株式会社朝日新聞社と株式会社日本経済新聞社は26日、米国の生成AI事業者「Perplexity AI, Inc.」(以下パープレキシティ社)に対し、著作権侵害行為の差し止めと損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起しました。
同社を巡っては先に読売新聞東京本社、大阪本社、西部本社の3社も8月7日に東京地裁に提訴しています。
無許諾での記事利用が継続
パープレキシティ社は、利用者からの質問に関連する情報をインターネット上で収集し、生成AIに入力して回答を提供するサービスを運営しています。同社は2024年6月頃から、朝日・日経両社のサーバーに収録された記事コンテンツについて、許諾を得ずに複製・保存し、記事が含まれた回答を利用者の端末に繰り返し表示しているということです。
両社は記事の無断利用を防ぐため、自社サイトに「robots.txt」という技術的措置を施し、記事コンテンツの利用を拒否する意思表示をしていますが、パープレキシティ社はこれを無視して利用を続けています。無許諾で回答に使われたコンテンツには、日経が有料会員にのみ提供している記事(いわゆるペイウォール内の記事)や、朝日が提携先に配信した記事が含まれています。
著作権侵害と信用毀損の問題
両社はパープレキシティ社の行為は両社の著作権(複製権、翻案権、公衆送信権)を侵害していると指摘。さらに同社は、回答の引用元に両社の社名や記事を表示しながら、記事の内容と異なる虚偽の事実を多数表示しています。情報の正確さが求められる新聞社の信用を著しく毀損しており、不正競争行為に当たるとしています。
両社は記事の複製・送信の差し止めと保存した記事の削除、両社の社名や記事を表示して虚偽の回答を送信することの差し止めを求めています。あわせて著作権侵害や不正競争行為で被った損害の一部として、両社は合計22億円を請求します。
報道機関の基盤保護が目的
声明によれば、両社は昨年夏から協議を続け、今回、共同提訴に至りました。
朝日新聞社広報部は「生成AI事業者による記事コンテンツの無断利用に対しては、当社のみならず日本新聞協会を通じて業界全体でも対応を求めてきました。改善がみられないまま無断利用が続く状況は看過できず、今回、問題意識を共有する日本経済新聞社との共同提訴に至りました。許諾を得ずに違法な利用を続ける事業者には、引き続き対応を求めてまいります。」とコメントしています。
日本経済新聞社広報室は「生成AI事業者による著作権侵害は新聞業界共通の問題です。記者が多大な時間と労力を費やして作成した記事の無断利用は看過できず、記事とは異なる虚偽の事実が表示される状況も生じています。共同提訴によって記事を許諾なしに利用していることを明確にし、野放図な著作権侵害に歯止めをかけたいと考えています。民主主義の根幹を支える健全な報道を守る意義を訴えていきます。」と述べています。