任天堂が見つけたスマートデバイスの「答え」とは? 任天堂とディー・エヌ・エーの提携記者会見質疑から | GameBusiness.jp

任天堂が見つけたスマートデバイスの「答え」とは? 任天堂とディー・エヌ・エーの提携記者会見質疑から

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本日行われた任天堂とディー・エヌ・エーによる提携発表記者会見、質疑応答も約一時間に渡り多彩な質問が行われました。注目ポイントをお届けします。

■スマートデバイスに見つけた「答え」

これまでスマートデバイスにおけるゲーム提供に踏み込んでこなかった任天堂。岩田氏は「答え」を見つけた事が大きな要因になったと述べました。具体的には「同じゲームを出すべきではない」ということで、専用機からゲームを移植するケースも多く見られますが、最良の体験ではないものを広く届ける事はIPを毀損する事に繋がると岩田氏は指摘。異なるものを、両者にとってプラスになるような形で提供できないか、というのが狙いのようです。

「スマートデバイスとゲーム専用機は、ゲームが出来る点では同様ですが、実は異なるものだ、というのが整理できたのが大きいです。その上で、双方にとってプラスな形を模索したい」と岩田氏は述べました。

今回の記者会見でも将来のゲーム機プラットフォーム「NX」が言及されるなど、岩田氏は「ゲーム専用機のビジネスに対する情熱と展望を失ったわけではない」と繰り返し強調。むしろ、デバイスを広げながら、相互作用を持ちつつ、任天堂のIPに触れるチャンスを増やしていくのが戦略のようです。また、その戦略の中核には、新しくディー・エヌ・エーと共同開発する会員制サービスがあり、それを軸にユーザーが様々な場面で任天堂のIPと繋がっていく未来を目指します。

「スマートデバイスでより多くの人に任天堂のIPを楽しんでいただいたお客さんに、ゲーム専用機でより没入感のある世界でゲームを楽しんでいただくような形も有り得るでしょう。ゲーム専用機に否定的になり、スマートデバイスに進出するわけではなく、ゲーム専用機も含めて全て繋がった話なんです。任天堂IPに触れる人が増えれば増えるほど、任天堂IPを好きになってもらう機会が増え、生涯で任天堂に触れる機会が増えていきます。いま、娯楽の再定義ということでQuarity of Lifeを向上させる事を娯楽として位置付けようとしていますが、ゲームというものをなるべく広く捉えて、DSの『脳トレ』やWiiのリモコンで『Wii Sports』を作ったような新しい遊びも提案していきたいと考えています」



■ゲームは年内にも

本日の記者会見では具体的なゲームタイトルについては明らかにされませんでしたが、岩田氏は質疑応答の中で「少なくとも今年中に、何のアウトプットも無いようなスピード感では提携の意味がない」とコメント。少なくともどんなゲームが登場するのかは年内に明らかになるという見通しを示しました。

グローバルに展開するということでしたが、具体的な地域については今回は明らかにされませんでした。ただ岩田氏は、まだ工夫が必要ながらも「(新興国など)今までゲーム専用機を届けるのが困難だった地域にも任天堂のIPを届けるというハードルが一つ減ったことになる」ともコメント。今までゲーム専用機を楽しんでこなかった地域にもマリオたちが広がることになりそうです。

具体的な両社の役割分担については守安氏から「多くの場合はフロントサイドを任天堂さんがが作って、DeNAがバックエンドや運営を担当する事が多くなると思います」との発言でした。ただし、岩田氏はゲームタイトルによって個別的に役割分担は決めていくと話し、異なる形の組み方もありそうでした。

ゲームにおける収益配分についても具体的な数字は明らかにされませんでしたが、岩田氏は「会社の大小ではなく、どのくらいの労力をかけたか透明に見せ合って、投資に応じたリターンを配分するのがフェアではないか」とコメント。「配分比率よりも、どうやったらより多くの人にゲームを届けられるかを考えたい」との発言もありました。前述の役割分担に加え、当然ながら任天堂がIPを提供するという点も考慮して収益配分は決まりそうです。収益にどのくらいのインパクトがあるかは、今期末の決算発表で来期の見通しを示すと岩田氏は述べていました。

