Scaleform GFxを採用して、効率的なUIの制作を行った『グランディア オンライン』 | GameBusiness.jp

Scaleform GFxを採用して、効率的なUIの制作を行った『グランディア オンライン』

Flashで作成したリッチなUI(ユーザーインタフェース)を、そのままゲーム内で再現できるミドルウェアとして、注目を集めているScaleform GFx。

その他 その他
Flashで作成したリッチなUI(ユーザーインタフェース)を、そのままゲーム内で再現できるミドルウェアとして、注目を集めているScaleform GFx。
  • Flashで作成したリッチなUI(ユーザーインタフェース)を、そのままゲーム内で再現できるミドルウェアとして、注目を集めているScaleform GFx。
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Flashで作成したリッチなUI(ユーザーインタフェース)を、そのままゲーム内で再現できるミドルウェアとして、注目を集めているScaleform GFx。

ガンホー・オンライン・エンターテイメントで本年8月より正式サービスがスタートした冒険活劇オンラインRPG『グランディア オンライン』でも、このミドルウェアが導入されています。同社の岩田容賢さんに、実際に使ってみた感想を伺いました。

岩田容賢
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 開発事業部部長代理
『グランディア オンライン』プロデューサー



―――岩田さんは今回、どういう役割でしたか?

プロデューサーとして企画のたち上げから参加して、開発と運営の両方を担当しています。運営については、現在別のチームがいますので、今は主に開発を中心に見ているという感じです。

―――Scaleform GFxを選択したきっかけは?

もともと弊社の研究開発チームが、Scaleform GFxを含めて、さまざまなミドルウェアのテストをしていました。そこで「グランディア オンライン」の企画が立ち上がった時も、Scaleform GFxについての紹介が、研究開発チームからありました。そのときは、そんなミドルウェアがあるんだ、という認識だったんですけどね。それがいざ開発に入って、UIをどのようにデザインしようといった時、あらためて話を聞いてみると、なかなか良さそうだと思ったんです。

―――なるほど。

岩田氏
また、今回のプロジェクトではMMORPGのサーバ・クライアントエンジンとして、BigWorldというミドルウェアを採用することが、最初に決まっていました。これは弊社の別タイトルでも使われており、開発チームから事前に話をいろいろと聞いて、メリット・デメリットを踏まえた上での判断でした。そこでBigWorldに最も親和性の高いやり方を探した結果、Scaleform GFxが公式にサポートされていた点が決め手になりました。BigWorldにも独自のUIツールがあり、当初は併用して開発を進めていたのですが、統一していた方が管理がしやすいこともあって、次第にScaleform GFxを使う割合が増えていったんです。βテストの頃には、すべてのUIがScaleform GFxでデザインされたものに置き換わっていました。

―――実際にさわられて、いかがでしたか?

非常にとっつきやすかったです。特にFlashで作成したUIを、いくつか制約はあるものの、ほとんど見た目を変えることなく、ゲーム内で再現できたのは良かったですね。また作成したUIをゲームプログラム側と連動させる作業が必要になるのですが、BigWorldではScaleform GFxとの統合が保証されていたので、特にトラブルもなく実装できました。ただ、チーム内にFlashに長けたメンバーがいれば話が早いのですが、そうでなければ、まずFlashの勉強から始めなければならないので、逆に大変かもしれません。

―――作成手順について教えてください

まずプランナーがUIのコンセプトデザインを固めます。この段階では、文字と線だけで構成されているような、シンプルなものです。次にデザイナーがそれに従ってデザイン画をおこします。そこでOKがでたら、Flashで実際に操作できるものを作っていきます。通常ならプログラマーがC言語などで、まずはラフに操作できるものを作って、そこからデザイナーやプランナーなどと共同で詰めていくと思うのですが、Scaleform GFxではいきなり作り込まれたUIを、Flashで作ってはめ込むことができます。試行錯誤の手間が省けて、すごく話が早かったですね。

Flashで作られたUI


―――一般的に開発スタッフでFlashを使える人って、少ないのでは?

そうですね。今回のプロジェクトでは、たまたまプログラムができて、絵も描けるという、プログラマー兼デザイナー的なスタッフがいました。しかもFlashも使えたんです。なのでアクションスクリプトの記述も含めて、UIまわりのデザインを専任でやってもらいました。ただ、その者にしても「こんなに本格的にやるとは思わなかった」といって、途中で技術書を買ってきて研究していましたよ。

―――実際にFlashを使ったのはどんな箇所ですか?

