『がんばれゴエモン』のシリーズ40周年の節目の年に発売される『がんばれゴエモン大集合!』が7月2日に発売。今回、Game*Sparkではオンラインインタビューの機会をいただくことができました。
インタビューにお答えいただいたのは、KONAMIで本作のプロデューサーを務める上野 亮作(うえの りょうさく)氏。開発を担ったエムツーの代表取締役兼プロデューサー堀井 直樹(ほりい なおき)氏、デザイナー・ディレクターのセニョール河北(かわきた)氏、プランナーの橋本享明(はしもと たかあき)氏です。大ボリュームの本作をめぐる、濃厚なエピソードの数々をお届けします。
企画立ち上げの経緯と40周年への思い

――今回の『大集合』の企画が立ち上がった経緯について、どのようなものだったのでしょうか。40周年にかける社内の思いもお聞かせください。
上野:もともと『がんばれゴエモン』シリーズは、ほかのタイトルほど移植やリメイクの機会が多くありませんでした。ゲームボーイアドバンスでスーパーファミコン版の1作目と2作目を収録した作品が発売されたほかは、任天堂さんのバーチャルコンソールで遊べる程度でした。そのバーチャルコンソールもサービスを終了したため、現行機で遊べる環境を何とかしたいという話は、社内で以前から継続的に検討されていました。
ただ、なかなか形にはならなかったんです。今回、『グラディウス オリジン コレクション』が一段落したタイミングで、『がんばれゴエモン』の40周年も見えてきました。動かすならこのタイミングだろうということで、私の方で企画を形にして立ち上げました。
私だけではなく、これまでにも複数のプロデューサーが「現行機で遊べるようにしたい」と継続的に挑戦してきました。その積み重ねのうえで、今回のタイミングが来たということです。
河北:私が参加した時点では、すでに企画がかなりまとまっていて、「13タイトルを収録する」という話になっていました。最初に見た時は、率直に「多いな」と思いました(笑)。
ただ、当初の打ち合わせ段階では、もっと少ない本数だったと聞いています。企画を進める中で、上野さんやエムツー側の企画メンバーが話し合うたびに盛り上がり、少しずつ本数が増えて、現在の形になったようです。
確かに制作量は多いのですが、そのぶん長く遊べるものになりますし、『ゴエモン』らしいデザインをどう作るか、企画をどう盛り上げるかを考えるのが楽しみになりました。
13タイトルに膨らんだ収録ラインナップ。提案しあったら豪華になっていった!?

――ユーザーとしても大変豪華なラインナップに驚きました。RPG作品も含め、2D時代の『がんばれゴエモン』の集大成だと感じています。ラインナップの選定経緯や、各タイトルの移植にまつわる苦労があればお聞かせください。
上野:最初は、ファミコンの1作目と2作目、スーパーファミコンの1作目から4作目までの、計6本から考えました。
エムツーさんと話し始めて、「スーパーファミコンのエビス丸の作品も入れなければ」「RPGも入れましょう」となり、この時点で9本になりました。もう十分多いので、この時代の作品ならこのくらいだろうと思ったのですが、ゲームボーイの『さらわれたエビス丸』も名作だから入れたいとなり、10本になりました。
さらに、「ゲームボーイ作品を入れるなら『黒船党の謎』と『天狗党の逆襲』も」「『もののけ道中 飛び出せ鍋奉行!』はどうするか」と話が広がっていきました。ただ、『鍋奉行』はNINTENDO 64作品との連動要素があり、それだけを収録しても……という事情がありました。最終的には『黒船党の謎』『天狗党の逆襲』『星空士ダイナマイッツあらわる!!』を追加した、という記録が手元にあります(笑)。
選定したというより、収録できるものをできるだけ全部入れた、という感覚に近いですね。私が「これくらいでいいのでは」と言うと、エムツーさん側から「あれも、これも」と提案が出ることもありましたし、逆にKONAMI側から増やした部分もあります。お互いにボールを運び続けて、どんどん豪華になっていった印象です。
橋本:私が参加した時には、すでにかなり本数が増えていたと思います。途中まで企画メンバーとして参画していた松岡と上野さんが話している中で、お互いに「もっと上を行こう」と盛り上がり、増えていったのではないかと思います。
ゲームボーイ作品の色味、拡張音源の調整――職人技が光る、こだわりの移植

