2025年11月、ゲーム・アプリ業界向け開発&運営ソリューション総合イベント「Game Tools & Middleware Forum(GTMF) 2025」が東京・大阪の2会場で開催されました。
本稿では出展社によって行われたセッションの中から、Global-e Japanによる「海外ユーザー向けアプリ外課金&物販販売をサポートする『Global-e』のMoR(Merchant of Record)」の模様をレポートします。スマホ新法の完全施行を迎えホットな話題となっているアプリ外課金を軸に、海外展開をサポートするソリューションが解説されました。
Global-e Japan 公式サイト越境ECに特化した「Global-e」とは
セッションではGlobal-e Japanより神吉 真由氏が登壇し、まずは会社とサービスの概要、そして導入事例の紹介からスタートしました。
Global-eは現在世界1400社以上が利用している、国外への「越境EC」に特化したサービス。2021年6月より日本法人もスタートしており、日本の事業者が海外へグッズ等を販売する際に納税対応や輸出規制への対応を行う、グローバルかつ包括的なソリューションとしてサポートを担っています。

神吉氏曰く「アパレル業界の事例が元々多かった」とのことですが、近年はサッカーのイングランドプレミアリーグより「トッテナム」や「マンチェスターユナイテッド」といったプロチームのグッズ販売などスポーツ業界での広がり、そして約2年前からは「ディズニーストア」の越境ECでの採用されており、幅広いジャンルへと展開されていることが紹介されました。
そしてGTMFのテーマでもある「ゲーム」に近い分野では、バンダイナムコ社がEU圏でのゲームのダウンロード販売で導入していることも紹介。さまざまな導入実績をまとめ、神吉氏は「売上ではエンタメ業界が1番」と、その勢いにも触れました。

これまで日本から数々の物販を行ってきたGlobal-eの視点で見る「越境EC成功の共通点とキーワード」も紹介されました。1つ目のポイントは前出のエンタメ業界。やはりその人気は高く、日本が持つ世界的に人気のIP・キャラクターグッズの存在は重要なキーワードになっているとのことです。
続いて「日本独特」のポイントとして紹介されたのがVTuberの存在です。従来は日本語だけで発信されていたところから、現在は世界のエンタメの市場を取りに行くべく英語やインドネシア語で発信可能なタレントの発掘・育成が行われており、他言語圏のファンダム形成を目指す取り組みが進められています。
また、J-POPにおいてもワールドツアーを行うなどグローバルな活躍を行うタレントが増加しており、海外でアーティストのファンが生まれた時に、現地のファンに向けて販売できるリソースを求めて「私たちにお声がけいただくことが多い(神吉氏)」と、分析しました。
2番目のポイントとして挙げられたのが「ファッション」。代表的な例としてスニーカーメーカーとして国内でも大いに人気を獲得しているオニツカタイガー社の事例が紹介され、インバウンド需要に加え、旅行者が自国に帰った後でも買える環境を作りたいというニーズがあると言及。オニツカタイガー社はGlobal-e導入以前も海外への店舗展開は行っていたものの、まだ手が回り切らない国と地域に向けては越境販売を行うことに。公式ストア開設後にもマーケティングに精力的に投資を行った結果、現在では中東地域での売上が日本地域を上回っており、越境販売導入による大きな成功事例となっています。
ファッションの分野ではリユース業界も同様にインバウンド効果もあり盛況であり、来日前・帰国後に繋がるための手段として越境ECを立ち上げ、そこにGlobal-eが採用される事例が多いことも紹介されました。
3つ目のポイントとして挙げられたのは「JAPAN STYLE」、つまりは日本的なもの。中でも神吉氏が最も勢いがあるとしたのが「抹茶」で、海外でも大きな人気を得ており、アメリカへの輸出時にかかる追加関税の対象から除外されたこともあり、今後さらに需要が高まるのではと分析。また、手帳やペン、万年筆といった文房具も海外からニーズが高く、日本ならではのものとして高い人気を得ているとのことでした。

アプリ外課金の促進で高まる「MoR」ソリューションの必要性

Global-eが得意とするのは物販を中心とした事例ですが、ゲーム業界とGlobal-eの関わりを大きく変える出来事が、2025年12月18日完全施行された「スマホソフトウェア競争促進法」と、それによって認められるアプリ外課金の存在です。

アプリ外課金も、日本国内向けであれば既存のオンラインストアなどを活用することで対処可能です。しかし、海外ユーザー向けの課金動線を設定するにあたっては物販と同様の「販売先国での納税」への対処が課題となり、神吉氏は「そこでGlobal-eのようなMoR(Merchant of Record)が必要不可欠になる」と解説されました。

グッズなど形ある物とは違い「関税が無いので簡単なのでは」と思われることもあるデジタル商品ですが、通関が発生しないことでかえって専門的な対応が必要になります。デジタル商品販売は国ごとにさまざまな納税業務が発生しますが、神吉氏は「登記だけで3000万円くらい必要になる国もある」と、その納税作業の大変さ・複雑さを解説しました。

