【GDC2012】ゲームは人々を笑顔にできる―『スーパーマリオ3Dランド』ディレクター林田氏が語る | GameBusiness.jp

【GDC2012】ゲームは人々を笑顔にできる―『スーパーマリオ3Dランド』ディレクター林田氏が語る

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GDC3日目の午後、任天堂 情報開発本部 東京スタジオの林田宏一氏が登壇し、ニンテンドー3DS向けに昨年の年末商戦で投入され、世界中で大ヒットした『スーパーマリオ3Dランド』の開発を振り返りました。
  • GDC3日目の午後、任天堂 情報開発本部 東京スタジオの林田宏一氏が登壇し、ニンテンドー3DS向けに昨年の年末商戦で投入され、世界中で大ヒットした『スーパーマリオ3Dランド』の開発を振り返りました。
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GDC3日目の午後、任天堂 情報開発本部 東京スタジオの林田宏一氏が登壇し、ニンテンドー3DS向けに昨年の年末商戦で投入され、世界中で大ヒットした『スーパーマリオ3Dランド』の開発を振り返りました。



林田氏は任天堂電通ゲームセミナーの卒業生の一人で、製品化もされた『ジョイメカファイト』を当時開発したメンバーでもあります。任天堂入社後はマリオシリーズに多数関わり、『スーパーマリオ64』ではプログラマー、『スーパーマリオサンシャイン』ではメインプログラマー、『スーパーマリオギャラクシー』ではレベルデザインディレクター、『スーパーマリオギャラクシー2』からは小泉氏の下でディレクターとなり、今回の『スーパーマリオ3Dランド』でもディレクターを務めました。

様々な奇妙なアイデアがあったが、それはさておき本作の特徴は3D立体視である


さて、『スーパーマリオ3Dランド』は3D立体視が大きなテーマでした。まず林田氏は宮本氏が言った「3D立体視であれば、距離が掴みやすくなり、空中にあるブロックも叩きやすくなる」という利点について話しを始めました。まずチームでは一番最初に『スーパーマリオ64』のデータを3DSで描画したデモを作成したそうです。提示されたのは「バッタンキングのとりで」です。実際に遊ぶと、立体視になると奥行が明確になり、ブロックの高低もはっきり分かるということが理解されました。

立体視では空中のブロックも叩きやすいと宮本氏は言った立体視ではこの2つに高低差がないことが分かる


しかし良い事ばかりではありませんでした。幾つか立体視の問題点も浮き彫りになってきます。立体視は左右2つの像を描画し、それを人間が左右の目で見ることによって立体感を与えるというものです。まず問題となるのは左右の視力が異なる場合です。片方が極端に悪ければ1つに結ばれた像もぼやけたものになってしまいます。

2つ目は3DSユーザーであれば経験した事があると思いますが、左右に傾けるときちんと立体視ができないという問題です。これは立体視の基準面の位置によって強弱が変わってきます。基準面をカメラに近い位置に置けばブレが少なくなる事が分かったそうです。

最後はステレオウィンドウバイオレーションという問題。これは人間でも起こる問題で、片目の近い部分に手を置くと、その奥が見えづらくなるというやつです(もう片方の視界が開けていれば完全に隠れることはない)。ゲームでも手前にオブジェクトを置くと同様の問題が起こり得ます。この解決法としては (1)カメラの近くにモノを置かない[レベルデザインでカバー] (2)カメラをユーザーの手で回転させない (3)3DS本体のスライダで制御できるDepth-Range(立体視の度合い)を弱くし立体感を下げる という手法が取られました。

視力が左右で異なると問題が起きる本体を斜めにするとブレる手前にオブジェクトがあると見づらくなる

手前にオブジェクトを置かないカメラを半固定にするDepth-Rangeを弱くする


様々な試行錯誤を繰り返すと、立体視で見栄えの良い画面というのもわかってきました。その一つが、階段を上から見下ろす構図です。これは1-3で採用されています。

階段を見下ろす構図は立体視が輝く 実際に1-3で採用された


立体視のコツが分かってきたそんな時、宮本氏から「トリックアートはどうかな?」という難題が渡されます。立体視でトリックアートのようなことができるか・・・当然、チームにはトリックアートを描いたことある人はいません(会場には1人だけいました)。林田氏はあれこれ悩みます。しかも単にトリックアートを作っただけではゲームになりません。トリックアートという言葉から発想を広げる必要がありました。考えられたのは3Dボリュームを使った仕掛けです。立体視をオンにしてれば分かるのに、オフにしていると分からない。オフだとブロックに邪魔されて取れないように見えるスターコインが、オンにすると平面的に理解していた並びと全く違う。そんな仕掛けが『マリオ3Dランド』には取り入れられています。

トリックアート。立方体に見えるが、実は手前側は開いている林田氏が持参した現物
トリック的な配置。スターコインの下のブロックは手前にあるのだが立体視オフでは分からないこちらも同様。ブロックはつながっていない


■もう一度、3Dマリオを考えなおす

林田氏が任天堂電通ゲームセミナーに通っていたのは1991年の頃。当時の教科書や自分の取ったノートはまだ手元に残っているそうです。その20年後、林田氏はゲームセミナーの講師を2010年から務めています。当時の宮本氏の言葉「何を作るべきか毎日考え続ける」「アイデアや発明や発見はこの上なく大事」「何か情報収集した際には理解し、自分で考える」といった事を思い出し、それを生徒に伝えたそうです。当時は宮本氏の事は良く知らなかったそうですが、その考え方は深く刻まれていて、『マリオ3Dランド』も宮本氏が立体視を考えたらどのようなものになるか意識したそうです。