――今回収録された作品の中で、技術的に移植が難しかったものはありますか。収録できなかった作品という意味ではなく、移植作業で特に苦労した作品や要素を教えてください。
河北:大きなポイントの一つは、ゲームボーイ作品の色です。ゲームボーイ作品には、スーパーゲームボーイで表示した場合と、ゲームボーイカラーで表示した場合とで色味が異なるものがあります。
実装するにあたり複数の色のパーターンの中からフィックスにもっていくまで結構時間がかかりましたね。


河北:もう一つは、ファミコン作品で使われているVRCというカートリッジ内のチップの扱いです。音のタイミングと画面表示のタイミングがうまく合わないと、表示ノイズが入ったり、オープニング画面がちらついたりすることがありました。そこは何度も調整して、修正してもらいました。

――『がんばれゴエモン』は海外版がほとんどないシリーズだと認識しています。その点について、今回の『大集合』の発売で苦労はありましたか。
上野:海外版がまったくないわけではありません。1991年の『ゆき姫救出絵巻』は、海外では『The Legend of the Mystical Ninja』として英語版が発売されています。ゲームボーイ作品の一部にも英語版があります。
ただ、今回の収録タイトルの中心になるスーパーファミコンの2作目、3作目、4作目あたりは、日本語版しかありません。
コレクションを作る際には、ワールドワイド向けにローカライズして発売するかどうかも長く検討しました。しかし、海外版が存在しない作品をすべて新たにローカライズするとなると、作業量もコストも非常に大きくなります。いろいろと判断した結果、今回は日本国内向けの日本語版として発売する形にしました。
Xで情報をポストするたびに、海外の方から「海外でも発売してほしい」という声が届くので、申し訳ない気持ちはあります。
――『がんばれゴエモン』シリーズは、注釈を付けるだけで遊べる作品ではありませんよね。ゲーム内部まで含めてかなり手を入れなければ、海外の方が遊ぶにはハードルが高いと思います。
上野:そうですね。単にセリフのテキストを差し替えれば済むわけではなく、背景の中にも日本語が入り込んでいます。
最近、『ゆき姫救出絵巻』の海外版をもう一度遊んでいるのですが、登場人物のセリフは英語化されていても、マップ内の『江戸』などの地名表示は日本語のまま残っています。当時も、そこまでは変更できなかったのだと思います。
新規アレンジ曲と600曲超が楽しめるミュージック機能。受け継がれたこだわりのサウンド

――先ほどVRC周辺の音と画面の同期について伺いましたが、それ以外にも、音楽の移植や収録に関するエピソードがあれば教えてください。
河北:移植そのもののサウンド面では、先ほどの件以外に大きく苦労したところはなかったと思います。
一方で、『大集合』にはいくつか新曲が入るため、既存の『がんばれゴエモン』のイメージに近づけるために、上野さんとやり取りしながら仕上げました。
上野:『大集合』のオリジナル曲、書き下ろし曲ですね。メインメニュー画面とスタッフクレジットで曲を流すことになり、エムツーさんから「『がんばれゴエモン』が好きなサウンドスタッフがいる」と伺って、アレンジをお願いしました。
方向性について何度もNGを出すようなやり取りではなく、「こうなるよね」「そうそう、これだよね」という感じで、自然に収まりました。
――テスト版を遊ばせていただいたのですが、起動した瞬間に「ゴエモンおとがしら」の新しいアレンジが流れてきて、とても新鮮に感じました。
河北:ありがとうございます。
もう一つ大変だったのは、各タイトルの楽曲を聴けるミュージック機能です。メニュー全体を縦書きのデザインにしていたため、曲名もすべて画像データとして起こす必要がありました。
楽曲は600曲以上あったと思います。英語の曲名もあるため、最初に「縦書きにしたい」と上野さんへ相談したところ、「きちんと読めるだろうか?」という話になりました。まず試しに作ってみたところ、意外と問題なく読めたため、その方向で進めました。
その後は、600曲以上の曲名画像をひたすら作る作業です。データ容量も非常に大きくなったため、当初のようにメニュー側へ単純にまとめて読み込ませると負荷が高く、データを分割するなど、読み込み方も調整しました。
過去作品のデータ書き換えまで!画面描画の細かいこだわり

