人にとってはあまりなじみのない形をしていますが、ここはアメリカの人たちにとっては絶好の撮影スポット。このカセットの前でポーズを取っている人は結構いました。


そのあと展示されているのはファミコン前の任天堂による電子玩具。Game &Watchのような携帯型、テレビゲーム6やブロック崩しなどのテレビゲームなど。光線銃版『ダックハント』や、マルチスクリーンGame &Watch『ドンキーコング』を一緒に展示されているのも心憎い演出ですね。特にNES版『ダックハント』が欧米で果たした役割を考えると「展示意図」が見え隠れします。


『ドンキーコング』と『マリオブラザーズ』についてはプレイアブル展示。当時のアーケード機は、ストロング・ミュージアムの技術者が常にメンテナンスをしているので展示にあわせてプレイアブル出展が可能なのです。
この他にも70年代初期のものから非常にレアなアーケード機もあるので、そういったゲーム機は2階の『e-Revolutoin』でプレイ可能。この展示でアーケードゲームについてもっと知りたいと思った場合もその導線がきっちりと作られています。


そしていよいよ『ファミコン』のお出まし。『ファミリコンピュータディスク・システム』(以下、『ディスク・システム』)も展示されているのはアメリカの人たちにとってはうれしいのではないでしょうか?特に『ディスク・システム版』の『ゼルダの伝説』(以下、『ゼルダ』)が鎮座しているのには感涙かと。NES版の『ゼルダ』はカセットですからね。『ファミリーコンピュータ専用光線銃』と『ワイルドガンマン』があるのもこだわりですね。

上村雅之教授による『ファミコン/NES開発秘話』絶賛公開中。「ファミコンの名づけ親、上村氏の奥様説」の真偽もここで判明!




いよいよファミコンに続きNESかと思いきや、次は開発責任者だった上村雅之教授自らのインタビュー映像。およそ20分にわたりファミコン開発からNESへの展開までの開発経緯をかなり細かく解説しています。
「『ファミコン』の名づけの親は実は上村先生の奥様だった」とか、「NES版のために挿入されたセキュリティ・チップの経緯」、「カセットをふうふうしないとプレイが出来なくなった理由(特にNES版)」など伝説的に語られてきた数々のエピソードについて本人の口から語られているというのは非常に感慨深いです。
実はファミコン開発にまつわる話については本人が執筆した『ファミコンとその時代』ですら明かされていなかったことも数多く語られていてファンにとってはそれを知ることが出来るだけでも来た価値があったと感じる場合もあるかもしれません。

巨大なコントローラーを使って2人でマリオを操れ!





上村先生のインタビューに次はいよいよNES北米展開となるのですがここからは右回りに移動。ハードは既に最初のメイン展示で展示済みなので、ここでは大胆にもNESを分解して公開しています。でもここはさすがに「遊び」のミュージアム。メインは巨大コントローラでプレイする『スーパーマリオブラザーズ』。これは試めさないわけにはいかないと筆者も早速プレイ。巨大な十字コントローラと、A、Bボタンでのゲームプレイは爽快そのもの。でもさすがにA、Bボタン同時押しはキツい!!もともとこれは友達や親子でプレイすることを前提で設計されているようです。シングルプレイを2人でシェアという発想はミュージアムならではですね。実際、この展示で一番人気はこのアトラクションのようです。親子でのプレイが一番見かけましたが、実は「彼氏、彼女でプレイするのにも最高だったり」と思います。


もちろん巨大マリオも健在。任天堂系イベントで欠かせないのがマリオですよね!


その通りにはマリオのデコレーションが。思わず、ジャンプしてコインをタッチしたくなる仕掛けに文字通り「遊び心」を感じます。

ピクセルアートの原点がここに!クールなNES初期作品のパッケージ展示




ここからは日本であまり知られていないNESの北米展開に関する展示に。まず85年にリリースされた18タイトルの展示が。ここで重視されているのがパッケージデザイン。というのも北米のいてそれまでゲームパッケージは、実際のゲーム画面とは全く似通っていないクールなグラフィックのパッケージばかりだったのです。
それに対しNES用ソフトのパッケージは、ブラックを基調に実際のゲーム画面からピクセルにより描かれたキャラクターをそのまま掲載していたのです。こうやってパッケージが並べられているのを見ると実にクール。現代のピクセルアートの源流がまさにここにあるのだということをこの展示を見ると実感できます。

ファン・コミュニティの醸成、ゲーム大会、Nintendo of Americaが仕掛けたファン・コミュニティ・マネジメント




ハードをリリースしてからまずNintendo of Americaが着手したのはファン・コミュニティの醸成です。そこで重要な役割を果たしたのがファンに向けてのゲーム情報誌の刊行でした。『Nintendo Power』や『Nintendo Fan Club News』がそれにあたります。『Nintendo Power』は第一号が展示されています。また、ゲーム大会である『Nintendo Championship』なども開催されましたが、その際に配布された特別なゲームカセットやそういうイベントと題材にし、全米に対してはじめて『スーパーマリオブラザース3』のプレイ動画を公開して話題となったハリウッド映画『Wizard』のパッケージも展示されています。


Nintendo of Americaはゲームの販売店舗に対し様々な協力をしました。NESに関する販売コーナー、『The World of Nintendo』のデザイン提案などをしていたのです。販売業者はこういった販促ツールや、魅力的なデモプレイコーナーを設置して当時の子供たちを魅了しました。


更にNESの機能を拡張するデバイスも数多く販売されました。展示物の中で特に注目すべきなのは『ハンドフリーコントロールシステム』。交通事故で手足が不自由になってしまった女の子からの手紙を受け、2年で開発。2000台も販売
したのです。ファンに対するやさしさが感じられる一例ですね。

展示は16年1月末まで。旅行でニューヨークに来るひとはその1日をロチェスターで楽しむのもありかも



この後は一気に現代へと飛ぶのですが、展示されているのは今日のアーケードでもおなじみの
『スーパーマリオカートアーケード』の実機と、『スーパーマリオメーカー』のプレイブル出展。Nintendo 3DS向けに北米ではなにげに『Ultimate NES Remix』なんかも出ているようでそれもパッケージが展示されていました。

と、ざっと説明してはみましたが実はここではお見せできない超レアアイテムなども展示されています。更になによりも巨大コントローラを操って「スーパーマリオ」をプレイすることの楽しみは誌上ではお伝えきれません。
というわけでもしこの年末年始にニューヨークに立ち寄る、または観光に来るのであれば半日だけロチェスターに来るのはいかがでしょう?NESの展示以外にも70年代からのアーケードゲーム機、あのニューメキシコ州で「発掘」された伝説のATARI2600用ソフト『E.T.』といったゲーム関連の展示から、バービー人形の歴史などアメリカに玩具を見て触って実際に遊べるという非常に珍しいミュージアムです。飛行機だと、ケネディ国際空港などから2時間程の場所にあります。展示自体は1月末まで行われる予定です。
《中村彰憲》

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