旧世代ゲーム開発者の括目・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第41回 | GameBusiness.jp

旧世代ゲーム開発者の括目・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第41回

2015年3月9日、デジタルハリウッド大学大学院・駿河台キャンパスにて「黒川塾 二十四(24 )」を開催し、今年で3回目になる、「エンタテインメントの未来を考える会 大賞」を決定しました。

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2015年3月9日、デジタルハリウッド大学大学院・駿河台キャンパスにて「黒川塾 二十四(24 )」を開催し、今年で3回目になる、「エンタテインメントの未来を考える会 大賞」を決定しました。
  • 2015年3月9日、デジタルハリウッド大学大学院・駿河台キャンパスにて「黒川塾 二十四(24 )」を開催し、今年で3回目になる、「エンタテインメントの未来を考える会 大賞」を決定しました。
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2015年3月9日、デジタルハリウッド大学大学院・駿河台キャンパスにて「黒川塾 二十四(24 )」を開催し、今年で3回目になる、「エンタテインメントの未来を考える会 大賞」を決定しました。

単にヒット作品や販売数の多い作品を選定するのであれば2014年度に一番売れたコンテンツになったのでしょうが、そのあたりの選定の視点がやや異なっているのがポイントです。この賞は一般的なヒット作品というよりもエンタテインメントのデバイスやコンテンツの未来への可能性や、先進性などに焦点をおいた選定を行ってきました。

そして今回は以下(※)の作品が対象として選定されました。

まずはバーチャルリアリティの可能性を大きく感じさせてくれたPlayStation 4専用の“Project Morpheus”(プロジェクトモーフィアス)が真っ先に選定されました。そしてインディーズ開発者を中心に同じようにバーチャルリアリティの可能性を大きく拡張してくれた“Oculus Rift”(オキュラス リフト)がデバイスとして選定されました。

どちらもまだ発展途上のデバイスですが、エンタテインメントの新しい可能性を感じさせてくれるには十分な存在感があります。

そして、コンテンツのほうは、コナミデジタルエンタテインメント・小島プロダクションの手による『P.T.』、グーグルの新規コンテンツプロジェクトグループであるナイアンティックラボによる『イングレス』、そしてMISTWALKER(ミストウォーカー)・坂口博信氏による『テラバトル』という素晴らしい作品が選定されました。おめでとうございます。

それぞれのコメントに関しての詳細は別の記事にてご参照をいただきたいと思いますが、私が個人的に注目をしているのは『P.T.』と『テラバトル』の宣伝手法です。

『P.T.』はどこの会社のコンテンツか告知をほとんど行わず、あたかもインディーズ作品かのような演出で、じっくりと、その恐怖を味わってもらい、クチコミで拡がっていきました。もちろんその後のネタばらしもありましたが、「なんだ」というよりも「(心憎い演出に)やられた」という感覚に近いものを感じました。そのあたりの感覚は映画の宣伝に近いものがあります。小島監督ならではの宣伝演出だったのかもしれません。

もうひとつが『テラバトル』です。こちらもコンテンツの始め易さ、遊び易さの点で群を抜いています。

そして坂口さんの長年の開発パートナーたちをうまく巻き込んだ「(ユーザーからの)ダウンロード」が増えるとゲームモードやアイテムの追加、アーチスト参加、コンサート開催などが行われるダウンロードスターターという宣伝手法を取り入れたことが新鮮でした。

もちろんこれ自体は過去にもあった手法ですが、このようにうまくゲーム内容とダウンロード数がシンクロして認知が進んだケースは稀なことだと思います。このあたりはクラウドファンディング型のしくみを宣伝展開として組み込んだ話題性が大きく作用したものと思います。

しかし、単なる話題性だけでは、ここまでの成功は導き出すことは難しかったと思います。そこに魂を吹き込んだのは坂口さん率いるミストウォーカーのチームワークではないでしょうか。そしてそれを支える外部のクリエイターやスタッフさんたちの協力体制だと思います。

先日、「エンタテインメントの未来を考える会 大賞」のクリスタル盾をお渡しする際に1年ぶりくらいに坂口さんにお会いすることができました。そのときの一問一答です。

「おめでとうございます。コンテンツそのものとして素晴らしい結果ですね。」
『ありがとうございます。おかげさまで予想以上の反響で嬉しいです』
「前作のParty Waveがなかなか厳しい結果だったと思うので、テラバトルはよかったですね」
『そうですね(苦笑)、ダウンロード数は桁が大きく違いますね。収益的にはテラバトルも決して大きなものではありませんが、Party Waveと比較したら桁違いですね』
「今回の受賞で何か感じることはありますか?」
『一緒にゲームを開発したり、宣伝する人たちが、みんな、「昔、FFをやりました」とか言ってくれるんですが、自分自身が旧世代のゲーム開発者になったなあ・・・的なものを感じましたね。でも、その旧世代としてできることをやりたいと思った結果で、それをみんながサポートしてくれた結果なのでよかったと思います』

というやりとりでした。



私は1993年ごろからの坂口さんを知っています。当時、私はスクウェアが創業したデジキューブでゲームをコンビニエンスストアで販売することの宣伝活動に従事していました。現在の坂口さんの活動や仕事のスケールはあのころのスクウェアのスケールとも大きく異なっています。しかし、ゲームやそれに関するクリエイティブを継続して注力しているということに大きな感銘を受けました。

おそらく、個人資産も十分にあり、地位や名声も手にした坂口さんがゲームを作り続けるは何なのか、3月のGDC2015で功労賞を受賞されました。あの功労賞はゲーム業界における最高のアガリです。おそらくこれ以上のゲームクリエイターとしての評価は無いと思います。言い換えれば「お疲れ様でした」という引導に近いものと思われても致し方ないでしょう。しかし、それでも、ご自身いわく「旧世代ゲームクリエイター」としてのマインドセットとして、家庭用、スマートフォンなどのデバイスやカテゴリーの差に臆することなくチャレンジされていることは素晴らしいことだと思います。これこそがエンタテインメントの未来を支える底力なのではないでしょうか。さらなる活躍に期待しています。

2014年度 エンタテインメントの未来を考える会 大賞
・Project Morpheus (株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント)
・Oculus Rift (Oculus VR, LLC.)
・P.T. (株式会社コナミデジタルエンタテイメント、小島プロダクション)
・テラバトル (ミストウォーカーコーポレーション)
・Ingress (Niantic Labs)


■著者紹介

黒川文雄
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。「ANA747 FOREVER」(映像作品)「アルテイル」「円環のパンデミカ」「モンケン」「鬼畜教師(仮)」他コンテンツプロデュース作多数。

ツイッターアカウント ku6kawa230
ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』
ニコニコチャンネル 黒川塾ブロマガ」も更新中。
《黒川文雄》

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