――ゲームボーイ、ゲームボーイカラー作品は、もともと小さな液晶画面で遊ぶことを前提に作られています。現代のPCモニターやテレビで遊ぶにあたり、画面サイズ、ドットの見え方、色味などで特に気を使った部分はありますか。マトリクス表示も、想像以上に見やすくて驚きました。
上野:そこは、エムツーさんがこれまでのゲームボーイ作品の移植でも積み重ねてきた部分だと思います。単に実機らしく見せるだけでなく、現代の画面でも見やすくすることを大切にしています。再現した結果、かえって見えにくくなってしまっては意味がありませんから。
河北:これまでにも、他社さんの作品や、KONAMIさんの『悪魔城ドラキュラ アニバーサリーコレクション』などでゲームボーイ作品を移植してきました。そうした経験の積み重ねを生かしています。
――スーパーファミコン以降の作品でユーザビリティに苦慮されていることが、ユーザー側から見ても分かりました。当時はゲーム内で「赤いボタン」「黄色いボタン」と説明されていましたが、今回の画面右側に表示される情報カードでは、「ゲーム内で黄色いボタンと説明されているのは、現在のコントローラーではこのボタンです」のような形で補足されていますよね。

河北:あれは本当に困りました。ユーザーがどのコントローラーで遊ぶか分かりませんし、ハードによってボタン表記も違います。ゲーム内の表現自体を書き換えると、当時の雰囲気も変わってしまいますからね。
橋本:「赤いボタン」「黄色いボタン」という問題だけでなく、操作方法そのものがタイトルごとにかなり違います。
そこで、企画の松岡が、画面右側に「情報カード」という情報画面を出し、それを見ながら遊んでもらう仕組みを考案しました。シリーズに慣れている方はボタンの位置で分かるかもしれませんが、初めて遊ぶ方も多いだろうという判断です。
素材はデザイナーの渡辺が制作しました。また、『がんばれゴエモン外伝』のアイテムや術も、説明書の「とらのまき」を見れば効果は分かるものの、プレイ中にいちいち確認するのは大変です。そうした情報も、できるだけ情報カードでサポートするようにしました。
上野:情報カードはかなり良い機能になったと思います。実際にプレイする時も便利ですし、特にRPGは効果が分からなくなることがありますからね。
私もシリーズファンなので、操作は覚えていると思っていましたが、タイトルごとの細かな違いでは意外と情報カードを見る機会がありました。
河北:ミニゲームが多いため、そのたびに操作も変わります。当時は、各作品でその時点の最善の操作方法を採用した結果、作品ごとに違っているのだと思います。コレクションとしてまとめる際には、そこを分かりやすくする工夫が必要でした。
開発後半は、情報カードに載せる操作説明を詰めて、さまざまな画面レイアウトで適切に表示できるようにする作業を続けました。あそこは最後まで調整が大変でした。

――画面表示には、アスペクト比を含めて複数の設定がありますから、設定によって情報カードの位置も微妙に動きますよね。地味ながら、大変な労力だったのではないかと思います。

――移植に使用するROMのバージョン選定で苦労したタイトルはありますか。前回のメールインタビューでは、基本的に最終版を使用したと伺いました。
上野:選定基準としては、最終バージョンを使うと決めていたので、それ自体で大きく迷ったことはありません。
ただ『3』で最終版としてROMを渡していたはずなのに、エムツーさんから「これは最終版ではないのでは」と指摘されたことがありました。最後まで通してプレイすると、あるバグが発生したため、以前のバージョンだと判明し、改めて差し替えました。

橋本:差し替え作業自体にはさほど問題はなかったのですが、ちゃんと最終版が組み込まれているか、そして差し替えがきちんと行なわれているかどうか等、実際に何度かゲーム終盤までプレイして確認する必要がありました。
と言ってもただ普通に楽しくプレイしていただけなので、そこまで大変ではなかったです・・・。
『黒船党の謎』はスタッフ全員が連打で敗北!?サポート機能

