Bluetooth SIGは日本法人設立で何を目指すのか―黒川剣氏の代表就任会見と最新技術展示を現地レポ | GameBusiness.jp

Bluetooth SIGは日本法人設立で何を目指すのか―黒川剣氏の代表就任会見と最新技術展示を現地レポ

Bluetooth SIG日本法人設立の記者発表にあわせて、開発中の新技術についても説明がありました。

企業動向 発表
Bluetooth SIGは日本法人設立で何を目指すのか―黒川剣氏の代表就任会見と最新技術展示を現地レポ
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Bluetooth技術の標準化と普及をめざす世界的な非営利団体「Bluetooth SIG」は2026年10月15日、日本法人「Bluetooth SIG Japan合同会社」の代表に黒川剣(くろかわ けん)氏が就任したことを発表しました。Bluetooth SIGは同年9月に日本法人の設立を発表しており、今回の発表は日本における活動を本格化させるものです。

発表の場となったのは、日本国内の交流プラットフォームとして新たに発足したリアルイベント「Bluetooth Japan Summit 2026」。従来は「Bluetooth Tokyo Seminar」というイベントがその役割を担っていましたが、日本法人の設立に伴い「Bluetooth Japan Summit」としてリニューアルされました。パートナー企業や開発者がベルサール六本木グランドコンファレンスセンターに集い、展示イベント、セミナー、デモンストレーションなどで、最新技術の紹介、市場動向、活用事例などを共有しつつ交流を深めました。

日本法人発足と黒川氏の就任については記者発表を実施して、Bluetooth SIG最高経営責任者ネビル・マイヤーズ氏とBluetooth SIG 日本代表の黒川剣氏が順次登壇。Bluetooth SIGのこれまでの歩みや、日本法人設立の意義、Bluetooth技術の未来予想図や現在取り組んでいる技術などが語られ、今後の明るい展開をうかがわせる内容となりました。

◆Bluetooth SIG 最高経営責任者ネビル・マイヤーズ氏が語る「コミュニティの重要性」

記者発表でまず登壇したのは、Bluetooth SIG 最高経営責任者のネビル・マイヤーズ氏です。氏は1994年にエリクソンの社内プロジェクトとして開発がスタートしたBluetoothの最初期に触れ、1998年にエリクソン、ノキア、IBM、インテル、東芝の5社が集い、「ワイヤレスの接続のためのソリューションを共に構築する」という理念のもとBluetooth SIGが立ち上げられたことを語りました。

そして、グローバルなワイヤレス標準を作るのなら1社単独ではできないこと、開発者や関連企業が市場を形成し、産業を形成してようやく達成されるとコミュニティの重要性を訴えました。結果、2026年の段階では累計650億台ものBluetooth対応のデバイスが出荷され、2030年には年間80億台にも及ぶことが予想されています。

それを実現させるのは、やはりコミュニティの力です。中でもローカルでのコミュニティを重視しており、それが今回の日本法人の設立へと繋がりました。これによりBluetooth SIGは日本に対して強固なサポートを実施することが可能となり、日本から世界へと影響力を増す機会を得られたというわけです。

その後、日本法人の代表である黒川剣氏が壇上に招かれ、挨拶や日本法人設立の意義などを語りました。

◆日本法人代表の黒川剣氏が語るBluetoothの未来図

Bluetooth SIG Japan 合同会社の代表に就任した黒川氏は、90年代後半にDVDフォーマットの策定などに関わりつつ、Spotifyやユービーアイソフトなどの日本法人代表を経て現在に至ります。そこで貫いたのは「繋ぐ」というモットーでした。まさにBluetooth SIGの信条そのものです。

「もしBluetooth SIGが本気で日本市場にフォーカスしていくのであれば、私のこれまでの経験を生かし、力になれると確信して、本日こうして皆様の前に立たせていただきました」と語った黒川氏は、Bluetoothテクノロジーを発展させ、保護し、世界中に普及することがミッションであることを力強く訴え、国内から世界へと、日本のメンバー企業が活躍できる場を作ることを宣言しました。

