「ゲーム実況者」は消えてゆくのか・・・?・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第28回 | GameBusiness.jp

「ゲーム実況者」は消えてゆくのか・・・?・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第28回

11月1日、青山サイバーエージェントベンチャーズに於きまして「黒川塾 十参」を開催しました。

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11月1日、青山サイバーエージェントベンチャーズに於きまして「黒川塾 十参」を開催しました。
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11月1日、青山サイバーエージェントベンチャーズに於きまして「黒川塾 十参」を開催しました。

今回のテーマは「ゲーム実況者たちに訊く」というもので、ニコニコ動画を活動の中心にしたゲーム実況と実況者の過去、現在、未来を検証するというものを行いました。ゲストは実況者「はるしげ」「ガッチマン」「最終兵器俺達ヒラ」、ねとらぼ記者の「池谷隼人」を迎えました。(敬称略)

今回の黒川塾の企画内容を思い立ったきっかけは先の東京ゲームショウ2013におけるインディーズゲームフェスでのステージイベントでした。

当日は開発中のゲーム『モンケン』を紹介するために登壇をしました。『モンケン』をステージ上でプレイ紹介をしてくれるのは「最終兵器俺達」という実況プレイヤー。

自分の登壇前にステージ下から見ていた印象を言えば、スーツ姿にマスク、サングラス、帽子という出で立ちのメンバーたち、顔が見えるわけでもないのにファンと思われる女性たちが400人くらいステージ前に集まっていました。その時の印象を言えば「よくわからないカルチャー」というのが本音でした。

実際にステージに立ってゲーム紹介をするところに至ったときに、ああ、これはゲーム実況というよりもゲームを介したパフォーマンス(芸)なのではないかと思いました。プレイをし、4人のメンバーが掛け合い漫才のようにツッコミあい、ボケあうというものなのではないでしょうか。しかし、それは「ゲームに興味はあるが実際にプレイするのはイマイチ不得意ですぐに自爆するようなプレイヤー(男女)にとっては魅力的だろうなあ」と納得をしました。

ゆえにゲームを面白おかしくプレイし、そこにさらにカッコいいゲーム画面や思わず驚くような画面の演出などを組み込むことにより、そのトークをさらに際立たせることでひとつの「芸」として成立しているではないかということを感じました。一般的にはお笑い芸人のようにトークがキレることや、プレイ(声の)リアクションや、存在そのものが面白いというのがキャラクター系の実況者といえるではないでしょうか。

一方で、個人的には「解説系」と位置付ける実況者がいます。今回の黒川塾のゲストである「ガッチマン」が代表的でしょう。

塾のなかで、彼がゲーム実況を始めた経緯を語りましたが「親しい友人が、ゲームはやってみたいけど、うまくプレイできない」と思っているということを聞いて、プレイした映像を見せてあげようという気持ちから始まったといっています。ガッチマンの実況プレイはゲームをある程度やりこみ、面白いポイントや見せ場をきちんと分析したうえで、その演出が映像としてとれるまで何度かリテイクをして自分なりにパーフェクトな映像と実況の完成度を高めるとのことでした。そこには、すいすいとプレイしていながらも、ツボを押さえた解説系実況者の見えない努力を感じるのです。

そして最後は企画系と位置付けていますが、一定の条件やシバリ(縛り)のなかでプレイすることでのギリギリ感やある種の緩みからくる実況もジャンルとして確立できているようです。その代表者が「はるしげ」です。彼は酔っぱらって『バイオハザード』をプレイし、その絶叫ぶり、ただならぬ狼狽えぶり、「インクリボン」をなぜ取らないのかというヘタウマ的なプレイ実況によってそのポジションを確立しました。おそらく現在の実況プレイヤーのなかでも歴史を語れる一人といってもいいでしょう。

「キャラクター系実況者」「解説系実況者」「企画系実況者」という3つの大別できるのではないでしょうか。どれも一定以上のゲームプレイスキルや話術のテクニックが必要なのは言うまでもありません。

さて、そんなゲーム実況者たちですが、彼らの存在が今後どうなっていくのかが気になります。

すでに発表の通り、プレイステーション4やXbox Oneには画像・動画のSNSなどへのシェア機能が標準装備となります。つまりメーカー側も時代の流れのなかでプレイ動画や実況を容認したということでしょうか。

このあたりは次回の黒川塾十四のゲストであるSCEワールドワイドスタジオの吉田修平氏に聞いてみたいと思いますが、ソフトェアパブリッシャー側もゲーム実況者の影響力を効果的に使いたいと思っているに違いありません。また従来と異なり家庭用ゲームやオンラインゲームが斜陽化するなかでそのような共存は必然といえるでしょう。

しかし、生き残るのは一握りの実況者ではないでしょうか。概論でしか言えませんが、ニコ動では昼間でも1000番組くらいが常に生放送されています。夜になればその数はさらに増します。すべてがゲーム系ではありませんが、その数は少なくはありません。個人の趣味の範囲で「フェイスブック」の「いいね」をもらうくらいのミニコミュニティ的に楽しんでいる人もいるでしょう。しかし、それらのなかでゲーム実況者として生き残るのはほんの一握りでしょう。

従来型のゲームメーカーのテレビコマーシャルのようにハイライトシーンやハイクオリティなCGムービーを編集したようなものではなく、実際にプレイした映像を観て「面白いのか」「面白くないのか」を判断する役目を担っているのもゲーム実況者のカルマのようなものかもしれません。

現在は新作を実況することには暗黙のタブーがありますが、それも徐々に公認でのプレイ実況も増えてきたことから、変化していくのではないかと思います。

映画業界を経験した自分としてはゲーム実況と実況者はDVDやブルーレイの付属特典の「監督やキャストのオーディオコメントタリー」と位置付けています。普通に観て(普通にプレイして)、さらに作り手の意図を酌みながら見て(ゲームの見どころや、クリアしづらいところを見て)というものに近いと思います。

みなさんはどのようにお考えでしょうか。次回も黒川塾十四お楽しみに。

次回 黒川塾十四 告知 http://peatix.com/event/22479/view
ゲスト 稲船敬二 /SCEワールドワイドスタジオ プレジデント 吉田修平

■著者紹介
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。

現在はインディーズゲーム制作中「モンケン」 電子書籍 「エンタメ創造記 ジャパニーズメイカーズの肖像 黒川塾総集編 壱」絶賛販売中

ツイッターアカウント ku6kawa230
ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』
ニコニコチャンネル 黒川塾ブロマガ」も更新中。
《黒川文雄》

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