――前回のメールインタビューで、『黒船党の謎』をスタッフの皆さんでチャレンジしたというお話が印象に残りました。実際には、道中、ボス、ミニゲームなど、どの辺りで特に苦戦したのでしょうか。
上野:『黒船党の謎』は、基本的にボス戦がミニゲームで、その多くが連打を要求します。要求される連打速度が非常に高く、普通に遊んでいるとクリアできないほどです。
当時の攻略記事には、「ゲームボーイで遊ぶ時はピンポン玉を用意して、ボタンをこするように連射しよう」といった攻略法が載っていたくらいです(笑)。
――私も当時、その攻略記事でこのタイトルを知りました(笑)。
橋本:今回も、まず収録した状態で、その場にいたスタッフで連射機能を使わずにクリアできるか試しました。結果は、全員無理でした(笑)。エムツー社内でも、クリアできる人間はいませんでした。
しかも、連打のミニゲームに失敗すると、その場からすぐ再挑戦できるのではなく、ゲームオーバーになってしまいます。
これは連射サポートに頼るしかないということで、連射ボタンを入れました。ゲーム自体の難易度を下げたのではなく、サポート機能を追加した形です。
サポート機能は「自力プレイの余地」を残す――一人プレイと対戦の間で

――連射や巻き戻しなど、当時の難所を越えやすくする機能が入っています。一方で、ゲーム本来の手応えを損ねすぎないよう、サポート機能をどこまで入れるか議論になった部分はありますか。
上野:大きな議論はそれほどなかったと思います。『黒船党の謎』は、これはサポートしなければならないという判断でした。
『きらきら道中』のボタン交互連打についても、現代の環境で強い激しい連打を要求するのはどうかということで、交互連射のサポートを入れました。また、『がんばれゴエモン外伝』の1作目と2作目については、ターボ機能を入れてほしいとお願いしました。
橋本:連射サポートは、意図的に少し弱めに調整しています。開発当初は非常に速かったのですが、手入力で頑張れば、サポート連射より良い記録を出せるようにしました。
たとえば『からくりサバイバルレース』(『きらきら道中』のミニゲーム)は、速すぎると障害物に当たってしまうので、ゲームに合う速さへ調整しています。
――『きらきら道中』のミニゲームは対戦要素にもなっています。サポートを使えば、とりあえずクリアしやすくなる一方で、友達同士の対戦で全員がサポートボタンを押せば差がなくなる、という設計にはなっていません。その点はかなり配慮されていると感じました。
橋本:本当に速く連打できる人は、手で連射した方が速い。その余地は残す形で調整しました。
読者へのメッセージ――ついに完成したゴエモンの集大成。じっくりと楽しんで欲しい

――最後に、この記事を読む方々へ向けて、メッセージをお願いします。
上野:長らくお待たせしました。ようやく『がんばれゴエモン』を皆さんに遊んでいただける形になりました。
13タイトルを収録した、かなりボリュームのある内容です。一気にすべて遊ぼうとするのではなく、ゆっくり、長く遊んでもらえたらと思います。ぜひ楽しんでください。
堀井:『がんばれゴエモン』は、私たちがKONAMIさんとお付き合いするようになった頃から、ことあるごとに名前が挙がっていたタイトルです。これまで何度も機会を逃してきたものを、今回ついに形にできました。
始める前は、「このコレクションで何をすればいいだろう」と、いろいろ考えていました。しかし、実際に進めていった結果、当初の想像をはるかに超える、非常に大きなボリュームで世に出せることになりました。本当に、最初はここまでやる予定ではなかったんです(笑)。
まずは皆さんに、この内容を遊び倒していただきたいと思います。そして「おかわり」が必要になった時に声を上げていただければ、それが次につながる大きな力になります。どうか楽しんでください。
隅々までの『がんばれゴエモン』愛を感じるインタビューでした。最後にはまさかの「おかわり」発言まで!いち『がんばれゴエモン』ファンである筆者としても、エールを送らずにはいられません。
どれから遊ぼうか迷ってしまう大ボリュームの『がんばれゴエモン大集合!』はPC(Steam)/PS5/ニンテンドースイッチ向けに7月2日発です。※PC(Steam)はダウンロード専売です。









