2022年に発売され、熱いファンを抱えるアドベンチャーゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』。本作に関してはこれまで、原作者・にゃるら氏およびディレクター・プログラマーのとりい氏と、プロデューサーの斎藤大地氏との間でトラブルに発展していることをお伝えしてきました。
これまではにゃるら氏・とりい氏側の主張のみが出ている状態でしたが、本日12月29日にワイソーシリアス(以下、WSS)が沈黙を破り、Game*Sparkおよびジャーナリスト・Jini氏によるインタビューを参照する形で反論を行いました。
何が起こった?
累計売上300万本を超え、国産インディーゲームとして大きな成功を収めた『NEEDY GIRL OVERDOSE』ですが、TVアニメ化発表時には、必ずしも祝福一色とはならない反応が見られました。
本作を巡るトラブルが表面化したのは2025年4月です。原作者であるにゃるら氏がX(旧Twitter)上で発信した一連の投稿がきっかけでした。スピンオフ作品『NEEDY GIRL OVERDOSE タイピング オブ ザ ネット』の制作体制変更に合わせ、同氏はプロデューサーでありパブリッシングを担うワイソーシリアス代表の斉藤大地氏との間に確執があることを示唆しました。また、当時の心境についてはnoteにも記されています。
さらに2025年8月には、ディレクターおよびプログラミングを担当したとりいめぐみ氏が、同じく斉藤氏との間で起きたトラブルについて告発を行いました。これにより、開発サイドとプロデューサーの間に深刻な軋轢が生じていることが明確になります。
斉藤氏個人から目立った反論や説明は行われないまま、約3か月後、とりい氏は自身が代表を務めるXemono社の公式サイトにて、より詳細な経緯を記した公式声明を公開しました。
このように、『NEEDY GIRL OVERDOSE』を巡っては、アニメ化発表以前から制作体制や関係者間の認識を巡る問題が段階的に表面化してきた、という経緯があります。そんな中、これまで告発される側だったWSS側が初めて反論を出したという形です。
「WSSがにゃるらさんを原作から追放した事実はない」
今回の声明では、Game*SparkおよびJini氏のnoteで明かした内容を参照しつつ、ひとつひとつのトピックに反論する形で声明が出されています。
原作チーム離脱を巡る経緯
WSSによると、2025年4月20日ににゃるら氏から原作チーム離脱の申し出があり、同社はこれを了承したとしています。制作関連のDiscordからも同日中に本人の意思で退出しており、WSS側が原作から排除した事実はないと説明。この事実を示す記録も残っているといいます。
また、2020年に締結された業務委託契約は2025年7月1日に満了しており、本人から更新の打診がなかったため、新たな契約締結には至らなかったとしています。
現在も続く協議について
2025年8月以降、双方は代理人を通じて和解を目指した協議を継続しています。協議内容には、以下の通りです。
制作上の秘密を守ること
誤った事実の発信を止め、当事者の名誉を回復するために過去の発言の訂正をユーザーに向けて行うこと
商品やイベントに対する誤った印象を誘発する情報発信を止め、健全な活動ができるように過去の発言の訂正を行うこと
契約書や経費の開示条件について
アニメや「ニディガ展3」に関する報酬支払いについて
にゃるらさんへのハラスメントの有無に関する事実確認について
にゃるらさんの今後の原作及びアニメへの関与について
報酬・労働に関する主張
WSSは、にゃるら氏の報酬割合を一方的に減少させた事実はないとしています。開発期間延長と費用の増加に伴い、発売前に双方合意のもとで報酬割合を変更した経緯はあるものの、発売後に不利な変更を行ったことはなく、2025年には一部ロイヤリティを増額する契約も締結したと説明しています。
また、とりい氏の業務をにゃるら氏に割り振り、過度な労働を強いた事実はなく、技術的・役割的にも不可能であると否定しています。
ハラスメントおよびネットカルチャーへの姿勢について
『NEEDY GIRL OVERDOSE タイピング オブ ザ ネット』の制作過程でハラスメントがあったとの指摘について、WSSは当時のやり取りを調査した結果、該当する事実は確認されなかったとしています。
あわせて、作品関連のSNS運営やイベント、グッズ制作などは複数チームによって継続的に行われており、ネットカルチャーやキャラクターを軽視するような体制変更はないと説明しています。
アニメ化を巡るやり取り
WSSは、「にゃるら氏を外さなければアニメを中止する」といった発言をした事実はないと否定しています。2025年10月、原作チーム離脱やSNSでの攻撃的な発信などを理由に、今後のプロモーション起用などを見合わせてほしい旨をアニメ制作委員会に書面で要請したものだと説明しており、脅迫的な言動ではないとしています。
とりい氏とのトラブルについて
とりい氏(Xemono社)との間で発生したトラブルについては、2024年7月31日に和解が成立しており、WSSは解決済みの事案であるとの認識を示しています。そんな中、一方的な発言がなされていることには困惑しているといいます。
また、Game*Sparkインタビュー内で行われた「無料働かせ放題チケット」というとりい氏の認識についても反論。契約では売り上げに応じた収益分配(レベニューシェア)形式を採用しており、移植版開発・多言語化などの追加開発は作品の収益を最大化し、結果としてとりい氏を含むクリエイターへの配分額を増やすことを目的にしていたといいます。
この作業を他者に発注した場合、その開発費用分の利益が減るため、結果的にとりい氏の利益が減ることになるとのこと。第一に声掛けしたのは共同事業としての開発要請であり、不当な無償労働を強いる意図はなかったといいます。
商業主義を巡る認識への反論と「超てんちゃん」のXアカウントについて
WSSは、『NEEDY GIRL OVERDOSE』が商用プロジェクトとして企画された作品であり、得られた利益は契約に基づきクリエイターへ適切に還元してきたとしています。そのため、にゃるら氏に渡した報酬額はプロフェッショナルにふさわしいもので、非商業主義というほどの低額ではないといいます。
ファンの間では、「超てんちゃんのアカウント(@x_angelkawaii_x)」の運用の温度感が、トラブルが浮き彫りになった後から変わっていったという点は大きく批判された点のひとつです。現在ではアニメのプロモーション用アカウントとなっています。
この点に関しては、WSS側は本アカウントは元よりプロモーションのために生まれたアカウントであり、現在の展開においてユーザーが「愛」を感じにくい部分があるとすれば、それは商業主義によるものではなく、WSSの努力不足によるものだと認識していると述べています。
まだ混迷を極めそうな『NEEDY GIRL OVERDOSE』の諸問題。Game*Sparkでは今後も、情報が出次第お伝えするほか、斉藤大地氏をはじめとした取材の打診も継続して行います。
※UPDATE(2025/12/29 17:30):記事中の誤字を修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。









