シリコンスタジオは5月12日、フィジカルAIシミュレーション基盤事業を本格的に始動すると発表しました。同日付で新設した「Chief Physical AI Officer(CPAIO:最高フィジカルAI責任者)」に、元NVIDIAエンタープライズマーケティング本部長の林憲一氏が執行役員として就任しています。
ゲーム向け3DCG技術を産業インフラへ転換
フィジカルAIとは、AIが物理世界を認識・判断し、ロボットや自動運転車などを通じて物理的に行動する技術です。その開発には、現実世界を忠実に再現したデジタルツイン上でAIを訓練し、現実環境に転移させる「Sim2Real」と呼ばれるアプローチが不可欠とされています。しかし同社によれば、高度な3DCG技術が求められるこのシミュレーション基盤を専門的に構築できる企業は国内に少なく、産業界のフィジカルAI導入の障壁となっています。
シリコンスタジオは設立以来、ポストエフェクトミドルウェア「YEBIS」やリアルタイムレンダリングエンジン「Mizuchi」など、AAAゲームタイトル向けの3DCG技術を展開してきました。近年は機械学習向け教師画像生成ソリューション「BENZaiTEN」や、NVIDIA Omniverseを活用したデジタルツイン構築にも取り組んでおり、今回これらの技術資産をフィジカルAI時代のシミュレーション基盤として再定義する形です。
NVIDIA経験を持つ林氏が事業を牽引
林氏はNVIDIAにおいてAI技術の企業・産業界への導入プロセスの最前線に立ってきた人物です。就任にあたり「フィジカルAIの学習基盤となるシミュレーション環境を最高品質で構築するために必要な技術は、まさにシリコンスタジオが25年間培ってきた3DCG技術そのもの」とコメントし、日本の製造業・ロボティクス産業が世界をリードするためのパートナーを目指す意気込みを示しました。
梶谷眞一郎代表取締役社長も「NVIDIAのエンタープライズ市場を熟知する林の参画により、当社の技術力をフィジカルAI時代のインフラとして産業界に届ける体制が整った」と述べ、新事業を通じた企業価値の持続的な向上に意欲を見せています。
エンターテインメント領域で磨いてきた技術を産業向けシミュレーション基盤へと転換する今回の戦略が、同社の新たな収益の柱となるか注目されます。






