【CEDEC 2010】学習ゲームは効果があるのか? ベネッセとゲームニクスの取り組み | GameBusiness.jp

【CEDEC 2010】学習ゲームは効果があるのか? ベネッセとゲームニクスの取り組み

学習ゲームでの学びは、本当に効果があるのでしょうか? 

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CEDEC初日の8月31日、「『ゲームニクス』の教育利用の取り組み〜学習に効果をもたらすゲーム要素とは〜」と題した講演が行われました。スピーカーは「進研ゼミ」でおなじみのベネッセコーポレーション大森雅之氏と、立命館大学教授のサイトウ・アキヒロ氏。大森氏はDS向け知育ゲーム『得点力学習DS』による実証実験を紹介し、サイトウ氏の提唱する「ゲームニクス理論」を用いた学習ゲームの有効性について語りました。

ベネッセコーポレーション、大森雅之氏。立命館大学、サイトウ・アキヒロ教授。


筆者の世代ではベネッセというより「福武書店」。赤ペン先生など「お堅い」イメージがありますが、実はファミコン初期から任天堂と協同で学習ツールを開発しています。カセットテープ内蔵型の周辺機器『スタディボックス』です。その後、学習専用の携帯用ハード『ポケットチャレンジ』を発売。暗記用途に絞り込むことで、12年間で本体120万台、ソフト累計700万本のロングラン商品となりました。

現在はDS向け学習ソフト『得点力学習DS』を発売しており、全26タイトル、累計販売82万本のヒット商品になっています。約7割が3〜5教科のソフトパックで、通常ソフトでの200万本以上に相当。現在の推定ユーザーは21万人で、クラス内で2人がプレイしている計算になります。購入者の約3割が「とても満足」と回答し、「まあ満足」とあわせると約8割が肯定的な感想を抱いている、というアンケート結果も照会されました。

学習効果に関する検証でも、東京工業大学との共同研究で、携帯ゲーム機での学びは短時間で高い集中力をもたらすことが判明。暗記効果もあることが判明しました。しかし、新たな課題となったのがモチベーションの持続です。週2日間以上継続して使用するユーザーは満足度が高まるという調査結果もあり、いかに継続して使ってもらうかがポイントでした。そこで大森氏はサイトウ氏の「ゲームニクス理論」に着目したと語ります。

音楽カセット内蔵の『スタディボックス』。ロングヒットとなった『ポケットチャレンジ』。
『得点力学習DS』は200万本相当のヒットに。86年から継続的に学習ソフトを展開。


「ゲームニクス理論」とは、サイトウ氏が提唱するゲームの「人を夢中にさせる」ノウハウを抜き出し、体系化した理論です。ゲームニクスではゲームデザインではなく、インターフェースの方法論について注目しています。ファミコン初期からゲーム開発を続けてきたサイトウ氏は、このセオリーを「ゲームニクス」として整理し、家電やウェブサービスなどに展開する試みを続けてきました。現在はゲームニクスを学習ソフト版にチューニングした「ベネッセ・ゲームニクス」を協同で体系化しています。

「ゲームのおもしろさは『ストレスと解放のループ』によって生み出される」とサイトウ氏は語ります。これを的確にユーザーに体験させるには、それ以外のストレスを可能な限りゼロにしなければなりません。これをベースに業界内で独自発酵した方法論がゲームニクスというわけです。サイトウ氏は「ストレスと解放のループ」は学習構造と同じで、ゲームニクスを活用すれば、どんなに複雑な学習内容を要求するモノでも、目標を持って楽しく進められるコンテンツが実現可能だとコメントしました。

もっとも、ゲームニクスはサイトウ氏の個人的なゲーム開発スキルの集大成で、理論的裏付けはありません。一方で「ゲームニクス」的なものは、ベテランのゲームクリエイターなら「暗黙知」として体得しているスキルでもあります(それを初めて「形式知」として書式化したものが、ゲームニクスというわけです)。ゲームニクスは本当に学習ソフトのモチベーションアップにつながるのか。立命館大学附属中学校で『得点力学習DS』を用いた実証実験を行ったところ、興味深い結果が得られたと言います。

なお『得点力学習DS』の開発は『ファイアーエムブレム』シリーズなどでおなじみのインテリジェントシステムズで、サイトウ氏は係わっていません。しかし職人的な作り込みで定評のある同社の開発という点で、ゲームニクス的な要素が多く内在しているソフトと仮定されています。

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ゲームニクスはゲームUIの体系化で、学習ソフトなどに応用可能。
ソフトのプレイ頻度と学習効果に相関関係。ポジティブイメージの形成がポイント。仮説「能動的学習支援モデル」を提唱。


実験内容はDSと理科ソフトを希望者に2週間貸し出し、冬休みの自宅学習に使用してもらうというもの。その結果、テストの成績と使用量に相関関係が見られただけでなく、期間内の使用日数が最大要因であることが判明しました。中でも「短時間でできる」「学習テンポが良い」「音楽や効果音が良い」「覚えている実感がある」といった、ゲームニクス的な要素が学習を継続する上でのポジティブイメージに、強く関連づけられることがわかったのです。

大森氏は「学習頻度が向上した生徒には、全体的な学習習慣の形成が行われ、全体の成績向上に繋がったのでは」と分析します。『得点力学習DS』を高頻度でプレイした生徒の成績は上がったが、それが学習コンテンツとしての優劣を100%証明するモノではない、というわけです。しかし、学習に関する「ポジティブイメージ」の形成にプラスに働く要素を強化し、阻害する要因を排除することで、より学習頻度の効果が得られるのではないか、という新たな仮説が浮かんだと言います。

ここから大森氏は学びの演出を高めることで、生徒が自ら学ぶ「能動的学習」の意識づけが高められるのでは、という「能動的学習支援モデル」を提唱しました。このモデルには「ストレスと快感のバランスによる快感増幅」「自己決定感と選択肢の拡大」「個々の学習者にそった行動提示と、個別見守り感」から構成されていますが、これがおもしろいゲームに共通して見られることは、言うまでもありません。この仮説を実証するために、さらなる実証実験を続けていきたいと説明されました。

また大森氏は、電子教科書の導入促進をはじめ、デバイスと教育に関する議論が加速していると紹介。その背景としてモバイル機器や通信環境の向上を上げました。しかし、一連の実証実験などから、単にデバイスや通信環境を整備することが、子どもたちの学習意欲向上に繋がるとは限らないと指摘。「デバイスの議論ばかりで、子どもの学びは変わるのでしょうか」として、ハードウェアではなくソフトウェア先行の議論が必要ではないか、と投げかけました。

なお、本セッションではtwitterにハッシュタグ「#gamenics」が立てられ、さまざまなコメントが寄せられています。大森氏も「子どもたちのためにできることを、一緒に考えていきませんか?」とコメントし、講演を締めくくりました。
《小野憲史》

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