画面に表示されている、ほぼすべてのUIです。メニュー画面などから、ゲーム画面のダイアログウィンドウまで、すべてScaleform GFxで作成しています。

―――導入を決めてから、実際に動くものが表示されるまでは?

早かったですよ。テストで作ったFlashファイルをScaleform GFxでコンバートして、ゲーム内に統合したら、すぐに表示されました。実際には統合化する際に、それが自社のプログラムなのか、それともBigWorldのように親和性の高いものかで、その時間は変わると思います。ただし一度組み込まれたら、Flashで作ったUIをゲーム内で使う上での工数は、ゼロに等しいと思います。

―――BigWorldとの統合化について、もう少し教えてください。

プログラミング言語ではPythonを使いました。ゲーム内で処理を完了するようにしておいて、Flash側からトリガーになる部分を叩く処理をすれば、それで動作します。逆にBigWorldから受け取った情報をScaleform GFxに渡してやれば、それだけで動作します。自社でゲームプログラムを作っていたときと、特に違いはありませんでした。

―――作業効率はどの程度あがりましたか?

コンシューマ機でも使われているミドルウェアなので、凝った表現をする上での、コスト削減効果は高いです。C言語などでUIを作る場合、オブジェクトを回転させたり、表示を頻繁に切り替えたり、ウィンドウに透明度を持たせたりといったように、凝った表現をしようとすると、無駄に手間がかかるんです。できることの見きわめも、サポートのドキュメントを読めば、すぐにわかります。逆にシンプルなUIでよければ、ここまでリッチなミドルウェアを使う理由はないかもしれませんね。

―――他に効果はありましたか?

今回は先ほどのUIメイン担当に加えて、作成したFlashのデータをBigWorldに統合化するためのプログラマーを1名。そしてFlashの未経験者をアシスタントとしてつけました。ただ、Scaleform GFx自体がシンプルで使いやすいミドルウェアなので、アシスタントの人間も次第に慣れていって、自分でも使いこなせるようになっていきました。なにしろ、Flashのことを勉強すれば、自然にScaleform GFxについて学ぶことにもなりますからね。そうした人材教育の面でも効果的かなと。

―――Scaleform GFxの採用は、今後を見据えての判断でもあるのでしょうか?

自社で作った方がいいのか、それともミドルウェアなど、外部の力を借りた方がいいのか。企業によっていろいろだと思います。うちは良いものだったら、どんどん取り込んでしまえ、という社風です。先のことはわかりませんが、新プロジェクトであっても、Scaleform GFxを使った方がコスト面でも、時間面でも、スタッフのアサイン面でも効果があるのであれば、使用していくことになるのかな、と思います。新たにシステムを作るよりはコストがかからないと思いますので、導入しやすいのではないでしょうか。

―――Scaleformのアップデートも予定されているそうですね

ちょうどリリース直前にアップデートされたこともあって、最新版のScaleform GFx 3.0をまだ触っておらず、2.xで開発していたんです。3.0ではデバック機能やメモリ管理機能の強化、IMEのアジア言語への完全サポートなど、私たちにとっても望ましいアップデートがもりこまれています。特にメモリ管理の点では、ユーザーさんにも動作が軽くなるなどのメリットを感じていただける可能性があります。今はBigWorldとの統合化の部分で、互換性のチェックを進めているところです。良いタイミングで、パッと切り替えられればと思います。

―――サポート体制はいかがでしたか?

日本側の担当者に連絡すると、すぐに本社に確認して、日本語で返事をいただけるので、英語でメールのやりとりをする場合に比べて、心理的な負担が減って良かったです。とはいえ、日本語のヘルプやマニュアルが充実しているので、それほど頻繁に問い合わせをする必要もありませんでした。ほとんどがFlashとScaleform GFxでの細かな挙動の違いに関する確認くらいでしたよ。

―――今後の要望などはありますか?