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■スマートデバイスでも安心、安全を

質疑応答で何度か質問があったのはビジネスモデルです。一般的にスマホゲームではガチャが収益の柱である事が多く、任天堂がこれまで貫いてきた姿勢と相反するのではないかという疑問です。これについて岩田氏は「一律に否定するつもりはないが、世の中で、少し行き過ぎではないか、子供に向けて提案するのはどうか、と考えられるようなものを提供するつもりはありません」と明言。さらに「任天堂のIPを活用している以上、当然ながら任天堂が納得しない方法でビジネスをするのは有り得ない」としました。

具体例はありませんでしたが、岩田氏は「任天堂は天邪鬼な会社で、これが上手く行っているから自分たちもやる、というのは余り面白くない。守安さんと色々な形をチャレンジしていって、一緒にビジネスモデルの発明も出来たら最高ですね」と既存の基本プレイ無料+アイテム課金のモデルを再構築することにも意欲を示していました。任天堂らしい、スマートデバイスにおけるビジネスモデルを期待したいところです。

ゲームにおけるユーザーデータの扱いについても、共同で運用するため、データを勝手に全く別のビジネスで活用するというような事は有り得ないとしました。「お客さんの了解を得て、かつ両社が共通の認識がなければ、データを目的外に利用することはない」(岩田氏)とのこと。また、会員制サービスについては共同開発ながら、運営は任天堂が主体的に行うため、ディー・エヌ・エーの他サービスなどでユーザーデータが利用される懸念は否定しました。



■ディー・エヌ・エーは最高のパートナー

任天堂とディー・エヌ・エーは、お互いに約220億円分の株式を持ち合う資本提携にも踏み切りました。この背景には、より強固な関係を築きたいという考えがあり、自然発生的に生まれたアイデアでもあるそうです。「沢山のご提案をいただいていた」という中で何故ディー・エヌ・エーをパートナーに選んだのか、岩田氏は次のように述べました。

「ディー・エヌ・エーさんの情熱でしょうか。任天堂と一緒にやりたい、と多くの方がノックをしてくれるのですが、実際のところ任天堂が本当に応じるのだろうかと懐疑的な方が多いように思います。その中で、ディー・エヌ・エーさんは繰り返し、本気でアタックしてくれました。また、非常に実績があるにも関わらず、黒子になっても構わない、という事までおっしゃっていただきました。会員制サービスについてもエース級の人材を当てていただきます。それだけ、任天堂と組むことを真剣に考えてくれているのだと思います」

一方でディー・エヌ・エーとしては任天堂が10%の株式を保有する大株主となります(創業者の南場智子氏に次ぐ2位株主に)。影響力が大きくなることについて守安氏は「当然影響力は大きくなっていくと思いますが、単純に株主ではなく、業務提携を成功させ、お互いに企業価値を向上させるという意味で前向き。協業を通じて、ゲーム作りのノウハウやクリエイティビティに対する考え方を学ばせていただきたい。非常に大きな意味を持つパートナーだと思っています」とのことでした。


衝撃を持って迎えられた資本業務提携ということもあって、質疑応答は当初の予定を大幅にオーバーしましたが、両社長が丁寧に応じていたのが印象的でした。任天堂とディー・エヌ・エーという実績に申し分のない企業同士がパートナーとなり、どのようなゲームを届けていくのか注目されます。

岩田氏も記者会見の中で強調していたように、スマートフォンゲームの市場は競争が激しく複数のヒット作を抱える企業は殆どありません。単純に良いIPを持ってすれば成功するという甘い市場ではないでしょう。「やるからには勝算を持って挑む」と話した岩田氏。言葉の節々に自信のほどが感じられましたが、そのアウトプットに全世界の注目が集まります。
《土本学》

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