直近の目標としては、まず日本国内のメンバー企業との交流を深めることが挙げられます。日本から世界へとアイデアを発信するには、これまで海外のワーキンググループに参加するしか方法がありませんでした。それは飛行機に乗っての移動、英語でのコミュニケーションなど物理的な距離や言語が大きな障壁になっていたといいます。そのため日本法人を設立し、日本のメンバー企業の参加機会を確保するとともに世界との懸け橋になれればと説明しました。つまり新規参入企業にとっても、メンバーグループに加わって発信力を強める良い機会になるというわけです。

Bluetooth Japan Member Group(JMG)とは、日本のメンバー企業が集い、アイデアや意見を出し合うエンゲージメントハブのこと。海外グループに直接参加するしかなかった現状のハードルを下げるものです。JMGは、日本法人の設立とともに発足が発表されました。なお今回実施された「Bluetooth Japan Summit 2026」のみならず、2027年3月には京都で公式UPF(UnPlugFest)が開催予定となっています。

また現在、Bluetoothで使用している2.4GHzはすでに“パンパンな状態”になっているということで、総務省との話し合いで6GHzへの対応も検討されているようです。そちらはすぐに変わるものではなく、これから交渉していくフェーズとのこと。あくまで未来予想図としての発言にとどまりました。

最後に「私のミッションとしては、繋いで、繋いで、繋いでいきたいと思います」との言葉で記者発表を締めくくった黒川氏。今後の活躍に注目が集まります。

◆ゲーム分野にも広がるBluetoothの可能性―会場で紹介された最新技術

また、本イベントではBluetoothの新たな用途として展示ブースも登場。注目を浴びていたのが以下の機能や技術となります。

まずAuracast(オーラキャスト)。こちらはBluetoothの新たな音声配信規格「Bluetooth LE Audio」の機能のひとつとなっており、複数の受信機に高音質かつ低遅延の音声を届けるというものです。本イベントのセミナーでも使用されており、セミナー会場には1席につき1台、貸与される形で利用することができました。

Bluetooth 6.0で導入されたチャネルサウンディングは、センチメートル単位で高精度な距離測定ができる技術です。現在は車のデジタルキーを想定して開発が進んでいますが、物体と物体の距離を正確に測れるということで、デジタルエンタメの分野での活躍も期待できます。こちらは展示会の会場でも測量に特化したサンプル品が展示されており、その正確性をアピールしていました。

▲チャネルサウンディングのデモンストレーション。距離を正確に測ることを実際に試しています。
▲チャネルサウンディングの別のプロモーション出展。

またゲームの分野としては、超低遅延HIDは見逃せません。こちらは有線なみの応答性を標準規格で目指すもので、例えばラグの軽減はもちろんのこと、XRコントロールの部分でも活躍しそうです。

そのほかスマートビジネスの分野としては、電子値札による値段表示の一括管理、照明制御、空調システムの制御など、幅広い分野での活用が期待されています。

▲電子値札に利用可能なデバイスの展示。複数のデバイスが一括管理で表示を切り替えます。

今後の予定としては、速度・容量・信頼性の向上を目指した高データスループットと、Bluetooth LEでIPv6パケットを伝送するIP Linkを2026年11月に提供予定。Hi-Fiワイヤレスオーディオの標準確立を目指すハイレゾロスレスオーディオと、高周波数帯域の確保を2027年予定で進行しています。

展示ブースには、ノルディック・セミコンダクター株式会社、ガイロジック株式会社、株式会社UL Japan、STマイクロエレクトロニクス株式会社、テュフ ラインランド ジャパン株式会社、コーンズテクノロジー株式会社、シリコン・ラボラトリーズ、シーイヤー株式会社、BHWテクノロジーズが出展し、それぞれの技術や製品をアピールしていました。

まさにBluetoothの未来が垣間見えるものとなっており、展示やセミナーを通じて、真剣に「Bluetoothの今」を汲み取ろうとする多くの目がそこにはありました。そして日本法人の設立とJMGの発足によって、国内企業がBluetoothの標準化活動に参加するための新たな窓口が整いました。今後は、日本国内の意見を国際的な仕様策定にどう結びつけていくかが焦点となるでしょう。

《気賀沢 昌志》

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