もともとが、コンシューマー機とPCのマルチプラットフォームで使えるミドルウェアなので、リッチな表現への対応は、今後も続いていくと思います。ただ、我々のようなPCオンラインゲームでは、できるだけロースペックなPCでも軽く動作する方が、ありがたいんですよね。MMORPGの特性上、処理に思わぬ負荷がかかることもありますから。なので今後、自社のライブラリより外部のミドルウェアの方がメモリ消費量が多くなるということになれば、採用の障壁になってしまうかもしれません。たとえ機能が一部限定されていたとしても、もう少しライトなものができれば、プロジェクトによっては導入機会が増えるのではないかと思います。

―――ネットブックの普及で、PCの二極化も進むでしょうし。

ええ。一人でも多くのお客様に遊んで欲しいですからね。また「グランディア オンライン」ではウェブゲーム「グランディア オンライン クロス」も展開しています。こちらは完全にFlashで作られていて、Scaleform GFxを使っているわけではありません。しかし、こうしたブラウザゲームで、導入部でもっとリッチな表現をしたい、ロビー機能を使いたい、そこからパッケージ化して、Flashゲーム集として何かにバンドルしたい、といった場合はScaleform GFxを使うメリットがあるかもしれません。やはりコンソールでも使われているという点で、安心感がありますから。

―――なるほど。

あとはFlashで表現できることを、できるだけそのまま再現できるように、どんどんサポートしていただければと思います。ああ、そういえばScaleform GFxとは直接関係がありませんが、使ってみて一つだけ注意しなければならない点を感じました。RPGなどのように、ウィンドウが何枚も開くタイプのゲームでは、ウィンドウ間の深度設定について、ゲームプログラム側で意識して設定・管理する必要がありますね。もともとFlashでは、何枚ものウィンドウを開くような使い方は想定されていません。なのできちんと管理しないと、ウィンドウの裏側に隠れてしまったり、ウィンドウをクリックしても前面に表示されない、といったトラブルが発生してしまいます。我々も初期の頃に、そうしたことがありました。

―――海外展開についても考えていますか?

そうですね。せっかく作ったモノなので。具体的にはこれからですが。

―――ローカライズについてもメリットはありますか?

各国のIMEが標準でサポートされている点は、安心感がありますね。けっこう入力系のサポートでつまづくことが多いんです。ただしUIの多言語化については、必ずしもScaleform GFxだから効率的、というわけでもないと思います。それよりも、例えば、フォントを埋め込みで作るのではなく、できるだけ外だしして作って、フォントテーブルで管理した方が楽だ、といったように、作り方によるところが大きいでしょうね。なのでFlashでUIをデザインする段階で、ローカライズのことを考えておく必要があると思います。弊社でも海外産のオンラインゲームの日本語ローカライズで、ずいぶんノウハウが蓄積されてきました。

―――では最後に、今後導入を検討されている方に、ひとことお願いします。

UIを作る上で、これまで通りのやり方ではなくて、効率化を考えられている方もいると思います。その際にFlashを使うことに抵抗がなかったり、アテンドできるスタッフがいれば、一度試されても損はないツールだと思います。食わず嫌いだったり、今まで通りでいいと思うのではなくて、まずは触ってみると良いのではないでしょうか。

―――Scaleform GFxに限らず、まだまだミドルウェアの導入に慎重な企業も多いと思います。

自社開発とミドルウェアを比較して、最終的に決定すると思うのですが、その際にはプロジェクト単体で終わるのではなく、その後の展開についても考えるべきでしょう。ミドルウェアの導入で学んだことやノウハウを次に生かせますし、場合によっては自社でライブラリを作る際に、生きることがあるかもしれません。本プロジェクトでも、「北斗の拳ONLINE HEROS」でBigWorldの導入事例があったことが、たいへん参考になりました。自前で技術を高めていくやり方もすばらしいと思いますが、どうしても新しいノウハウが得にくくなりますので。

―――会社的な戦略が必要だということですね。

ええ、うちは良いものなら、どんどん取り込んでいく社風です。いずれにせよ、一度触ってみることです。幸いScaleform GFxは日本語のドキュメントも充実していますしね。

《土本学》

メディア大好き人間です 土本学

1984年5月、山口県生まれ。幼稚園からプログラムを書きはじめ、楽しさに没頭。フリーソフトを何本か制作。その後、インターネットにどっぷりハマり、幾つかのサイトを立ち上げる。高校時代に立ち上げたゲーム情報サイト「インサイド」を株式会社IRIコマース&テクノロジー(現イード)に売却し、入社する。ゲームやアニメ等のメディア運営、クロスワードアプリ開発、サイト立ち上げ、サイト買収等に携わり、現在はメディア事業の統括。

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