ゲームセミナー当時の宮本氏、若い当時の講義ノート今では林田氏も講師をするように


その意味で特に大きかったのは既に10年の歴史がある3Dマリオを1から考えなおしてみようということです。1994年から宮本氏が作り始めた最初の3Dマリオ、『スーパーマリオ64』は立体視でないことから空中把握の問題があり、ハード性能の制約から置けるブロックの数自体も制限された中で工夫を凝らした作品でした。しかし今やそうした問題は解決し、ゼロの状態から本当に作りたい3Dマリオというものが作れるようになりました。その一つの方向性として打ち出されたのが、2Dマリオの構造を持った3Dマリオだったということです。

また、過去の3Dマリオの課題としてあったのは、特に初心者のユーザーにとっては敷居が高いという問題です。「初心者も、上級者も等しく満足させる」言葉では簡単ですが実現は困難な目標です。今回は大胆な方法でそれにチャレンジしました。何度も失敗していると出てくる特別アイテムです。これを使用することで簡単にゴールができ、難しいステージをスキップして先に進めます。また、比較的早いところにエンディングを持ってきて到達しやすい設計になっています。当然開発チームの中には「ゲームバランスを壊すのではないか」という懸念もあったそうです。しかし「作り手が遊び方を強制するのではなく、お客さんの好きなように遊んでもらうべきではないか。まずは最後までクリアしてもらって、例え一度はスキップされても再度挑戦したくなるようなステージを作るべきだ」と決断したそうです。

子供にテストプレイをさせると操作方法から問題が...コインを集めるのが楽しかったと困惑させられたそう


林田氏は自身の子供、当時6歳に始めてのゲーム経験として『マリオ3Dランド』のプレイテストをしてもらった時の様子を紹介しました。プレイテストではアドバイスは禁止され、自身は後ろで様子を眺めているだけです。始めてゲームをする子供は本体の持ち方もままならず(最初は右手でスライドパットを操作していた)苦労し、最初のステージをクリアするまで1時間かかったそうです。そして言った言葉が「たくさんコインを集められて楽しかった」と。林田氏は振り返ります「どうやらコインを集めるゲームと理解されてしまったようですが、それも買った人が楽しんでもらえればそれでいいんです」

■楽しみながらゲームは作ろう

もう一つ林田氏が語ったのは「ゲーム作りを楽しもう」ということです。宮本氏はいつも楽しそうに仕事をしていると言います。いや仕事だけではありません。例えば趣味の水泳。宮本氏はある程度の距離を泳いだ所で、一度計算をするそうです。あとどのくらいのペース配分でいけばどのくらいのタイムになるだろうか。ゲーム感覚で水泳にも挑戦しているようです。しかしこれは考えうる範囲です。もう一つ紹介されました。宮本氏はメジャーを持ち歩いているそうです。目に入ったもののサイズを予測して、それが合っているかどうかでその日の調子を判断しているそうです。さすがにこれをやっている人は世界広しと言えど限られそうです。とにかく何でも楽しみ、それがゲーム作りにも良い影響を与えると林田氏は言います。

楽しむことは良い仕事だけではなく、生きる力にもなります。ちょうど1年前、3月11日、林田氏は東京スタジオの5階にいて地震を経験、「もしかしたら死ぬかも」と思ったそうです。その後オフィスは一週間出社禁止となり、その間にも大きな地震が頻発しました。「引き続き東京で開発を続けていいものか自身が持てず、どうしたら良いかわからなくなっていました」しかし林田氏はチームのメンバーにこう言います「自分たちにできる事は面白いゲームを作ること。最高のマリオを年末に届ける仕事は自分たちにしか出来ないことだ」と。

それでも以前のように仕事を楽しめるか自信を持てないでいたそうですが、あるスタッフの一言が力になったと言います。この業界に入ったのはゲームを作るのが楽しいから――シンプルな言葉ですが、これで『ジョイメカファイト』を純粋に楽しいという気持ちで制作していた頃を思い出したそうです。

開発を楽しくする工夫もしました。終盤のデバッグプレイは以前であれば各自の席で行なっていたものを、テーブルを囲んだソファーに有志が集まってするように。「このステージを作ったのは誰だ、とか言いながら競い合いながら遊ぶんです。子供の頃に誰かの家で集まって遊んだのを思い出しました」細かいことですが仕事を楽しむ事に繋がったそうです。

楽しみながら作った東京スタジオそしてデバッグ時の風景


年末商戦に発売された『マリオ3Dランド』は年末までに500万本を突破、大成功を収めました。それだけではありません、開発チームの下にはある手紙が届いたそうです――「このゲームを遊んで、生きる希望が湧いてきました」。

「『マリオ3Dランド』はマリオの歴史の積み重ねの中にあり、かつその楽しさを最新の技術で実現したものです。しかしその開発から学んだのは楽しく仕事をすることで、楽しいゲームが作れるということです。そして私たちの仕事は特別なものであることも学びました。仕事を通じて多くの人々に笑顔を与えることができるのです。みなさん、ゲーム開発を楽しみましょう」
《土本学》

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