そこで活躍するのが「MoR」ソリューション。ゲーム会社が海外の消費者に直接販売を行うと販売先国での納税義務が発生しますが、下図に示されたように商流の間にGlobal-eがMoRとして入ることで、現地でのダウンロードコンテンツ販売や課金はGlobal-eが販売事業者として扱われるようになります。
Global-eが各国のさまざまな通貨で課金やダウンロード商品の販売を行い、売上を回収。その後、Global-eが日本のゲーム会社と「BtoB取引」として日本円で売上げを戻すという流れになります。販売先国のVAT(付加価値税)とGST(物品サービス税)、デジタルタックスについてはGlobal-eが直接納税を行います。
このVAT、GST、デジタルタックスは国ごとによってさまざまに設定されています。アメリカでは州ごとに税務規制が存在しており、約45州で売上によってセールスタックスの納税が必要になります。また韓国は「売上に関わらず10%のGST」と日本に似た制度が導入されていますが、ヨーロッパでは国ごとに存在するVATは料率が国によって19~27パーセントとバラバラです。
この国の数だけ納税対応に加え、それぞれ納税登記やタックスリターンなどの業務も発生するため、自社での対応は非常に複雑になりますが、神吉氏は「Global-eのMoRスキームを使っていただくと丸ごと任せていただける」と、その効果をアピールしました。
Global-eは各国のセキュリティ基準に準拠しており、個人情報の扱いについて外部から申請・紹介があった場合にも協力して対応を進めています。その他のセキュリティ認証も取得しており、安心・安全であることもアピールされました。
「Global-eならでは」の強みと、コンバージョン率を高める工夫
実際に導入する場合はオンラインストアを構える必要がありますが、既存のECサービスとは数多くの連携実績があり、自社構築のストアでもAPI連携によってGlobal-eの導入が可能です。

また、Global-eでは「100以上の通貨での価格表示に対応」しており、日本円の価格をベースに為替レートに応じて変換した「動的価格」にも対応可能。販売先国で先行して定めている金額に合わせるような「固定価格」や、ハイブリッドな表示にも対応しています。

続いて神吉氏は「決済画面は意外と重要で、物販では多言語対応するとコンバージョン率が上がる」というデータも紹介。Global-eでは決済画面のローカライズにも対応しており、ユーザーの離脱を防止することもできます。

税金の決済時払いについては内税・外税どちらでも対応。加えて、国や地域に応じて「どちらの方がコンバージョン率が高いか」という長年ソリューションを展開しているGlobal-eならではのノウハウを活用し、価格や税金の見せ方についてもアドバイスが受けられます。これらの細かなポイントも「少しの努力の積み重ねでコンバージョン率は結構上がってくる」と、神吉氏は実感を込めて解説しました。

そして神吉氏は「海外ではクレジットカードが使われなくなりつつある」という実情もデータと共に紹介。ヨーロッパでは58%がクレジットカード以外の決済方法を利用しており、APACは42%、中東でも45%にのぼり、グラフを見ても増加傾向にあることが分かります。

Global-eはApple Pay、Google Payといったスマホからシームレスに決済できる定番のサービスを含め、150以上の決済方法を提供しており、各国で流通している決済手段が選択できることでストレスフリーな購買体験を生み出しています。神吉氏は「ヨーロッパでは『Klarna』という後払い決済の人気が非常に高く、スイスでは現地だけで使われる『TWINT』が人気」と、国ごとで決済手段のシェアがさまざま異なることに触れつつ、それらに簡単に対応できることもGlobal-eの特徴として紹介しました。

これまで紹介されたポイントをまとめて、神吉氏は日本で利用できるMoRサービスの中でも、特にGlobal-eの強みは「デジタルと物販が融合している」ことと分析しました。デジタル課金と物販を組み合わせたハイブリッドな戦略を展開できることが大きな魅力になっています。

セッションでは「ゲーム内で特定のキャラクターを獲得したプレイヤーに、そのキャラクターの限定グッズが購入できるストアを案内する」「サブスクプランの上位会員向けに毎月限定グッズを送付する」といった、ゲームとリアルが融合したハイブリッド戦略が例示されました。このようなデジタルのコンテンツ販売とグッズ販売を両方展開できるのは日本でGlobal-eだけであり、「ダイレクト・トゥ・プレイヤー」戦略により「世界中のファンとの新たな関係構築が可能になる」とアピールしました。

最後には「Global-eの優位性」を、3つのポイントに分けて総括。1つ目はナスダック上場企業であり、年間1兆円規模のGMVを取り仕切っているからこそ、大きな取引高であっても「安心して任せられる」という点。
2つ目は「物販とデジタル両方に対応可能なMoR」である点で、現在はアプリ外課金への移行が主軸になってきている段階ではあるものの、その先には物販・グッズを海外のユーザーに届けていきたいというニーズが必ず発生してくると考えられ、そのハイブリッド戦略をサポートできる現状唯一の存在がGlobal-eとなっています。
そして3点目が「日本チームによる手厚いサポート」。日本に法人を構えて4年以上の経験があり、導入前後の案件サポートに加えて、日本時間での営業時間に日本語で問い合わせできる体制が整っています。日本の事業者の求めるスタンダードをよく理解し、「ゲーム会社さんのニーズにも期待値にもちゃんと応えられるようなサービスを提供しております」と、力強い言葉もありました。

2025年12月に完全施行される新法に関連したタイムリーな話題となった本セッション。神吉氏は「すでにアプリ外課金に取り組まれている、あるいはこれから考えている方、本気で海外に向けてアプリ外課金をやっていく、あるいは物販とデジタル両方に取り込んでいこうという方は、ぜひGlobal-eにお声がけいだければ」と呼びかけ、セッションを結びました。
Global-e Japan 公式サイト





